フルメタル・パニック! IS   作:war!

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『南』から来た男

 東京某所。防衛省の管轄下にあるISに関する研究開発を行うとある施設の廊下を彼女達は歩いていた。

 

「まったく、一つ『面倒』を片付けたと思ったら、また次の『問題』か。やれやれ、勘弁してほしいものだな」

 

 黒のスーツの女性がうんざりした様子で呟く。その横に今回の件に同行していた彼女の同僚の眼鏡をかけた女性はその様子に苦笑いするも、内心では全く同感であった。何が悲しくて、せっかくの休日をつぶされなければならないのか?

 

 しかし、上は自分達が適任だと判断したのだ。『IS』についてよく知る自分達が。

 

 移動中ではあるが二人は時折手元の資料に目を落としながら、話す。

 

「しかし、『実物』は既に見せてもらった後ですが、未だに私は信じられないですよ、織斑先生」

 

「ああ、私も正直なところ狐に化かされている気がしてならないよ、山田先生。だが、『アレ』を見せられて、しかも『アレ』から抽出した技術を『実演』してもらったんだ。いやでも信じるしかあるまい」

 

「パラジウムを用いた常温核融合炉『パラジウムリアクター』に、人工筋肉『マッスルパッケージ』、高度AI。『人型』が装置の起動に必要かつISでは代替不可だったということで再現できなかった『装置』も恐らく『彼ら』の証言通りの機能があるんだろう」

 

先ほどまで見学していた『未知の技術』。ISをよく知る自分達が知らないその『技術』は実用化されたとしてもISを超えることはないだろう。しかし、世界を変えることは出来る。

 

「政府はどうする心算なのでしょうか?」

 

「当然、『作り上げる』だろうな。現在の国家間のパワーバランスはISが基準になっている。しかし、ISの保有数を増やすことは基本出来ないからISの性能を上げるしかない、という現状の中で体制さえ確立すれば自分達で量産可能な、ISに代わる物を手に入れることができるんだ。やらないはずがない」

 

 それに今の女尊男卑の風潮もなくせるだろうしな、とスーツの女性、織斑千冬は続けた。眼鏡の女性、山田真耶はその言葉に目を丸くする。どういうことか分からなかったが、直ぐに得心がいった。

 

 現在の世間の女尊男卑の風潮もまたISによるものだ。ISは女性にしか扱えない。だから、ISを扱うことができる女性の立場は男性よりも高くなった。しかし、実はそれは幻想でしかないのだ。女性はISを操縦することが『できる』というだけで、女性の能力が男性を超えたというわけではない。現に、そのISの開発も、男性が活躍しているのだから。ISが機能しなくなる、或いはISが男性にも使えるようになったなら、そんな『ISを使うことができる』という一点だけで支えられている立場など簡単に崩れるだろう。

 

 そんな簡単な事にも思い至らずに今の『女性優位』を満喫している女性達が今以上に好きにふるまうようになり、そんな中でその『優位』を崩壊させられたなら、どれほどの影響が出るのかがわからない。

 

 だから、『最悪の結果』になる前に、きつく言ってしまえば女たちの『思い上がり』をつぶしてしまいたい、ということなのだろう。

 

「その為にも、あの『2人』の協力は不可欠であり、協力を得る為に彼らの要望に可能な限り答える、というわけですか」

 

「いやか?」

 

「いいえ、まったく。織斑先生の方はどうなんですか?」

 

 千冬の冗談めかした様子での問いに真耶は、これっぽっちも、といったふうに答え、逆にこちらもいたずらっぽく尋ねた。

 

 そんな真耶に目をやりつつ、千冬は見学の後に会った『彼ら』のうちの1人を思い浮かべていた。

 

 自分は、『向こう』で高校に通っていたが、ある事情でそこを去った。だが、学校生活をもっと楽しみたかった。願わくば、『こちら』でも学校で学びたい、いずれ武器等持たずに生きていくことができる様になりたいと望む一人の少年を。

 

「私は、教師だからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「学びたい、という子供を邪険にすることはしないさ」

 

 真耶はそう言う千冬を嬉しそうに見るのであった。

 

 そして・・・

 

 

 

 朝のHRの時間、IS学園1年1組の教室は普段は姦しい女生徒たちがいるにもかかわらず静寂に包まれていた。別に千冬の出席簿(せっかん)を恐れてではなく、先ほど真耶に呼ばれて教室に入って来た目の前の少年が原因だ。千冬に促され、少年が口を開いた。

 

「相良宗介だ。趣味は釣り。これからよろしく頼む」

 

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