恋愛のブシドー   作:火の車

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紗夜ルート12話です!


第12話

 祭りの日から少し経ち、夏休みは中盤に差し掛かっていた。

 今はロゼリアの練習だ。

 

「__今日はここまでよ。」

「あれ?少し早いですね?」

「練習のやりすぎは良くないわ。」

「友希那さんも、そんなこと言うんですね。」

 

 今日は早めに練習が終わった。

 

「うーむ、どうするか...」

「あれ?どうしたの、八舞君?」

「リサさん...。今日はロゼリアの練習で一日が終わると思ってて、やることがなくて。」

「あ~なるほどね~」

 

 リサさんは考える仕草をしている。

 

「あ!そうだ!」

「?」

「私とクッキー作らない?」

「クッキーですか?」

「うん!ダメかな?」

「いや、いいですね。やりましょうか。」

「__私も行っていいでしょうか?」

「私も行きたいわ。」

「あこも!」

「わ、私も...」

 

 皆が来たいと言っていた。

 

「いいんじゃないですか?どうですか、リサさん?」

「うん!いいね!みんなでお茶会しよっか☆」

 

 こうして、皆でお茶会をすることになった。

 まずは、材料を買いに行った。

_________________________

 

「__今日は何種類くらい作るかな~?」

「ある程度あったほうがいいでしょう。チョコとか入れてみます?」

「お!いいじゃ~ん!」

「あとは__」

 

 俺たちがそんな会話をしてると...

 

「__あの二人の会話には混ざれないわ。」

「そうですね。レベルが高い会話が所々にありますし。」

「あこ、頭がぐるぐるだよ...」

「だ、大丈夫...?」

「皆さん、どうしたんですか?」

「皆もこっち来なよ~!」

「今行くわ。」

 

 そんなこんなで買い物が終わった。

_________________________

 

「さて、作りましょうか。」

「そうだね~!」

 

 俺たちは俺の家に来た。

 そして、クッキー作りを始めた。

 

「__すごい手際ね。」

「はい。二人ともすごいですね。」

「二人ともかっこいい!」

「そうだね...あこちゃん。」

 

 という、会話が聞こえた。

 

「いや~大人気だね~」

「リサさんの手際がいいからですよ。」

「そうかな~?」

「はい。」

「いつか私も結婚とかするのかな~?」

「出来ますよ。むしろ、相手が羨ましいです。」

「え?!///わ、私はそうでもないよ~///」

「リサさん、料理できて家庭的ですし、気遣いも出来るので、相手は幸せだと思いますよ。むしろ、リサさんが幸せになれるかが心配です。」

「そ、そう?///じゃ、じゃ~安心できる人に貰ってもらおっかな~?///」

「安心できる人ですか...。あ!」

「!」

 

 俺は思いついた。

 

「涼なんてどうでしょう!」

「え?」

「あいつ、普段はあれですけど真面目ですし。人の手伝いとか率先してしてるんで、いいやつですよ!__いたい!」

「はぁ~。八舞君はそうだよね~」

「え?なんで俺叩かれたんですか?」

「...もうすぐ仕上げだよ!」

「え?あ、はい。」

 

 話をそらされたが、まぁ、いいか。

 

「__と言うわけで、かんせ~い!」

「待ってたわ...!」

 

 明らかに友希那さんの目が輝いてる。

 

「紅茶、淹れたのでどうぞ。」

「いい香りですね、八舞君。」

「俺、紅茶好きなので、少しこだわりました。」

「そうですか。飲むのが楽しみです。」

「早く食べたいです!」

「あ、あこちゃん...」

「まぁ、そうだな。食べましょうか。」

 

 俺たちはお茶会を始めた。

 

「__おいしいです!」

「すごいね...あこちゃん...!」

「今日のはいつもと違うわ、もっと美味しいわ...!」

「...いつも美味しいのに、上があるなんて...」

「これはうまく作れましたね。」

「うん!最高だよ!紅茶もあってるし!」

「...この二人、料理で頂点を取れるんじゃないかしら?」

「確かに、取れそうですね。」

「いや、いいすぎですよ。」

「だよね~。もっと美味しくできそうだもん!」

「これより上も...!」

「た、食べてみたいわ...!」

「友希那さんと紗夜さんがキラキラしてる!

「美味しい...ですからね。」

「喜んでもらえてよかったですね。」

「うん!そうだね☆」

 

__お茶会も終盤に差し掛かった。

 

「__そういえば、話していなかったわ。」

「何をですか?」

「夏休み最後にライブをするわ。」

 

 友希那さんがそう言った。

 

「来ましたか...」

「楽しみだね~!」

「あこもあこも!」

「わくわく...します!」

 

 皆は気合が入ったようだ。

 

「前の調子を保って、さらに上げていくわよ!八舞君も協力、お願いね。」

「もちろんです。必ず成功させましょう。」

 

 そうして、この日は過ぎた。

_________________________

 

 ここから、一週間、ライブに備えての練習だ。

 

「__機材は、これで大丈夫。これならスムーズに練習に入れる。」

 

 俺は準備を進めていた。

 

「あら?八舞君?」

「あ、友希那さん。おはようございます。」

「えぇ、おはよう。早いわね。」

「スムーズに練習に入れるように早く準備をしようと思って。」

「ありがたいわ。」

「俺にはこれくらいしかできないので。」

「そんなことないわ。八舞君は練習以外でも私たちを支えてくれてるわ。」

「そうですかね?」

「えぇ、あなたといるのは楽しいわ。」

「そう思ってくれるのは光栄です。」

 

 俺は準備を終えた。

 

「__よし。これで完璧だ。」

「完璧な仕事ね。」

「ありがとうございます。」

「...八舞君。」

「はい?どうしました?」

 

 友希那さんは真面目な顔になった。

 

「次のライブ、私の歌をよく聞いていてほしいの。」

「?...わかりました。」

「...それだけよ。」

「?そうですか?」

 

 この時の俺には、この言葉の意味が理解できなかった。

_________________________

 

 それから一週間、ロゼリアの練習はハードだった。

 そんな中でもリサさんは自主練をして、

 皆も一層熱心に練習に取り組んでいた。

 でも、俺は友希那さんの言葉が、頭から離れなかった。

 よく聞いていてほしい?

 俺はずっと考えていた。

 

__そして、ライブの日になった。

_________________________

 

 会場にはたくさんのお客さんが詰めかけている。

 

「__いよいよね。皆、準備は出来てるかしら?」

「大丈夫だよ~!」

「問題ないです。」

「あこも準備万端です!」

「私も...大丈夫です!」

 

 友希那さんは俺の方に来た。

 

「...八舞君。」

「なんですか?」

「一週間前の事、覚えてるかしら?」

「...はい。覚えてますよ。」

「そう。」

「はい。」

 

 友希那さんは俺を見て...

 

「私の、歌に乗せた思いを、感じて。」

「歌に乗せた、思い?」

 

 友希那さんは、

 

「皆、行くわよ!」

「ちょ!友希那さ__」

 

 皆は舞台に戻った。

_________________________

 

 俺は会場に来た。

 皆が出てきた。

 

『こんにちは、ロゼリアです。』

「!」

 

 友希那さんと目が合った。

 

『さっそく一曲目、行くわ!』

 

 そうして、ライブが始まった__

 

 ”ロゼリアside”

 

「(伝える...!八舞君に...!私の、思いを!)」

「(...友希那、決めたんだね。)」

「(湊さん...あなたの覚悟は伝わりました!)」

「(今日の友希那さん、すごい!)」

「(湊さん...)」

 

 ライブは進む...

 

「(これが、最後。八舞君には伝わったのかしら...?いえ、伝わった。そう思う。)」

 

__こうして、ライブが終わった。

_________________________

 

「友希那さん...」

 

 俺はライブが終わった後、茫然としていた。

 今までと違う。

 俺に何かを伝えようとしてた。

 それが何なのかは分からない。

 でも......

 

「...覚悟は伝わりました。」

 

 俺は楽屋に向かった。

_________________________

 

「__入ってもいいですか?」

「いいわよ。」

 

 俺は楽屋に入った。

 

「あれ?友希那さんだけですか?」

「えぇ、皆はもう帰ったわ。」

「え?早くないですか?」

「そうかもしれないわね。」

 

 友希那さんは俺を見て言った。

 

「......私の伝えたい思い、感じてくれたかしら?」

「友希那さんに大きな覚悟がある、と言うことが分かりました。」

「他には、ないかしら?」

「俺には全ては分かりませんでした。」

「そう。...やっぱり、言葉じゃないと駄目ね。」

「友希那さん...?」

「少し、ついてきて。」

 

 俺たちはある場所に向かった。

_________________________

 

「__ここよ。」

「舞台、ですか?」

「えぇ、私には相応しい場所だと思うわ。」

「相応しい?」

 

 俺には分からなかった。

 

「...私は最初、あなたを疑ってたわ。」

「...そうでしたね。」

「気付いていたの?」

「はい。露骨でしたから。」

「あの時は紗夜を守るためにあなたと会ったわ。」

「そうですか。」

「そして、少しの間、あなたと暮らして、お世話になったわ。」

「俺も助かりましたよ。あの時は。」

「そして、あなたを傷つけてしまったわ......」

 

 友希那さんは泣きそうだ。

 

「私は悔やんだわ。どうして、あんなことになったのかと。」

「...」

「そして、あなたは自分から過去を話してくれたわね。」

「...そうですね。」

「私はあの時、自分を呪ったわ、あんなに悲しいことを聞き出そうとしたことを。」

「気にしなくても、いいですよ。」

「いいえ、あれは私が悪かったわ。でも、あの話を聞いて、思ったことがあったの。」

「もう一つ?」

「......あなたを支えたい。寄り添いたい。あなたの悲しみを埋められる存在になりたい。」

「友希那さん?__!!」

 

 友希那さんは抱き着いてきた。

 

「でも、何より、あなたの笑顔に惹かれたわ///」

「ゆ、友希那さん...?」

「私は、あなたが好きよ、愛してるわ///」

 

 友希那さんはそう言った。

 

「友希那さん......」

「でも、返事はまだいいわ。」

「え?」

「あなたが選ぶときは今じゃないわ。きっと、近いうちにその時が来るわ。」

 

 俺は理解できなかった。

 友希那さんは舞台の出口の方に歩いて行って......

 

「出来る事なら、答えを出すとき私のもとに来てくれることを、期待してるわ。」

「ゆ、友希那さ__」

 

 友希那さんは走り去った。

 

「__選ぶって、何なんだ......」

 

 俺は誰もいないライブ会場でつぶやいた。

 

 




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