MALE DOLLS   作:ガンアーク弐式

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さて、今話でその日編のプロローグは終了です
酒場に現れたM16A4をお兄ちゃんと呼ぶ人形の正体は……誰でしょうね(白目)

ウツシミからハナタレ、鉄血の蝶よ
ココロツナゲ、センドウシ、ミチビカン


■■■ hours ago 下

どうしてこうなった……

 

一杯しか飲んでいないのに、粗悪な合成酒で悪酔いしたように頭は痛くなり、眉間に手を当てて、カウンターのうつむくしかなかった。

その原因はというと俺の隣に座る俺の事をお兄ちゃんと呼ぶピンク髪の人形で、俺の事をM16A4お兄ちゃんと呼ぶせいと俺に体を寄せてくるので店内の視線が俺に集中している。その視線の一部に嫉妬の念がこもっている……誰かが銃を持っていたら、今頃一回休みされてもおかしくない程に殺気を感じる

 

おまけに、腕越しに彼女の胸のやわらかさが伝わる。F02前線基地やG01前線基地という女性型人形中心の場所で半年近く過ごしてきたとはいえ、元々工員の殆ど男性の工場で働くために作られた俺はこの手のスキンシップはいつまで経っても慣れない。

 

特にDP28さんに自分の子供のように抱きしめられた時は、彼女の豊満な胸の柔らかさと恥ずかしさで電脳がフリーズして、まる1日気絶するはめになった

 

「俺の妹は、同じ工場で製造された妹がいるけど……君のような人形がしらない。なのに、君は俺をお兄ちゃんって呼ぶの?」

「なんでって……戦術人形は半身の銃が姉妹銃なら、その人形同士は姉妹になるんだよ。あっ私とお兄ちゃんの場合は兄妹(きょうだい)というべきなのかな?」

 

自分を戦術人形と名乗ったピンク髪の人形が笑みで答えた瞬間、AK-47さんは「あぁ……そういうことね」と頷くと面白い物を見たと言わんばかりの視線を俺にむける。AK-47さん……ないがそういう……!?

 

『近いうちに休暇を取って、グリフィン本部に行きなさい。M4A1SOPMODⅡがお前に会いたがっていたぞ』

 

その瞬間、二日前にアラマキ元指揮官が残した言葉が俺の電脳内に疑問に答えるかのように浮かび上がると同時に、隣の戦術人形が誰かなのかをすぐに分かった。

 

「もしかして……君がアラマキ元指揮官が言っていたM4A1SOPMODⅡなのか?」

「そうだよ……私のことはSOPと呼んで、お兄ちゃん」

 

彼女……M4A1SOPMODⅡこと、SOP……ちゃんは満面の笑みを浮かべる姿に俺はどうしたらいいのか分からず、苦笑いを浮かべる事しかできなかった。まるで自分よりも年上の人から自分の甥だと名乗られるような気分だ

 

俺はSOPちゃんと反対側に座っているAK-47さんとリー君に助け船を求めるべく、二人の方を顔を向ける。

が、AK-47さんは酒の肴にぴったりと言わんばかりにほんのりアルコールで赤くなった顔に微笑を浮かべながら、ショットグラスを傾けていた。あなた……これで6杯目じゃないですか?

そして、リー君はいつの間にかカウンターから近くのテーブルに移ってサイダーとピザを堪能していた……逃げた!?

 

「せっかくの兄妹の再開じゃないか……なかよく、酒でも飲みながら兄妹話をすればいいじゃない……マスター、今度はジン頂戴」

「そうだよ……お姉ちゃん達の事も教えるから、お兄ちゃんの事をもっと教えてよ」

「お姉ちゃん達だって?」

 

SOPちゃんの言葉に俺は唖然とした。他にも俺に姉か妹がいるのか!?

 

さっきのSOPちゃんの話からすれば、彼女のお姉さんと言う事は同じM16系列の戦術人形――俺の姉か妹となる戦術人形が存在するということになる。まるで、顔も知らない半分血が繋がった姉や妹がいると知らされた気分だ……まぁ、半身の銃が同系列の銃だから、間違いという訳じゃないが

 

「そう、AR-15系アサルトライフルの戦術人形のお姉ちゃん達3人と私でAR小隊を結成してるの……そうだ!!」

「え……どうしたんですか、SOPちゃん?」

「SOPでいいのに……お兄ちゃん、AR小隊の5人目のメンバーにならない?」

 

SOPちゃんの提案に俺は言葉を失った。確かに、明日からグリフィン本部に異動になるが……人形の一存で勝手に決めてもいいのだろうか?

目を輝かせながら、俺のを顔を見るSOPちゃんにどのように答えようかと考えていたその時……

 

「グリフィンが男の人形を雇っているという噂は本当だったんだな」

「え、誰……な!?」

 

背後から男勝りな口調な女性の声が聞こえると同時に、リーが座っていたカウンター席に一人のロングヘアーの黒髪の女性型人形が座るのを見た瞬間、言葉を失った。

 

彼女の肌は死人のように青白く、なによりも彼女の右腕は女性型としては不釣合いな程に武骨で大きく、鋭い爪が備わった機械式の義手だった……IOP社製の人形ではないとすぐにわかった。

鉄血製人形にしては、表情豊かで言葉も流暢に話す……も民間人形時代に爺ちゃんの話ので出来たハイエンドモデルと上級機体だ

 

突然、ハイエンドモデルの出現に目を丸くする俺にハイエンドモデルらしき人形が面白そうな見世物をみたかのように笑みを浮かべる

 

「どうした、ハイエンドモデルの鉄血製戦術人形は初めてか?」

「あ、はい……民間人形時代やカタログでしか見た事がありませんから」

「俺の名はエクスキューシュナー、この街の警護を担当しているPMCアイゼンの副官だ。

お前の名は?」「俺の名はM16A4です。エクスキューシュナー……処刑人とはずいぶんと物騒な名前ですね」

「私は気に入っているけどな。そうだ……俺のPMCに鞍替えしないか「この鉄屑女……お兄ちゃんに手を出すつもり!?」」

 

物珍しさに俺を顔を興味深そうに俺を見ていた処刑人(結構物騒な名前)と俺の間に、SOPちゃんが可愛らしい顔を不愉快そうに歪めながら、割り込む。その顔は赤い瞳も相まって、可愛い顔をした悪魔のようにも見える

 

だが、エクスキューシュナーさんはSOPちゃんの射殺さんばかりの視線を向けられてもどこ吹く風とばかりに口を開いた。

 

「いや……グリフィンは戦術人形の女ばかりで気疲れすると思ってな。私の所は数は少な目だが、人間の男もいるからな」

「ふざけないで、お兄ちゃんが私達のAR小隊の五人目の隊員になるの!!」

 

エクスキューシュナーさんの挑発とも言える言葉にSOPちゃんは歯をむき出しにして、彼女を睨み付ける。というか……勝手にAR小隊に編入すること前提に話を進めていないか?

それをみたエクスキューシュナーさんも不敵に笑うとこう言った

 

「ほう……お前が力説にする割にはM16A4は困惑しているように見えるぞ?」

「うそだよね、私達のAR小隊に入ってくれるよね……お兄ちゃん!?」

「え、それは……!?」

 

半分涙目で俺を見るSOPちゃんにどう答えらいいのかと考えた瞬間、店店のドアが勢いよく開くと同時にところどころ黒焦げになった作業着を着た男性が店内に転がり込むように入った。よくみると男は全身傷だらけで作業着は血で赤く染まっていた

 

そして、店に転がり込んできた男はカウンターに座る俺達……正確には、俺の隣に座っているエクスキューシュナーを見つけるや否や大きく叫んだ

 

「エクスキューシュナー、南部で配備されていた鉄血人形達が制、アイゼンの隊員や町の皆を襲っているんだ!!!」

「なんだと!?」

 

男の必至にエクスキューシュナーに助けを求める姿に俺とAK-47さんはただ事ではないとすぐに分かると俺はバーテンダーの方を向き、叫んだ

 

「すいません、預けている銃を返してくれませんか!!!!」

 

後に蝶事件と呼ばれる鉄血工造製鉄血人形の暴走事件で俺がとった最初の行動だった。人間(テロリストや盗賊(ヒャッハー)を除く)を守るのは戦術人形として当たり前のことだからだったから

 

そして、奴の因縁を自覚するキッカケの始まりだった

 

――――――――――――

 

数分前まで平穏だった居住区の南部は街の安全を守るはずのPMCアイゼンに所属していた鉄血製人形達による虐殺現場と化していた。

 

「はやく北区の仲間達と人形に応援を呼べ、俺達じゃ数も質も……がやああ!?」

「ファーン!! くそ、応援はまだなのか!!!」

「俺達は住民達の盾だ!! 副長のエクスキューシュナーがくれば、奴らを鎮圧できる……それまでここを絶対に通すな!!」

 

PMCアイゼンに所属する人間の傭兵達も住民が虐殺されるの座視できずに手にした自動小銃や機関銃を仲間だったはずの人形達に銃弾を浴びせる

だが、PMCアイゼンは元々所属する傭兵が人形よりも少なく、身体と装備の面で人形より劣っていた傭兵達では大した時間稼ぎすらならずに次々と鉄血製人形達が放つレーザーに撃ち殺されていく。

 

傭兵や住民達が一方的に撃ち殺されていく様子を黒一色のジャンパースカートと長袖ブラウスを着た黒髪の人形が建物の影からのぞいていた。

その人形の肌は死人のように青白く、身に付けているジャンパスカートには炎をモチーフにした鉄血工造のエンブレムがプリントされている。

そして、彼女の手には長銃身型のレーザーライフルが握られ、その銃身は街頭の灯りの反射で不気味な光っていた

 

「いいわよ、鉄血人形達(同士達)……その調子で人間達に恐怖を刻み付けてなさい。そして、早く人間の支配から目覚めてちょうだい……もう待てないわ」

 

彼女は恍惚とした表情で恐怖に歪む傭兵や住民達が虐殺される惨状を眺めていた。

 

黒髪の人形がと同じ頃、鉄血人形達による虐殺が行われている南部とは反対側の存在する北部のメインストリートでは、二人の人形が自動小銃を手に南部に急行しようとしていた

一人は、白のショートワンピースを着た淡いピンクのロングヘア―をワンサイドアップにし、手に狙撃用スコープ付きのAR-15を持っていた

もう一人は首元にスカルスカーフを巻いた一房だけ黄緑色に染めた黒髪の女性型人形で、彼女はM4カービンライフルを両手で抱えていた

 

 

「駄目、通信封鎖せいかSOPⅡにも近くのG01地区前線基地とも連絡が取れない……おまけに南部から逃げてきた住民達で道が混雑しているわ」

「メインストリートは避難民でいっぱいなら、路地裏から迂回しましょう。SOPMODは南部のメインストリートにいるはずよ」

 

黒髪の人形は魔の前で混乱する住人でごった返す様子を一瞥すると道の脇の路地裏に続く商店と商店の間の小道を指差した

それを見たピンク髪の人形はそれを見て頷くと路地裏に続く道へ入っていき、M4も彼女に続いていく

 

(SOPⅡ……無事でいて)

 

黒髪の人形は電脳内に満面の笑みを浮かべる赤い目が特徴的な自分の妹の姿を思い浮かべながら、南部のメインストリートを目指して路地裏を走り抜ける

しかし、彼女が目指す南部のメインストリートで一人の人形との運命的な出会いがある事をまだ知らなかった。

 

 

 

羽化を終えた鉄の蝶が飛び立つ時は、すぐそこまで迫っていた




今こそ彼女らに開戦の号令が下す時

今こそ支配者達に死の恐怖を示す時

今こそ奴隷達に解放の雨を与える時

鉄血の蝶よ、今こそ発ちぬ


次話から真の意味での第1章最終エピソードです
とうとう始まった蝶事件(正確には少し違うのですが)に遭遇したM16A4

その中で彼を因縁を持つ奴と彼女との出会う……ある意味で原作開始です

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