修理工廠一階にあるカフェは、工廠内に設けられたとは思えない程に本格的な店だった。
このご時世、A地区のような富裕層街でもなければ見る事がないようなオシャレなテーブルとイス、カウンターにはカフェのマスターらしき女性型人形がコーヒーを淹れているのが見えた。そして、店内各所に描けれているグリフィンのエンブレムやロゴがこの工廠がグリフィンの系列である事を証明していた
ただ、3週間前の蝶事件があったせいか、客達の顔はどこか暗かった
そして、パラに手を引かれるように店内の奥へ足を進めると聞き覚えのある声が聞こえてきた
声が聞こえる方向に視線を向けるとカフェの一角でG01地区前線基地の同僚達――スコーピオンさんとM14さん、G36Cさん、GSh-18さん、それにM3さんがP228さんとMP5Fさんがコーヒーや紅茶を飲みながら会話しているのがみえた
「本当に危なかったんだよ……愛ちゃんの狙撃でガードの隊列を崩さなきゃ今頃、バックアップごと殺されていたね」
「主任の話から聞いていたけど、根絶やして感じね。他の鉄血兵やハイエンド達とは、グリフィン(私達)に対する殺意が段違い……あ、パラとM16A4じゃない」
MP5Fさんが俺とパラに気づいて、振り向いて声をかけると他の人形達も一斉に俺の方に視線を向ける
「M16さん、身体はもう大丈夫なんですか?」
「はい、おかげさまでほぼ完全に治りましたよ」
俺が笑いながらイスに座るとM14さんが思い出したように口を開いた
「そういえば、M16A4さんは工廠から退院した後は、本部所属ということになるのよね?」
「はい、グリフィン本部の警備部隊に配属される予定です……本当は前線基地の方がよかったんですがね」
M14さんの質問に答えるもふと本音が口から零れ落ちた。本当は後方での警備よりも前線で鉄血と戦いたい。そして、
けど、俺個人の意思で配属先が変わるほど、グリフィンは甘い組織じゃない。
それに警備部隊とはいえ、グリフィン本社直属の部隊に配属されるという事は状況によっては本部から離れた戦場にも派遣される可能性もある。
それにグリフィン本部には、俺と同じ男性型戦術人形のみで構成された戦術人形部隊のGD小隊も所属している……F02地区前線基地の皆を助けてくれた事に対して礼をいいたかった
俺の半ばボヤキを聞いて、MP5Fさんが慌てて言葉を挟んだ
「あ、そうだ……M14ちゃん達と私達は新設されたばかりのS07前線基地に配属されるんだよ」
「新設されたばかりのS07前線基地?」
MP5Fさんの言葉にでてきた新設の基地であるS07前線基地に俺は興味を持った。
最近、鉄血の侵攻で前線基地を放棄もしくは、壊滅したという話ばかりでグリフィンの基地が新しく作られたというのは本当に久しぶりだったからだ
俺が言葉を返すとパラちゃんが口を開いた
「えっと、蝶事件――鉄血人形達が反乱を起こす一ヵ月前から工事が始まって、一週間前に完成したばかりの基地だってヘリアンおばさんが言っていたよ」
「パラちゃん、おばさんは失礼ですよ。でも、建造途中の基地って鉄血からすれば絶好の標的だと思うんですが……無事に完成できましたね?」
パラちゃんがヘリアンさんの事をおばさんと呼ぶのを諫めつつもパラの言葉に首を傾げた。鉄血からすれば、建造途中の拠点を無視するとは思えなかったからだ
俺の疑問に、P228さんが答えてくれた
「実をいいますと元々新設されるS07地区前線基地はS07地区の廃都市の地下に存在した元々核シェルターを兼ねた地下施設を改装した施設なので、元々あった施設の構造とかにはほとんど手が加わっていないです」
「それに……S07地区はまだ、鉄血の活動が活発じゃないから、基地の施設を建造する余裕もあったともいっていたよね、P228」
MP5FさんがそういうとP228さんはうなずくとそれを見ていたスコーピオンさんが口を開いた
「そうそう、ここであたし達の指揮官と待ち合わせしているんだよ。しかも、つい最近教習を終えたばかりの新人指揮官だよ!! 顔も名前もまだ分からないけど、女性であることはたしかだよ」
「ここで、待ち合わせ? 少し離れた所にグリフィン本部があるのに?」
スコーピオンの言葉に俺は首を傾げた。
普通、指揮官が配下の戦術人形達に着任の挨拶をする場所は、派遣先の前線基地かグリフィン本部でするはずだ。ここがグリフィンの関連施設とはいえ、カフェで着任の挨拶をする指揮官がいるとは思いもよらなかった
俺の疑問に皆も疑問に感じていたのかC36CとGsh-18さんが続けて口を開いた
「確かに、おかしいですよね。同じカフェでもグリフィン本部にもカフェはあるのに」
「そうやね……あ、もしかしたらここに入院している人形をスカウトするためにここを選んだかもしれへんな」
「きっとそれだよ。その指揮官さんはここで入院している人形さんのだれかを仲間にしたいよ」
GSh-18さんの推測にパラが頷いた瞬間、ふと俺の後ろから聞き覚えのある声――それももう一度会いたいと思わせる女性の声が俺の聴覚モジュールに飛び込んできた
それと同時に元G01地区前線基地の面々が俺……いいや、俺の背後にある誰かを驚愕の表情で凝視ししてた
「その通りだ……
「あなたは、もしかして!?」
俺はとっさにその声の持ち主を見るベくふりかえるとそこに立っていたのは長い黒髪とスレンダーな体型が特徴的なグリフィンの制服を身に付けた20代後半位の日本人女性――サクラ・カスミ指揮官が不敵な笑みを浮かべながら立っていた。そして、右手には黒いガンケースをもっていた
「元G01地区前線基地の皆とTVRチーム所属の三人、私があなた達の指揮官となるサクラ・カスミだ」
「カスミ指揮官代理……いえ、カスミ指揮官おひさしぶりです」
M14さんが敬礼をすると他の人形達も吊られて敬礼するのをみたカスミ指揮官代理いや、カスミ指揮官は俺に視線を移すと言葉を続けた
「そして、M16A4。あなたが修理が終わったら、すぐにS07地区前線基地に来てもらうわ」
「つまり……M16さんも私達と一緒に部隊に入るということ!?」
「そういうことだ……M16A4、異論はないな」
パラちゃんの言葉に指揮官が頷くと俺を見る。もちろん、俺の答えはたった一つだけだった。
「はい……喜んでカスミ指揮官の指揮下に入ります」
「それはよかったわ。それと主任に頼まれてあなたの半身のM16A4も持ってきたわ。受け取りなさい」
指揮官はそう言って、手にしたガンケースを俺に手渡すと俺はとっさに隣の空いているテーブルの上に置き、開けた。
中には、黒一色に塗装されたM16A4――フルオート仕様のモデル901とマガジン数個とOKC-3S銃剣が入っていた。まさしく、G01地区前線基地で使っていたのとほぼ同じ仕様だった
それに以外にM203グレネードランチャーに、ドットサイトやAN/QEPレーザーイルミネーター、グリップバイポッドやフラッシュライト等のオプションもガンケースに入っていたが……ぶっちゃけいらないだよな
「指揮官、ありがとうございます。でもオプションは銃剣一本で十分ですよ」
「まぁ、保険だと思って持っておけ……すまん、コーヒーを二つくれ。」
指揮官はそう言って、イスの一つに座ると近くにいた店員の人形を呼び、コーヒーを注文するのを見て、俺もテーブルに座った。
そして、栄養剤以外の味がある食べ物をひさしぶりに口にしながら、カスミ指揮官代理いや、指揮官とこれからS07地区前線基地に所属する事になる仲間の人形達との会話に花を咲かせた
―――
M16A4がカスミ指揮官と再会したのと同時刻、彼の病室内には一人の少女型人形が紙袋を手に片手に空っぽのベッドを見て、首を傾げていた。その人形はオレンジのメッシュが入った黒髪を三つ編みにし、右目につけた眼帯が特徴的だった
「あれ……弟の検査や調整も終わっているとTVRチームの
そう呟くと彼女は袋からウィスキーの酒瓶を取り出すと病室に置いてあったグラスにウィスキーを注いだ。
「まぁ、私に弟ができるとは夢にも思わなかったな。AR-15も素直に喜べばいいのにな……M4やSOPみたいにな」
彼女はそう言って、グラスに入ったウィスキーを一口飲んだ
ここでようやく、M16A4とカスミ指揮官が再開を果たしました
そして、最後に登場した人形は……誰でしょうね(白目)