若宮との騒動が解決した翌日、俺はいつも通り屋上にいた。
「...やっぱり、ここはいいところだ。」
「__そんなに気に入ってるのかしら?」
「白鷺さん、やはり来ましたか。」
「あら?まるで分かっていた様な言い方ね。」
「まぁ、なんとなくですよ。」
「あらそう。」
白鷺さんはいつも通り、何処か掴めない雰囲気だ。
「...昨日はありがとうございました。」
「あら?なんのことかしら?」
「...意外と意地悪なんすね。」
「冗談よ♪」
白鷺さんは楽しそうだ。
「あなたも自分の本心を隠す、
つまらない『演技』はやめたみたいね。」
「えぇ、これもイヴのおかげです。」
「そう、よかったわね。」
「はい。」
白鷺さんは悪い笑顔を浮かべ...
「いつから、イヴちゃんと名前を呼び合う仲になったのかしら?」
「しつれいします。」
俺は危険を察知し逃げるように教室に走った。
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「栄斗さん!おはようございます!」
「あぁ、おはよう、イヴ。」
「「「「「!?」」」」」
俺たちのやり取りにクラスの奴らは驚いていた。
「なぁ、二人とも?」
「「なんだ?(なんでしょう?)」」
「...お前らって、付き合ってんの?」
「!い、いえ、そんなことは__」
「ありえないだろ。
俺じゃイヴに釣り合わない。」
と、俺はきっぱり答えたら...
「いててて!!!」
イヴに二の腕を摘ままれた。
「むぅ~。」
「す、すまん!何かわからないけど謝るから!
放して!」
俺は朝から悲痛な叫びをあげるのだった。
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「いたた。なんで俺はつねられたんだ?」
「ふん!自分で考えてみてください!」
イヴはご立腹のようだ。
「何かわからないが、悪かった、
許してくれ。」
「...お弁当、一緒に食べてくれたら許します。」
「そんなことでいいのか?
そのくらいだったら全然いいぞ。」
「ほんとですか!」
イヴの機嫌は治ったようだ。
「約束ですよ、栄斗さん!」
「あぁ。」
そんな会話をしていると、市ヶ谷が教室に入ってきた。
「すいませーん、八舞君はいますかー?」
「市ヶ谷か何の用だ?」
「...お前への贈り物だ。
ありがたく受けっとっときな。」
市ヶ谷は急に素を出して言ってきた。
だが...
「え?これ全部?」
「...あぁ、そうらしい。」
俺への贈り物と言われたものは、実に大きな段ボール三つ分と大量だった。
「...まぁ、頑張れよ八舞。」
「...勘弁してくれ。」
俺は一度、教室に段ボールを運び込んだ。
「栄斗さん?有咲さんは何のよう__って、
その荷物は何ですか!?」
「...俺のファンクラブからの贈り物...らしい。」
「すごいですね!人気者です!」
「...勘弁してほしいんだがな。」
「...私も入りましょうか?ファンクラブ!」
「頼むからやめてくれ。」
俺は心から思った。
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今は授業の間の、休み時間だ。
この時間はイヴと話すか、真波が絡んでくるかだったのだが...
「あなたが八舞栄斗ね!」
俺はなぜか金髪の女の子に話しかけられていた
「...はいそうですが、俺なんかに何の用で?」
「あなた!みんなに好かれてるらしいわね!」
「いや、こっちは完全に不本意なんですがね。」
「あなたはみんなを笑顔にできるわ!」
「...は?」
この子はなにを言っているんだろう?
「__こころ!」
「あら、美咲じゃない!どうしたのかしら?」
「あんた、また人に迷惑をかけていたでしょう!」
こころっと呼ばれた子の保護者みたいな子が教室に入ってきた。
保護者みたいな子は俺のほうを向いてきて。
「うちのこころがすいませんでした!」
「い、いえ、大丈夫です。」
うちのって、ほんとに保護者みたいだな。
「あれ?こころさん!美咲さん!おはようございます!」
職員室に呼び出されたイヴが帰ってきた。
「おはよう!イヴ!」
「おはよう、若宮さん。」
と、二人ともイヴに挨拶をしていた。
「それで、お二人は何のご用で?」
「八舞栄斗をスカウトしにきたの!」
「...え?」
この子、何て言った?スカウト?俺を?
「だから、こころ諦めなって!」
「いやよ!みんなを笑顔にするには必要だもの!」
と、駄々をこねている。
そして、いつのまにか、後ろに黒服の人がいた。
「八舞栄斗さん」
「うわっ!な、なんだ!?」
「お静かに...
大人しくこころ様にご協力してください。」
「...お断りします。」
「...あなたの事は全て調べ済みです。」
今回の件にご協力してくだされば、あなたのお父様の地位の向上を、お約束しましょう。」
「尚更断るね、親父とはもう絶縁済みだ。」
俺はきっぱり断った。
「なら!八舞栄斗に決めてもらいましょう!」
保護者みたいな子と言い争っていた、こころという女の子は俺に矛先を向けてきた。
「私たちと一緒に世界を笑顔にしましょう!」
「...お断りします。」
「なんで!?」
俺はきっぱり断った。
「なんで!?みんなを笑顔にできるのよ!?」
「俺はイヴの笑顔にしか興味がない。」
「え、栄斗さん!?///」
俺はきっぱり言った。
「...私はあきらめないわよ!」
「ちょ、こころ!?
あ、し、失礼しました!」
と言って、二人は去って行った。
嵐みたいだったな。
「あ、あの...」
「ん?」
イヴは控えめに話しかけてきた。
「さっきのは...どういう...?」
「ん?」
「わ、わたしの笑顔がどうとか...」
「...あぁ、イヴは俺を救ってくれたんだ。
俺はそんなイヴが笑顔ならそれでいい、それだけだ。」
俺は正直にそう言った。
「え、栄斗さん...///」
「なんだ?」
「私も栄斗さんを笑顔にできるように頑張りますね!///」
「...あぁ。」
俺たちがそんな会話をしていると...
「あ、あー、ごほん!」
真波がワザとらしく咳ばらいをした。
「なんだ?真波。」
「二人の世界に入っているとこ悪いんだが、
チャイム...鳴ったぞ。」
「「え?」」
周りを見ると、みんな席についていて、教師も来ていた。
「...やっちまったな。」
「うぅ...///」
イヴは見るからに顔真っ赤だ。
うん、ごめんな、イヴ。
俺たちはクラスメイトにチラチラ見られつつ、残りの午前の授業を受けた。
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「うぅ、とっても恥ずかしかったです...///」
「...うん、マジですまんかった。」
俺たちは屋上で弁当を食べていた。
イヴはまだ恥ずかしそうにしてる。かわいい(確信)
「...栄斗さんのお弁当、今日は洋食なんですね!」
「あぁ、気分だったからな。」
イヴは弁当の話題で調子を取り戻していた、
「...なにかいるか?」
「いいんですか!...じゃあ、ハンバーグを...あ!」
イヴは何かを思いついたようだ。
「栄斗さん!食べさせてください!」
「え!?」
「あーん!」
イヴは口を開けている。
「...まったく、箸借りるぞ
ほれっ。」
俺はイヴの箸で食べさせてやった。
「うーん!おいしいです!」
「それはよかった。」
「じゃあ、私からもお返しで...
はい、あーん!」
イヴは卵焼きを差し出してきた。
「いや、俺は__」
「食べてくれないんですか...?」
イヴは悲しそうな顔をする。
「わかったわかった!
...あーん。」
「...どうですか?」
「うん、うまいぞ!」
「ほんとですか!
よかったです!」
俺たちがそんな感じに弁当を食べていると...
「見つけたわよ!」
そこには、イヴから教えてもらった
弦巻こころがいた。
「__なんのようだ?」
「もちろん!スカウトよ!」
「それはさっき断っただろ。」
俺はきっぱりと言った。
「ダメよ!」
「いや、なんでだよ。」
「あなたの事を話す女子はみんな笑顔だわ!
だから、あなたが必要なの!」
弦巻の目には確固たる決意が見られる、が
「何を言われても、お断りだ。」
「ダメよ!ダメ__」
「こころ!!」
「美咲!」
「もう、八舞君には何もしないって言ってたでしょう!」
「だって...諦めきれないんだもの...」
弦巻は悲しそうな顔をしている。
「...栄斗さん。」
「どうした?イヴ?」
「こころさんに協力してあげられないでしょうか?」
「ちょ、若宮さん!?」
と、保護者みたいな子が驚いた反応をしている。
「こころさんも悪気があってしている事ではありませんし。
...このままだと、かわいそうです...」
「イヴ...。」
そうだ、イヴはこういうやつだったな。
「...わかったよ、協力してやる。」
「ほんとうに!?」
「ちょ、八舞君!?」
「ただし、一回だけだぞ。」
「わかったわ!」
弦巻はうれしそうだ。
「...なんかごめんね、八舞君。」
「イヴの頼みだからな、仕方ないよ、えっと?」
「わたしは奥沢美咲、よろしく。」
「あぁ。」
この人、苦労してるんだな。
「で、俺は何をするんだ?」
「あなたには、次のライブに出てもらうわ!」
「はい?ライブ?」
「そう!ハロハピのライブよ!」
「えぇぇぇぇ!!!」
俺の驚きと絶望を含んだ叫びは...
まるで、今の状況のように、空へかき消されるのだった。
感想などおねがいします!