そして、今回はツクモの愛銃の正体が発覚します
あれから数日が経ち、相変わらず俺は前線に出ることなく、前線基地の清掃などの雑用をこなす日々を過ごしていた。事実上飼い殺しもいいところだが、俺は人形……指揮官の命令は絶対で逆らえば、ただじゃすまない
俺の仕事は基本的に基地の清掃だが、場合によっては他の業務を担当する職員――この基地では民間用人形の手伝いをすることもある。特に戦術人形達が着る服の洗濯は俺のもう一つの業務と言ってもいいほどのメジャーな仕事だ。
俺は洗濯済みの服が入った籠を両手で抱えながら、戦術人形達の待機場所である宿舎に続く廊下を歩く。廊下の窓は墨を流したような夜の闇と廊下の照明で俺の顔が鏡のようにだった。そこには半分死んだような目をした自分の顔が写っていた
「洗濯物を届けたら、保管庫へ帰って眠ろう」
俺は窓に写った自分の顔から逃げるように小走りで宿舎へ向かうとすぐに宿舎へ到着した。
俺は自動ドアの開閉スイッチに手を触れると僅かな機械音と共に自動ドアが開くと白い壁紙に大きなテーブル一つと十個のイスが置かれた白い部屋が目に入った
そこで黒いゴスロリ服をきたロングヘア―の戦術人形、PPKと黒い旧世紀のドイツ軍の軍服を来た戦術人形、MP-40が談笑していた
「ASNの味が酷いのは開発担当スタッフがイギリス人だからじゃない?」
「それは偏見だと思いますが……あ、ツクモさん!」
MP-40は宿舎に入った俺に気づいて声をかけたのと同時に、PPKも振り返って俺をの方を見た
「あ、私達の洗濯物を持ってきてくれたのですね、ありがとうございます」
「……じゃあ、籠はここに置いておきますね」
俺が洗濯籠を置いた瞬間、視線を感じ顔を上げるとPPKが意味深な笑みを浮かべて俺を見ていた。
「PKKさん、何か気になる事でも?」
「前から思っていたけど、いつまで雑用係を続けるつもりなの?」
PKKの言葉に俺はドキッとした。
俺が戦術人形である事は基地の人形達は知っているが、本当は前線に出たい事は誰にも言っていない。
だから、PKKの言葉に驚いたのだ……俺が本来なら前線に出る事を望んでいる事を見透かされているみたいで
「どういう意味ですか?」
「女性型と男性型の違いはありますけど、あたくし達と同じようにコアを搭載しているのに民間人形とほとんど変わらない事なさっているのかと気になりましてね」
彼女の挑発に乗ってはいかないと思いつつ、俺は口を開いた。
「俺だって好き好んでこんな事をしている訳じゃない……指揮官の許可さえあれば前線に出られるはずなんだ」
「……滑稽ね、今の立場になったのは指揮官のせいにするつもりかしら」
「PPK、言い過ぎですよ!」
PPKの言葉にMP-40が止めようと口をはさんだが、俺は彼女の言葉と見下したような視線に怒りを抑えきれなかった。黙っていたら好き勝手言いやがって……
「女だからって関係ない……PPK、歯を食いしばれ!!」
「ツクモさんも落ち着いて!!」
MP-40の静止を無視して、PPKを殴りつけようとした瞬間、右から伸びた白い腕が俺の腕を掴まれた。PPKも顔に先ほどの余裕はなく、腕の方を凝視していた
俺は腕の持ち主を確認しようと腕の方へ視線をずらすと一人の戦術人形が俺の腕を掴んでいた。彼女は腰まで伸ばした緑色の髪を彼女の愛銃の部品を模した髪留めで括り、黒いボンテージに布地のパーツを足したような服を着て、ニタニタと笑いつつも半分蔑むような目で俺を見ていた。
彼女の名はMk48……司令官の副官だ
「あら、ツクモくん……私のいない所で喧嘩かしら?」
「Mk48、なんでここに……!?」
言葉を言い切らない内に彼女…MK48に俺の足を掬われ、床に倒された。そして、間を入れずに彼女に背中を踏みつけられた。俺の半身である愛銃を彼女に没収されたあの時のように……。
「Mk48、彼を踏みつけるのはやり過ぎです」
「あら……私に指図するつもりかしら、MP-40?」
MP-40の抗議もどこ吹く風で聞き流しつつ、彼女は言葉を続ける。
「あなたがコアを内蔵した程度で私達と同等になれたと思ったら勘違いもいいところね」
「なんだよ……実戦経験が「違うわ」」
俺の言葉にMk48の顔から笑みが消えて、見下すような目つきで俺を見た。
「あなたが男性型だからこそ、指揮官はあなたを戦術人形として認めていないのよ」
「それが意味が分からないだよ……自律人形は男性型も女性型も基本的な構造に違いなんてないはずだろう、シモの有り無しを抜きしても」
「構造云々の話じゃないの、男性型のあなたじゃ指揮官の中に潜む獣は抑えられないのよ。」
Mk48は言い捨てると視線をMP-40とPKKの方を向いた
「PKKとMP-40、指揮官があなた達も夜番に参加しなさいとご命令よ」
Mk48の言葉に二人の表情が凍り付いた。特にPKKは、普段の余裕を浮かべた表情から一転、絶望的な表情を浮かべて震えていた
「え……嘘」
「そんな今日の夜番は、GrG3とL85A1がすでに……」
「今日は指揮官の獣が特に不機嫌みたいでね……私とあの二人じゃ抑えきれないのよ」
そもそも夜番という言葉は、戦術人形達の会話からちょくちょく耳に入ってきたから知っていたが詳しい事は知らなかった……いや、知りたくなかった。けど、彼女達の様子でそれが具体的に何を意味するかはすぐに分かった。
Mk48はもう一度ニタニタと笑みを浮かべながら俺の方をもう一度見て、子供をなだめるように言った
「これで指揮官があなたを戦術人形として認めないのかと言う事が分かった?」
「えぇ……嫌と言うほど分かりましたよ」
ここの司令官は最低な男だということがね
暗い自室で、F02地区前線基地の司令官はため息をついた。
「ここまで荒ぶったのは第三次世界大戦での中国でアレに出くわした時以来だぞ」
彼は近いうちに悪い事が起こる前に、なぜか異様に女を抱きたくなる性分だということを認識していた。それを抑えるために彼は娼婦を買い、それすらも存在しない時は夜道を歩く女性を物陰に引きずり込むことで性欲……不安を紛らわしていた彼
それは米軍の不名誉除隊さした後に、グリフィンに入社しても変わらなかった。ただ、己の性欲を発散させる相手は自分の部下である戦術人形に変わった。
だからこそ、男性型戦術人形であるツクモの存在が彼にとっては目障りであった。彼にとって戦術人形は自身の武力の象徴であり、自身の中に潜む獣を慰めるための巫女でもあった。だからこそ、彼は男性型戦術人形を受け入れられなかった……出来る限りなら、解体したかった。
だが着任したばかりを解体申請をすれば、本部に探られたくない部分まで調べるのは明白だった。だからこそ、彼を民間人形同然の立場にして、書類も前線部隊で練成中であるように偽装し、頃合いを見て解体申請を出すつもりであった。
彼のベッドの周囲には、床に転がった安酒の缶と共に彼の性欲の相手をした彼の部下である戦術人形達が倒れていた。激しい行為により彼女達の電脳が処理落ちを起こしたせいか、目を開いたままピクリとも動かなかった……彼の副官であるMk48を除いては、
彼は自室が見渡すともMK48の姿はいなかった
「Mk48は自室に戻ったか……あいつはどこまで本気か分からないだよ……うん?」
指揮官は、自身の端末にメッセージが届いている事に気づき、彼は端末を操作してメッセージの内容を確認した瞬間、彼は笑みを浮かべた
「これは……どうやら、戦術人形達を処理落ちさせたおかげで幸運がこっちに向いてきたか」
彼の端末にはツクモの画像と共にこんな文章が表示されてた
『F02前線基地に所属するM16A4をG01地区前線基地への異動させる事を要請する。G01地区前線基地司令官:アラマキ』
今回は、ツクモがM16A4の戦術人形である事が最後に明かされました
そう、彼はM16A1の弟と言う事になりますが16Lab製ではありません。
銃のバリエーションとしての意味で弟となります
そして、性欲獣いや、F02前線基地の指揮官の副官の正体は、星4MGのMk48です
ちょっとキャラ崩壊しているかもしれませんが、個人的には某フラワーマスターを連想させるキャラだったのでこんな感じになりました。
で、彼が作中で荒ぶった理由は凄まじい厄介事を彼が感じ取ったからです
ちなみに作中の時系列は2061年です