俺は今、学校にいる。
「よう!栄斗!」
「...真波?」
こいつは昨日突き放したと思ったが。
「...何の用だ。」
「用がなかったら話しかけちゃダメなのか?」
「...はぁ。」
「あ、ため息!幸せが逃げるぞ!」
「...うるさい。そもそも、俺には逃げる幸せがない。」
俺は席を立った。
「どこ行くんだ?」
「...知らん。」
俺は教室を出た。
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「__静かだな。」
俺は屋上にいた。
「世界も、これくらい静かなら__」
「あら、八舞君。」
「...はぁ。」
「失礼ね。人を見るなりため息なんて。」
白鷺さんは俺の近くに座った。
「...なんで、そこに座るんですか。」
「あら?私がどこに座ろうが、私の自由じゃなくて?」
「それもそうですね。」
俺は立ち上がって、別の場所に移動した。
そうすると、白鷺さんはまた俺の近くに来た。
「...なんなんですか。」
「少し、お話ししないかしら?」
「?」
白鷺さんは、こう言った。
「あなた、人の考えを読めたりするのかしら?」
「!...なんでそう思ったんですか?」
「何となくよ。あなたの会話を少し聞いたの。」
「あれか...」
「それで、イヴちゃんや彩ちゃんと話したときに顔色が悪くなった、と言う事じゃないのかしら?」
「...」
この人の洞察力は侮れないな。
「どうかしら?」
「まぁ、そうですね。でも。」
「でも、何かしら?」
「一番読めないのは白鷺さんです。全く分からない。」
「仮面のせいじゃないのかしら?」
「仮面...?それなら他の人も...」
「あら?私を素人と同じにしないでくれるかしら?」
「素人?」
「私は女優よ。演技では負けないわ。」
「女優?」
「知らないのかしら?」
「テレビを見ないんです。」
「そう。」
白鷺さんは空を見ている。
「...あなたがイヴちゃんと彩ちゃんの考えを読めなかった理由は分かるかしら?」
「おそらく、負の感情がないからです。俺はそれしか読めませんから。」
「そうなのね。わかるわ。」
「え?」
「あの二人は人を心の中で蔑むほど暇じゃないのよ?」
「...普通の女子高生が?」
「あなた、ほんとに何も知らないのね。」
「どういうことですか?」
「これ、あげるわ。」
「?」
俺が受け取ったのはライブのチケットだった。
「パステルパレット?」
「そうよ。あなたなら想像が付くんじゃないのかしら?」
「まさか、白鷺さんたちのバンドですか?」
「正確にはアイドルバンドね。」
「(まじかよ。)」
「それで、見に来るかしら?」
「...遠慮しておきます。人の多いところは苦手です。」
俺は白鷺さんにチケットを返した。
「そう、残念ね。」」
「思ってないでしょう?」
「...読めないんじゃないのかしら?」
「誰でも分かりますよ。今のは。」
俺は立ち上がった。
「俺は教室に戻ります。」
「そう。また会いましょう。」
「...機会があれば。」
俺は屋上を出た。
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教室に戻ると。
「__おい!やめろって!」
「うるさい!」
俺の机の周りでもめてる。
「...なんだ。」
「あ、栄斗...」
「いったい何が__そういう事か。」
俺の机には落書きがされていた。
「好き放題書いてくれるな。」
根暗、性悪、クズ。
誰の事を言ってんだか。
「落書きはいいが、後片付けはしろよ。」
「そんなの自分でやればいいじゃん!」
「は?」
「こうなったのはあんたが悪いんだし、当り前だよね~」
「...お前、あの時いたな、そう言えば。」
今、思い出した。
「...下らないな。こんな事のために人数揃えて、労力があってないな。」
俺は呆れたように言った。
「そんなにかわい子ぶってる自分が大事だったか?大変だな、メンツを保つのは。」
「うっさい!この根暗男!」
「ならお前は、顔面的にも精神的にも仮面女だな。」
「なっ__!!」
「__おい!そんないい方ねぇだろ!」
「あ?」
一人の男子が声を荒げた。
「そうだ!」
「謝れ!」
「あれはひどいだろ!」
謝れだの、ひどいだの、俺の机の落書きを見てから言ってほしいものだ。
「...お前らはイジメの主犯に加担するんだな?」
俺がそう言うと全員黙った。
「この机を見せれば証拠は十分だ。俺が一言イジメられたと言えば、お前らはそいつの共犯だ。」
俺は携帯を出して、机の写真を撮った。
「これで消しても無駄だ。じゃあ、教師に報告に__」
「うわぁん!!」
一人が泣き出した。ウソ泣きだが。
「バレバレなウソ泣きしやがって__」
「おい!何があった!!」
教師が来た。
「これは__」
「こいつが女子を脅して泣かせました!」
「は?」
「そうです!○○は何もしてません!」
「机も全部こいつの自作です!」
「内容も恐喝まがいでした!」
その場にいた真波以外の奴が加担した。
「(おいおい。流石に無理がありすぎ__)」
「本当か!」
「は?」
教師は鵜呑みにした。
「いやいや、誰が自分の悪口を机に書くんですか。そもそも、俺はさっきまで__」
「言い訳するな!!!」
怒鳴られた。
「女子を泣かせて、言い訳するなんて。それが男のすることか!!!」
「(じゃあ、イジメは人間がすることかっての。)」
俺は心底呆れた。
「いや、俺の言い分をですね__」
「言い訳するな!!!」
聞かないですよね。
「お前は恐喝したとして、停学だ!!!」
「(停学の基準緩すぎだろ。流石に__!!)」
そう言えば、説明で言ってた、ここは停学の基準が異常に緩いから気を付けろって。
「もう帰れ!!!」
「(...っち、無能が。)」
俺はカバンを持って教室を出た。
出る直前、クラスの奴らが笑ってるのが見えた。
「(...だから、女は嫌いなんだ。)」
「おい!栄斗!」
「あ?なんだ?」
「大丈夫か...?」
「休みが増えるだけだ。」
俺はそう言って歩きだした。
「栄斗...」
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「八舞♪」
「...西園か。」
「どうだった?プロローグは♪」
「...やっぱり、仕組んだのはお前か。」
「私は教師を呼んだだけ♪後は勝手にだよ?」
「どうだかな。」
こいつもある意味読めない。
なんたって
「どう?楽しかった?」
こいつの思考は負の感情で狂ってるんだから。
「相変わらず、悪趣味だ。」
「それも、八舞が悪いんじゃん。」
「俺の何が悪いんだか。」
俺がそう言うと、西園は首を絞めてきた。
「!!」
「...私よりも優れてて、私をこっぴどくフッて...私に惨めな思いをさせた...!!!」
「...」
「...でも、許してあげる♪」
西園は手を離した。
「だって、私は八舞を愛してるから♪」
「...狂ってるな。」
「狂ってもいいよ♪八舞が私のものになるなら♪」
「お断りだ。」
俺はそう言って歩きだした。
「お前が知っての通り俺は女が嫌いだ。原因はお前らだがな。」
俺はその場を離れた。
「__ほんとに気に入らない...でも...」
西園は笑顔で
「さいっこうに愛おしい...」
そう呟いた。
「八舞はきっと私のものになる...待ってるよ♪」
その言葉は誰にも聞かれることはなかった。
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