祭りの日から少し経ち、夏休みは中盤に差し掛かっていた。
今はロゼリアの練習だ。
「__今日はここまでよ。」
「あれ?少し早いですね?」
「練習のやりすぎは良くないわ。」
「友希那さんも、そんなこと言うんですね。」
今日は早めに練習が終わった。
「うーむ、どうするか...」
「あれ?どうしたの、八舞君?」
「リサさん...。今日はロゼリアの練習で一日が終わると思ってて、やることがなくて。」
「あ~なるほどね~」
リサさんは考える仕草をしている。
「あ!そうだ!」
「?」
「私とクッキー作らない?」
「クッキーですか?」
「うん!ダメかな?」
「いや、いいですね。やりましょうか。」
「__私も行っていいでしょうか?」
「私も行きたいわ。」
「あこも!」
「わ、私も...」
皆が来たいと言っていた。
「いいんじゃないですか?どうですか、リサさん?」
「うん!いいね!みんなでお茶会しよっか☆」
こうして、皆でお茶会をすることになった。
まずは、材料を買いに行った。
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「__今日は何種類くらい作るかな~?」
「ある程度あったほうがいいでしょう。チョコとか入れてみます?」
「お!いいじゃ~ん!」
「あとは__」
俺たちがそんな会話をしてると...
「__あの二人の会話には混ざれないわ。」
「そうですね。レベルが高い会話が所々にありますし。」
「あこ、頭がぐるぐるだよ...」
「だ、大丈夫...?」
「皆さん、どうしたんですか?」
「皆もこっち来なよ~!」
「今行くわ。」
そんなこんなで買い物が終わった。
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「さて、作りましょうか。」
「そうだね~!」
俺たちは俺の家に来た。
そして、クッキー作りを始めた。
「__すごい手際ね。」
「はい。二人ともすごいですね。」
「二人ともかっこいい!」
「そうだね...あこちゃん。」
という、会話が聞こえた。
「いや~大人気だね~」
「リサさんの手際がいいからですよ。」
「そうかな~?」
「はい。」
「いつか私も結婚とかするのかな~?」
「出来ますよ。むしろ、相手が羨ましいです。」
「え?!///わ、私はそうでもないよ~///」
「リサさん、料理できて家庭的ですし、気遣いも出来るので、相手は幸せだと思いますよ。むしろ、リサさんが幸せになれるかが心配です。」
「そ、そう?///じゃ、じゃ~安心できる人に貰ってもらおっかな~?///」
「安心できる人ですか...。あ!」
「!」
俺は思いついた。
「涼なんてどうでしょう!」
「え?」
「あいつ、普段はあれですけど真面目ですし。人の手伝いとか率先してしてるんで、いいやつですよ!__いたい!」
「はぁ~。八舞君はそうだよね~」
「え?なんで俺叩かれたんですか?」
「...もうすぐ仕上げだよ!」
「え?あ、はい。」
話をそらされたが、まぁ、いいか。
「__と言うわけで、かんせ~い!」
「待ってたわ...!」
明らかに友希那さんの目が輝いてる。
「紅茶、淹れたのでどうぞ。」
「いい香りですね、八舞君。」
「俺、紅茶好きなので、少しこだわりました。」
「そうですか。飲むのが楽しみです。」
「早く食べたいです!」
「あ、あこちゃん...」
「まぁ、そうだな。食べましょうか。」
俺たちはお茶会を始めた。
「__おいしいです!」
「すごいね...あこちゃん...!」
「今日のはいつもと違うわ、もっと美味しいわ...!」
「...いつも美味しいのに、上があるなんて...」
「これはうまく作れましたね。」
「うん!最高だよ!紅茶もあってるし!」
「...この二人、料理で頂点を取れるんじゃないかしら?」
「確かに、取れそうですね。」
「いや、いいすぎですよ。」
「だよね~。もっと美味しくできそうだもん!」
「これより上も...!」
「た、食べてみたいわ...!」
「友希那さんと紗夜さんがキラキラしてる!
「美味しい...ですからね。」
「喜んでもらえてよかったですね。」
「うん!そうだね☆」
__お茶会も終盤に差し掛かった。
「__そういえば、話していなかったわ。」
「何をですか?」
「夏休み最後にライブをするわ。」
友希那さんがそう言った。
「来ましたか...」
「楽しみだね~!」
「あこもあこも!」
「わくわく...します!」
皆は気合が入ったようだ。
「前の調子を保って、さらに上げていくわよ!八舞君も協力、お願いね。」
「もちろんです。必ず成功させましょう。」
そうして、この日は過ぎた。
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ここから、一週間、ライブに備えての練習だ。
「__機材は、これで大丈夫。これならスムーズに練習に入れる。」
俺は準備を進めていた。
「あら?八舞君?」
「あ、友希那さん。おはようございます。」
「えぇ、おはよう。早いわね。」
「スムーズに練習に入れるように早く準備をしようと思って。」
「ありがたいわ。」
「俺にはこれくらいしかできないので。」
「そんなことないわ。八舞君は練習以外でも私たちを支えてくれてるわ。」
「そうですかね?」
「えぇ、あなたといるのは楽しいわ。」
「そう思ってくれるのは光栄です。」
俺は準備を終えた。
「__よし。これで完璧だ。」
「完璧な仕事ね。」
「ありがとうございます。」
「...八舞君。」
「はい?どうしました?」
友希那さんは真面目な顔になった。
「次のライブ、私の歌をよく聞いていてほしいの。」
「?...わかりました。」
「...それだけよ。」
「?そうですか?」
この時の俺には、この言葉の意味が理解できなかった。
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それから一週間、ロゼリアの練習はハードだった。
そんな中でもリサさんは自主練をして、
皆も一層熱心に練習に取り組んでいた。
でも、俺は友希那さんの言葉が、頭から離れなかった。
よく聞いていてほしい?
俺はずっと考えていた。
__そして、ライブの日になった。
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会場にはたくさんのお客さんが詰めかけている。
「__いよいよね。皆、準備は出来てるかしら?」
「大丈夫だよ~!」
「問題ないです。」
「あこも準備万端です!」
「私も...大丈夫です!」
友希那さんは俺の方に来た。
「...八舞君。」
「なんですか?」
「一週間前の事、覚えてるかしら?」
「...はい。覚えてますよ。」
「そう。」
「はい。」
友希那さんは俺を見て...
「私の、歌に乗せた思いを、感じて。」
「歌に乗せた、思い?」
友希那さんは、
「皆、行くわよ!」
「ちょ!友希那さ__」
皆は舞台に戻った。
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俺は会場に来た。
皆が出てきた。
『こんにちは、ロゼリアです。』
「!」
友希那さんと目が合った。
『さっそく一曲目、行くわ!』
そうして、ライブが始まった__
”ロゼリアside”
「(伝える...!八舞君に...!私の、思いを!)」
「(...友希那、決めたんだね。)」
「(湊さん...あなたの覚悟は伝わりました!)」
「(今日の友希那さん、すごい!)」
「(湊さん...)」
ライブは進む...
「(これが、最後。八舞君には伝わったのかしら...?いえ、伝わった。そう思う。)」
__こうして、ライブが終わった。
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「友希那さん...」
俺はライブが終わった後、茫然としていた。
今までと違う。
俺に何かを伝えようとしてた。
それが何なのかは分からない。
でも......
「...覚悟は伝わりました。」
俺は楽屋に向かった。
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「__入ってもいいですか?」
「いいわよ。」
俺は楽屋に入った。
「あれ?友希那さんだけですか?」
「えぇ、皆はもう帰ったわ。」
「え?早くないですか?」
「そうかもしれないわね。」
友希那さんは俺を見て言った。
「......私の伝えたい思い、感じてくれたかしら?」
「友希那さんに大きな覚悟がある、と言うことが分かりました。」
「他には、ないかしら?」
「俺には全ては分かりませんでした。」
「そう。...やっぱり、言葉じゃないと駄目ね。」
「友希那さん...?」
「少し、ついてきて。」
俺たちはある場所に向かった。
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「__ここよ。」
「舞台、ですか?」
「えぇ、私には相応しい場所だと思うわ。」
「相応しい?」
俺には分からなかった。
「...私は最初、あなたを疑ってたわ。」
「...そうでしたね。」
「気付いていたの?」
「はい。露骨でしたから。」
「あの時は紗夜を守るためにあなたと会ったわ。」
「そうですか。」
「そして、少しの間、あなたと暮らして、お世話になったわ。」
「俺も助かりましたよ。あの時は。」
「そして、あなたを傷つけてしまったわ......」
友希那さんは泣きそうだ。
「私は悔やんだわ。どうして、あんなことになったのかと。」
「...」
「そして、あなたは自分から過去を話してくれたわね。」
「...そうですね。」
「私はあの時、自分を呪ったわ、あんなに悲しいことを聞き出そうとしたことを。」
「気にしなくても、いいですよ。」
「いいえ、あれは私が悪かったわ。でも、あの話を聞いて、思ったことがあったの。」
「もう一つ?」
「......あなたを支えたい。寄り添いたい。あなたの悲しみを埋められる存在になりたい。」
「友希那さん?__!!」
友希那さんは抱き着いてきた。
「でも、何より、あなたの笑顔に惹かれたわ///」
「ゆ、友希那さん...?」
「私は、あなたが好きよ、愛してるわ///」
友希那さんはそう言った。
「友希那さん......」
「でも、返事はまだいいわ。」
「え?」
「あなたが選ぶときは今じゃないわ。きっと、近いうちにその時が来るわ。」
俺は理解できなかった。
友希那さんは舞台の出口の方に歩いて行って......
「出来る事なら、答えを出すとき私のもとに来てくれることを、期待してるわ。」
「ゆ、友希那さ__」
友希那さんは走り去った。
「__選ぶって、何なんだ......」
俺は誰もいないライブ会場でつぶやいた。
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