MALE DOLLS   作:ガンアーク弐式

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ついに第一章最終話を投稿できるようになりました

さて……ついに外伝集のように鉄血絶対殺すマンと化す瞬間がやってきます

そして、外伝集でも明記されている近い将来、BB小隊の隊員となる人形が登場します


鉄血は殺す……慈悲は無い


after day

目が覚めてすぐに俺の視覚モジュールが映し出したのは、知らない天井だった……といえば、三文小説みたいな言い方になるが、俺が目を覚ましたのは壁も天井も白い部屋だった。

ノイズまみれだった聴覚モジュールも壊れた左目も元通りになっている……誰かが直した?

 

「ここは……うん?」

 

俺は体に違和感を感じ、腕を上げてみると身に付けていた入院着の隙間から様々な色のコードやらチューブが伸びているのが見えた。

俺は自身と繋がっているコードを目で追っていくと俺が寝かされていたベッドの後ろにある複数の機器類からそれらが伸びている事に気づいた。

それらが大破した人形の修理に使用される物だとすぐに分かった。民間人形時代の座学として教えられた自立人形に関する知識を学んだ際に人形の修理に使う機材について教えられた

 

(外部バッテリーに、設置七人工血液循環濾過装置に、これはメンタルモデルチェック用電子デバイス……どれも結構な上物ばかり……ここはグリフィンかIOPの施設か?)

 

俺は俺と繋がっているそれらが人形の修理……それも民間では簡単に手に入らないような高価な機種からここがグリフィンかIOP関連の施設ではないかと考えた。

それと同時に電脳内に俺が意識を失う着前に見た光景が突然、浮かんできた。

 

銃口を向け、人間を殺す無機質な鉄血兵達の目、街中に横たわる人間の死体や逃げ惑う人々、目から光が消えたAK-47さんの残骸、そして……俺を嘲笑うネームレスとシュリングさんの首をぶら下げたエクスキューシュナー、そいつらに手も足も出ずに敗れた上に生かされた無力な自分

 

そのことが頭に浮かんだ瞬間、俺は悔しい‥…いや、強い憎しみで手を強く握り占めていた

 

「あの鉄屑ババア共、絶対に殺してやる!!!」

「目が覚めてそうそう恨み節って、P228が言っていた以上ね」

「え……誰!?」

 

突然、女性の声が俺の聴覚モジュールに聞こえ振り返るとそこには、金髪碧眼の少女……いや、人形が壁に寄りかかっていた。

彼女は、白いパーカーにチェック柄のジーンズを着こなし、頭には赤いフチが付いた白いリボンを結んでいる……人間達の理想を現実化させたという女性型自律人形としてみても美人というべき顔立ちをしていた

 

「あなたは一体……それにここは?」

「あたしはMP5F、あなたと同じ戦術人形でここはIOP本社の修理工廠で、あんたは半月の間眠っていたのよ」

「半月も……あの後、何が起きたの!?」

 

MP5Fと名乗った彼女は興味深そうに俺を見て、一息つくと俺が眠っていた間に起きた事を語り始めた

 

俺が気絶していた直後に、MP5Fさんが所属する研究部署【TVRチーム】所属の戦術人形P228……俺が気絶する直前に見たHG型戦術人形とAR小隊……SOPちゃんとそのお姉さん達で結成された戦術人形小隊に回収された俺は彼女達と共にIOP本社に移送された後にTVRチームの技術者とペルシカ(猫耳おばさん)による修理を受けていたらしい。

エクスキューシュナーの斬撃の傷は俺が思っていたよりも深く、内部フレームどころか主要な部品数カ所が損傷していたらしく、事実上オーバーホール同然の大規模な修理を受けていたそうだ。

 

しかし、猫耳オバサンとTVRチームの主任は仲が悪いらしく、MP5Fさんはその事を思い出したのか、苦笑いを浮かべていた

 

「まぁ……主任とペルシカさんがお互いにいがみ合いながら、君を修理していたのは、()()()()も不安だったわね」

「……ちゃんと直してくれているよな? というか、パラって誰?」

「あぁ、私とタッグを組んでいるSMG型戦術人形の事よ……脱線したわね。今から話す事は、あなたが眠っている間に起きたことよ」

 

MP5Fさんは一息つくと話を続けた

俺が眠っている半月の間に、鉄血工造は両手では数え切れないほどのPMCや自衛団を壊滅させ、その施設を吸収する形で支配領域を広げている。それと同時に元々鉄血工造が所有していたり、壊滅したPMCの管轄領域の施設を改修した施設を利用して、鉄血兵や機械兵器を生産し、自分達の戦力を増幅させているらしい

 

幸いにも政府や正規軍が直轄で管理している生産拠点や重要施設が集中している地域は全く無事だというのはある意味で救いかもしれんが、放っておけば、正規軍も本腰を入れざる得ないほどの勢力と化すのは誇張でもないらしい

 

そして、俺が所属するPMCグリフィンも多くの拠点や人形達を失ったが、残った精鋭の指揮官達とその配下の戦術人形達が水際で鉄屑共の進行を食い止めっているらしい。より正確にいうと鉄血に正面から戦おうとするPMCがグリフィンを除くとごくわずかで、ほとんどのPMCは管轄領域に進入した鉄血兵を迎撃する程度らしい

 

つまり、正規軍は治安維持やELID撃退などで部隊を動かす余裕もなく、グリフィン以外のPMCは極一部を除いて戦闘を避けようとする……それほどに人形鉄血工造は危険な武装勢力と化しているらしい

 

それを聞いた瞬間、俺は非常に嫌な予感が電脳内をよぎってMP5Fに一つだけ疑問をぶつけた

「なぁ、MP5Fさん……G01前線基地――俺がいたところはどうなったんですか? AK-47さんはあの居住区で鉄血共に殺されたが……他の仲間達は無事なんですか。M14さんは!? 副官の漢陽さんは!? あの指揮官はどうなったんですか!?」

「それは……」

教えてください!! 俺の仲間達はどうなったんで「落ち着け、新兵」」

 

おれの質問にMP5Fさんは答えず、ただ視線を逸らすだけで答えなかった。俺はとにかく、仲間達の安否を知りたくて必至に問いただそうとした瞬間、低い男の声が俺の言葉を遮った

俺とMP5Fが声が聞こえた方を振り向くと黒いスーツとコートを着た彫りの深いひげ面の壮年の男性が部屋のドアを開けて、足を踏み入れていた

俺は彼が誰だかすぐに分かった……PMCグリフィンの社長、クルーガーさんだ。

 

「社長さん、どうしてここに!?」

「ペルシカから君がを話せるまで修理が終わったと知らされてな。M16A4、G01前線基地がどうなったか……知りたいか?」

 

社長の登場に驚くMP5Fさんに目もくれずに、彼は俺の目を見てそう言うと俺は黙って頷いた。嫌な気がしたが……聞かないといけない気がした

 

「君が所属していたG01前線基地は鉄血製戦術人形が反乱を起こした数日後に鉄血の奇襲を受け、陥落。着任したばかりのボイチャー指揮官は戦死……G01前線基地の戦術人形達は保護された5名――M14、スコーピオン、G36C、Gsh-18、M3、行方不明の漢陽88式以外は、全員の死亡が確認されている」

「え……嘘ですよね」

「嘘ではない、調査に出たグリフィン本部の戦術人形小隊が指揮官の遺体と所属していた戦術人形達の残骸が多数発見している……基地の状況からしてもバックアップからの再生も絶望的な状況だ。漢陽88式にしても5LINKの精鋭とはいえ、当時の状況からして、生存は絶望的だろう」

 

社長が淡々と話すG01基地の惨状に俺は声が出なかった。それと同時に凄まじい怒りいや、憎悪が俺の電脳で満たされていく。鉄屑共……俺の仲間達を手にかけたを後悔させてやる……絶対に殺す!

「社長……基地を襲撃した鉄血部隊の詳細は分かっているのですか?」

「M14の話では、黒一色のジャンパースカートを着た鉄血ハイエンドが率いる部隊に殲滅されたと聞く。AR小隊の戦闘ログと彼女達との証言から、居住区で目撃されたハイエンドの……「ネームレス!!!!」

 

G01基地を襲撃したのが、ネームレスであると知った俺は自分の感情を抑えきれず、起き上がろうとするも体に力がほとんど入らず、よろけて床に落ちそうになった。力が……!?

その時、壁に寄りかかっていたMP5Fさんが俺の体を受け止めた。見た目以上に素早い……不謹慎だが、彼女の立派なモノの感触がパーカーごしに感じ、俺は顔が少し赤くなった。見た目よりも随分とたわわだ

 

「完全にと直っていないのだから、動けるわけがないじゃない!」

「工場を……爺ちゃん達を殺した上に、G01地区の皆を殺したアイツは絶対にぶっ殺す!! 例え、刺し違えってでも奴は俺の手で殺してやる!!」

「今の君では例のハイエンド……ネームレスの撃墜スコアを増やすだけだ」

「ッ!?」

 

社長の言葉に衝撃を受けた俺はただ彼を見る事しかできなかった。彼の目からアラマキ元指揮官と同じ鋭い視線を感じ黙る俺に社長は言葉を続けた

 

「AR小隊と生き残りの人形達のログから、奴はハイエンドに相応しい性能を有した義体と最低でも三年以上戦術人形としての経験を有する古参だ。戦術人形として半年程度の君では手も足もでないだろう」

「だったら、このまま泣き寝入り同然に過ごせというですか!?」

「そうではない復讐の機会は今じゃないという事だ。それまでに経験を積んで強くなれ。」

 

社長さんはそう言って、病室を出て行くのをMP5Fが同情するような目で俺を見つめ、口を開いた

 

「とりあえず……君が目覚めた事をG01地区前線基地の人形達に伝えておくよ」

「皆、ここにいるのですか!?」

「うん、皆君の事を心配していたよ……じゃあね」

 

MP5Fさんはそういって出ていくと俺は再びベッドに横になった

社長やMP5Fさんが教えてくれた事を聞いて、すごく疲れた……けど、この疲労感は義体を酷使したり、義体の不調だからじゃない。俺のメンタルモデルが残酷な現実――無力な自分や救えなかった仲間達の事を知ったせいで重度の負荷がかかったせいだ……

 

「……俺は弱いな……鉄屑共に一矢すら報えないほどに無力だ……くぅ!!」

 

俺は無力さと仲間達の大半が二度と戻ってこないという現実に涙を流した。

 

そして、泣きながら二人の名が自然とこぼれ出た。

 

和人形ような容姿に女傑のような荒々しさと母親のような優しさが入り交ざった人格を秘めながら、後方から指揮を出してくれた女性の名を

 

彼女の教育係であり、俺のF02地区前線基地(あの生き地獄)から救い出してくれた一人の老人の名を

 

俺は助けを求めるように……でも決して届かない事が分かってながらも俺は二人の名を叫ばずにはいられなかった

 

「……アラマキ元指揮官……カスミ指揮官代理……もう一度会いたい……ウワァァァァァァ!!!!」

 

 

俺はただ、ひたすら一人で泣き続けた……爺ちゃん達と仲間の仇であるネームレスと鉄血工造に復讐を誓いながら




M16A4が鉄血への憎しみを抱く決定的な理由……それは鉄血(本編ではネームレス)がG01前線基地の仲間達(ごく一部)を除いて、バックアップごと破壊されたの原因です

なお、この襲撃の元凶のネームレスは彼女特有機能を利用して、自身の配下を大幅に増強した状態でG01前線基地を襲撃しています


そして、前回に続き将来BB小隊のメンバーとなるMP5Fと名前だけですが、SMG型戦術人形のパラ(正式名は秘密)が登場しました

彼女達も次の第二章で正式登場し、M16A4と合流する予定です


さて、次は第二章の蝶事件後から原作開始までの空白期間編です
単語のみですが、TVRチームの詳細や番外編で言及されたS07地区前線基地始動やBB小隊結成等々

本格的に物語が動かすための準備にM16A4やカスミ指揮官が奔走する事になります

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