英雄表裏紛争譚<2人のマスター>   作:一酸化アンモニウム塩

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繰り返しですが。
捏造だらけかも。時系列は気にしないで下さい。
キャラの口調も手さぐり状態で書いているので、多少は可笑しい点もあります(断言) でもなるべくキャラの台詞等を見て描いているので、寄せてはいます。

主の知識としては、アニメは全て見ました。
FGOは初めて二ヶ月経とうか経つまいか、進行度は異端なるセイレムをクリア済みなので、それ以降のキャラは出そうか迷っております。
無理な人はブラウザバック。矛盾も多少はありましょう(人間だし)

続くかは分かりませぬ。


第0節〜プロローグ〜

 窓外の世界は吹雪が覆い尽くしていて、眺めているだけで寒気が肌を伝わった。

 ここは人類の未来を語る資料館。又は人類史を長く、何より強く存在させるために魔術・科学の区別なく研究者が集まった研究所にして観測所。

 その名も「人理保障機関カルデア」という。

 そこには数多の英霊と契約を交わして人理焼却を防いだ偉大なるマスター.......と、噂をすればマイルームから出てきた様だ。今日は一段と寝癖が酷い。

 

「マスター、寝癖のままだぞ。どれ、オレが直してやろう」

 

 すっかりマスターが起きる時刻を把握して待機していた赤い弓兵の言動は、もはや母親そのものである。

 

「朝は弱いからねぇ。ありがとう、エミヤ。そしておはようございます」

 

 間抜け面で微笑むマスターは、未だに人理焼却を防いだ英雄には思えない。せいぜいゴキブリ一匹さえ追い払うのが精一杯の様な男。個人的には、そんな風な評価をしていた。

 

「あぁ、おはようマスター......ふむ、これ以上の独り占めは少々不味いな」

「え、なんで? 」

 

 赤い弓兵は質問に答える前に食堂へと去っていく。

 それもその筈、マスターの後ろでは毒女と蛇女が嫉妬心剥き出しで睨んでいたから。これまたマスターが振り返った途端に笑顔になるんだから、奴らは恐ろしい。

 

「ん? あぁ、清姫にハサン。今日も朝から元気そうだね。おはよう」

「おはようございます.......マスター」

「えぇ、おはようございます旦那様。でも最初の朝の挨拶は、わたくしに言ってくだされば良かったのに」

 

 ぶーぶーと不貞腐れる蛇女の対応は面倒くさそうだ。

 しかし、我らがマスターは何も気にせず、最近ではこれらの扱いに長けていた。

 

「あー、でもエミヤには『おはようございます』で『おはよう』を最初に言ったのは清姫だよ? 」

「好き!! (好き!!)」

 

 こうして我がカルデアの騒々たる一日が始まる。

 

「あらあらまぁまぁ、何処へ行かれるのです? 」

「あ、頼光ママ。おはよう! 今から食堂に行くところだけど、一緒に──」

「──同行致します!」

「よぉ、坊主。飯は食ったかぁ? 」

「んーこれからだよ! おはようクー・フーリン。そっちは? 」

「オレもまだだ。なら一緒に食うか! 」

 

 ドンドン増えていく様は蟻の行列。いや、大名行列と言ったところか。

 食堂へ向かうマスターは律儀にも、隣をすれ違うサーヴァント各々の真名を呼んで挨拶を交わすのだ。こういう細かな所が多くの英霊達に好かれる所以だと、個人的に思った。

 

「流石、というべきか」

 

 背後から眺めていると、マスターの凄さが改めてわかる。これほどの英雄達と仲良くできる存在など、そうそうに居たりしない。

 馬鹿みたいに真っ直ぐで、時にはユーモアも効いてて、自分が傷つくのを承知で善行に走る。善か悪か、なんて判断を付けるのは馬鹿馬鹿しいぐらいに、人を見捨てる選択が欠陥しているマスターは善だと──

 

「──ん? 」

 

 カランコロンと、何かが足元に転がってきた。見下ろしてみれば、それは自らの顔が反射されるぐらいに磨き上げられた金の盃である。

 見間違いかと思ったが、霊気が嫌という程に教えてくれるそれは──

 

「──なんで聖杯がここに? はぁ......ったく」

 

 カルデアは最近になって弛みすぎだ。欲深い人間にでも拾われてみろ、新たな特異点の完成ではないか。そうして困るのはマスターであって、傷つくのもマスターだ。それは出来るならば........避けてやりたい、と思う。

 

 転がっている聖杯を手に取り、誰かに見つかる前にダヴィンチ辺りに返そうと思った刹那、邪悪な思想が脳裏を過る。工房へ進む足が止まった。

 ほんの少しの出来心だった。でもそれは非常に興味を誘い、同時に親しみという感情もある。

 

「.......願望機よ、我が願いを叶えたまえ」

 

 

 

 

 

 マスターの、所謂オルタはどんなだろう?

 そもそも彼の心に邪心など存在しうるのだろうか?

 そんな事を考えては、口元が酷く楽しそうに歪むのだった。

 


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