MALE DOLLS   作:ガンアーク弐式

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今回、大陸鯖のネタバレが一部含まれています


G01地区はコープラスや放射能の汚染は一部を除いて軽微であるが、第三次世界大戦によって弱体化した政府に余力がないため、半ば廃棄された市街地が点在している。
それに目をつけたグリフィンの社長がここを大規模な訓練所として整備したのがG01地区前線基地の始まりである

現在は新規製造された戦術人形の戦闘スタイル確立や民間人形から転換訓練、人形小隊同士の合同訓練の場として活用される。
また、■事件発生以前はグリフィンと提携している中小PMCへの訓練場所として提供されていたが、高額な使用料に関しては各PMCから批判が相次いだ

新人指揮官に対するオリエンテーションー担当予定区画紹介より


第一章:day before the day
Two months ago~①


G01地区前線に異動してから二ヵ月が経ち、俺は指揮官の元で訓練を積み重ねる日々を過ごしていた。IOPで改修された直後の慣らし運転以外に銃を撃つ機会がなかった俺じゃ任務に出ても他の戦術人形達の足手まといにしかならない。

 

だから、まずは戦術人形としての自分の体に慣れないといけない。民間用人形の時とは出力とか姿勢制御モジュールとかが全くの別物だから、以前の感覚で動いたら、転んでしまう。愛銃であるM16A4での射撃にも慣れないといけない。

 

 G01地区は「グリフィンの教習所」の別名があるように、事実上無人地帯となった廃墟群を利用した訓練所も多く、大規模な訓練をしても被害が出にくい。

 一か月浪費した分の遅れを取り戻すにはうってつけの場所に俺が着任できたのは幸運だった……先任の戦術人形達も俺の事をすぐに受けて入れてくれた

 

「まぁ、最初は男装系女子かと想われたのはちょっとショックだったけどね」

 

俺は前線基地内にある射撃場でM16A4にマガジンを叩き込みつつ、俺の隣で射撃訓練のを始める茶色のセーラ服を着た戦術人形(先輩)……M14さんに視線を移した

彼女は自身の半身であるM14のマガジンを交換していたが、彼女は俺に視線を向けている事に気づいたのか俺の方を向いた

 

「M16、最適化が順調よく進んでいるようですね」

「M14さんのアドバイスのおかげですよ」

 

俺はM16A4のコッキングレバーを引き、セレクターをフルオートに切り替える、そして、離れた所にある人型の的……中心点に狙いを定め、引き金を引く

 

ダダダダダダダダダダダ!!!

 

連続的な銃声と共に放たれた5.56mmNATO弾が的に穴をあける。そして、マガジンすべての銃弾を撃ち尽くすと的の中心部に30個の弾痕ができていた。若干ばらけたが異動直後の乱射同然の結果と比べたら上達している。

 

そして、隣のM14さんも俺の狙った的よりもずっと遠い場所にある的の中心を正確に撃ちぬいていく。自分のM16A4よりも射程距離が長いとはいえ、確実に狙い撃つ事ができるのは、単純にASSTや火器管制モジュールだけに依存しない彼女の錬度ゆえの結果だ。

 

ただ、彼女は自分を皆と呼ぶ奇妙な癖だけは気になるが……触れない方がいい気がする

 

「全弾命中ね、皆も負けてはいられません」

「えぇ、俺も腕を磨いてM14さんやガリルさん達の役に立てるようにがんばらないと」

 

彼女は笑みを浮かべるとすぐに別の的を狙い撃ち、俺もマガジンを交換して訓練を再開する。

 

 

早く前線に立てるようになってここの皆の役に立ちたい

 

あの時の悲劇を繰り返さないように強くなりたい

 

 

 

―――――――

 

 

一時間後、俺とM14さんは訓練を終え、基地内部のカフェへ足を運んだ。

けど、カフェと言っても少し広めの部屋に机とテーブルが置かれて、奥にコンロ付きの流しと冷蔵庫が置いてあるだけの質素な休憩所だ。

 

戦術人形に転換後に。一度だけ入った事があるグリフィン本部に存在するカフェ……俗に言う「スプリングフィールドのカフェ」とは遠く及ばない粗末な物で、出される物も安物の人造コーヒーと市販の安物の菓子だけだ。味は……比べるのがバカらしくなるほどの差が付いている。

 

それでもM14さん達がカフェと呼ぶ理由は、目の前の戦術人形がここをカフェと呼ぶからだ

 

「いらっしゃいませ、CAクラブへ!!」

 

目の前の時代錯誤も甚だしいメイド服……正確には大戦前に流行ったというコスプレカフェの制服を着た髪型の一部だけをサイドテールにした金髪碧眼の戦術人形が笑みを浮かべていた

 

 彼女の名は漢陽88式……指揮官の副官で、戦術人形の皆は漢陽か88式と呼んでいる。

けど、彼女は自分の事を愛ちゃんと呼んでほしいようだが、その恰好で「愛ちゃん」と呼ぶ姿はコスプレ好きな人形にしか見えないがこの前線基地では最古参の一人だ

 だが、彼女自身は最初期の第二世代戦術人形故に人形としての性能は低いようだ。けど、稼働期間の長さゆえに戦闘技術……特に夜間戦闘で俺を含むこの基地すべての戦術人形ではトップクラスの腕前だ。俺も夜戦訓練の相手をしてもらったが相手にならなかった。

 

 今は指揮官の副官に専念しつつ、ここをカフェの真似事をしている……正直、外から見ると彼女が痛い子にしか見えないが、この基地の戦術人形のトップで指揮官に最も近い戦術人形だ

 

「また来ましたよ、漢陽さん」

「と、とりあえず俺とM14さんの二人で」

「M14さんとM16さんのお二人様ですね。後、メイドはコスプレでも遊びでもありませんよ

「アッハイ」

 

漢陽さんの笑みを崩さずにドスを効かせた声でいうと俺達をテーブルへ案内する……俺は口に出したつもりじゃないが彼女には見抜かれたというか、怒っている……よね?

 俺は彼女の笑顔に隠されたナニカにドン引きしつつも彼女の後に続こうとした瞬間、カフェに備え付けられているスピーカーから大音声で指揮官の声が響いてきた

 

「本部からこの基地への出撃命令が下った……基地内に待機中の戦術人形は指令室へ集合しろ。なお、今回はM16A4もブリーフィングに参加せよ、繰り返す……」

 

放送を聞いた瞬間、笑みを浮かべてしまった。ついにこの時が来たか

M14さんも俺と一緒に戦えるかもしれない事がうれしいのか、笑みを浮かべながら俺を見ていた。

 

「聞きましたか、M16!?」

「はい……聞きました、今回は俺もブリーフィングに参加しろと」

「では、カフェは一時閉店、皆様で指令室へ向かいましょうか」

 

漢陽さんがそう言うと俺とM14さんは黙って頷くと彼女を先頭に指令室へ向かう

 

 

―――――

 

 

私がグリフィンに入社してから1ヵ月が経った……退屈な新人研修も今日で終わりだと思ったが、本部から「G01前線に潜伏する武器の密輸業者の本拠地を制圧せよ」との司令がG01前線基地へ通達され、私はアラマキの爺さんと共に指令室へ向かっていた。

 

「サクラ、今回の作戦はワシが補佐に徹するから、お前が人形達の指揮を執れ」

「入社して1ヵ月くらいの新人指揮官に指揮権を譲っていいのか」

 

私の疑問にアラマキの爺さんは鼻で笑った

「嘘をつくな……お前の指揮経験の1ヵ月くらいじゃが実際は10年以上のベテランだ?十分信頼できる」

「そうか……では、可能な限り好きにやらせてもらうぞ」

 

アラマキの言葉に、私が笑みを浮かべて言葉を返すと彼は黙って頷く。この男が私に信頼を寄せているのだろう……指令室に籠っている指揮官共とは違う、戦場を肉眼で見ようとする者同士だからか

 

「先に言っておくが、対象が運んでいる密輸品には横流しされた鉄血重工の製品も含まれているようだ」

「なるほど、目標が自衛のために自らの商品を起動させるかもしれないという訳か……密輸業者の護衛を含めた数と武装は?」

「護衛が20人ほど、サブマシンガンとショットガンで武装している。非武装要員が拳銃を所持している程度で重火器の類は確認されていない」

 

それを聞いた瞬間、奴らはカモだと確信できた、重火器を持っていないという事はPMCの支援を受けていないか、捨て駒の弱小盗賊団。もしも、身の危険を感じたらどんな手でも使って生き残ろうとするはず……

 

「下手に時間をかけると面倒だな……一気に敵性対象と密輸品を確保もしくは、消せということか」

 

アラマキが頷いた時、私達は指令室のドアの前へたどり着いた。アラマキは自動ドアのスイッチに手を触れようとしたが、一旦手を下げると私の顔を見た

 

「サクラ、ワシも後2カ月でグリフィンを定年退職する……ワシの後任として、G01前線基地の指揮官になれるかは本部次第じゃが……失望させないでくれよ」

「もちろんさ……行こう、彼女達が待っている」

 

私じゃ自動ドアのスイッチに手を触れて自動ドアを開けると指令室の中には、アラマキの指揮官の副官である漢陽88式を始めとした戦術人形達が整列して私達を待っていた。

 

「お待ちしていました、ご主人様、サクラ・カスミ研修生様。G01前線基地所属戦術人形14体、集合しました」

 

88式は私達を見るなり、頭を下げると同時に戦術人形達全員が私とアラマキ指揮官に向かって敬礼をする。その中には、新人の人形で私が知る限り唯一の男性型戦術人形であるM16A4もその中に混ざっていた。

 

今回は彼も作戦に参加させろという事か……面白い

 

「今回、アラマキ指揮官から指揮権を委譲されたサクラ・カスミだ……これより作戦を説明する!!」




今回から第一章:day before the dayが開始しました
その第一話でM16A4の固有戦友となる戦術人形M14とサクラ・カスミ研修生が登場しました

個人的に、M14は原作ゲームでの指揮官の副官ポジで、ジオウでのゲイツのような第二の主人公キャラという印象です
そして、彼女の第一人称はここではいえませんが大陸鯖で実装されているMOD関連に関係しています

そして、サクラ・カスミ研修生はある意味ではアラマキ指揮官よりもM16A4と長い付き合いとなるキャラクターです

ジャガーマンの中の人が演じているあるゲームのキャラクターが彼女の元ネタです


最後に、第1章のタイトルはドルフロ内では重要なある事件が起こるまでの時間です

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