MALE DOLLS   作:ガンアーク弐式

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今回は、NTKさんの「人形達を守るモノ」とのコラボSSです
先に名言しておきますが、このSSは原作シナリオを基準しており、本編とはパラレル扱いです


EXサイド1:彼らの名は……

 ツクモことM16A4がG01地区前線基地へ到着したその晩、アラマキは指令室で報告書に目を通していた。

 

「一ヵ月後に、新人指揮官が現場研修でここに着任する……わしも引退する時が近いな」

 

アラマキは手にした書類をデスクにおくと指令室の壁に目をやった。壁には一振りの斧とM14とコルトM1911が飾られ、いずれも細かい傷がついていた。

 それらは彼が現役時に使っていた物だが、G&K社の戦力の主力が戦術人形に切り替わった後には壁に掛けられた時間の方が何が長くなった。

 

「人間が人間を殺す時代が終わるということか……ん?」

 

アラマキは自分の端末に無機質な電子音が鳴っている事に気づき、手に取ると画面にはペルシカリアの名前が表示されていた。アラマキが端末を操作し、通信機能を起動させると顔色が悪い猫耳を生やした女性が端末に表示された

 

「アラマキがG01地区にいるという事は、彼の異動はスムーズにいったのね」

「M16A4を不良品扱いしていたからな……ペルシカ、機嫌が悪そうじゃな?」

 

アラマキはペルシカと呼んだ彼女が不機嫌そうに顔をしかめていた事に気づくと彼女は嫌悪感を隠さず言い捨てた

 

「今朝、F02前線基地からM4かSOPMODⅡを着任させてほしいという要請がきたのよ。自分の悪行がばれているとも知らずにね」

「とうとう自分が置かれている状況の把握すらできなくなっていたのか……バカモノめ」

 

アラマキはかつての戦友の堕落した姿に失望を隠せなせず、ため息をつくとペルシカも言葉が過ぎたのだと察した

 

「あ……ごめん、数少ない戦友の生き残りだっけ、例の指揮官?」

「構わんよ……彼の狂気を気付けなかったわしの落ち度だよ。それよりもヘリアンはこの件をどうするつもりだ」

「ヘリアンも許せなかったらしくてね……あの子達に出撃命令を出したわ」

 

ペルシカの言葉にアラマキの脳裏に16Lab製戦術人形2名で構成された対人戦を前提にしたグリフィン本部直轄の憲兵隊とも言える戦術人形部隊が浮かび上がった

 

「あの二人か!?」

「そうよ、あの指揮官は腰でも抜かしているわね」

 

 

 

 

 指令室の中でF02前線基地指揮官こと、指令室でジョンは見知らぬ男に拳銃を向けられていた。

 

アラマキが知っている普段のジョンなら、冷静に彼が持つ拳銃の種類を見抜き、反撃の機会を探る男である。実際、男が構えている拳銃――S&WM500は、威力と引き換えに実用性を犠牲にした代物で、普段のジョンならすぐに冷静さを取り戻していた

しかし、この時のジョンはだた、恐怖に震えるだけで完全に思考停止に陥っていた。

 

「昨日は随分とお楽しみだったようだな……動くなよ」

「お前は一体……この指令室には俺以外は入る事が『私が許可した』」

 

ジョンの言葉を遮る女性の声と共に指令室のモニターにグリフィンの制服を着て、モノクルを身に付けた銀髪の女性が映し出されてた。そして、彼女はジョンに対して軽蔑のまなざしを向けていた

 

「ヘリアン、どういう事だ!?」

「グリフィン本部はお前からF02前線基地に対するすべての権限を剥奪する事を決定した……素直に出頭しろ」

 

 ヘリアンと呼んだ女性の言葉にジョンは言葉を失った。それに追い打ちをかけるように拳銃の男も口を開いた

 

「お前の副官が盗聴器やら隠しカメラを基地に仕込んだおかげで全部筒抜けだったんだぜ」

「Mk48が俺を……は、嘘だろう」

 

 ジョンは、拳銃の男が普通の人間じゃない事に気づいた。

 彼が持っているS&WM500はその威力故に他の拳銃よりも重いのに目の前の男はそれをオモチャの拳銃のように軽々と持ち、ジョンの眉間に向けていた。無論、彼が持っている拳銃はどう見ても本物の実銃である。

だが、ジョンはそれに対して一つだけこの状況を説明できる理由に気付いた。いや、気づかざるえなかった……彼は人間ではないと

 

「まさか……お前も戦術人形なのか」

「正解! 俺は16Lab謹製の男性型戦術人形、S&W(スミス&ウェルソン)M500だ」

「まさか、奴以外にも男性型人形がいたのか……じょ「黙れよ」」

男性いや、戦術人形S&WM500はジョンの言葉を遮ると怒りの形相を浮かべた。

 

アイツ(M16A4)の事を欠陥品だの、奇形だの、女目当てだの、ペルシカの逆ハーレム願望の産物だ……好き勝手いってくれたな」

「あぁ……うわぁぁ」

 

 S&WM500の威圧感に押されて、震えるしかできないなジョンを見た彼は止めを刺すように叫んだ

 

男性型人形が戦術人形になって悪いか、このユニコーン野郎!!!

「ヒイィィ!?」

 

S&WM500の恫喝にジョンの精神は限界を迎え、床に崩れ落ちるように倒れてしまった。それを見ていたヘリアンが顔をしかめた

 

「S&WM500、気絶させろとは言ってないぞ」

「同じ男性型人形としてこいつを許せなかったし、G01地区にいるアイツの分も含めてガツンといってやりたかったんだよ」

「……彼を連行しろ。先ほどM107もこの基地の人形達を保護したと連絡があった」

 

 ヘリアンがそういうと指令室のモニターが消えると彼は床に倒れているジョンに手錠をかけると俵のように担ぎ上げる。そして、彼は自身の通信機能をオンにして、隊長であるM107に通信を繋げる。

 

「M107、ユニコーンは簡単に捕まえられた。宿舎の乙女達の様子はどうだ」

『S&WM500、乙女達は全員無事だが……一つ問題がある』

「なにがあったんだ?」

 

通信越しに聞こえる青年――戦術人形M107の深刻そうな言葉にS&WM500は眉をひそめた。この指揮官が「他にも悪事を働いていたのでは?」と予想したが、M107の次の言葉に拍子抜けした

 

『内部告発をした副官のMk48から逆セクハラを受けている……早く来てくれ』

「問題って、それか!?」

『噂で俺達の事を知っていたよう『うふふ、強い人や人形なら私はナニされても構わないのよ』彼女がこの調子で体を寄せてくるんだ……他の人形達の視線も痛い』

(なんだよ、そのチョロイン系ヒロインとフラグが立ったような展開は)

 

S&WM500は通信越しに聞こえる困惑するM107と積極的にアプローチをかけるMk48のやりとりを羨ましいを感じたが、口には出さなかった

 

「分かった、この基地のエントランスで合流しようぜ」

 

 S&WM500はそう言って通信を切ると指令室を後にし、エントランスへ向かう。M107からMk48を引き離す方法を考えながら

 

 

後にM107とS&WM500の二人はグリフィンの戦術人形達の間で広く知られるようになる「人形を守る人形部隊――DG小隊」の隊長バレットと副隊長スミスとして、彼女達から称賛を受けるがこれはまだ少し先の話である。

 

 そして、間接的にとはいえ、己の懸念が解決した事をM16A4が知るのは、G01地区前線基地に着任した翌日のことであった。




NTKさん、コラボ許可ありがとうございます

そして、次から第1章です
時系列としては、G01地区基地へ異動してから約2ヵ月が経過し、例の事件が起こる2カ月前の頃から始まります

そして、彼と共にメインとなる戦術人形が二名登場します
どうぞ、楽しみにしていてください

後、感想待っています

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