もちろん、本編と関係はあります。
ここは人里。
春だというのに雪が降る始末に、人里の守護者、上白沢慧音は悩んでいた。
「うーん……いつになったらこの異変は解決するんだろうなあ阿求……」
「もぐもぐ……どぉうでしぉうね……」
「阿求。食べ終わってから話せ」
そして隣で団子を食べているのは稗田家9代目当主、稗田阿求であった。
「どうでしょうね。博麗の巫女は動いたんでしょ?」
「まあそう聞いているが」
「なら大丈夫ですよ、あっという間に解決します。紅霧異変だってすぐに終わったじゃないですか」
「それはそうなんだが……あっそういえば阿求」
「はい、なんでしょう?」
「幻想郷縁起の方はどうだ?」
「ちゃんと。常に新しい情報を書き加えていってますし、役目はしっかり果たしてますからご安心を」
「阿求の仕事っぷりは把握しているからそこは心配していない」
「ならばどこを心配してるのです?」
「お前の体調だよ、無理してないだろうかと思って」
心配そうな顔をしている上白沢慧音に対して、阿求はドヤ顔で答える。
「安心してください、まだ三徹です」
「なっ!? お前また無理してるじゃないか!?」
「安心してください、まだ三徹です」
「三徹は無理してる方だ! 半妖の私だって疲れてしまう!」
「ですけど。日々幻想郷の妖怪は増えてばかり……のんびりしてる暇もないんですよ」
「それは分かるが……。だがとはいえ、そんなに急ぐことはないだろう、少しずつ書いていけばいいじゃないか!」
すると阿求は冷たい鋭い視線で静かに言う。
「——稗田家に時間はないのです。単純に時間が、ね」
阿求の言葉の重さに上白沢慧音は自分の安易な発言を責める。
「あっ……! す、済まない……阿求……」
「謝る必要はありません。それに、私は稗田家の中でも最も長生きしてるんですよ?」
「?」
「分からない、という顔ですね。まあ今はまだ話す時ではありません。では、そろそろ私は幻想郷縁起の執筆に入らないといけないので……」
「待て、阿求!」
「はい? まだご用ですか?」
「私も一緒に連れてってくれないか? お前の執筆風景を眺めたい。同じ歴史を綴る者として、な?」
「私を心配して、ですか?」
「それもある」
「……私の執筆を止めないなら許します」
「止めはしないが、昼飯は用意しても構わないな? 見たところ、食べ物もちゃんと胃に入れてなさそうだ」
「ご名答。じゃあ付いてきてください」
〜〜
稗田家に到着する。
そして阿求の執筆部屋に入る。
「巻物が散乱してるな……」
「書くのに集中してると、ついこうなっちゃうんです」
「まあ私も似たようなものだからな、何も言えん。台所はあっちか?」
「ええ」
「なら何か作ろう。味噌汁と御飯と焼き魚の定番でも良かろうか?」
「定番が至福です」
あまり表情には出てないが、若干阿求が嬉しそうに見えた。
「喜んでいるようで何より。ではしばらく台所を借りるぞ」
上白沢慧音が台所へ向かい、稗田阿求は机へ向かう。
幻想郷縁起を書くためだ。
「さて、現在起きてる春雪異変……。相変わらず寒いしめんどくさい異変ですね……。とりあえず私は別の異変に関してまとめなければ」
幻想郷縁起、それは妖怪についてまとめられた書である。
異変を起こす妖怪も多くいるため、異変を知ることは妖怪を知ることにも繋がる。だから阿求は異変に関しても、ある程度文献にまとめている。
「なるほど。これは紅霧異変のやつか」
「って慧音さん!? 食事は!?」
「もうできた」
「えっ、そんな時間は経ってませんよ?」
「多分集中してて時間が早く感じたんじゃないか? 定食ワンセットできるぐらいの時間は経ってるぞ?」
「そうかもしれません……」
「ん? これは今の異変のやつか? まだ解決もしてないのに、阿求は先走るなぁ……」
「ちょっと見ないでくださいよ!?」
「執筆風景を見せてもらうと言ったじゃないか。それにどうせ人に見られるものだろ? ん? これってもう異変解決してる?」
「……っ!」
「ありゃ? こっちの異変に関しては聞いたこともないぞ? 守矢?」
「えっと、その」
「ん? こっちには妖怪の記録か。なるほど、ルーミアやチルノ……ってなんだ、この妖怪は! 私も見たことないぞ? えっと『ありとあらゆるものを破壊……」
「読むな!!」
阿求に全部巻物を取り上げられてしまった上白沢慧音であった。
「まだ読んでる途中なのに」
「私は製作途中のものを読まれたくないんです! 特に同業者には!!」
「——なるほど。それは私もそうだな。悪いことをした、すまない」
「次、しなければいいですから。それよりも、せっかく慧音さんが作ってくれた定食はどちらに?」
「あそこに置いてある」
「ではいただきましょう。慧音さんはこれからどうします?」
「多く作りすぎたから私も食べる」
「ははっ……分かりました、一緒に食べましょう」
阿求含めごく一部の人間にしか分からない憂鬱と、雪だけが、稗田阿求を包んでいた……。
夏のど真ん中なのに、小説では雪が降るからややこしい。
※この小説は八月中旬に投稿しています。