とりあえず、中編をどうぞ
今回と次話ではNTK氏の人形達を守るモノについての言及があります
M99に案内されて修理工場の待合室にやってきた俺達は、すでに工場に到着していた戦術人形達とあいさつを交わした
そして、グリフィン本部の戦術人形小隊のメンバーがどんな子達かと言うと……
「おまえらがアラマキ爺さんの人形達か……トンプソンだ」
サングラスにハットと旧世紀の映画に登場するマフィアのような恰好をしたSMG型戦術人形のトンプソンさん。見た目や言葉遣いからして、姐さんと呼ばれていそう……というか、指揮官の事を知っているのか?
「私の名前は一〇〇式機関銃です。G01地区の皆様、よろしくお願いします」
黒いセーラ服にサクラ柄のストッキング、それにサクラさんと同じパッツンな黒髪が特徴の礼儀正しいSMG型戦術人形一〇〇式機関銃さん。彼女の半身の銃には、戦術人形としてはめずらしく銃剣が取り付けられている……俺と同じ戦闘スタイルかもしれない
「わ、私はHK23です。ど、どうかよろしくお願いします」
おどおどした雰囲気を放つ金色のお団子ヘアーが特徴の小柄なMG型戦術人形のHK23さん。けど、なにより目を引くのは小柄の身体に不釣合いな胸部装甲……うん、これ以上の彼女を示す特徴は無いと思う
「初めまして…L85A1です。G01地区の皆様、よろしくお願いします」
くるぶしの辺りまで届くほど長い薄桃色の髪と赤フチ眼鏡が特徴的なAR型戦術人形のL85A1さん。F02地区前線基地でも同型の彼女を見た事があるけど……俺の事をチラッと見て笑ったのは気のせいじゃないと思う
そして、最後に自己紹介するのはヘリポートで出会った戦術人形でグリフィン本部派遣部隊の隊長を務める小さな戦術人形のM99ちゃん
「わたしは本部小隊の隊長を務めますM99です。G01地区の皆さん、作戦ではよろしくお願いします」
M99さん達本部派遣小隊の皆さんが自己紹介を終えた後、俺達も自己紹介を始めた
「じゃあ、私達も自己紹介をしましょうか、皆の名前はM14」
「え、M3です」
「G36Cです……皆さん、よろしくお願いします」
「わたしはMk23よ」
「M16A4です……よろしくお願いします」
彼女達の自己紹介が終わった後に返すように俺達も自己紹介をするとグリフィン本部小隊の戦術人形達の視線が俺に集中していた。一応防塵マスクで顔を隠しているがで男性型だとすぐに分かったのだろう……予測できたことだ
けど、彼女達が俺に向けるそれは興味のソレだった。どこかで俺の事を聞いたのか?
「おまえが例の男性型戦術人形か?」
「そうですけど、俺の事を知っているですか?」
「こいつからお前の事を教えてもらったのさ。アイツラ以外にも男性型戦術人形がいるとな」
トンプソンさんの質問に答えると彼女はL85A1を指差した。トンプソンさんのいうアイツラが誰のことなのか知りたかったが、それよりも……
「L85A1さん……どこで俺の事を知ったのですか?」
「どこで知ったって? うふふ……私はあなたを知っているはずよ、ツクモ君」
彼女の言葉に俺が言葉を失った。
俺の民間人形としての名前を知っているのは指揮官やG01前線基地の戦術人形達を除くと社長とヘリアン上級代行官、猫耳オバサン等の一部の人間とF02地区前線基地の戦術人形達以外は知らないはずだ……まさか、彼女は
俺が考えている事を見抜いたのかM99ちゃんが口を開いた
「彼女はF02前線基地に在籍していたL85A1ですよ、M16A4さん」
「つまり……M16が異動になる前の基地の同僚と言う事ですか?」
「はい、ツクモ君と一緒に前線に出撃する事ができてうれしいわ」
L85A1さん……正確にはF02前線基地のL85A1さんが笑みを浮かべるのを見て、自分の感情モジュールが激しく乱れた。そんな笑顔を向けれるのですか……俺は自分だけ
「ふん、やけに辛気臭い目をするな。お前、男だろう?」
「ト、トンプソンさん、それ以上はいけませんよ」
「そ、そうですよ! 彼だってあの基地の色々あったのですよ」
トンプソンさんの言葉にHK23さんとM3さんが反論するが彼女は気にも留めず言葉を続ける
「お前に何があったか、知らないが……せめてそのマスクを外して顔を見せろ」
「でも……あっはい」
トンプソンさんの威圧感に押されて、渋々つけていたマスクを外した。これ以上拒否すれば、彼女拳どころか実弾が飛んできそうな気がした‥…確実に拳が飛んできそうだ
俺はマスクを外して彼女達に素顔を見せた瞬間、彼女達は驚きの声を漏らした
「い、イケメン……ごめんなさい、無理やりお顔を見せてしまって」
「やっぱり、マスクがない方が男前よ」
「男としては若干威厳に欠けるが悪くない顔じゃないか」
「そのマスクが台無しにしています……DG小隊のお二人とは別の意味で美形ですね……」
本部小隊の反応に俺は戸惑った……というか、M99ちゃんも声には出さないが顔が若干赤らめていた。
G01地区前線基地に異動したばかりの時はここまで大げさな反応がなかったから、彼女達の反応にどう対処したらいいのか分からなかった。正直、着任したばかりの時は陰鬱な死んだ魚のような目をしていたらしく、スコーピオンさんやM14さん、後はMk23以外は近寄りすらしなかった
というか……一〇〇式さんが妙な事を言っていたような気がする。DGなんとやらって……なんかのロボアニメにでてきそうな名前だが……トンプソンが言っていたら、アイツラの事か?
「一〇〇式さん、ちょっと「君達、ちょっと自重しないかね?」」
俺の声を遮ると同時に待合室に置かれたモニターが指揮官とモノクルを掛けた女性……上級代行官のヘリアンさんを映し出した。
「「「「「し、指揮官!?」」」」」」
「「「「「「上級代行官!?」」」」」
俺は彼らの姿を見た瞬間、すぐに背を正して画面に注目する。G01地区前線の面々や派遣小隊も同じように背を正して画面に注目する。
「M16A4が困っているぞ、そこまでし。ヘリアン、彼女達は
「グリフィンに在籍する男性型戦術人形は彼と彼らだけなので物珍しさに反応しているだけです」
ヘリアンさんがため息をとつくと俺達に視線を向ける。物珍しさって、俺は珍獣じゃないぞ
やはり、男性型戦術人形ってめずら……ちょっと待って、ヘリアンさんの言葉からして俺以外に男性型戦術人形は俺いるのか?
俺の疑問を他所にヘリアンさんは画面越しに言葉を続ける
「これよりブリーフィングを始める。指揮はアラマキ指揮官が執り、カスミ暫定指揮官がオペレーターとして作戦遂行の補助を行う……」
これより今回の任務についてのブリーフィングが始まり、俺は先ほどの疑問はひとまず保留にしておいて、ヘリアンさんの説明に神経を集中させた。いろいろ聞きたいことがあるがブリーフィングの後にM99ちゃん達に聞けばいいだろう
M16A4達が作戦についてブリーフィングをしているのと同時刻、ドアの隙間から待合室の中を覗いていたキイは笑みを浮かべた
「なるほど、見た事があるはずだ……あの事件で焼失した工場で開発された民間人形じゃないか」
キイは一人笑いながら、M16A4の素顔を興味深く見ていた。