MALE DOLLS   作:ガンアーク弐式

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すべての始まりを告げるカウントダウンが始まる


S07前線基地/オーバーワーク

 S07前線基地に着任して約1ヵ月が経った頃、S07前線基地の地上部中央棟にある執務室に机に座っている顔に疲労の色が浮かべた指揮官を見ながら、俺は口を開いた

 

「指揮官……人員が来るのはいつになるでしょうか?」

「……最低でも一週間ほどはハードワークを覚悟しろ」

「うぅ、交代で寝ては警戒任務……無茶にほどがあるよ」

「泣くな……私だってまともに寝ていないんだ」

 

 目元にクマを受けベタ指揮官がため息交じりに言うと俺の隣に立っていたスコーピオンさんが半ば泣き顔の表情を浮かべつつ地肩を落とした。その声は絶望に染まった声で、救いを求める目で指揮官を見ていた

 

 それを見ていた俺も指揮官の言葉に落胆を隠せなかった……それはS07前線基地に所属する人形達も同じきもちなんだろう

 

 

 

 S07前線基地が今、直面している問題……それはS07前線基地に所属する人形の数が少なすぎて、オーバーワーク状態になっている事

 

 

 元々俺達が所属していたG01前線基地の周囲には、(別のPMCに管理を任されていたとはいえ)第三居住区を除けば廃都市かそれを転用したグリフィンの練習所しかないグリフィンの管理区域でも辺境と呼ばれても無理が無い場所だ

 それゆえに、わずか13体しか人形がいないG01前線基地でも盗賊(ヒャッハー)達退治に出撃させられるだけの余裕があった。

 

 だが、カスミ指揮官と俺達が着任したS07前線基地では状況が全く違う

 

 まず、周囲には三カ所の地下施設を再利用した居住区であるメメントス街、新設されたTVRチームの研究所、それに前線基地とメメントス街や他の地区を繋ぐ地下道等護衛担当箇所が一気に増えた。おまけに地下道やメメントス街は無計画に改修工事が進められたせいで迷路のような有様で、電脳に専用のナビゲーションソフトを入れていないと間違いなく迷う

 

 複雑な地下道に、G01地区よりも多くの護衛対象を護るためには最低でも戦術人形が最低でも10人近くいないと厳しいのに、S07前線基地には俺を含めて9人しか戦術人形がいないので使える事実上常に誰かが警備任務に駆り出されているという状況だ。

 

 それでも、S09地区内のグリフィン前線基地の戦術人形が警備担当箇所の一部を肩代わりしてくれたおかげで俺が着任してから半月くらいは俺達の負担はほとんど軽減されていた

 それも一月後に来る新しい人形や人間のスタッフが配備される俺達にとっては大助かりだったのだった

 しかし、その前線基地は2週間前に鉄血の奇襲を受け壊滅したという所属していた指揮官を含む人員は全滅。その基地に所属していた80体近くの戦術人形もそのほとんどが殺され、残りも行方不明という大惨事になったらしい

 おまけにその基地の近くにはS07前線基地やメメントス街にも繋がる地下道への入り口となるトンネルが複数存在し、そのトンネルは陥落してすぐにメメントス街の自治組織とグリフィンの手によってすべて封鎖された

 

 

 だが、鉄血に進入される可能性も考えてS07前線基地を警備を厳重にすべく、警備を厳重にせざる得なかったのだ。

 

 その結果、二週間前から、目が覚めてから警備任務に出て、戻って充電と食事を取ったらすぐに別の警備対象場所へ出撃を数回繰り返した後に、メンテナンスを兼ねて睡眠をとる

 そして、起きたらのその繰り返しが二週間続いている……

 その状態でも普通だったら警備任務では使わないダミー人形をフル活用しているせいでも

 

 それを考えると目に涙を零れておちるのを感じながら、呟いた

 

「指揮官、早く追加の人員、それが無理なら本部か他の基地から応援を……」

「分かっている……ヘリアン(行き遅れ)の口に銃を突きつけさせてでも追加の人形や人員スタッフをこの基地に送らせる……だから、今は耐えてくれ」

「うん……がんばる……」

「行きましょう……スコーピオンさん」

 

 スコーピオンさんが力なく答えながら、立ち上がると俺達は執務室を後にする……さて、少し休んだら、今度はパラちゃんと一緒に第二メメントス街方面の地下道の警備だな……腹をくくって頑張るしかない

 

 ────────

 

 M16A4とスコーピオンが執務室を出ていくのを見届けたサクラは、自身の業務を続けようと書類の束に手をかけようとすると手元の端末の呼び出し音が鳴り響く

 サクラはすぐに端末を操作し、通信を繋ぐとモノクルをかけた長い髪を一つに結った女性──ヘリアン上級代行官がホログラムで映し出しされた

 

「カスミ指揮官、そちらの状況はよくないようだな」

「元々9体しかいない上に厳戒態勢……正直、私の子飼い達の負担は相当なものだ……追加の人員や人形を送ってほしいほどだ」

「その一件だが……S07前線基地に7体の戦術人形と多数のスタッフを前倒しで派遣するのと同時に本部の戦術人形約10体をS07地区のメメントス街の警備としてに派遣させる事が決まった」

「私の所に6体の戦術人形を送ってもらうのは分かるが……本部の人形をメメントス街に派遣させるだと? 本部の方で何かあったのか?」

 

 ヘリアンの言葉にサクラは目を細めながら疑問を口に出した

 戦術人形6体はともかく、本部の戦術人形もメメントス街に派遣させるという本部の決定にサクラは疑惑の念を感じた

 厳戒態勢とはいえ、S07前線基地管轄下の防衛には追加配備される戦術人形5体を含めた16体で事足りるのだ

 それにも関わらず、本部所属の人形部隊をメメントス街に配備するという決定を下したという事は『今のS07前線基地では対処しきれないナニカが起きている』のだとサクラは感づいたのだ

 

 サクラの質問にヘリアンは驚きつつも一息ついてこう言った

 

『あぁ……貴官と提携してた前線基地を壊滅させた鉄血部隊を指揮していたのが二体の未確認のハイエンドモデルである事が判明した』

「なんだと……鉄血工造の製品カタログに載っていなのか!?』

『あぁ、先日保護した壊滅した前線基地の人形の生き残りからの情報でわかった」

「そうか……未確認ハイエンドでわかっている事は?」

 

 ヘリアンの言葉にサクラは一瞬動じるもすぐに冷静に未確認の鉄血ハイエンドについて質問をぶつけた

 それを聞いたヘリアンは困惑の表情を浮かべた

 

『スマン……情報が少なすぎて分からないだらけだ。分かっている事は二体のうち一体がウォーリアと名乗っていた事ともう一体がイェーガーをベースであろうという事だけだ』

「ウォーリアと姿が見えない狙撃型鉄血ハイエンドか……厄介だな」

『あぁ、今から貴官に派遣する戦術人形とスタッフのリストと共に例のハイエンドに関する情報を添付資料に送付している……目を通してくれ』

 

 ヘリアンが言い終えると同時に通信が切れるのを見たサクラは端末を操作して、添付資料のデータを表示させた

 すると端末の画面にはS07前線基地に派遣される戦術人形のリストがこのように表示された

 リストには人形それぞれの顔写真と名前、戦術人形としてのタイプ別に以下のように表示されていた

 

 

 

 

派遣予定戦術人形リスト

HG型

M1911 4Link

 

AR型

L85A1 2Link

Mk16 1Link

 

SMG型

Gr MP5 3Link

 

RF型

M38SDMR 1Link

ファルコン 2Link

 

MG型

AAT-52 2Link

 

 

 

 

 

 そして、サクラはそのリストに目を通しているとふと「M38SDMR」の項目に目が留まった。

 

(この人形……M16A4(アイツ)とよく似た色の目をしている。顔立ちもどことなく似ているが……偶然か?)

 

「M38SMDR」のリストに併記された短く切りそろえた黒髪と()()()()()()()が特徴的な人形の顔写真を注視する

 




さて、色々な事情がありブラック状態のS07前線基地ですが新戦力が加入します

それと同時に
鉄血側にも新たなハイエンドが二体確認されました
うち一体のウォーリアはオリジナルですが、もう一体の狙撃型ハイエンドですが……もう分かる人は分かると思います
個人的には、ハーメルン界隈で最も不遇なポジションになりがちな彼女です(個人的にはヴィランとして見れば、機雷じゃないんですがね……やっぱりメタ的なアレが嫌われる要因なんでしょうか?
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