ライブの翌日は始業式だ。
俺は昨日の出来事を考え続けていて、遅刻しそうだった。
「__ギリギリ、間に合った...」
「お!栄斗!久しぶりだな!」
「よう、涼。おはよう。」
「珍しいな、栄斗が遅刻ギリギリなんて。夏休みボケか?」
「そんな事じゃない。」
俺はまだ考えていた。
「(昨日のは、どういう事なんだ...友希那さんが俺を?そもそも、選ぶってなんだ?)」
考えてるうちに、いつの間にか学校が終わっていた。
「__今日は帰るか。」
俺は足早に家に帰った。
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俺は家に帰るなり、ベッドに飛び込んだ。
「(......分からない。友希那さんがなんで俺なんかを好きなのかも、俺が友希那さんをどう思ってるかも、選ぶという意味も。)」
そんな事を考えてると、メッセージが来た。
「誰だ?__リサ さんから?」
俺はメッセージを確認した。
『やっほ~!昨日のライブの打ち上げをするよ☆』
という内容だった。あとは場所が書かれていた。
「......打ち上げか。」
正直、今回は断りたいが、行かなければ友希那さんを避けてると思われるかもしれない。
「仕方ない、行くか。」
俺は家を出た。
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「__ここか?」
俺が着いたのは羽沢珈琲店と言うカフェだった。
「まぁ、入るか。」
俺は店に入った。
「__あ!来た来た!八舞く~ん!」
「お待たせしました、皆さん。」
「全然いいよ!」
俺が来たときには皆がそろっていた。
「こんにちわ、八舞君。」
「...こんにちわ、友希那さん。」
友希那さんはいつも通りだった。
「どうしました?席に着いたらどうでしょうか?」
「はい。」
俺は席に座った。
「ご注文をお伺いします!」
店員らしき女の子が来た。
「お!つぐみじゃ~ん!相変わらず可愛いね☆」
「り、リサさん、またそんなこと言って......」
店員の女の子が苦笑いしている。
「知り合いなんですか?」
「えぇ。彼女はこの店の娘さんの羽沢つぐみさんです。」
「あの、ご注文は?」
俺たちは注文をした。
「__昨日のライブはよかったよね~!」
「そうだよね、リサ姉!特に友希那さんなんか、バーン!って感じだったし!」
「バーン......どんな感じかしら?」
「さぁ、分かりません?」
「あこちゃんは...とてもすごかった...と言っています...!」
皆は昨日のライブの話に花を咲かせていた。
そして、ある客が入ってきた。
「いらっしゃいませー!って蘭ちゃんたちだ!」
「来たよ!つぐ!」
「モカちゃんがいらっしゃいました~」
「よう!つぐ!今日も手伝いしてるな!」
「...お疲れ、つぐみ。」
入ってきた客は羽沢の友達らしい。
「(仲、良さそうだな。)」
俺がそんな事を考えていると、
赤いメッシュの女の子がこっちに気付いて近づいてきた。
「こんにちわ、湊さん。」
「あら?美竹さんじゃない、こんにちわ。」
「昨日のライブは大成功だったみたいですね。」
「えぇ。八舞君のおかげよ。」
「八舞?」
俺の方を見てきた。
「あ!お前が八舞栄斗か!」
「?」
「あ!お姉ちゃん!」
「よう!あこ!賢くしてるか?」
「うん!」
「そうかそうか!」
「...お前は誰だ?」
「あ、悪い悪い!私は宇田川巴だ!巴って呼んでくれ!」
「...巴、あこは俺の事をなんて言ってるんだ?」
「え~っと、確か、すごい人!ってよく言ってるな。」
「ほう。」
俺はすごい人と思われてるらしい。
「...こいつの何がすごいわけ?」
メッシュの女の子がそう言った。
「おい!蘭!言い方ってもんがあるだろ!」
「だって、本当の事だし。」
「だからって__」
「美竹蘭、だっけ?」
「...そうだけど。」
「俺の何がすごいか分からないと言ったな。」
「そうだけど、文句あるの?」
「いや、俺も良く分かってないんだ。」
「は?」
美竹は驚いた顔をしている。
「お~蘭を黙らせるなんて、やりますな~」
「蘭、すっごい顔してたよ?」
「これは、栄斗の勝ちだな!」
「...」
「俺は何に勝ったんだ?」
よくわからない。
「さっきは蘭が悪かったな!素直じゃないやつなんだ!」
「いや、見た目的に良く分かる。実際、話しかけてきた理由も友希那さんにライブの成功のお祝いを言いたいだけだったからな。」
「は?何言って__」
「バレバレだぞ。」
「...意味わかんない。」
「蘭は素直じゃないからね~おめでとうも素直に言えないんだよ~」
「えっと、お前は?」
「これはこれは~私は謎の美少女、モカちゃんですよ~」
「名乗ってる時点で、謎ではないな。」
「美少女は否定しないんだね~」
「そこはおおよそ事実だからな。」
「お~モカちゃん口説かれてる~?」
「「「八舞君......?」」」
友希那さん、紗夜さん、リサさんがこっちを見ている。
「ど、どうしました?」
「初対面の人を口説くなんて。」
「お姉さんも庇えないかな~」
「風紀の乱れです!」
「いや、そんなつもりはなかったんですけど。」
「修羅場ですな~」
「す、すごいことになっちゃった...!」
「栄斗はモテモテだな!」
「......ロゼリアが、湊さんがこうなるなんて、確かに、すごい。」
「そ、そう言う事じゃないと思うけど...?」
「...勘弁してくれ。」
しばらくして、俺たちは相席することになった。
そして、自己紹介をしてもらった。
「__湊さん、ライブの成功、おめでとうございます。」
「えぇ。ありがとう。」
「蘭、昨日のライブ見に行ってたもんね~」
「ちょ!モカ!なんでそのこと知って__」
「モカちゃんも見に行ってました~」
「え?モカも?私も見に行ってたんだ~!」
「ひまりもか!私も見に行ってたぞ!」
「私は家のお手伝いで行けなかったんだ...どうだったの?」
「......なんて言うか、レベルが上がってた。」
「そうだよね!いつもと違ったよね!」
「あぁ!すっごい暑かった!」
「湊さんが~特に違いましたよね~。なんて言うか~誰かに届けようとしてたと言うか~」
青葉がこっちをちらっと見た。
「!!」
「そう?いつもより気合が入ってるなとは思ったけど。」
「え~?モカちゃんの気のせいかな~?」
「モカは考え過ぎ。」
「そうかな~」
「......」
なんだ、青葉の違和感は?
「ライブは好評だったみたいね。」
「そうみたいですね。」
「よかった~!」
「お姉ちゃんも褒めてくれた!」
「よかったね...あこちゃん。」
「なんで、こんな急にレベルが上がったんですか?」
美竹がそう聞いてきた。
「言ったでしょう?八舞君のお陰よ。」
「八舞の?」
「私も気になってたんだ!」
「八舞君はどんなことをしたんですか?」
「彼はマネージャーよアドバイスもくれるわ。」
「経験者なんですか?」
「俺は素人だ。知識も本を読んだだけだ。」
「え?それだけ?」
「そうだ。」
美竹は不思議そうな顔をしてる。
「彼の本での知識量は一冊どころじゃないわ。」
「え?」
「私の部屋にあった本は全部、暗記してるわ。」
「えぇ?!さ、流石にそれは__」
「ありえちゃうんだよね~それが。」
「日菜さんみたいだな!」
「八舞君は日菜を超えます。天才としてのレベルが違います。」
「お~それはすごいですな~」
「言い過ぎですよ。」
最近思うが、俺は過大評価されすぎじゃないか?
「でも、期末テスト、満点だったじゃないですか。」
「いや、まぐれですよ。」
「いやいや~まぐれで満点はないっしょ~」
「しかも、あこにも教えてるから、八舞君はあまり勉強に手を付けてないわ。」
「まぁ、そうかもしれないですけど。」
「あこに勉強を教えてくれたのか!」
巴が乗り出してきた。
「な、なんだ?」
「いや~あこが点数上がって喜んでたからな!ありがとう!」
「それぐらい、お安い御用だ。」
「すごいな~!私も八舞君に頼ろっかな!」
「別にいいが。内容、合うのか?」
そんなこんなで打ち上げ兼お茶会は進んで、終盤に差し掛かった。
「ねぇ、八舞。」
「なんだ、美竹。」
「私たちの練習、見てくれない?」
美竹はそう言った。
「は?なんでだ?」
「話を聞くと、ほんとにすごいらしいし。...ロゼリアに負けたくないから...!」
「俺はロゼリアのマネージャーなんだが...」
「行ってみたらいいわ。」
「友希那さん?」
「ロゼリア以外の音楽も体験してみて損はないわ。あと、アフターグロウは私たちのライバルよ、あなたにも聞いてほしいわ。」
「まぁ、そういう事なら。」
「......じゃあ、明日、練習だから。ライブハウスに来て。」
「分かった。」
俺は明日、アフターグロウの練習を見ることになった。
「お!栄斗がくるのか!気合入るな!」
「うん!いい演奏聞かせないとね!」
「モカちゃんもやるよ~」
「私も頑張るね!」
「...つぐみはいつも通りでいいよ。」
「そうだよ~ツグり過ぎるからね~」
「そうだぞ!」
「そうだよ!」
と言う、やり取りをしていた。
俺のやることは増えていくみたいだ。
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