佐久間大学?え、学校ですか? 作:佐久間大学
聖杯大戦第三戦。
数の上では勝った“黒”の陣営であったが、失った損失は大きなものであった。
“黒”のセイバーの消滅。大英雄ジークフリートは、たった一人の
この一件により、原因を作ったライダーには仕置きが下され今も彼のマスターであるセレニケの元で惨いことになっているかもしれない。
だが、そんな陣営の中でも逆に機嫌の良さが増している者が居る。
「――――フンッ、いい気味だよ全く。ホムンクルス程度で自分のサーヴァントを失うなんて。あのおっさんも、これで落ち目だ」
豹馬はニヤニヤと嫌な笑みを浮かべて、ワイングラスを呷る。
彼からしてみれば、セイバーを失ったゴルドは落ち目にしか見えない。それこそ、今までのでかい顔に対する鬱憤も晴らしたいと思うのが、彼を彼たらしめる所以なのかもしれない。
「なあ、アサシンもそう思うだろ?」
「…………」
「にしても、何でセイバーはあんな事したんだろうねぇ。僕には理解できないよ。不合理だし、ホムンクルス何て幾らでも作れるんだ。お金はかかってもさ。それに、アレが炉心になればキャスターの宝具使えて、この戦争にももっと早く勝てたんじゃないの?」
馬鹿らしい、と豹馬は天井を見上げる。
彼は気づかない。本来ならば、変動する事など基本的に起きないアサシンからの好感度がマイナスに至っている事を。
彼にしてみれば、ホムンクルスを助けたセイバーに対して好感を持っている。
無慈悲に命を奪うからこそ、アサシンにしてみれば作られようとも生まれようとも命は命であり、それ以上でも以下でもない。
だからこそ、出来るだけ苦しまないように手にかけるし、何より必要以上の犠牲が出ないように動く。
第一、彼は死人を笑うようなことは絶対にしない。
死がその先の未来を作ってきたことを知っているから。そして、死んだ彼らもまた譲れない何かを持って自分の前に立ったことを知っているから。
「…………寝ておられますな」
眠りこける豹馬を見下ろし、アサシンは彼に毛布を掛けると霊体化する。
理由は特にない。強いてあげれば、彼の仕事のためか。
*
シギショアラ。赤い屋根の家がいくつも立ち並ぶ石畳の街。
「――――七」
一瞬の声は愚か、苦しみもなく胴体と頭が泣き別れとなる。
影に潜み、影で仕留め、影に消える。
アサシンの仕事、それは魔術協会よりユグドミレニアの縄張りに送り込まれた
パスを限界まで延ばすことにより、常に霊体化して移動することを余儀なくされているがそこは魔術師の天敵ともいわれるクラス。コンマ一秒実体化するだけで、アッサリと鼠の首は飛んでいく。
ただ、弱体化している事には変わりがない。
それこそ、サーヴァント戦など以ての外であるのだが、
(よ、よりにもよってセイバー殿ですか…………)
高い塔の上。アサシンは、夜目をもってその派手な姿を視認していた。
ぶっちゃけた話。今のアサシンは、対人魔剣すらも真面に振るえるか怪しい。人殺しはできても、サーヴァントの打倒はほぼ不可能。
豹馬が共に現場に出てくれたならば、こんな問題などアッサリ解決できる事であるはずだが生憎と彼はここには来ていない。
そもそも、来る気が無い。なぜ、安全な城塞からでなければいけないのか、というのが彼の意見でありアサシンも生存に必須だとは思っているものの、どこまで行っても肉壁でしかない。
「――――マスター殿」
『んー?終わったー?』
「“赤”のセイバー殿が、この街に来ておりまする。恐らく、こちらが魔術師を消して回っている事に気づかれたのかと」
『はあ?セイバー?んー…………別に良くない?』
「良い、とは?」
『だからさぁ、お前が倒せばいいじゃん。ほら、あの時にも圧倒してたし』
「しかし――――」
『僕は忙しいから。じゃあね』
かけた念話はあっさりと切られ、アサシンも途方に暮れる。
明らかに酔っていた。“黒”の陣営に合流してから、どうにも豹馬の緩みが酷過ぎる。
「…………ふぅ。いつもの事、にございまする」
刀を腰に出現させ、鯉口を切って留める。
細く伸ばされたパスから流れ込む魔力は、弱弱しい。
それでも、命令を果たす事。それだけが、彼の忠義を示す行いなのだから。
*
「――――で?本当に、この街にアサシンが居るってのか?」
「魔術協会からの依頼でな。この街だけじゃない、ルーマニアに送り込んだ魔術師が、トゥリファスに到達する前に連絡を絶つらしい。武闘派も何人か消えてる。そんな手を打てるのは、サーヴァント位だろ」
セイバーと獅子劫の二人が調査する一件。
フリーの傭兵として戦地を渡り、尚且つ魔術師でもある獅子劫にとってこの件に“黒”側が絡んでいる事は確定している。
であるならば、可能性が高いのがアサシン。次いで、宝具の豊富な者が多いライダーのクラス。逆にセイバーやバーサーカー等は大規模な破壊が得意でも、その逆で隠密特化というのは少ない。ランサーなども同じことが言えるか。
「とにかくここを――――」
「ッ!マスターッ!!」
調べるぞ、と続ける前に獅子劫は首根っこを掴まれて後方へと飛んでいた。
原因は目の前で起きた現象。咥えていたタバコがスパリと斬り飛ばされていたのだ。
「出やがったな、黒子ヤロー」
「いつぞやぶりにございまするな、セイバー殿」
刀を帯に差し、左手を鍔元へと添えた帯刀状態のアサシンが夜の闇の中に溶け込むようにしてその場に立っていた。
セイバーは仮面の下、犬歯をむき出しにする。
「人のマスター狙いやがって、陰険ヤローが。今回は油断しねぇ。叩き切ってやるよ!」
「…………」
挑発に対して、アサシンは答えずに腰を若干落とすにとどめる。
居合の構え。完全な待ちの姿勢であり、同時にカウンターする気満々という事を隠しもしない。
それが、セイバーの癇に障る。まるで、自分の事を軽くみられているような気がして。
是が非でも、正面突破してやろうじゃないかという殺る気が漲ってくるというもので、
「ぶった切る!!」
全身から、赤雷を放出しジェット機の様な加速でセイバーはアサシンへと襲い掛かった。
「三……いや、四にございまするな」
対するアサシンは、突っ込んでくるセイバー――――ではなく、その手にある宝剣へと目を向けていた。
閃く銀の線。数は、四本。
「――――あ?」
その全てが宝剣と
セイバーとアサシンの筋力の数値は、魔力放出なども加味すれば二ランクは違う。真っ向からぶつかれば、そのまま潰されるだろう。
更に言うと、今のアサシンは弱っている。その数値すらも当てにはならない。
だからこその、居合抜きだ。
抜刀の部分にのみ限定することで僅かな魔力を集中し本来の破壊力を発揮、納刀に関しては持ち前の技術でカバーという派手さはないが地味に高等テクニックを使っていたり。
因みに数は叩きつける斬撃の数。重ねれば重ねるほどに、その破壊力は増していく。
「て、めぇ…………!」
「…………」
舞い散る火花。銀閃の壁がセイバーの剣、その尽くを迎撃していく。
しかし、気づいているだろうか。アサシンの足が止まっているという事実を。
一撃弾く度に、彼の体は軋みを上げているという事実を。
居合しか使わない、のではなく。居合しか現状使える手段がないという事実を。
「――――ッ」
気づかれない程度に、右手を振って痺れを抜きながらアサシンは思考する。
このまま戦っても、間違いなく先につぶれるのは自分だ。
膠着する戦況。
「「――――ッ!」」
直後に、二騎はそろってその場を飛び退いた。
飛来する豪速の物体。
魔力が詰まったソレは、石畳に突き刺さると同時に――――爆発した。
FGOネタが書きたい今日この頃。
マスター幼児化事件とか、そこから発展して、盛重保父さん事件とかのほのぼの系を