MALE DOLLS   作:ガンアーク弐式

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現在(2019年12月22日現在)、番外編でコラボ企画実施中です
https://syosetu.org/novel/207272/

蝶は羽ばたいた……今の彼になすすべはない


DAY~逆光~

システムチェック開始……

駆動系統……左腕部出力30パーセントに低下全並びに脚部出力60パーセント低下

動力及び電気系統……異常なし

生体外装関連……各部に甚大な損傷及び欠落を確認

電子系統……通信モジュールに機能不全

センサー系統……左視覚モジュール及び聴覚モジュールに一部機能不全を確認

戦術コア関連……異常なし

残存バッテリー残量、30パーセント

 

……戦術人形SSD-61DJ、個体名M16A4を再起動します

 

 

 

 

 

どれくらい時間がたったのか……意識を取り戻すと視界の左半分が時折霞み、常にノイズ音が聞こえる。どうやら、左目と聴覚モジュールがイカレたようだ

俺は起き上がると俺の左腕の生体外装が剥がれ落ちて、鈍色のフレームと白い人工筋肉が露出し、人工血液が漏れていた……凄い痛い。おまけに、鉄屑ババアが投げた手榴弾の爆炎に飲み込まれた時に、駆動部かフレームがやられたのか、左腕に力が殆ど入らなかった

 

俺が倒れていた所からすぐ近くには、愛銃のM16A4が壁の瓦礫に紛れ込むように転がっているのを見つけた。

俺はそれを拾い上げて、確認するとストックやハンド―ガードは傷だらけだけど、コッキングレバーや排莢口等には目立った損傷はない。

 

取り付けていた銃剣も刃は折れていない上にマガジンには実弾が10発入っている。マガジンの弾丸を統べて撃ち切っても義体の瞬発力を利用すれば、槍として使える。それに腰に提げたサイドアームのP220も問題なく使える……まだ、勝機はある

 

「それよりもあのババア……AK-47さん!?」

 

俺が鉄屑ババアがどこにいるのかと辺りを見渡そうとした瞬間、左半分が霞む視界に写ったのは点滅する街灯に照らし出される上半身と下半身が泣き別れになったAK-47さんの姿に言葉を失った

 

俺はとっさに上半身だけの彼女に駆け寄るも彼女の目に光はなく……文字通り人形の目が月一つない夜空を映していた。

そして、彼女の胸……コアが収まっている位置に鋭い物で突き刺されたかのようなに跡があけられ、そこから大量の人工血液が彼女のビキニと白い皮膚を赤く染めていた。

傷からしてコアを、それも戦術コアではなく、自律人形の中枢部であるメインコアまで傷が達している……それは人形として死を意味する

 

「嘘だろう……あのババア!!!!!!」

 

見るも無残になったAK-47さんの遺体を目にした俺は感情モジュールが表す怒りに耐え切れずに叫んだ

そして、M16A4を手に鉄屑ババアが辺りにいないかと見渡すも……半分だけの視界に映ったのは傭兵達の死体だけと鉄血兵達の残骸ばかりだった。どうやら、俺が気絶(フリーズ)している間に、鉄屑ババアによって傭兵達は全滅してしてしまった

 

「鉄屑ババアはどこに、それにシュリングさんは!?」

 

俺は死屍累々な惨状を目にして、逆に怒冷静さを取り戻した瞬間、シュリングさんの遺体がここにない事に気づいた……もしかしたら、彼はまだ生きている

シュリングさんが生きているかもしれないと考えた瞬間、ノイズ音に紛れて少し離れた北区の方から男性の悲鳴が聞こえ、俺はとっさにそこに向かって走り出した

 

「ウワァァlalalalallaァァ、ザzzザて!!!」

「誰かが襲われている!?」

 

 

体中のフレームや駆動部からは異音が何度も響き、時折痛みを感じるも俺は意もせずに走った。

爺ちゃん達の仇であるネームレスを殺したい……けど、助けを求める悲鳴を聞いて無視できなかった。復讐よりも助けを求める人を助ける方が

 

――――――――――――

 

 

男性の悲鳴が聞こえた場所に向かうとそこには、傭兵らしき恰好をした苦悶の表情を浮かべた男性の遺体が地面に倒れていた。痛いのすぐそばには、眉間を撃ち抜かれたイェーガーが人工血液で真っ赤に汚れた塀に寄りかかっていた。

先ほどの悲鳴の主であろう傭兵の遺体を前に俺は愛銃を強く握り占めた……間に合わなかった。

 

「くそ……遅かっ「そこにいるのは、M16A4か?」」

 

目の前の男性を助けられなかった事に悔しさを俺の背後から聞き覚えのある女の声……エクスキューシュナーさんの声が後ろから聞こえた。

 

「エクスキューシュナーさん、あなた……え!?」

 

俺がエクスキューシュナーさんの声を聞いて安堵しつつ振り返った瞬間、俺は声を失った。

振り返って半分だけの視界に写ったのは、彼女の身体や右手握にりしめた黒塗り大剣が血で赤く染め、左手に男……シュリングさんの首をぶら下げたエクスキューシュナーさんの姿だった。

そして、彼女の目は酒場でみた前に見た厳しいながらも優しさを秘めた物ではなく、工場襲撃の際に見た鉄血人形達の冷徹で無機質な機械のソレであった。

俺は目の前の人形が酒場で冗談交じりにヘッドハントしようとした彼女と同じだと信じられなかった

 

「たく……泳がすにしても手抜きにもほどがあるぜ。アイツの銃はまだ使えるようじゃないか」

「エクスキューシュナーさん……どうして」

「あ、エルダーブレインが命令したのさ。人間共を殺せってな」

 

エクスキューシュナーさんが、そう言って左手に持っていたしゅりんぐさんの首を放り投げた。

 

それを見た瞬間、俺は理解した……目の前にいるのはエクスキューシュナーさんじゃない。ネームレス(鉄屑ババア)と同じハイエンドモデルのエクスキューシュナー、俺が倒すべき敵だ!!!

 

「ぶっ殺してやる!!!!!」

 

俺は再び沸き上がった憎しみと怒りを込めて叫ぶと同時に、義体の出せる限りの出力を全開してエクスキューシュナーに向かって乱射しながら、銃剣突撃をかまそうとした

 

次の瞬間、視界からエクスキューシュナーが消えると同時に、手にしたM16A4が両断され、愛銃の前半分が地面に転がる……俺の銃が!?

俺はとっさに腰の拳銃を抜こうとした一瞬、奴の大剣がきらめくと同時に俺の胴に鋭い痛みが走ると同時に斜め一文字に身に付けていた作業着が切り裂かれると同時に、胸から人工血液が噴き出し、俺は仰向けに倒れてしまった。

電脳が俺のメンタルモデルに大合唱のようなエラー表示の悲鳴を上げていた。

 

生体上皮どころか、内部フレームまで逝った……あが!?

「そのままコアを両断するつもりが、皮一枚届かなかったか」

 

大量の人工血液を流す俺に追い打ちをかけるようにエクスキューシュナーは俺の腹を踏みつけ、嘲笑うような目で俺を見下ろした。

 

「ふん、「ぶっ殺してやる」か……戦術人形(雑魚)らしい言葉だな」

 

奴はそう言うと右手の大剣を両手で構え直すと俺のコアがある胸に剣先を向けた。武器もなく、踏まれては這う事すらできない俺はただ、奴を睨み付けることしかできなかった。

おまけに半分しかない視界も霧がかかるり始めていた……人工血液を流しすぎたせいで、

 

「この……鉄屑が!」

「俺は弱い奴に興味はないんだ。じゃあな……!?」

 

奴が剣を俺の胸に突き立てられると思った瞬間、どこからか数発の銃声が鳴り響き、エクスキューシュナーの足が離すと同時に奴は一瞬の内に数メートル後ろへ下がった

 

「っち、新手か!?」

「銃声……味方……か?」

 

意識が遠のきつつも銃声が聞こえた方へ首を動かすとそこには、両手に自動式拳銃をエクスキューシュナーに向けるボブショートの銀髪と金色の瞳、そして、腰に提げた日本刀が印象的な人形がこちらに近づいていた。スピードからして、HG型だろうか?

彼女はさらに数発連射して、俺を庇うように俺の前に立つと少しだけ俺の方を向くと笑みを浮かべた。近くで見ると彼女が手にしているのは、俺のサイドアームのP220に似ている……けど、違う拳銃だ

 

「よかった。まだ、機能停止していない(死んでいない)

「新手か……M16A4(コイツ)よりもやり「P228退いて!!!」」

 

拳銃を構えた助っ人の人形を目にして不敵に――それでも、無機質に笑う奴の言葉を遮ると同時に聞き覚えのある声が聞こえると同時に複数の銃声と共にエクスキューシュナーに向けて銃弾が飛んできた。

 

(この声……もしかして……)

 

俺が酒場で見た満面の笑みを浮かべた人形を思い浮かべると同時に物陰から怒りで顔を歪めたSOPちゃんと黄緑色のメッシュが入った黒髪の人形が手にしたライフル――M4アサルトカービンを奴に向けてフルオートで銃弾を叩き込むとエクスキューシュナーが右手の剣で防ぐと左手のレーザーハンドガンで反撃するのを見た瞬間、俺の意識は再び闇に落ちた。

 

 




新兵、硝煙香る人形達の前線へようこそ

さて、今回は負けイベです……ぶっちゃけ言うと現状は彼に勝ち目はありませんでした

さて、次でDAY編は終了です
現れた謎のHG型人形……ネタバレしますと番外編で先行登場したP228ちゃんの参戦とAR小隊とエクスキューシュナーの会敵、姿を消したネームレスの動向を描く予定です

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