恋愛のブシドー   作:火の車

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ハロハピ出してかないと。


第11話

 若宮との騒動が解決した翌日、俺はいつも通り屋上にいた。

 

「...やっぱり、ここはいいところだ。」

「__そんなに気に入ってるのかしら?」

「白鷺さん、やはり来ましたか。」

「あら?まるで分かっていた様な言い方ね。」

「まぁ、なんとなくですよ。」

「あらそう。」

 

 白鷺さんはいつも通り、何処か掴めない雰囲気だ。

 

「...昨日はありがとうございました。」

「あら?なんのことかしら?」

「...意外と意地悪なんすね。」

「冗談よ♪」

 

 白鷺さんは楽しそうだ。

 

「あなたも自分の本心を隠す、

 つまらない『演技』はやめたみたいね。」

「えぇ、これもイヴのおかげです。」

「そう、よかったわね。」

「はい。」

 

 白鷺さんは悪い笑顔を浮かべ...

 

「いつから、イヴちゃんと名前を呼び合う仲になったのかしら?」

「しつれいします。」 

 

 俺は危険を察知し逃げるように教室に走った。

__________________________________

 

「栄斗さん!おはようございます!」

「あぁ、おはよう、イヴ。」

「「「「「!?」」」」」

 

 俺たちのやり取りにクラスの奴らは驚いていた。

 

「なぁ、二人とも?」

「「なんだ?(なんでしょう?)」」

「...お前らって、付き合ってんの?」

「!い、いえ、そんなことは__」

「ありえないだろ。

 俺じゃイヴに釣り合わない。」

 

 と、俺はきっぱり答えたら...

 

「いててて!!!」

 

 イヴに二の腕を摘ままれた。

 

「むぅ~。」

「す、すまん!何かわからないけど謝るから!

 放して!」

 

 俺は朝から悲痛な叫びをあげるのだった。

___________________________________

 

「いたた。なんで俺はつねられたんだ?」

「ふん!自分で考えてみてください!」

 

 イヴはご立腹のようだ。

 

「何かわからないが、悪かった、

 許してくれ。」

「...お弁当、一緒に食べてくれたら許します。」

「そんなことでいいのか?

 そのくらいだったら全然いいぞ。」

「ほんとですか!」

 

 イヴの機嫌は治ったようだ。

 

「約束ですよ、栄斗さん!」

「あぁ。」

 

 そんな会話をしていると、市ヶ谷が教室に入ってきた。

 

「すいませーん、八舞君はいますかー?」

「市ヶ谷か何の用だ?」

「...お前への贈り物だ。

 ありがたく受けっとっときな。」

 

 市ヶ谷は急に素を出して言ってきた。

 だが...

 

「え?これ全部?」

「...あぁ、そうらしい。」

 

 俺への贈り物と言われたものは、実に大きな段ボール三つ分と大量だった。

 

「...まぁ、頑張れよ八舞。」

「...勘弁してくれ。」

 

 俺は一度、教室に段ボールを運び込んだ。

 

「栄斗さん?有咲さんは何のよう__って、

 その荷物は何ですか!?」

「...俺のファンクラブからの贈り物...らしい。」

「すごいですね!人気者です!」

「...勘弁してほしいんだがな。」

「...私も入りましょうか?ファンクラブ!」

「頼むからやめてくれ。」

 

 俺は心から思った。

_____________________________________

 

 今は授業の間の、休み時間だ。

この時間はイヴと話すか、真波が絡んでくるかだったのだが...

 

「あなたが八舞栄斗ね!」

 

 俺はなぜか金髪の女の子に話しかけられていた

 

「...はいそうですが、俺なんかに何の用で?」

「あなた!みんなに好かれてるらしいわね!」

「いや、こっちは完全に不本意なんですがね。」

「あなたはみんなを笑顔にできるわ!」

「...は?」

 

 この子はなにを言っているんだろう?

 

「__こころ!」

「あら、美咲じゃない!どうしたのかしら?」

「あんた、また人に迷惑をかけていたでしょう!」

 

 こころっと呼ばれた子の保護者みたいな子が教室に入ってきた。

 保護者みたいな子は俺のほうを向いてきて。

 

「うちのこころがすいませんでした!」

「い、いえ、大丈夫です。」

 

 うちのって、ほんとに保護者みたいだな。

 

「あれ?こころさん!美咲さん!おはようございます!」

 

 職員室に呼び出されたイヴが帰ってきた。

 

「おはよう!イヴ!」

「おはよう、若宮さん。」

 

 と、二人ともイヴに挨拶をしていた。

 

「それで、お二人は何のご用で?」

「八舞栄斗をスカウトしにきたの!」

「...え?」

 

 この子、何て言った?スカウト?俺を?

 

「だから、こころ諦めなって!」

「いやよ!みんなを笑顔にするには必要だもの!」

 

 と、駄々をこねている。

 そして、いつのまにか、後ろに黒服の人がいた。

 

「八舞栄斗さん」

「うわっ!な、なんだ!?」

「お静かに...

 大人しくこころ様にご協力してください。」

「...お断りします。」

「...あなたの事は全て調べ済みです。」

 今回の件にご協力してくだされば、あなたのお父様の地位の向上を、お約束しましょう。」

「尚更断るね、親父とはもう絶縁済みだ。」

 

 俺はきっぱり断った。

 

「なら!八舞栄斗に決めてもらいましょう!」

 

 保護者みたいな子と言い争っていた、こころという女の子は俺に矛先を向けてきた。

 

「私たちと一緒に世界を笑顔にしましょう!」

「...お断りします。」

「なんで!?」

 

 俺はきっぱり断った。

 

「なんで!?みんなを笑顔にできるのよ!?」

「俺はイヴの笑顔にしか興味がない。」

「え、栄斗さん!?///」

 

 俺はきっぱり言った。

 

「...私はあきらめないわよ!」

「ちょ、こころ!?

 あ、し、失礼しました!」

 

 と言って、二人は去って行った。

 嵐みたいだったな。

 

「あ、あの...」

「ん?」  

 

 イヴは控えめに話しかけてきた。

 

「さっきのは...どういう...?」

「ん?」

「わ、わたしの笑顔がどうとか...」

「...あぁ、イヴは俺を救ってくれたんだ。

 俺はそんなイヴが笑顔ならそれでいい、それだけだ。」

 

 俺は正直にそう言った。

 

「え、栄斗さん...///」

「なんだ?」

「私も栄斗さんを笑顔にできるように頑張りますね!///」

「...あぁ。」

 

 俺たちがそんな会話をしていると...

 

「あ、あー、ごほん!」

 

 真波がワザとらしく咳ばらいをした。

 

「なんだ?真波。」

「二人の世界に入っているとこ悪いんだが、

 チャイム...鳴ったぞ。」

「「え?」」

 

 周りを見ると、みんな席についていて、教師も来ていた。

 

「...やっちまったな。」

「うぅ...///」

 

 イヴは見るからに顔真っ赤だ。

 うん、ごめんな、イヴ。

俺たちはクラスメイトにチラチラ見られつつ、残りの午前の授業を受けた。

___________________________________

 

「うぅ、とっても恥ずかしかったです...///」

「...うん、マジですまんかった。」

 

 俺たちは屋上で弁当を食べていた。

 イヴはまだ恥ずかしそうにしてる。かわいい(確信)

 

「...栄斗さんのお弁当、今日は洋食なんですね!」

「あぁ、気分だったからな。」

 

 イヴは弁当の話題で調子を取り戻していた、

 

「...なにかいるか?」

「いいんですか!...じゃあ、ハンバーグを...あ!」

 

 イヴは何かを思いついたようだ。

 

「栄斗さん!食べさせてください!」

「え!?」

「あーん!」

 

 イヴは口を開けている。

 

「...まったく、箸借りるぞ

 ほれっ。」

 

 俺はイヴの箸で食べさせてやった。

 

「うーん!おいしいです!」

「それはよかった。」

「じゃあ、私からもお返しで...

 はい、あーん!」

 

 イヴは卵焼きを差し出してきた。

 

「いや、俺は__」

「食べてくれないんですか...?」

 

 イヴは悲しそうな顔をする。

 

「わかったわかった!

 ...あーん。」

「...どうですか?」

「うん、うまいぞ!」

「ほんとですか!

 よかったです!」 

 

 俺たちがそんな感じに弁当を食べていると...

 

「見つけたわよ!」

 

 そこには、イヴから教えてもらった

 弦巻こころがいた。

 

「__なんのようだ?」

「もちろん!スカウトよ!」

「それはさっき断っただろ。」

 

 俺はきっぱりと言った。

 

「ダメよ!」

「いや、なんでだよ。」

「あなたの事を話す女子はみんな笑顔だわ!

 だから、あなたが必要なの!」

 

 弦巻の目には確固たる決意が見られる、が

 

「何を言われても、お断りだ。」

「ダメよ!ダメ__」

「こころ!!」

「美咲!」

「もう、八舞君には何もしないって言ってたでしょう!」

「だって...諦めきれないんだもの...」

 

 弦巻は悲しそうな顔をしている。

 

「...栄斗さん。」

「どうした?イヴ?」

「こころさんに協力してあげられないでしょうか?」

「ちょ、若宮さん!?」

 

 と、保護者みたいな子が驚いた反応をしている。

 

「こころさんも悪気があってしている事ではありませんし。

 ...このままだと、かわいそうです...」

「イヴ...。」

 

 そうだ、イヴはこういうやつだったな。

 

「...わかったよ、協力してやる。」

「ほんとうに!?」

「ちょ、八舞君!?」

「ただし、一回だけだぞ。」

「わかったわ!」

 

 弦巻はうれしそうだ。

 

「...なんかごめんね、八舞君。」

「イヴの頼みだからな、仕方ないよ、えっと?」

「わたしは奥沢美咲、よろしく。」

「あぁ。」

 

 この人、苦労してるんだな。

 

「で、俺は何をするんだ?」

「あなたには、次のライブに出てもらうわ!」

「はい?ライブ?」

「そう!ハロハピのライブよ!」

「えぇぇぇぇ!!!」

 

 俺の驚きと絶望を含んだ叫びは...

 まるで、今の状況のように、空へかき消されるのだった。




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