銀の蛇と白い猫のお話   作:アマゾンの奥地

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 ここまで読み進めていただいた皆様へ、いつもありがとうございます。
 コメントへの返信は出来ておりませんが内容はしっかりと読ませていただいております。
 感想をくださった方々には、ここで深く感謝させていただきます。

 この度は突然の閑話を挟むこととなりまして、誠に申し訳ありません。
 兵藤一誠という人物についてこの作中での悪魔に転生した経緯などを、走書きではあるのですが書かせていただきました。

 ハイスクールD×Dの主人公である兵藤一誠ですが、皆様は彼にどのような感想を抱くでしょうか。
 私は、彼は等身大の人間なのだと思っています。
 彼の言動やその他様々な行為の全ては、彼自身の『意志の弱さ』なのだと。
 彼は話の内容が進めば進むほど、より短絡的に、自分勝手になっていきます。
 おそらく本人でも理解しているのではないでしょうか。
 自分のやっていることが、おおよそ筋の通っていることではないと、解っているのではないでしょうか。
 わかっているからこそ、彼はそれをより大きい「おっぱい」というもので隠そうとするのです。
 すべては自分の欲望のためだと、そう自分に言い訳することによって自分の行動から目を背ける。
 自分のせいで不幸になっている『誰か』から目を背ける。
 彼の言うハーレムも、おっぱいも、すべては人間性を徐々に失っていく自分を必死につなぎとめようとするためのものです。
 彼が罪悪感から逃れるには、自身に酔うしかなかったのです。
 だって、誰も彼を叱ったりしないのだから。
 彼は自分を否定されません。
 彼のやること全ては『善』であり、彼の反対思想を持つものは『悪』となるのです。
 だから止まることが出来なくなった。
 坂を転がりだしたボールが自らでは止まれないように、彼も止まれなくなってしまったのです。
 だから自分に酔いしれる。
 自分は正しい。自分は正義だ。
 そう思い込むことで、自身の重荷から背を向けるのです。
 これはおかしなことではありません。
 誰にだって重荷から目をそむけたくなることはあります。
 彼はただ、それが大きすぎただけ。

 願わくば、兵藤一誠に真の意味での味方が現れますように。
 曲がることあれど、決して折れることがありませんように。


閑話 兵藤一誠

 

 俺は死んだ。

 初めてのデートをしたあの日の夜、俺は確かに死んだはずだった。

 

 

 

 

 

 

 ある日の、学校から帰ってる時のことだった。

 俺は後ろからいきなり声をかけられたんだ。「駒王学園の兵藤くんですよね」って。

 焦ったよ。

 そりゃあもう大いに焦った。

 いきなり声なんてかけられたらさ、そりゃあビックリもする。

 あんまりに驚きすぎたもんで相手の人も驚いてたみたいだ。

 

 すぐに「悪かった」って謝ったよ。

 相手の人も快く謝罪を受け取ってくれた。

 まだその人の顔を見たわけじゃないから確かなことは言えないけど、俺は「優しい人だな」って思った。

 そんで、俺はいつまで後ろ向いてるままじゃあ悪いと思って振り返ったんだ。

 

 美少女がいた。

 

 長いストレートの黒髪、今にも折れてしまいそうな細い体、少し困ったようなその表情さえも、俺には可愛くみえた。

 一目惚れだった。

 彼女の声を聞いた時から、彼女を一目見た時から、俺の心は彼女に奪われていた。

 こう言ってしまうと大げさに聞こえるかもしれないけど、これは「運命の出会い」なんだと思う。

 

 彼女、あぁ天野夕麻ちゃんと言うらしい。

 まあとにかく彼女は俺にどうも伝えたいことがあってきたようだった。

 初めて出会ったはずの人なのに、俺は気が付けば夕麻ちゃんのことを信頼しきっていた。

 こんなご都合主義はなにかおかしいなんてこと、考えもしなかった。

 俺は、俺に出来る最大限の男らしさってやつを見せつけて、「どうしたの?」なんて聞いた。

 夕麻ちゃんとの時間を少しでも長くありたい。

 と、そう思ったんだ。

 

 まあ結果だけ言うと、俺は天野夕麻ちゃんと付き合うことになった。

 なんでも俺のことを前から知っていていつ声を掛けようかと気をうかがっていたそうだ。

 彼女の告白を受けた俺は二つ返事で了承した。

 むしろこっちから頭を下げてお願いしたいぐらいだ。

 人生の絶頂期はここにあり。

 俺は「天にも昇る」という言葉の意味を初めて実感した。

 

 嬉しかったよ。

 

 初めてできた彼女だ。

 見た目もよくてその上性格も良好。

 俺にはもったいないぐらいの、みんなに自慢したくなるような彼女だ。

 勇気を持って告白してくれた夕麻ちゃんに俺も応えたい。

 何をしてあげられるか必死に考えた。

 あんまり回らない頭だけど、それでも俺なりに頑張って考えたんだ。

 どこに連れて行ったら喜んでくれるんだろう、とか。

 なにを食べたいだろう、なにかほしいものはあるんだろうか。

 俺はこの幸せな時間を、大切にしていきたかったんだ。

 

 話をの話題を出すのは夕麻ちゃん、違う学校なのに一緒に帰りたいからと来てくれるのも夕麻ちゃん。

 俺があたふたしてるところに助け舟を出してくれたのも、夕麻ちゃんだった。

 

 だから今度は俺が、俺が夕麻ちゃんになにかをしてあげたい。

 夕麻ちゃんは俺の彼女なんだ。

 いつまでも貰ってばかりじゃいられない。

 俺も、彼女のために何かをしてやりたいんだ。

 夕麻ちゃんは俺なんかよりも全然なんでもできる。

 きっと俺が何かをしても、それは夕麻ちゃんが自分でもできることなんだろう。

 でも。

 それでも俺は何かをしてあげたかった。

 

 これはただのエゴかもしれない。

 彼氏なのに何もしないなんて格好がつかないから、なんて思いだってもちろんあった。

 別に誰かに頼まれたわけじゃない。

 ただ俺が勝手に、何かしなければ彼氏として相応しくないって思っちまってるだけ。

 こんなのは自分の考えを押し付けてるだけだ。

 

 でも、だからって「何もしない」のは違うと思うんだ。

 もちろん彼氏としてって焦ってるのも事実だ。

 でも違うんだ。

 俺は夕麻ちゃんに笑ってほしい。

 俺なんかを選んでくれてよかったって、そう思ってほしい。

 

 だから俺は大切な彼女を、人生初のデートに誘うことにした。

 

 デートに誘うと言ったが、ほぼ間違いなく夕麻ちゃんはOKしてくれると分かっていた。

 これまでの夕麻ちゃんを見ていて思ったことなんだけど、彼女は俺の誘いに否定的なことを言っていた記憶があったから。

 だから、俺が考えるべきは「デートをどうやって成功させるか」だ。

 

 あぁ、もちろん夕麻ちゃんをデートに誘ったときはOKの返事をもらえた。

 恥ずかしさで何度も噛んでしまったけど、夕麻ちゃんは笑って「ありがとう」って言ってくれたよ。

 

 まあいくら意気込んだところで、俺はしっかりとした恋愛経験なんてもんはない。

 世間一般のカップルがどんなことをするかなんて知らないし、そんなリア充の知り合いもいない。

 結局俺に出来るのはそのへんの雑誌を読み漁って、情報を頭に叩き込むことだけだった。

 いやぁ、俺には全く関係ない世界の話だと思ってたからな。

 なんか自分でも似合わない自覚はあるんで、ちょっと恥ずかしかったけど。

 でもこれで夕麻ちゃんが喜んでくれるって思えば俺はいくらでも頑張れる。

 緊張と期待の間で、どんどん時間は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 待ち合わせ場所に早く到着して待つ。

 か、彼氏だからな。

 これぐらいは当たり前ってもんだ。

 .....でもただ待つだけっていうのも、なかなか勇気がいるな。

 つい不安になっちまう。

 もし来てくれなかったらとか。

 逆に、来たら何を話せばいいのかとか。

 とにかく不安だ。

 やべぇ。なんか怖くなってきちまった。

 俺、ホントに夕麻ちゃんに喜んでもらえるようなことできるだろうか。

 もしかしたらなんかあって喧嘩とかするんじゃねぇか!?

 そんでそのまま喧嘩別れになって、もう全く話もできなくなっちまうんじゃ!?

 あぁ。

 考えれば考えるほど不安になって来た。

 身だしなみは大丈夫だよな。

 変なところはないか。

 臭いとかは?

 ホントに大丈夫か。

 なんかおかしいところがあるんじゃないか。

 あぁ不安だ。

 もしものことを考えると.....。

 

「.....あの.....どうぞ.....」

 

「んあ?あぁ」

 

 おいおい。

 なんか変なチラシもらっちまったぞ。

 こんな状態じゃなかったら間違いなく断ってたぞ、おい。

 っていうかさっきのチラシ配りの娘、なんかどっかで見たことある気がしたんだけど.....。

 誰だったかな、まあ誰でもいいか。

 でも丁度いいっちゃいいかな。

 この変なチラシでも見てとりあえず気を紛らわせよう。

 

 『あなたの願い 叶えます』

 

 ん~なんだこれ。

 いわゆるオカルト系ってやつか。

 なんか魔法陣っぽいもんも書いてあるし。

 こういうの、ホントにあるんだな。

 俺ってこういうの信じてるのなんてただの言わされたサクラだけだと思ってたぜ。

 いや、あのチラシ配ってた娘も実はサクラなのかな?

 なんかこう、入会者一人あたりいくらかもらえるみたいな。

 でもどうやって稼ぐんだろう。

 やっぱり王道だけど壺みたいなのでも売るんだろうか。

 最初は無料、徐々に金額を上げてって、気が付いたらもうやめられないとこまできてるみたいな。

 .....なんか葉っぱみたいだな。

 

 にしても。

 こんなのに引っかかる奴なんているんだろうか。

 まあ、いるからこうして広告なんて配る金があるんだろうけど。

 でもやっぱりすげえよな、そういうのを考える人って。

 だって普通はこんなことうまくいくなんて思わないし、誰も考え付かない。

 それをやろうってんだから、やっぱりそいつは人間としてどうかはともかく、やっぱりすげえ奴なんだとは思う。

 俺がそうなりたいかって聞かれたら、まあ全力で首を横に振るけどな。

 だってやってることはただの詐欺だし。

 でもオカルト系ってそんなに流行るもんなのかねぇ。

 もしかしたら興味本位でって奴らをターゲットにしてるのかもしんないな。

 あぁ怖い怖い。

 そういうのには引っかかりたくないな。

 

「い、イッセーくん!待たせちゃった?」

 

「あ、え、いやぁ。全然待ってないよ全然!!」

 

 夕麻ちゃん!?

 やべぇ声かけてもらうまで気付かなかった。

 いやでも良しとしよう。

 なんか緊張もマシになって来た気がするし!

 

「それじゃあ、行こうか」

 

 俺なりに精一杯格好つけて言う。

 恥ずかしさで心臓が破裂しちまいそうだけど、なんとか顔には出さないように。

 って、伝わっちまってるか。

 だって夕麻ちゃんはいつだって俺のことをお見通しだったからな。

 

 

 

 

 

 

 デートは順調に進んだ。

 不安になることも何度かあったけど、なんとかやり過ごせた、と思う。

 夕麻ちゃんも楽しそうにしてくれた。

 とくに一緒に小物を選んだ時なんかはとっても楽しそうな顔をしていた。

 うん、可愛い。

 昼食も食べに行った。

 まあ俺はビンボー学生なんで、高級レストランなんかは無理で普通のファミレスだけどな。

 でも夕麻ちゃんは美味しそうにご飯を食べていた。

 話も弾んだし、どうやら夕麻ちゃんを喜ばせることは成功したみたいだった。

 ずっと心臓がバクバクいってたけど、俺も楽しかった。

 やっぱり好きな人と過ごすってのは良いもんだな。

 あぁ。

 夕麻ちゃんが俺の彼女になってくれてよかった。

 

 日も暮れてそろそろ帰ろうという時間、夕麻ちゃんが公園に寄りたいと言ってきた。

 俺は二つ返事で「かまわない」と答える。

 公園に背を向けてこちらを覗き込む夕麻ちゃんは、朱く照らされた木々も相まってかわいらしさに磨きがかかってみえた。

 

「.....綺麗だ」

 

 つい口から出ていた。

 無意識だった。自然とそう言ってしまっていた。

 

「ふふっ。ありがと」

 

 夕麻ちゃんは小さく微笑んでいた。

 その笑顔は俺が今まで見たどの笑顔よりも綺麗にみえた。

 

「イッセーくん。一つお願いがあるんだけど.....いいかな?」

 

「あ、あぁ!な、なななにかな!?」

 

 やばい。

 緊張で目まいがしてきた。

 心臓もすげえ音で鳴っていやがる。

 つ、伝わってないよな。

 変だって思われてないか?

 大丈夫、大丈夫だ、俺。

 こんな時のために俺はパリピっぽい雑誌を読んだんじゃないか!

 

「ありがとうイッセーくん。あのね.....」

 

「う、うわぁ!?」

 

 夕麻ちゃんがすぐそこまで来ていた。

 もうちょっと近づけば唇と唇がくっつきそうなぐらいに近い距離だ。

 夕麻ちゃんの唇から目が離せない。

 も、もしかして!?

 俺やっちまうのか!?今日!ここで大人の階段を上るのか!?

 

「イッセーくん。死んでくれないかな」

 

 世界が止まったように感じた。

 脳がフリーズして動かない。夕麻ちゃんがなにを言ったのか、俺の頭は理解できなかった。

 

「ゆ、夕麻ちゃん.....今、なんて.....」

 

「だからねイッセーくん。あなたに死んでほしいの」

 

 夕麻ちゃんの人差し指が俺の唇を撫でる。

 さっきまでは綺麗だと思っていた夕麻ちゃんが、なんだか急に怖くなった。

 俺は夢でも見ているんだろうか。

 それともこれはドッキリ?

 夕麻ちゃんなりのお茶目というやつなんだろうか。

 

「あなた、とってもいい子だったわ。ちょっと優しくしたら私のためにこんなことして。えぇ、嬉しかったわよ。ありがとうイッセーくん」

 

 彼女の指が唇から顎へ。

 さらに首を伝うように進んでいく。

 

「でも退屈でもあったわ。ホントにありきたりなのね。まあ最初から期待はしていなかったから、別に気にしてないわ。落ち込まないでね」

 

 喉仏を通り過ぎ、夕麻ちゃんの指先は俺の左胸部、心臓の辺りで止まった。

 

「それから、あんまりにも初々しいから何度か砂糖を吐きそうになったわ。まるで中学生の妄想みたいだった。あなたはどうだった?楽しい夢は見られた?」

 

 何を言っているのかわからなかった。

 俺と、夕麻ちゃんは恋人で、付き合ってて.....!

 夕麻ちゃんだってあんなに笑ってくれて。

 

「さようなら、私の恋人だった人。あなたとの時間は嫌いじゃなかったわよ」

 

 ぐしゃ

 

 あぁ、なんか.....熱い、な。

 熱、い。

 あぁあ熱い、熱い。

 なんだ。

 おかしいな。

 まだそんな季節じゃないのに。

 あ。

 夕麻ちゃんの手だ。

 でもなんで俺の胸に刺さってるんだろう。

 なんで、なん、で.....。

 

 夕麻ちゃんの白い手が、引き抜かれた。

 

「あ、あぁぁ!!?ガ、ァァァァァァァ!?!?!」

 

 痛い。

 イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ

 

 血だ。

 血が出てる。

 赤い。

 血だ。

 血が出てる。

 赤い。

 血が出てる。

 血が.....。

 

「あなた、どうやら神器(セイクリッド・ギア)持ちだったらしいから処理させてもらったわ。恨むなら自分の不運を恨むのね」

 

 なんだ。

 なんなんだ。

 なんなんだよ一体ッ!?

 

 俺は.....。

 俺はただ夕麻ちゃんに喜んでほしくて.....。

 

 夕麻ちゃんの、笑ってる顔が見たかった、だけで.....。

 

 

 それだ、け.....だったの、に。

 

 

 

 な、んで.....。

 

 

 

 

 死に、た.....くな、い

 

 

 

 

 

 

 あぁ。

 死は様々な境界を曖昧にする。

 本来ならまだ繋がるはずのない俺の精神とも、だ。

 竜を宿した者が、なにもこんなところで息絶えることはない。

 心臓がないのなら俺がくれてやる。

 さあ受け入れろ。

 そして前に進むのだ。

 戦え。

 その命尽きるまで。

 命尽きようとも、魂を燃やせ。

 

 あぁ。

 

 この赤龍帝を宿すものとは、そういう定めにあるのだから。

 




 ここまで読み進めてくださってありがとうございました。
 賛否別れるものだとは思いますが、何卒ご容赦下さい。

 前書きでのの言葉は一個人の他愛ない感想だと忘れてくださると幸いです。

 ただ、私は兵藤一誠を『挑戦者』だと思っています。
 この作中でのイッセーは逃げもするし立ち止まりもする。
 しかし最後には自らの意志で前に進む。
 そんな兵藤一誠を表現したいです。

 まだまだ稚拙な文章ではありますが、これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
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