第6話 蘭は強い子優しい子
二重人格。これを自覚したのはいつだったか、あまり詳細には覚えていない。ただ、裏のアイツが出てくるのは、決まって音楽に関連している時だけ。だから自分は、いつも心を落ち着けてギターを弾いている。だからこそ、裏から出てくることは予想できた。しかし、これは...、些か度がすぎる気がしないでもないが、
「テメーら!死ぬ気で盛り上がれよ!!じゃなきゃ置いてくぞ!ヤローども!」
「「「「「「「おおぉーー!!!」」」」」」」
自分のイメージが540度ほど変わってしまうじゃないか。こうして俯瞰して見ているが、暴れに暴れる自分。ふと、舞台袖に意識を向けると、Afterglowの皆さんがあっけにとられている。もちろん蘭もだ。
しかし、コイツが出ているとロクなことがない。嫌なやつではないのだがな...いかんせん自分と違い欲にまみれ過ぎている。まるで自分の足りないところを補うかのように、
「さて、二曲だけだからな次で最後だ!」
「「「「「「「えぇ〜〜」」」」」」」
「俺も悲しいぜ!だから、サイコーに盛り上がってフィニッシュだ!」
『拝啓ドッペルゲンガー』
「どうもこんにちは、君の分身です」
「拝啓ドッペルゲンガー君は?君は誰ー!」
少し、微妙に現実にあっている曲を選曲しないで欲しいのだよ...
しかし、この曲か。PVの映像もいい物であったが、曲自体も激しい感じで好きなのだが、自分自身のテンションが追いつかないと考え歌うのを諦めていたのだが、こればかりはコイツに感謝しよう。
絶対後で文句言ってやる...!
いきなり利文の雰囲気が変わったと思ったら、いつもとは全く違う性格になったみたいに激しい曲を歌い、弾いていた。いや、みたいじゃない。変わってるよあれは、だってあんなに観客を煽る性格でもないし、一人称だった変わってる。でも変わらないのは、
「相変わらず上手い」
これだけは変わってなかった。
「にしても、利文さんアツいな!」
「いや〜これは全モカちゃんが度肝を抜かれましたな〜」
「いや!おかしくない!?いくらなんでもこんなに変わる!?」
「ひまりちゃん落ち着いて!」
つぐみも落ち着いた方がいいと思う。にしても、
「後で色々尋問だね」
「「「「賛成〜」」」」
いや〜、久々に出てきたからついついはしゃぎ過ぎたぜ、まぁ、後悔もないけど。
(少しは、自重を覚えるのだよ。知り合いにでもバレたらどうする?一応、髪型とか少し変えたが、少なくとも蘭には確実に勘付かれたのだよ)
んな硬いこと言うなよ〜だからジジイ呼ばわりされんだよ
(うるさいぞガキが、何がジジイだ少し意見されたからと言って反発して、だからガキなのだよ)
ッチ、あーあ、もう戻るぜ。少しは今回みたいに外に出せや。
(今回は事故のようなものなのだよ。次はない)
どーかな。
「やっと戻ったのだよ」
控え室に戻る途中で、アイツと少し言い合いになったが、問題ない。しかし、予想していたとは言えここまで暴れると思っていなかった。これから気をつけねば。
「利文」
呼ばれた方を向くと、蘭達が待ち構えていた。
「「「「「ウェルカ〜ム」」」」」
それは何故か、バカな召喚獣を思い出すような言い方だな。
「で?利文
「やはり蘭は気づいたのだな?」
「「「「?」」」」
「アイツは、自分の裏人格。そうだな...グリードと仮称しようか」
欲の塊だし。
「グリードは、自分とは真逆で欲にまみれた奴だ。普段は出てこないが、音楽に関連すると出てきそうになるのだよ」
「ほんとに利文と真逆だね。」
「驚かないのか?」
「驚いてないわけじゃないけど、それで見る目変えるほど私弱くないつもりだけど?」
あらやだ、男らしい。
「殴るよ?」
「何故なのだよ?」
心を読まないで欲しい。
「まぁ、それは置いておくとして。利文に影響はないの?」
「あぁ、特に目立つ変化はない。少しだけアイツに精神がやってしまうが直に戻るのだよ」
「あっそ。」
「ならば、もう全ての参加者も終わったから帰るのだよ。流石に少し疲れた」
「わかった。今日はありがとう」
「礼には及ばないのだよ。ではな」
((((あたしたち完全に空気))))
☆9
プロスペシャルさん
評価ありがとうございます!
また、感想をくださった っとぅむさんありがとうございます!