佐久間大学?え、学校ですか?   作:佐久間大学

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エタる位なら好きな所だけを書いてしまえと天啓が下りてきましたので投稿します
あと、幾つかで終わる筈、です。多分



投稿場所をミスってたので上げなおします


決別

 もう一人のルーラーの出現。それは、この聖杯大戦が抱えた問題の表出であると同時に、終局への道筋が見つかった事にも繋がった。

 “黒”と“赤”。二つの陣営は、しかし今や圧倒的ともいえる戦力差が横たわっている。

 “黒”の陣営はセイバー、バーサーカー、ランサーが敗退。そして、キャスターは離反。戦力となるのは、ライダー、アーチャー、アサシンの三騎のみ。

 対して“赤”の陣営は、バーサーカーが敗退。セイバーが離れているがそれ以外のサーヴァントは健在。更に聖杯を手中に収めており、魔力切れ等を考える必要すらも無い。そして、サーヴァント自体も粒揃いすぎる。

 

「…………小生とは、相性が悪すぎますな」

 

 目の前で森をかき分けながら邁進する土くれの巨人を見つめ、珍しくもアサシンは愚痴をこぼしていた。

 彼の手にある宝具は間違いなく、一級品。神造兵器とだって正面から打ち合っても軋むことすらないだろう。

 だが、それでも所詮は、一振りの刀でしかない。当人の技量がずば抜けているために通常の戦闘ではそこまで力不足を感じる事は無かったが、今は違う。土くれの巨人に向けるには、彼の宝具は爪楊枝のようなものでしかなかった。

 “黒”のキャスターの宝具にして、“黒”の陣営の最後の切り札になりえたであろう宝具【王冠:叡智の光(ゴーレム・ケテルマルクト)】。それが今、陣営に牙を剥く巨人の正体だ。

 相対しているのは、“黒”の陣営に残ったサーヴァント、そしてルーラーと“赤”のセイバーだ。

 目的は巨人の破壊。だがそれは、一筋縄ではいかない。

 

「ハァアアアアッ!」

 

 旗を振るい、己に迫っていた右腕を弾いたのはルーラー。

 華奢な見た目ではあるが、彼女もやはりサーヴァント。それも知名度という点では世界的にも知られた聖女だ。体格差などものともしない。

 問題は、弾かれた巨人。

 確かに体勢こそ若干揺らいだものの、足元の楽園化は進み続けている。

 直ぐに姿勢は元へと戻り、その手には黒曜石の大剣が握られていた。

 放たれる一撃。その巨躯からは想像できな速度と精密性をもって、狙われたのはつい先ほど一撃を与えたルーラーだ。

 咄嗟に旗を盾に防ぎ、その体は後方へと大きく弾き飛ばされてしまう。

 入れ替わる様にして襲い掛かるのは、無数の矢と黒の一閃。

 

「……やはり、大きい」

「こちらの戦力をもう一つ、欲しいところですね」

 

 マシンガンのような速射も、その硬質な表皮を貫くには至らない。仮に貫いても足元の広がり続ける楽園の影響によって巨人の手傷は瞬く間に癒えてしまう。

 一閃によって手首から先を切り落とさんとしたアサシンの一撃は、しかしその巨体により八割を切断するに止まっている。相性の悪さが否めない。

 

(首を刎ねても、恐らく止まりますまい)

 

 アサシンの対人魔剣ならば、大きさに関係なくその首を刎ね飛ばすことが出来るだろう。

 だがしかし、()()()()で止まるならば苦労しないというもの。

 彼は知っている。人外連中は、基本的に首を飛ばしただけでは確実に仕留めたとは言えないという事を。そして、そもそも首が無い存在も少なくないという事を。

 目の前の相手はどうか。下手すれば斬り飛ばした首から修復しかねない様な凄みがある。

 再び、隙を求めて周囲を走るアサシン。すると、少し離れた地点で赤雷が走った。

 この聖杯大戦で、何度か剣を交えた相手。その出現に、しかしアサシンはこの先の見えなかった戦場の光明を見た気がした。

 

「―――――“黒”のアサシン!こちらへ!」

 

 響くのはルーラーの声。向かえば、そこに居るのは呼び寄せたルーラーとそれから獰猛な笑みを浮かべ甲冑を纏う“赤”のセイバー。そして、過去に“黒”のセイバーが助けたホムンクルスの少年。

 

「“黒”のアーチャーの見立てで、あの巨人は地面より離れればその再生能力を大きく削がれるという話です」

「そこを、両陣営のセイバーの宝具によって突くという事にございますな。小生らは、巨人の注意を惹き、隙を作るという事にございましょう?」

「話が早くて助かります。問題は―――――」

「滞空時間。宙に浮かせるだけでは、隙が少なすぎる点にございまするな」

 

 戦場において、確実なものは滅多に存在しない。如何にサーヴァントといえども、不可能なことは珍しくは無いのだ。

 巨人は、文字通り巨体だ。であるならば、作用する重力なども見た目相応であるだろうしもしかすると空中で何かしらの反撃を行ってくる可能性もある。

 であるならば、ただ浮かせるだけでは不足。

 

「―――――小生の宝具を用いましょう」

「え?」

「小生の宝具は、結界型の宝具にございまする。宙に浮いた瞬間に発動し空へと押し上げ、そこを突けば宜しいかと」

「…………任せていいのですね?」

「ふっ、仮に失敗しようとも弱小のサーヴァントが一騎消えるのみにございまする」

 

 割と洒落にならない事を言うが、ルーラーが指摘する前にアサシンは巨人へと向かってしまう。

 作戦開始だ。まずはルーラー、並びにアーチャーが巨人の左足、特に関節部である足首を重点的に狙いそのバランスを大きく奪う。

 若干浮き上がった所で、この世ならざる幻馬(ヒポグリフ)にまたがったライダーの出番。宝具によって強制的に相手をひっくり返して宙へと浮かせる。

 その瞬間、巨人の背の下。影の下に入り込むようにして、アサシンが魔力を練り上げ刀を地面へと突き立てた。

 出現するのは、巨大な天守。白塗りの壁に、黒い屋根瓦。日本に存在する城のような見た目だが、その本質は彼が守護してきた砦の概念そのもの。

 巨人にも勝るとも劣らない巨大な天守は地面から生えるようにして天を衝き、その背中を押し上げていく。

 そこへ迫る、紅蓮と黄昏の奔流。

 楽園の中にいたならば別としても一切のバフを受けていない土くれの巨人に耐える術などありはしない。

 夜空に巨人は砕け散る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 相良豹馬は荒れていた。

 元々、魔術師として一般人とは明らかに違う倫理観や道徳観念を持った彼だが、それに加えて魔術師としても二流という劣等感と、魔術師特有の傲慢さと自尊心を持った歪みを抱えておりそれが今回噴き出した形だった。

 原因は、今回の巨人戦でアサシンが彼の承認も得ずに隠し玉である宝具を使用した点。

 

「■■■■■ッ!」

 

 最早、書き出す事すらも憚られるような罵詈雑言。そしてアサシンは一切弁明することなく、その場に膝をついて唯々怒りを受け止める事に終始していた。

 だがしかし、今回の豹馬の怒りは理不尽と言う外ない。

 何せ彼は、城塞に閉じ籠って戦場には顔を出すどころか戦況把握すらもしていなかったのだから。

 ぶっちゃけ、アサシンには言われる筋合いが無い。無いのだが、彼はサーヴァント。それもマスターへの反骨精神に欠けた忠犬タイプであった。

 だが、このままでは半永久的にこの無駄な時間は終わらない事だろう。そして、それを終わらせる手段が二人にはない。

 故に、終わらせるのは第三者。

 

「■■■■■■■■―――――ッ、何だよ!」

 

 更なる罵倒を連ねようとしたところで、念話が届く。

 舌打ちを零して怒気そのままに応対していた豹馬だったが、幾つか言葉を交わせば幾分か冷静になれたらしい。目の前のアサシンを睨みつけて、念話は途切れた。

 

「おい、行くぞ」

「………はっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 王座の間には“黒”の陣営と+αが勢ぞろいしていた。

 アーチャーとフィオレ、ライダーとホムンクルスの少年ジーク、カウレス、ゴルド、そしてルーラー。

 扉を開けて入ってきた豹馬とアサシンに視線が一斉に突き刺さる。

 

「で?今後の方針って話だけど、どうなったんだい?」

「簡潔に言いましょう。私たちの目的は、変わらず大聖杯の奪取です」

 

 フィオレの口から語られる敵の目的。第三魔法による魂の物質化。永遠の世界。

 その話が出た瞬間、一瞬だがアサシンの表情に嫌悪が浮かんだのだが、それはアーチャーのような一流のサーヴァントが気づける程度の物。

 何より、

 

「―――――良いじゃないか、永遠の命」

 

 豹馬は乗り気だった。

 第三魔法。魂を物質界へと魂のまま干渉できるようにし不老不死化。魂をそのまま永久機関として魔力を無尽蔵に得続けるというもの。天草四郎の目的は、この第三魔法を全ての人類へと適用させるというもの。

 魔術師にとっても悪くない事。寧ろ、魔術の研鑽には長い年月が必要なのだから不老不死は魅力的だった。

 だが、生憎と彼はそうでも彼に付き従うサーヴァントは違う。永遠の命など、欠片も興味がない。

 温度の無い目で斜め後ろに控えたアサシンは、真っ直ぐに豹馬の背を見つめていた。それこそ、第三者であるフィオレ達の背に若干冷たいものを走らせる程度には、恐ろしい。

 しかし当人が気づかない。それどころか、

 

「僕としては、分からないな、そこのオッサンなら喜んで永遠の命に飛びつくかと思ったのに。ああ、そっか早々に脱落したから選択肢がなかったんだね」

「……ッ」

 

 嘲る豹馬に対して、ゴルドは肩を震わせる。拳を握り、しかし反論の余地がないために黙っているしかない。

 何より、どれだけ馬鹿にされようとも相手はサーヴァントを使役している。一個人で戦闘機を有しているようなものなのだ。それも、マスターの天敵であるアサシンなど恐怖でしかない。

 周囲の視線も厳しくなってきたが、己のサーヴァントの力を笠に着た小心者は止まらない。

 

「とにかく、僕らは抜けさせてもらうよ。止めるってんなら、こっちも容赦しない」

 

 アサシン、と呼びかければ顔を伏せた彼が左手を鍔元へと鯉口を切った彼が前へと出てくる。

 これは拙い。この場で戦えるのは、アーチャー、ライダー、ルーラー。そして、とある事情から龍殺しの力を得たジークの四名。

 だが、その内真面にアサシンと戦えるのはアーチャーとルーラー位。ライダーとジークはそれぞれ実力と、制限時間により難があった。

 ただ救いと言うべきか、アサシンの雰囲気は沈んでいる。刀に手を掛けているのだが、殺気は一欠けらだってその体から出てはいなかった。

 そして、一瞬だけ彼の目がアーチャーへと向けられる。

 普通ならば、通じなかっただろう。しかし、この場では違った。アサシンの考えを悟ったアーチャーは、すぐさまその手に弓を出現させ射ったのだ。

 空白を切り裂く矢。そして、そんな矢を叩き落す銀閃。これが戦闘開始の合図だった。

 

「これ以上、戦力が離れられては困りますから!」

 

 狭い室内でありながら的確な狙撃と、ルーラーによる旗の攻撃。対してアサシンは無言のままに応戦を選択した。

 驚嘆すべきは、やはりその技量。その場からほとんど動くことなく、彼はルーラーに()()()()()事によって場所を動かし的確に狙撃のタイミングを潰しているのだ。

 傍目から見れば凄いのだろう。少なくとも、その戦闘擬きは常人の目では追えないような派手さがあった。

 だがしかし、サーヴァントから見ればその限りではない。

 

「…………」

 

 あくまでも刀を振るう事に終始し続けているアサシンには、奇抜さがない。必殺が無い。素早くどちらかを仕留めなければ不利になる事を理解していながらダラダラと矛を交え続ける矛盾。

 そして、その無駄な遅滞戦術はある意味で実を結んだ。

 

「―――――【触れれば転倒(トラップ・オブ・アルガリア)!】」

 

 霊体化からの強襲。真横からの黄金の馬上槍がアサシンを掠めた。

 鎧の上からでも効果を発揮するそれは、その穂先で触れた対象を問答無用で転倒させる。サーヴァントならば、足を強制的に霊体化させてしまい、一気に機動力を奪うことが出来る。

 例にもれず、足を霊体化させられバランスを崩して倒れるアサシン。そこに、ルーラーの旗が振るわれ部屋の壁へと叩きつけられていた。

 がれきに埋もれたアサシン。そして、まさか自身のサーヴァントが敗北するとは思ってもみなかった豹馬は目を見開いた。

 

「おい、アサシン!?くそっ、肝心な時に使えない!」

 

 吐き捨て、掲げるのは右手。そこにあるのは令呪だ。その命令権は絶対的であり、簡潔かつ明確な命令の強制力は大抵のサーヴァントでは抗えない。

 何をするつもりかは明らかだ。未だアサシンは敗退していない。一時的な行動不能に陥っているだけなのだ。パスは繋がったまま健在。

 であるならば、令呪であれ何であれ復活させ、その上でバフをかければいい。

 完全に死ぬまで戦い続ける戦闘人形に仕立て上げれば、その後の豹馬自身の身も安泰だ。少なくとも、この聖杯大戦が終結し第三魔法が広まった不死身の世界が始まるまで持てばいいというのが彼の考え。

 ただ、そんなものはこの場においては浅知恵に過ぎないというもの。

 

「おっと、動かないでねぇ!」

「ぐえっ!?」

 

 アサシンを撃退したライダーの馬上槍が豹馬を掠め。彼は背中から床へとひっくり返る。

 思ったよりも勢いがあり、その反動で集中の途切れた彼の令呪は輝きを失う。どうやら気絶してしまったらしい。

 後は、マスターとしての権限の委譲だが、これに関しては豹馬の右手を切り落とすか、或いは彼自身から以上の承諾を得るかの二つ。

 令呪の移譲というのは存外簡単なのだ。当人の意思があればの話だが。

 沈黙した豹馬を縛り上げて拘束する一同。そこで漸く瓦礫の中からアサシンが這い出てきた。

 砂ぼこりを払うその体には大したダメージは無いらしい。霊体化していた両足も元に戻っている。

 

「一芝居、お付き合い感謝いたします、アーチャー殿」

「いえ、構いませんよアサシン。貴方こそ良かったんですか?加担した私が言うのもおかしなことですか、マスターを裏切る事になってしまいましたが…………」

「確かに、小生の性分としては後味は悪いと言う外ありませぬ。しかし、此度の一件は小生としても見過ごすわけにはいかぬのです」

 

 アサシンとて、好き好んでこんな選択をしたわけではない。もしも、豹馬が一欠けらでも善性を見せていたならば、彼自身の言葉による説得を試みたかもしれない。

 だが、この聖杯大戦の中見てきた豹馬の在り方は悪辣その物。アサシンでなければ、背中から刺されていても文句は言えないような有様だった。

 言葉による説得は不可能、かといって矜持的に無言で刺し殺すようなことも出来なかったアサシンは、結果今回のような一芝居打つこととなったのだ。

 それほどまでに、アサシンはこの戦いに参加するだけの理由があった。

 それは私怨にも思えるようなもの。極々個人的な理由なのだが、それを彼が口に出すことは無い。

 

 決戦の時は、刻一刻と近づいてきていた。

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