朝、私はいつも通りの時間に目覚めました。
今日は体育祭の振り替え休日で休みです。
ですが、やることはいくらでもあります。
そう思い、私は体を起こしました。
日菜『__おねーちゃーん。起きてるー?』
紗夜「日菜?起きてるわよ。どうしたの?」
私がそう答えると、日菜が私の部屋に入ってきました。
日菜「イヴちゃんの誕生日プレゼント買いに行こうよ!」
紗夜「若宮さんの?」
日菜「うん!」
紗夜「そうね、明日だし急がないと。」
日菜「じゃあ!」
紗夜「えぇ。一緒に買いに行きましょうか。」
日菜「やったー!」
そう言って日菜は部屋を出て行きました。
紗夜「私も準備しましょうか。」
私も部屋を出て洗面をしたり、朝食を食べたりなどの準備をしに行きました。
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少し時間が経って、私と日菜は家を出ました。
この辺りで買い物をするならショッピングモールと思い、私達はそこに向かいました。
日菜「__何にしよっかなー?」
紗夜「なにがいいかしら。」
ショッピングモールの中にある一つの店で私達は考えていました。
若宮さんの好きな物をプレゼントするのがいいのですが。
日菜「ブシドーなんだよねー。」
紗夜「そうね......」
ブシドー......
思い当たるもの......
紗夜「あっ。」
日菜「おねーちゃん?」
紗夜「あれなんて、どうかしら?」
日菜「どれどれー?」
私は城の置物を指さしました。
若宮さんが好きそうなデザインでいい感じのサイズだし、いいかもしれないわね。
日菜「うん!るんっ♪てきたよ!」
紗夜「あれにしましょうか。」
私達はその城の置物を買いました。
少し値が張るので、日菜と半分にして。
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日菜「__いいものが買えたねー!」
紗夜「そうね。」
栄斗「__さて、イヴへのプレゼントをどうするか......」
紗夜(あれは、八舞君?)
私達が歩いていると、頭を抱えた八舞君がいました。
もう聞かなくても頭を抱えてる理由が分かります。
日菜「あれ?栄君?」
栄斗「?」
八舞君がこちらに振り向きました。
栄斗「どうも、こんにちは。」
紗夜「えぇ。八舞君はなぜここに?(分かっていますが。)」
日菜「わかった!イヴちゃんの誕生日プレゼントでしょう!」
栄斗「はい、まぁ。」
彼はすこし難しい顔をしています。
紗夜「難しい顔をしていますね?」
栄斗「はい......いいものが思いつかなくて。」
日菜「じゃあ、手伝ってあげるよ!」
日菜はそう言いました。
私達の買い物は終わっているし、時間もあるからいいのだけれど。
栄斗「え?いいんですか?せっかく二人で来てたのに?」
紗夜「構いませんよ。」
栄斗「...じゃあ、お願いします。」
日菜「うん!」
紗夜「えぇ。」
それから私達は色々な店に行きましたが、あまりいい物は見つかりませんでした。
栄斗「......決まらねぇ。」
日菜「うん、るんって来るのがないね...」
紗夜「えぇ、そうね。」
栄斗「!」
そんな話をしている途中、彼の表情が動きました。
紗夜「どうしました?八舞君。」
栄斗「すいません、あの店に行ってきます。」
日菜「あ!私も行きたい!」
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彼が入ったのはアクセサリーショップでした。
彼は熱心に何かを見ています
栄斗「...これは。」
紗夜「どうしました?」
栄斗「これ、綺麗だと思って。」
日菜「うん!それ!るんっ♪ってくるよ!」
紗夜「そうですよね。」
店員「__そちらを気に入られましたか?」
私達が話してると、ここの店員さんが話しかけてきました。
かなりご年配の方です。
栄斗「はい、とても綺麗だなと。」
店員「誰かへのプレゼントでしょうか?」
栄斗「はい...ですけど、なぜ分かったんですか?」
店員「この職が長いので見たらだいたいわかるんですよ。」
栄斗「なるほど。」
経験、という事でしょうか。
すごいですね。
店員「ちなみにその石の名前は『スフェーン』石言葉は___です。」
栄斗「...これにしよう。」
紗夜「それはいいんですが、お金は大丈夫なんですか?」
栄斗「大丈夫です。(生活費を切り崩せば、これくらい。)」
店員「...そうですか。」
日菜「いいね栄君!男らしいね!」
栄斗「...イヴのためです。」
彼はそう言うと、そのアクセサリーを購入しました。
栄斗「プレゼントが決まってよかったです。ありがとうございました。」
紗夜「問題ありません。」
日菜「全然、大丈夫だよ!」
彼の頑張りように私と日菜は自然と笑顔になりました。
私達は少し話してそれぞれの家に帰りました。
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翌日、私達は八舞君の家に向かっていました。
理由は日菜が、
日菜『栄君、大変だろうから手伝いに行こ!』
と言った事です。
私は、いつも天真爛漫すぎる妹が心遣いを出来たことに朝から感動しました。
日菜「__着いたよ!」
日菜はマンションの一室のインターフォンを押しました。
栄斗「__はーい、どちら様でしょう。」
日菜「おはよ!栄君!」
紗夜「おはようございます。八舞君。」
私達は出て来た八舞君に挨拶をしました。
栄斗「どうしたんですか?パーティーまでは時間がありますが?」
紗夜「少しでもお手伝いしようと日菜が。」
栄斗「え!?」
私がそう言うと八舞君は驚いた声を上げました。
栄斗「日菜さんって、気を遣えたんだ...」
日菜「何か言った?栄君?」
栄斗「い、いや!何でもないです。」
日菜「そう?」
痛いほど八舞君の気持ちは分かります。
日菜は聞き取れなかったのか首をかしげています。
栄斗「...手伝いは助かります。ありがとうございます。」
紗夜「いえ、一人に押し付けるのも悪いですし。」
栄斗「じゃあ、お二人には飾りなどをお願いしてもいいですか?」
紗夜「はい。」
日菜「うん!まかせて!」
そうして、私達は準備を始めました。
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準備は意外と早く終わり、私達は座ってくつろいでいました。
栄斗「__二人が来てくれて助かりました。」
紗夜「いえ、役に立ててよかったです。」
日菜「そうだよ!」
栄斗「あ、待っててください、お茶でも出すんで。」
紗夜「お構いなく。」
栄斗「そういう訳にもいかないんで。」
そんな話をしていると、インターフォンが鳴りました。
栄斗「はーい!......少し出てきます。」
紗夜「えぇ。」
日菜「うん!」
彼が玄関の方に行って戻って来ると、パスパレの皆さんが来ました。
彩「__あれ?紗夜ちゃんと日菜ちゃん、来てたの?」
紗夜「えぇ、すこしお手伝いに。」
彩「え~!私たちもくればよかった...」
千聖「そうね。」
麻弥「そうっすね。」
栄斗「別にいいっすよ。もとは一人でやる気だったんで。」
千聖「...あなたは、そういうところは変わらないのね。」
栄斗「なにがっすか?」
千聖「私たちは友達なのよ?こういう時は頼りなさい。」
麻弥「そうっすよ!頼ってほしいっす!」
彩「うん!」
私も含め、皆が頷きました。
栄斗「...ありがとうございます。」
彼は照れているのか、少し目をそらしています。
可愛らしいですね。
栄斗「...そろそろ、イヴを迎えに行ってきます。」
彼はそう言って家を出て行きました。
彩「それじゃあ!私達も準備しよっか!」
麻弥「ジブン、靴を隠してきます!」
千聖「じゃあ、私も。」
私達も他の準備を開始しました。
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イヴ『__着きました!』
栄斗『あぁ、そうだな。』
良い感じに準備が終わったころに、二人が来ました。
彩「あ、来たよ来たよ!」
私達はドアの方に目を向けました。
パスパレ「__イヴちゃん!お誕生日おめでとう!!!」
イヴ「え?な、なんで?」
栄斗「今日はイヴの誕生日だからな、みんなを呼んでパーティーを企画してみた。」
若宮さんは目を見開いたまま、固まってしまいました。
まぁ、驚きますよね。
栄斗「......どうだ?イヴ?」
イヴ「とっても、とっても、うれしいです!」
若宮さんは笑顔でそう言いました。
イヴ「みなさん!ありがとうございます!!」
若宮さんがそう言うと、パーティーが開始されました。
栄斗「さぁ、イヴ、食べてくれ。イヴが気に入ってたのも作ってあるぞ。」
イヴ「はい!栄斗さん!」
若宮さんはすぐに皆の輪に入って行きました。
彩「イヴちゃ~ん!誕生日おめでと~!」
イヴ「ありがとうございます!」
若宮さんはとても楽しそうに笑顔を浮かべています。
イヴ「栄斗さんも食べましょう!」
栄斗「あぁ。」
若宮さんに呼ばれ彼も皆の方に行きました。
麻弥「これ美味しいっすね!」
イヴ「栄斗さんの料理はどれも美味しいんです!」
栄斗「...なんで、イヴが誇らしげなんだ。」
彼はとても楽しそうです。
紗夜「__あなたの心は救われたようですね。」
私は彼にそう話しかけました。
彼は少し笑みを浮かべて答えました。
栄斗「...はい、これも皆のおかげです。」
紗夜「ふふっ、そうですか。」
栄斗「はい。」
しばらくすると、料理が残り少なくなってきました。
栄斗「じゃあ、デザートにしましょうか。」
彩、日菜「待ってました!」
丸山さんと日菜がそう言うと、八舞君がケーキを切り分けました。
栄斗「はい、皆さんどうぞ。」
千聖「へぇ、切るの上手なのね。」
栄斗「...普通ですよ。」
皆がケーキを食べ始めました。
このケーキ、手作りらしいですが、すごいですね。
栄斗「あ、もう一つデザートありますよ。」
彼はそう言うと、一つの容器を取り出しました。
イヴ「栄斗さん!これはまさか!」
栄斗「あぁ、ジンジャークッキーだ。」
イヴ「やっぱりですか!すごいです!栄斗さん!」
栄斗「...まぁ、食べてみてくれ。」
イヴ「はい!」
若宮さんはクッキーを口に入れました。
表情でわかります、美味しいんですね。
イヴ「すっごく美味しいです!」
栄斗「よかった。」
日菜「八舞君って女子力高いよね~!」
彩「あ、それ!私も思う~!」
麻弥「ジブンもっす!」
紗夜「......女性としては悔しくもありますけどね。」
千聖「そうね。」
私達は各々、感想を口にしました。
正直、彼は何でもできます。
栄斗「......紅茶淹れますが、いる人は?」
彼がそう言うと、私を含めた全員が手を挙げました。
栄斗「......じゃあ、淹れてきます。」
彼はそう言うと、キッチンの方に行きました。
そして、少しすると戻ってきました。
栄斗「__はい、どうぞ。」
彼は淹れて来た紅茶を配って行きました
私は紅茶を一口飲みました。
......美味しいです。
千聖「あら?この紅茶...」
栄斗「どうしました?」
千聖「美味しいわ。」
白鷺さんも目を丸くしています。
千聖「私のマネージャーにほしいわ。」
栄斗「ははは、断っておきます。」
千聖「あら、残念ね♪」
白鷺さんの雰囲気がいつもと少し違いますね。
楽しいんでしょう。
しばらくすると、丸山さんが口を開きました。
彩「__そろそろ、プレゼント渡そうよ!」
紗夜「まぁ、いい頃合いですね。」
そうすると、各々プレゼントを出しました。
丸山さんが文房具セット、大和さんが時代劇のDVD、白鷺さんが遊園地の招待券、私と日菜は城の置物。
そして......
栄斗「......俺か。」
彩「よっ!おおとり!」
千聖「八舞君は何を送るのかしら?」
麻弥「ジブン、気になりますっ!」
栄斗「ハードル上げるのやめません?」
紗夜「......大丈夫です、八舞君。」
栄斗「氷川さん......」
日菜「そうだよ!あんなに悩んだんだから!」
栄斗「日菜さん......じゃあ__」
彼は一度、深呼吸をして......
栄斗「俺からはこれだ。」
彼は昨日買ったネックレスを出しました。
イヴ「え!?いいんですか!?」
栄斗「構わない。」
彼は一見、いつもと変わらないように見えますが、かなり緊張しています。
栄斗「...イヴ。」
イヴ「はい!」
栄斗「その石の石言葉は『永久不変』なんだ。だから、その、これからも、一緒にいてくれ。」
彼は若宮さんから少し目をそらして言いました。
イヴ「......」
栄斗「イヴ?」
若宮さんは涙を流していました。
栄斗「どうした!?イヴ!?」
イヴ「私、嬉しいんです!でも、涙が出ちゃうんです...!」
紗夜(あっ......)
嬉しそうな若宮さんと彼の姿が遠く見えます。
栄斗「...これからも、一緒にいてくれるか?」
イヴ「はい!これからも、ずっと一緒にいます!」
紗夜(......)
それからの事は、よくわかりません。
ただ、私は分かりました。
紗夜(彼の目に、私は写っていないです。)
でも、何もしないで終わらないと決めました。
紗夜(ベランダに出た?)
私は彼を追って、ベランダに行きました。
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栄斗「ふぅ、みんなが楽しそうでよかった。」
紗夜「__そうですね。」
ベランダで一息ついている彼に話しかけました。
今にも心臓が爆発しそうです。
栄斗「氷川さん。」
彼は静かに私の名前を呼びました。
......もう、これを聞けることもないのですね。
栄斗「氷川さんは混ざらないんですか?」
紗夜「......私はああいうのは苦手なんです。」
栄斗「......それっぽいっすね。」
何を話せばいいか分かりません
今、私は何の話をすることを求めているのか、それすらわかりません。
紗夜「__若宮さんと仲がよろしいんですね。」
気づけば、そんな言葉が出ていました。
栄斗「まぁ、大切であることは間違いないです。」
その言葉に彼は迷うことなく、そう答えました。
大切、ですか......
紗夜「......若宮さんは幸せ者ですね。」
栄斗「そうでしょうか?」
紗夜「えぇ、思ってくれる人がいるのは幸せですよ。」
栄斗「まぁ、そうですね。」
彼は自分も、と言った感じでそう答えました。
彼は、確か両親が......
あの時の言葉はそう言う意味だった......
紗夜「八舞君は覚えてますか?初めて会った日の事を。」
栄斗「......えぇ。」
紗夜「あの時、私は自分の無力を呪いました。そんな時に八舞君は励ましてくれましたね。」
栄斗「......氷川さんは正しいことをしてたんだ、自分を呪うことなんてなかったんですよ。」
紗夜「それでも、私は嬉しかったんです。私は風紀委員でもやりすぎと言われてますから。」
彼はいつも優しい。
あの時からずっと。
彼から目が離れません。
そう、私はここで......
栄斗「どうしたんですか?氷川さ__」
紗夜「私はあなたの事が好きです。」
栄斗「__え?」
......散っていくのですね。
栄斗「え?な、なんで?」
紗夜「......わかりません。私も気づいたのは最近なんですから。」
私は彼をまっすぐ見ました。
どんな結果も受け入れられるように。
紗夜「私と付き合ってくれますか?」
私はそう問いかけました。
彼は少しうつ向いて、苦しそうな声で
栄斗「...少し待ってください。」
そう答えました。
振るわけでも、受け入れるわけでもない。
考えれば、優しい彼がすぐに振るとは考えられないですね。
紗夜「......あなたなら、そう言うと思いました。私はいつまでも待ちます。」
そう言って、私は室内に戻りました。
心臓が激しく動いています。
紗夜(さようなら、私の初恋の人......)
私は見え透いた結果を見据え、そう心の中でつぶやきました。