”Roselia”
「...八舞君がマネージャーをやめたわ。」
友希那はそう言った。
「どういうことですか、湊さん!?」
「八舞君が...やめるなんて...」
「何があったんですか、友希那さん!?」
「...私のせいよ。」
「いや!私も...」
友希那とリサはそう言う。
「ど、どういう事ですか!?」
「彼の隠してる事を聞いたわ。」
「隠してる、事?」
「どういう事なんでしょうか...湊さん?」
「彼は私たちに何かを隠していたわ。」
「え、隠し事、ですか?」
「そうよ。」
ロゼリアのメンバーは思い当たる部分があった。
「...でも、八舞君は聞いてほしくなかったんじゃないですか?」
紗夜はそう言った。
「何か理由があって、知ってほしくなかったんじゃないでしょうか?」
「...そうね。」
紗夜は...
「八舞君に謝ってください。私も協力します。」
と、言った。
「そうですね...私も協力します...」
「あこも!」
「わかったわ。」
「そうだね、友希那。」
ロゼリアの今後の方針が決まった。
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ロゼリアのマネージャーをやめて、一週間が経った。
家の復旧は終わっている。でも、帰る気も起きない。
学校にも行ってない。
「...ほんと、俺はいつもこうだな。」
俺の事は人に話すようなものじゃない。
思い出すだけだ、あの目を...
「...あの5日は楽しかった思い出だな。」
「__あれ?八舞君?」
「丸山さん...?」
俺が川を眺めてると、丸山さんが通りかかった。
「...バイト終わりですか?」
「うん!...八舞君はどうしたの?学校にも来てないって紗夜ちゃんが心配してたよ?」
丸山さんはそう聞いてきた。
「ロゼリアの皆と会いたくないんですよ。」
「なんで?マネージャーもやめたらしいし。」
「丸山さんに話すことでもないですよ。」
俺は川を眺めたままだ。
「...八舞君はなんで、そんなに悲しそうなの?」
「...そう見えますか?」
「うん。少なくとも笑顔ではないよ。」
丸山さんは俺の横に来た。
「何があったの?」
「実は__」
俺はあった事を話した。
「そんなことが...」
「はい。」
丸山さんは目を見開いている。
「もとはと言えば、俺に隠さなきゃいけないことがあるのが悪いんですけどね。」
「そんなことないよ?」
「?」
「私にも人に言えないことの一つや二つあるし。この前もスイーツ食べに行ったの千聖ちゃんに黙ってるし!あ、これは内緒だよ?」
「はい、それはいいですけど。何が言いたいんでしょうか?」
「私は隠し事はあってもいいと思うよ!アイドルには隠し事なんて一杯あるからね!」
「そうですか。」
「でも...」
「?」
丸山さんは空を見て。
「仲間には、あんまり隠し事はしたくないし、してほしくないな。」
「...」
「私はあんまり賢くないからうまく言えないんだけど、信頼があればあるほど本音を言い合えるんだと思うよ?私はそうだったから。」
丸山さんはそう言った。
「八舞君が何を隠してるかは分からないけど、ロゼリアの皆を信じてみてもいいんじゃないかな?」
「丸山さん...」
多分、隠し事の種類も環境も全部違う。
でも、俺には丸山さんの言葉に説得力があるように思えた。
「...分かりました、話してみます。」
「うん!そうするといいよ!」
「すいませんが、丸山さんにも協力していただけないでしょうか。」
「いいけど...何をすればいいの?」
「ロゼリアのメンバーを俺の家に呼んでください。」
「うん!分かった!でも、八舞君は?」
「俺は話すまで学校に行けないので。」
「そうなの。じゃあ、みんな呼んでおくね!」
「お願いします。」
その後、俺は丸山さんと分かれた。
「...大丈夫。ロゼリアはあんな奴らとは違う。」
俺は帰路についた。
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”紗夜side”
「...今日も、来ていませんか。」
紗夜は栄斗のクラスを見に来ていた。
「(彼と過ごした時間は短かったですが、楽しいものでした...。そして、彼がいなくなったらとても寂しいです...)」
紗夜は悲しそうな顔をしている。
「八舞君...」
「__紗夜ちゃーん!!」
「丸山さん?」
彩が紗夜のもとに走ってきた。
「どうしたのですか?」
「うん、実は__」
彩は昨日の事を紗夜に話した。
「八舞君が!?」
「うん。そう言ってたよ!」
「ありがとうございます、丸山さん。メンバーには私から連絡しておきます。」
「うん!...八舞君、何かを決めた顔をしてたから、しっかり受け入れてあげてね。」
「...はい!」
紗夜はメンバーに連絡した。
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放課後になった。
「紗夜!」
「湊さん、お早いですね。」
「え、えぇ。朝の連絡は本当なのかしら?」
「はい。事実です。」
「...丸山さんには感謝しないといけないわね。」
「ちょ!友希那~!!」
「友希那さん、早いですよー!!」
リサとあこも走ってきた。
「あとは__」
「はぁはぁ...お待たせ...しました...」
燐子も来た。
「全員揃ったわね、じゃあ、行くわよ。」
ロゼリアは栄斗の家に向かった。
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「...そろそろ、来る頃だ。」
大丈夫、そう思っても俺には不安がある。
「ロゼリアはあいつらとは違う。あんな__」
ピンポーン
「__来たか。」
俺は玄関を出た。
「__こんにちは、八舞君。」
「はい。こんにちは。とりあず、入ってください。」
俺は皆を招き入れた。
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皆を招き入れたが、何から話していいかわからない。
そう思っていると、湊さんが口を開いた。
「...八舞君、この間はごめんなさい。」
「私も、ごめん...」
湊さんと今井さんが頭を下げている。
「お二人が謝ることじゃないですよ。頭なんて下げないでください。」
二人は頭をあげた。
「もとはと言えば、俺が隠さなければよかっただけの事ですから...」
「そんなことはないわ!話したくないことだったのでしょう...?」
「そうです。でも、ロゼリアには話します。俺の過去を。」
「八舞君の過去、ですか?」
「はい。聞けば全部わかります。」
「八舞さんの過去って...」
「なにが、あったんでしょう...?」
俺は一息置いて。
「では、話します。」
俺はそう言って話し始めた。
「俺の家は一般的に裕福と言える家庭でした。ですが、俺は両親と弟に良く思われていませんでした。両親には殴られる毎日、夕飯も俺の分だけいつも用意されてませんでした。」
「ひどい...」
「腐っていますね。」
「...続けます。ある日、両親と弟は俺を置いて旅行に行きました。俺はその時、殴られない日が続くと思っていました。そんな時に来客がありました、出ていいかわからなかったですが、対応しようと俺は扉を開けました、そこにいたのは警察官と弁護士の男でした。」
「え?なんで?」
「両親と弟が土砂崩れに巻き込まれて、死んだからです。」
「「「「「!!」」」」」
ロゼリアの皆は驚いた顔をしている。
俺は話しをつづけた。
「俺はその時、嬉しかった。もう殴られない、もう苦しまなくてもいい...そう思いました。でも、時間が経つとそんな自分が嫌になりました。人の死を喜ぶ自分に。」
「...」
「でも、ここからが問題でした。両親の身内はすでに亡くなっていました。そのために保険金と遺産は全て俺に来ることになったんです。」
「まさか...」
「はい。俺の財力の余裕はそこからです。」
「そういう事だったのね。」
湊さんは納得したようだった。
「続けます。お金が入った後、俺のもとに引き取りの話が来ました。俺はその人と会いました、父の知り合いだったらしいです。」
「え?今、一人暮らしだよね?」
「えぇ。俺はその引き取りの話を受けなかった。」
「え!?な、なんで!?」
「その男の目的は俺が持ってるお金だったからです。あの時の目は忘れられません、欲望しかないあの目を...そして、俺は聞いたんです。」
「な、なにを、ですか?」
「あのガキから金を奪ったら。事故に見せかけて殺す...ってね。俺は逃げました、誰にもばれないところに。そして、ここに住み始めました。」
「八舞君...」
氷川さんは悲しそうな顔をしている。
「それから俺は今まで一人で生きてきました...って感じです。」
「そんな事が...」
「腐ってます、どうしようもないくらいに。」
「私たちには、想像がつかないよね...」
「「はい...」」
「皆さんが気にすることでもないですよ。そもそも___っ!?」
「八舞君。」
氷川さんが抱きしめてきた。
「...なんで、抱きしめられてるんでしょうか。」
「...分からないです。でも、こうすべきと思ったんです。」
氷川さんは話しだした。
「八舞君は私たちといる時間は苦痛でしたか?私たちもあなたの両親やその知り合いと同じと思っていたんですか?」
「......思ってませんよ。花咲川に来てから、俺は人に恵まれていると思います。」
紛れもない本心だ。
「...なら、私たちから離れる必要なんか、なかったじゃないですか...!」
「!」
氷川さんは泣いてる。
「私は八舞君といる時間が楽しかったです。学校の時もロゼリアの時も、だから、あなたがいない一週間は、とても寂しかったです...」
「氷川さん...」
「だから、私たちの所に戻ってきてください。そして、私たちを支えてください!私たちもあなたを支えますから...!」
氷川さんがそう言うと...
「そうだよ!八舞君はロゼリアに必要だよ!」
「そうですよ!八舞さんはあこ達をたくさん助けてくれました!」
「そう...です。そして、これからも...」
「...そうよ、八舞君、あなたはロゼリアに必要だわ。」
皆はそう言っている。
「皆さん...」
「ロゼリアは八舞君が信頼するには、役不足でしょうか?」
氷川さんはそう聞いてきた。
「...そんな事、ないですよ。」
俺はそう呟いた。
「...暖かいですね、ロゼリアは。」
「八舞君?」
「あって間もない俺にここまで言ってくれるなんてね。」
俺はそう思っていた。
「俺の止まった心が動き出した気がします。」
俺は一息置いて
「...俺はロゼリアに戻っていいんですか?」
俺はそう聞いた。
「えぇ、もちろんよ!」
「こっちからお願いしたいです。」
「もちろんだよね☆」
「あこも大歓迎です!」
「私も...です...!」
皆、歓迎してくれている。
「そうですか。なら...」
俺は空気を吸って...
「改めて、よろしくお願いします!」
「っ!///」
「っ!///」
俺は数年ぶりに心から笑顔になった。
「(なんなのかしら...顔が熱いわ。歌ってる時と違う、知らない感情だわ...///)」
「(八舞君、笑うとこんな顔になるのね...///)」
「二人ともどうしたの?」
「「な、なんでもないわ(です)!!」」
「う、うん?」
二人の様子がおかしいな。
「友希那さんと紗夜さんの顔真っ赤だー!」
「あ、あこちゃん!?」
そういえば、顔赤いな、風邪か?
「あ、そ、そういえば。」
「?」
湊さんが話題を切り替えた。
「前の放火、八舞君の過去と関係があるのかしら?」
「そ、そういえば...」
湊さんと氷川さんがそう言った。
「...それはないです。俺に危害を加えようとした人たちは皆捕まりました。」
「え?」
「その過程で少し調べてみたんです。その結果...」
俺は一息置いて...
「花咲川の制服を着た男子生徒が走って行くのを見た、という人がいました。」
「まさか!?何でそんな!?」
「わかりません。でも、明らかにこちらに殺意を向けていることは確かです。」
氷川さんは驚いている。
「でも、動機は何なのかしら?」
「それです。少なくとも、湊さんと今井さん、宇田川さんはありえない。でも、俺と氷川さんと白金さんは今は学校で目立つ存在になっています。」
「つまり、三人のうち誰かが狙われてるってこと?」
「その可能性が高いかと。」
その時扉をたたく音が聞こえた。
「__誰だ!!」
俺が廊下に出ると、誰かが走って行くのが見えた。
「誰だ、あいつは?__!!」
俺は扉の張り紙に気付いた。
「「八舞君!?」」
皆が出てきた。
「なにかあったのかしら?」
「...そうですね、あったと言うより、ある、かもです。」
「?...どういう__!?」
皆も張り紙に気付いたみたいだ。
「な、なんなのこれは?」
「なんで、こんなことが?」
「...やばいじゃん、け、警察に...」
「あこ、怖いよ...」
「だ、大丈夫だよ...あこちゃん...」
張り紙には『お前らを殺す』と読みずらい字で書いてあった。
「...誰が狙いか、分からなくなったわね。」
「そ、そうですね。」
「いや、警察に電話しないと...」
「りんりん...」
「あこちゃん...」
「__大丈夫ですよ。」
皆はこっちを見た。
「俺がどうにかします。」
「八舞君、危険だわ!」
「そうです!ここは警察などに相談して...」
「警察はこれじゃ動いてくれないですよ。」
俺はそう言った。
「心配しないでください。俺が皆を守ります。」
俺はそう言った。
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