MALE DOLLS   作:ガンアーク弐式

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今回でプロローグは終了です
そろそろ、ツクモがM16A4として本格的に活動できる環境が整います


ツクモは老兵によって、前線へ歩み始めた

 この基地で行われている指揮官の横暴を知った翌日も着任時に設定された起動ルーチンがスリープモードを解除し、俺を現実へ連れ戻す。

 人間なら、夢を見て現実から逃げられるかもしれないが、俺は人形……一瞬だけ意識が闇に落ちるだけで、目が覚めれば銃を持つはずの手でモップを握る日々が始まる……はずだった。

 

「おはよう、ツクモ君……いい夢は見れた?」

「Mk48……あなたに起こして貰う必要はないですよ」

 

一時の闇から現実に戻った俺の目に映ったのはニタニタとほほ笑むMk48だった。そして、彼女があの笑みを浮かべる時はロクな事じゃない。

 

「そんなに邪見にしなくてもいいじゃない。指揮官があなたを呼んでるわ」

「指揮官が呼んでいる……とうとう解体されるのか」

 

彼女の言葉を聞いた時、呼び出した理由を考えるよりも解体されるという諦めの気持ちが先にでてきた。

 戦術人形の照明であるコアを抜き取られ、記憶を初期化された上でI.o.P社の民間人形(正確には少し違うが)として売られる事は容易に想像ついた。生産数が少ない男性型人形だ……いい意味でも悪い意味でも買い手には困らないだろう

 過酷な資源採掘現場で使い捨ての道具同然に使われるなら、まだ救いがある方で……最悪の場合、変態共のオモチャとして売られるかもしれない。盗賊に誘拐されて、娼館で変態達の相手をされるという噂まであるのだ

 

 俺の心情を理解しているのか、Mk48は笑みを崩さずに俺を見ている

 

「とりあえず、指令室に行ってみれば分かるわね、場所は分かる?」

「司令部の場所は知っていますよ」

 

彼女の粘着質な視線から逃れるように俺は充電器を兼ねたベッドから降りて、格納庫を出る。

 

 

 

 

「ツ……いえ、M16A4入ります」

 

 俺が基地の指令室のドアを開けるとグリフォンの制服を着崩した30代後半の白人男性……指揮官がオフィスデスクにふんぞり返っている。そして、彼のすく側には、同じグリフィンの制服を着た禿頭の50代後半位の鋭い目つきをした半ばアジア系男性が立っており、俺をじっとみていた。

 そして、彼が少し前にエントランスに俺に声をかけたあの人だった。彼は一体誰なんだろうか?

 

 俺の疑問に気付いてか、指揮官が相変わらず冷たい目で俺を見ながら言った

 

「M16A4、お前は今日付けでF02地区前線基地からG01地区基地へ異動となる事が決まった」

「……え?」

 

 俺は、一瞬自分の聴覚モジュールがイカレたのかと思った。俺が別の基地に異動になるとは夢に思わなかったからだ。

指揮官の悪行……戦術人形達への婦女暴行を知っている俺を別の基地へ異動させる事は、彼の悪行がバレるリスクを背負う行為に等しいからだ。

 仮に俺に箝口令を出しても、指揮官よりも上位権限を持つ人物――主に社長や合コン連敗中の上位副官に命令されら、あっさり自白するだろう。というか、異動先の指揮官の命令の方を優先されるので、箝口令自体が意味を持たない

 考えられるとしたら、G01地区の指揮官が彼とグルであるか、もしくは虚偽の命令(騙して悪いが……)でひそかに始末するつもりなんだろう。

 

 悪い予感しか頭に浮かばない中、指揮官の側にいた男が俺に一歩近づいて、口を開いた。

 

「君は前線に出る事を希望していたはずじゃないのかね?」

「え……そうですが」

 

俺が答えると彼はうなずき、言葉を続ける

 

「それとも、わしの前線基地で戦う事に不安でもあるのかね?」

「え、あなたの元で戦うって……もしかして」

「そうだ……お前に話しかけているその爺さんが、G01地区前線基地の指揮官……オサム・アラマキだ」

 

それを聞いた瞬間、俺は衝撃の余り電脳の処理が追い付かなかった。G01地区の指揮官がここにいるの、ナンデ!?

 混乱している俺に構わず、アラマキと呼ばれた彼は言葉を続ける

 

「わしとジョンは、第三次世界大戦を共に戦った戦友だ……と言ってもわしはある意味傭兵で、ジョンは米軍の新入りじゃった」

「謙遜するなよ……軍にいた頃、ELIDの群れを相手に斧と銃で大暴れしていたじゃないか」

「え…ELIDを斧で?」

 

ELID……それは青蘭島事件以降急速に広まったコーラプス汚染によって、異形化した人間や生物達の総称だ……第三次世界大戦では、ELIDを白兵戦で倒す専門集団がいたと爺ちゃんから聞いた事があるが……さすがに誇張だと思っていたが実在していた

 そう思っていたら、アラマキさんは顔少し顔をしかめた

 

「過去の話だよ……ワシも59歳、体も衰えるばかりで前線に居続けるのもELID狩りを続けるのも難しい歳じゃよ」

「狩人とも呼ばれた爺さんが現役引退か……そうだ、M16A4」

 

 指揮官は、にやけ顔からすぐに冷淡な表情を浮かべながら、デスクの下から横1m程のトランクケースを置いた。

 それを見た瞬間、俺はその場にいられず、デスクに駆け寄りトランクを開けた。中には黒光りするライフル……僕の名前でもあるM16A4とマガジン、それに銃剣OKC-3Sが入っていた。

 

「お前にはもったいないけどな」

「あぁぁ、僕の銃……ようやく戻ってきた」

 

 指揮官に皮肉を言われたが、気にもせずに俺はトランクの中の愛銃を取り出すと愛ASTT、別名烙印技術によって愛銃の事がすぐに電脳に伝わってくる

 

(整備はちゃんとされてマガジンに弾が装填されていれば、暴発もジャムも起こすことなく撃つことができる……弾さえあれば)

 

 俺は一瞬だけこの指揮官を殺してやろうかと思った……が、すぐに思いとどまった。弾が入っていないし、人間に対するセーフティで彼を殺す事ができないから……。

 

「さて……ライフルを返した所でM16A4、お前はG01地区前線基地の異動となる、いいな」

「はい……M16A4、命令を受領しました」

 

俺は指揮官の命令を聞いた瞬間、電脳が命令の上位権を彼からアラマキに上書きのを感じた。これで俺はあいつから解放され……あ、俺だけが解放された?

 

喜びの束の間、俺は彼が戦術人形達に対しての仕打ちを考えると素直に喜べなかった。アラマキさん……いや、新しい司令官は俺の顔をチラッとみて、一つため息をついた

 

「ジョン、人形遊びも自重しないと自身の獣で身を亡ぼすぞ」

「分かっている、昨日が異常なだけで、普段は副官だけで抑えているよ……早く、そいつを連れていってくれ」

「分かった……M16A4、荷造りをしろ。すぐにここを出るぞ」

「はい……司令官」

 

 元指揮官はめんどくさそうに手を振るのを見た指揮官は俺に異動の準備を命じるちとそれっきり黙ってしまった。

 それを見た俺は黙って頷き、指令室を出て、格納庫へ小走りで向かった。途中ですれ違う戦術人形達とは目を合わせず、何も言わなかった……言えなかった。

 

 

 

 

 G01地区へ向かう輸送ヘリの中で俺は隣に座っていた指揮官を見た……指令室での彼の様子からして、F02地区前線の元司令官の悪行を知っていたのは間違いない。

 なぜ、彼はグリフィン本部へこれを言わなかったのだろうか……言えば、間違いなくあの豚野郎は辞任されるのは明らかだったのに、戦友だったから、彼を庇ったから

 

「指揮官……F02地区前線基地での人形達に対する横暴を知っていたのですが」

「あぁ、奴の性分でね……米軍の頃よりも酷くなっていたな。奴のカンは本物なんじゃが」

 

 そう言いながら窓の方を見つめる指揮官は、指令室で見た時とは別の年相応の老人にみえた。

指令室でのやり取りからしても彼の性癖を正そうとしたらしいが、彼はどこ吹く風で耳を貸そうとしなかった……彼の先行きはくらそうだ

 

 そして、先ほどから気になっていた事について聞いてみた

 

「指揮官、俺をG01地区へ異動させる事を要請したのですか?」

「彼女に頼まれたのさ……飼い殺し同然のお前を拾ってくれとな」

「彼女?」

 

指揮官の言葉からすると俺の事を知っている人……それも女性に頼まれて、俺を引き取ったようだけど、誰が頼んだんだろう?

 

「あぁ、16Lab研究主任のペルシカリアに頼まれてな……お前も知っているだろう?」

「もしかして、俺を戦術人形に改修を担当したあの猫耳オバサン?」

 

指揮官が頷くと俺は頭を押さえたくなった。

 

 不健康そうな青白い顔をして、年齢に不相応な猫耳を生やしたオバサンがなぜ……俺を助けた?

 その事を考えながら窓を覗くと半壊した無数の廃ビル群が広がっているのが見えた。F02地区の廃工場区画とは別物の光景に俺の疑問は吹き飛んだ

 

ここが俺の新しい拠点となる基地があるG01地区なのか




これでプロローグ編は終了です

次からは、G01地区前線基地でのM16A4が戦術人形として本格的に活動する第1章が始まり、次章から戦術人形達も本格的に登場する予定です

その前に、F02前線基地の顛末を描写した番外編を挟む予定です

以下はM16A4の情報
後、彼を含むこのSSに登場するオリキャラはフリー素材ですが使用する際は一報をください

【名前】
M16A4
【銃種】
AR
【容姿】
銅色の髪と銀色の瞳が特徴の男性型戦術人形
外見年齢は18歳くらい
身長が180cm近く長身で若干痩せ気味な体格

【装備の詳細】
OKC-3S銃剣を装着した以外はノーマルなM16A4を使用する
サイドアームとして、P220を携帯する

【特徴】
元々日本区の工場でノックダウン方式によって製造された準I.O.P社製民生用人形
性格は物静かだが、感情が顔に出やすく、テンションの揺れ幅も非常に大きい

戦術人形となる前の名前はツクモで、名前の由来は日本古来から伝わる器物の妖怪である付喪神から

民生時代から製造時のチューニングで一般的な自律人形よりも出力が高く、戦術人形に改装された際には重い荷物を軽々持ち上げたり、出力を高い機動力を変換できるようになった

戦闘時には、基本的に距離を詰めて戦うスタイルで、高い出力による機動力を利用した銃剣突撃や近接格闘戦も得意
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