MALE DOLLS   作:ガンアーク弐式

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~夜と共に世界の終わりが一つ増えた~

蝶事件編であるDAY編、開始です


DAY~夜が降りてくる

俺とAK-47さんが愛銃を手に店の外に出ると暴走した鉄血人形達から逃れたであろう住民達が我先に北部の方へと逃げようとしている光景が目に飛び込んできた。それに加えて、少し離れたところから銃声も聞こえてくる……

 

「芸能事務所の次はPMC所属の鉄血人形が……アイゼンの連中は何をしているんだい!?」

 

AKー47さんが顔をしかめながら、手にしたAK-47のセーフティを解除する。俺も顔に防塵マスクを身に付け、自身の愛銃であるM16A4に銃剣を着剣する。

そして、セレクターをセーフティからセミオートに切り替え、安全装置を解除した。今回は予備弾倉は二つしか持っていないので、弾の消耗が激しいフルオート射撃は可能な限り避けるべきだろう。

 

当然この場に使役できるダミー人形を俺達は持ってきていない……援軍を…!?

俺が通信モジュールを起動させてもノイズばかりで、基地の司令部と通信が繋がらない。

 

「通信妨害!? AK-47さんはどうですか!?」

「駄目だ、あたしも基地の皆と連絡がとれないよ……ど、どうする?」

 

G01地区前線基地との通信が一切できない状況にAK-47さんは動揺しているのがすぐに分かった。無理もない……今の俺達は指揮官のバックアップを受けられない状況だ。IOP社製の戦術人形は基本的に人間の指揮官が存在しないと自身の性能を完全に発揮できない。

特に今回みたいに突然、指揮官との連絡が完全に途絶えるとAK-47さんみたいに、動揺やパニックを起こす人形も少なくない。その隙をテロリストに付かれて、鹵獲される人形も少なくないとアラマキ元指揮官も言っていた

 

俺もAK-47さんほどじゃないが、指揮官との連絡が取れない事に手が震えた。なによりも通信が完全に断絶したという状況は、製造工場が鉄屑共の襲撃を受けたあの日の晩と同じ状況だ

 

「相変わらず、人間の指揮がないとIOP社製人形共はカカシ以下だな」

 

前線基地との通信が断絶した状況の中で動揺する俺達に後ろから男勝りな女性のの声が聞こえ、俺達はとっさに振り返ると異形の右手に片刃の大剣、左手にレーザーハンドガンを持ったエクスキューシュナーが不敵な笑みを浮かべながら立っていた。

彼女の背後には、アクセサリーを過剰な程に取りつけたM4カービンライフルを持ったSOPちゃんが立っているが、その可愛らしい顔を怒りで歪めながらエクスキューシュナーさんを睨み付けた

 

「この辺りで暴れている鉄血って、あなた達の管轄でしょう……上位権限とやらで止められないの。後、お兄ちゃん達をカカシ扱いしないで」

「ッチ、分かっている……だが、私の指揮権限を人形達が受け付けない。騒動の主犯……おそらく、鉄血のハイエンドが指揮系統を書き換えやがったな。こちらの通信は妨害されていないみたいだからな」

 

エクスキューシュナーさんが舌打ちすると数秒間、沈黙した後、強く言い放った

 

「よし、俺は建第二商店区交戦しているPMCの仲間達を助けに行く。お前らはあの路地裏から迂回して第二商店区に行け」

「分かった、いくよ。M16、SOⅡ」」

「はい、SOPちゃん、行こう」

 

エクスキューシュナーさんが若干薄暗い路地裏へ続く道を指差すのを見て、俺とAK-47さんが頷くが、SOPちゃんだけは不満げに首をふった

 

「私は北部にいるお姉ちゃん達と合流して向かうよ。特にM4は指揮官と同等の指揮能力を持っている戦術人形だから、合流できれば大きいな力になれるよ」

「え……じゃあ、それでいきましょう!」

「決まりだな、俺が先に行かせてもらうぞ」

 

SOPちゃんが常識外れの言葉に目を丸くするも俺が頷くや否や、エクスキューシュナーさんは一瞬しゃがむと同時に跳躍し、近くの商店等の屋根に飛び移ると屋根を伝って、時に別の建物に飛び移りながら、第二商店区に向かっていく。軍用を前提にした鉄血製戦術人形の中でも上位機種のハイエンドモデルだからこそ、出来る芸当だ……俺達じゃ外骨格無しじゃ足を踏み外して、地面に人工血液と部品をまき散らしてしまうだろう。

 

商店の屋根から屋根へ飛び移るエクスキューシュナーさんに唖然とした俺達だがすぐに路地裏へ続く小道に向かって走り出し、その後ろをAK-47さんがついて行く。一方のSOPちゃんは別の小道の方へ向かって走っていく

 

正直、SOPちゃんが言った人間の指揮官と同じように戦術人形を指揮できる戦術人形M4の事を聞きたかったが……それは暴走している鉄血人形達を止める事が先だ

俺達は小道に落ちている空き缶や空き箱を蹴り飛ばしながら、薄暗い小道を駆け抜ける。

 

そして、小道から路地裏に出ると廃墟の壁に追い詰められた年端もいかない子供を背負った若い男性にレーザーサブマシンガンを向ける二体のリッパ―を見つけた。路地裏にも暴走した鉄血人形がいるのか!?

俺はとっさにM16A4をリッパ―の一体に向けると引き金を引き、リッパ―の頭を撃ちぬいた。

もう一体のリッパ―も俺にレーザーサブマシンガンを向けるよりも先に俺とAK-47さんと同時に頭部と胴体に銃弾を撃ち込み、無力化させる。

 

部品と人工血液を舗装にまき散らして倒れたリッパ―に注意を払いながら、男性の元へ駆け寄った。

男性は多少怪我はあるが、命の支障がないように見えた。背中に背負っている子供も大した傷はないように見えた。

 

「男の戦術人形……ありがとう、俺も息子も助かった」

「おにんぎょうのおにいちゃん達……ありがとう」

「いえ、ここは危険です……北部は暴走した鉄血人形はいませんから、そちらに避難してください」

「そうだよ、北部にはアイゼンの駐屯地がある……そこに逃げれば安心だよ」

 

俺の言葉に男性が頭を下げると北部の方へ走っていくのを見届けた後、俺とAK-47さんは再びPMCと暴走した鉄血人形達が戦っているであろう第二商店区へ向かうおうとした。

だが、薄暗い裏路地の夜闇に紛れて接近してき鉄血製人形、三角形のボディの左右側面に機銃を取り付けた鉄血製ドローンであるスカウトや多脚戦車のプロウラーの一団が俺達に武装を向けながら、ゆっくりと近づいてくる。さっきのリッパ―達は偵察兵か

 

「暴走した鉄血人形達の一団がここにも!?」

「倒した鉄血人形の血の匂いに引き寄せられてきたのか!!」

 

俺達は鉄血人形のすぐに愛銃を構えて、引き金を引こうとした瞬間……俺達の背後から多数の気配ともに男性の叫び声が聞こえた

 

「その人形共、散開しろ!!!!」

「「!?」」

 

俺達はとっさに後ろ側の建物の影に身を隠すと同時に大きな破裂音が聞こえると同時に大きな爆発音と爆風が巻き起こり、周囲の建物の窓ガラスが砕け散る

それから少し遅れてい、無数の銃声と共に俺達が立っていた辺りが無数の銃弾が暴風のように飛び交うと同時に金属音や湿った物が潰れる音が鳴り響いた

 

音が収まっていから物陰から顔を出すと鉄血人形達の一団は黒焦げか無数の銃弾で蜂の巣にされた残骸と化していた。周りの建物も壁に大小さまざまな穴が開いていたリ、崩れている……ロケットランチャーか?

 

そして、俺達が後ろを振り返ると迷彩服の上から骨格と動力部が露出した強化外骨格に装着し、機関銃や自動小銃を持った男達が立っていた。そのうち数人は弾頭を撃ったばかりのRPGの発射装置を担いでいた……さっきの爆発は彼らが放ったRPGによるものか

俺達が援護をしてくれた武装兵の一団で先頭に立つ40代前半くらいの栗毛の白人男性が一歩前に出ると口を開いた

 

「大丈夫か、グリフィンの人形達……俺はPMCアイゼン隊長のシュリングだ。お前らはどこのPMCの傭兵だ? IOP社製の戦術人形らしいが」

「グリフィンG01地区前線基地所属のM16A4です」

「同じく、G01前線基地所属のAK-47だよ」

 

俺達が名乗るとシュリングと名乗った男は納得したように頷くと言葉を続けた

 

「噂の男性型人形がいるという前線基地の人形か、俺達はエクスキューシュナーからの通報で駐屯地からPMCの中でも精鋭の男達を連れて第二商店区に向かっていた所だが、お前たちもか?」

「はい、俺達も第二商店区へ行こうとしていた所です!!」

「善は急げって言うでしょう? 早くエクスキューシュナーと合流しよう」

「あぁ、俺の副官が通常の鉄血兵達相手に簡単にやられないが、人間である傭兵達は分が悪いからな……急ぐぞ」

 

AK-47さんの言葉にシュリングさんは力強く頷くと彼は自分の部下達に手振りで指示を出すと彼と傭兵達は第二商店区に向かって走り出そうとした瞬間、暗闇から数本の閃光が迫り、俺達が避け切れたが数人の傭兵達の身体を撃ち抜かれて、

 

「狙撃だ、全員身を隠せ!!!」

 

シュリングさんは閃光に撃ち抜かれた傭兵を見るや否や叫ぶと同時に俺達は左右の建物の影に二手に分かれて身を隠す。今のはイェーガーの狙撃か!?

俺がとっさに隣で壁に寄りかかるAK-47さんの方を見ると彼女は苦痛に顔を歪めながら、彼女の右脇腹を抑えている。そして、手の隙間からは脇腹があふれたであろう人工血液が彼女の手を赤く染めていた……さっきのレーザーの不意打ちを避け切れなかったのか!?

 

「AK-47さん、大丈夫ですか!?」

「かすり傷さ……問題ないさ、しかし、長距離型のイェーガーまでいるのか」

「くそ、南部の駐機所に待機させていた対テロリスト部隊も……隊長、見た事がない人形も一緒だ……なんだ、あいつは!?」

 

AK-47さんが腰のバックから応急処置用の生体部品用緊急補修材を取り出して、脇腹乱雑に塗り付けると傭兵の一人の叫びに俺はとっさに建物の影から覗くと盾と銃剣付き拳銃を持った鉄血兵――ガードやイェーガー、ヴェスピド達を率いるようにあいつらの先頭で一体のハイエンドモデルらしき妙齢な姿の腰まである長髪を一つにまとめた人形が立っていた

 

人形は黒一色のブラウスと丈が膝まで長いジャンパースカートを着こなし、肌はエクスキューシュナーさんと同じように死人のような青白かった。一目見ただけで奴が鉄血人形だとすぐにわかった

 

そして、手には銃身に鉄血のエンブレムが描かれた黒塗りのライフル……おそらく、レーザーライフルが持ち、微笑を浮かべながら俺達が身を隠す建物に目を向けていた。いや、あいつは建物の影から顔を出す俺を見つけると目を細めて、口を開いた

 

「タタラ社独自開発モデルのツクモ……この日に会えるなんて、運がいいわ」

「なぜ、俺の民間人形としての名を……それに俺が製造された工場の名前まであんたが知っているんだ!?」

 

ハイエンドの思いもよらない言葉に俺は立っても居られずに、物陰から体を出して愛銃の銃口をその人形に突きつけた。どうして、俺の元々の名前を……造られた工場の名前まで知っている!?

 

突然の事に動揺する俺の疑問を無視して、目の前ハイエンドは微笑みを浮かべたまま言葉を続けた。俺の反応を楽しんでいるように……そもそも、俺はあいつの顔を見た事もないぞ

 

「私の名前は鉄血ハイエンドモデル、匿名者(ネームレス)――鉄血工造製品番号はSP-9DSI……私達ともう少しだけ遊びましょうか、総員攻撃開始」

 

 

ネームレスと名乗ったハイエンドが手を振ると背後の鉄血人形達が一斉に俺達に向かってレーザー銃を撃ち始め、俺はとっさに物陰に隠れた

シュリングさん達も物陰に隠れて、レーザーをやり過ごしつつ手にした自動小銃や機関銃で反撃し始め、俺もAK-47さんと共に弾丸を鉄血兵達に浴びせる

 

だが……「なぜ、アイツが俺の民間人形としての名前を知っているのか」という疑問が俺の電脳内から離れることはなかった




さて、前話で悦に入っていた人形……匿名者こと、ネームレス登場です
ぶっちゃけ言うとM16A4(ツクモ)にとって、切っても切れない因縁で繋がっています……例えるなら、ニンジャスレイヤーとダークニンジャのような関係です

そして、彼女にもモデルがいます……伏せておきますが
ヒントとしては、ネームレスの衣装のジャンバースカートはモデルの衣装の中華風前掛けから連想したものです

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