恋愛のブシドー   作:火の車

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千聖ルート7話です!


第7話

 俺がA組に移動してから少し経ち、五月に入った。

 

「__おっはよー!八舞君!」

「よう、八舞。」

「おはよう、戸山、市ヶ谷。」

 

 俺はクラスではこの二人と交友を深めていた。

 

「ねぇねぇ!有咲~!」

「ダメだ。」

「まだ何も言ってないよ~!」

「...どうせ、今日の宿題を写させてって言うんだろ?戸山?」

「ギクッ!」

 

 図星みたいだ。

 

「そこを何とか~!」

「ダメだ!」

「じゃあ、八舞君!」

「...はぁ。いいぞ、写させてやっても。」

「え?ほんと?!」

「おい!八舞!」

「ただし、だ。」

「「?」」

「お前は人の宿題を写すことに慣れて自立できなくなって、明日香たちに迷惑をかけることになるんだろうな。」

「うぐっ...!」

「どうする?」

「じ、自分で頑張ります...!」

「か、香澄...!」

「私、やるよ!有咲!」

「あぁ!頑張れよ!」

 

__しばらくして...

 

「やっぱり無理だーーー!!!」

「...やっぱりか。」

「分かってたよ、でも、さっきの私の感動を返せ。」

 

 戸山の集中力は案の定切れた。

 

「まぁ、半分はやったから、及第点だろ。」

「...そうだな。」

「ほれ、戸山。」

「ほえ?」

「俺の宿題だ。半分は出来たから次は七割はしろよ。」

「!...うん!ありがとう、八舞君!」

 

 戸山は宿題を写し始めた。

 

「少し、甘くないか?」

「そうか?」

「あぁ。」

「あのな、市ヶ谷。人は簡単には変わらないんだ。

 だから、褒めて少しずつでも伸ばせばいい。」

 

 そう、人は簡単には変わらない。

 

「そんなもんか?」

「あぁ。」

 

 そうして、朝の時間が過ぎていった。

________________________

 

 昼休みだ。

 

「__そういえば、斎藤ってよく休んでるな。」

「そういえば、なんでだろうね?」

「あいつは生徒会でも危険人物扱いされてるからな。」

「え?なんでだ?」

「確か、喧嘩で何人も病院送りにしたとか、

 遅刻の理由はヤバい取引かもとか。」

「そんな悪いやつには見えなかったがな。」

「だよね~!」

「あ、そういえば。」

「ん?どうした?」

「俺、バイト探してるんだけど、良いとこないかなって。」

「八舞君、バイトするの?」

「あぁ。生活費が足りなくなってな。」

 

 俺は考え込んだ。

 

「__あるわよ、良いバイト。」

「白鷺さん?」

「白鷺先輩!こんにちわ!」

「こ、ここ、こんにちわ!」

「こんにちわ、三人とも。

 それで、バイトの話なのだけれど。」

「いいバイトがあるんですか?」

「えぇ。あるわよ。とっておきのバイトが。

 興味があるならこの住所に来てちょうだい。」

 

 白鷺さんに紙を渡された。

 

「伺います。」

「えぇ。」

「そういえば、何の用でここに?」

「あ、そうだったわ。有咲ちゃん、紗夜ちゃんが呼んでたわよ?」

「え?...あ!」

 

 市ヶ谷は何かを思い出したようだ。

 

「昼休みに生徒会の仕事があるんだった~!!」

 

 市ヶ谷は走って行った。

 

「それじゃ、用も済んだし私も戻るわ。

 待ってるわよ、八舞君。」

「はい。(ん?待ってる?)」

「さようなら!白鷺先輩!」

 

 俺は疑問を残したまま、残りの学校の時間を過ごした。

________________________

 

 放課後だ。

 俺は白鷺さんに渡された紙に書いてあった住所に来た。

 

「__ここ、か?」

 

 俺が来たのは芸能事務所だった。

 

「え?なんで?」

「あれ?八舞君?」

「あなたは、丸山さん?」

「うん!そうだよ!...どうしたのかな?こんなところで?」

「俺は白鷺さんにバイトの紹介でこの紙を貰いまして。」

「え?バイト?」

「__あら、来たわね、八舞君。」

「あ、白鷺さん。」

「準備は出来てるわ、入ってちょうだい。」

「?はい。」

 

 俺は事務所に入った。

________________________

 

「__それで、俺は何のために呼ばれたんでしょう?」

「バイトの紹介よ?」

「どういうことなの?千聖ちゃん?」

「すぐに分かるわ...ここよ、入って。」

 

 俺たちは部屋に入った。

 

「__来たわよ。皆。」

「あ!チサトさん、アヤさん!こんにちわ!」

「やっほ~!」

「こんにちわっす!二人とも!」

 

 そこには、若宮と、氷川さんに似た人、眼鏡をかけた人がいた。

 

「あれ?そっちの子はだぁれ?」

「あ!エイトさん!」

「...え?どういう状況ですか?」

「説明するわ。」

 

 そう言って白鷺さんは書類を渡してきた。

 

「えっと......はい?!」

「そういう事よ。」

「どういうことですか?」

「見ての通り、私たちのマネージャーのバイトよ?」

「それは分かってるんですが、なんで俺を?」

「...今まで碌な人が来なかったのよ。」

「あ~、そう言えばそうだったね~」

「るんってこなかったよね~」

「そういう訳で、あなたにお願いしたいのよ。

 時給は破格よ?」

「いや、バイトをするのはいいんですが。面接などは?」

「問題ないわ。事務所には私がお話ししてきたわ。」

「...それは、言葉で、でしょうか?」

「さぁ、どうかしらね?」

 

 俺の背中に悪寒が走った。

 これ以上の言及は危険だ。

 

「...分かりました。します、バイト。」

「そう言ってくれると思ってたわ!」

「やったー!マネージャー決定ー!」

「るん♪ってくるね!」

「よろしくお願いします!エイトさん!」

「よろしくっす!」

「はい。よろしくお願いします。」

 

 こうして、バイトが決まった。

 時給はほんとに破格だった。

________________________

 

 バイトをすることが決まった後、白鷺さんに帰ってもいいと言われたので帰ってる。

 

「あれ?斎藤?」

 

 商店街を歩いてると斎藤を見かけた。

 俺は後をつけてみた。

 

「__はぁ。」

「よう、斎藤。」

「!!...お前は、八舞、だったか。」

「覚えてたのか。」

「...隣だからな、耳に入ってきただけだ。」

「そうか?...それよりも何してたんだ?」

「なんで言わないといけない?」

「まぁ、どうせ、バイト帰り、だろ?」

「!!」

「カバンから見えてるぞ。」

 

 斎藤はカバンを隠した。

 

「...なぜ、俺に近づく。」

「?」

 

 斎藤が急にそんな事を聞いてきた。

 

「俺は学校じゃ危険人物だ、道であっても話しかけてくるどころか道を開ける奴がほとんどだ、でも、お前は話しかけてきた。なんでだ?」

「数週間、お前の隣の席にいて分かったんだが、お前はそこまで悪いやつじゃない。」

「ほう?なぜそう言える?」

「俺には人の負の感情が見えるからな。」

「...馬鹿馬鹿しいな。」

「そうか?じゃあ、馬鹿馬鹿しいついでに、お前、悩んでるだろ?」

「っ!!」

「言ったろ?負の感情が分かるって。」

 

 斎藤は驚いている。

 

「話してみろよ、斎藤。」

「...仕方ねぇ、場所変えるぞ。」

「分かった。」

 

 俺たちは公園のベンチに移動した。

 

「__それで、何があったんだ?」

「...俺の家は母子家庭だ。親父は俺が中三の時に死んだ。」

「...」

「親父が死んだ後、母さんが働きに出た。俺たちは四人兄弟、母さんは朝から晩まで働き詰めだった。」

「だった...?」

「あぁ、母さんは病気になった。」

「!」

「だから、俺は学校をやめて働くと言ったんだ、でも...」

「お母さんに止められた、か?」

「...その通りだ。俺に楽しい思い出を作ってほしいってな。だが、そうもいかない下の奴らももうすぐ小学生だ貯金があるとは言え、学費を稼がねぇと。」

「だから、お前はいつも遅刻したり休んだりしてたのか。」

「そういう事だ。」

 

 斎藤は遊んでる子供を見ている。

 

「...子供は自由じゃないといけねえ。下の奴らにも余計な気を使わせたくないんだ。」

「だったら、手伝ってやるよ。」

「は?」

「食費くらい払ってやるぞ?俺も食わしてもらうが。お母さん、いないんだろ?」

「だが__」

「いいっての。お前がバイトの間、下の子たちの面倒も見てやるよ。」

 

 斎藤は戸惑ってるみたいだ。

 

「根本的な解決にはならないが、お前の苦労は減るだろ?だから、手伝ってやるよ。」

 

 斎藤は考え込んでいる。

 

「...本当にいいのか?食費も馬鹿にならねぇぞ?」

「大丈夫だ。破格のバイトを見つけたんでな。」

「...なら、頼む。礼はいつか必ずする。」

 

 斎藤は頭を下げた。

 

「そういうのはいいぞ。俺がしたくてするんだ。お前のお母さんの願いも叶ってほしいからな。」

 

 俺は子供たちを見ながら言った。

 

「斎藤も学校生活、楽しもうぜ。」

「それは無理だ。」

「なんでだ?」

「言ったろ、俺は危険人物だ。」

「大丈夫だ。分かってくれる奴はいる。」

「何?」

「来れば分かる、だから、絶対に来い。」

「......その言葉、信じてやるよ。八舞栄斗。」

「おう、信じろ。えっと...斎藤...なんだ?」

「俺は斎藤雅だ。」

「じゃあ、雅だな。よろしくな、友達としてな。」

「フッ。いいだろう。」

 

 俺たちは拳を合わせた。

 

「じゃあ、早速飯つくりに行くか。」

「おい!今は客をあげられる状態じゃ__」

「ならなおさら行くぞ。片付けもついでにしよう。」

「おい!八舞!」

 

 俺たちはこうして友人となった。

________________________

 

 俺たちはあるアパートに来た。

 

「__ここが俺らが住んでるところだ。」

「そうか。いいとこじゃないか。」

「...行くぞ。」

 

 俺たちは雅の家に入った。

 

「__おーい!帰ったぞ!」

「あ!にーちゃんが帰ってきた!」

「お帰りにーちゃん!」

「おかえりなさい!お兄ちゃん!」

「おう、ただいま。」

 

 奥の居間から、男の子二人と女の子一人が出てきた。

 

「あれ?その人だれ?」

「あぁ、こいつは。」

「俺は八舞栄斗だよ。君は?」

「私!斎藤真弓!小学校2年生!」

「おー偉いな、ちゃんと自己紹介出来て。」

「えへへ~!」

「おい、お前らも挨拶しろ。」

「「はーい!」」

「俺は和!」

「俺は仁!」

「「よろしく!えいと兄ちゃん!」」

「こいつらは双子なんだ。」

「つまり、同時に小学生になるのか。」

「そうだ。」

 

 自己紹介が終わった後、俺たちは居間に行った。

 

「__そういえば、えいとお兄ちゃんはなんでお家に来たんですか?」

「今日から、真弓ちゃん達にご飯を作ってあげるんだよ。」

「ご飯、ですか?」

「うん、そうだよ。」

「そういう事だ。」

「あと、和君と仁君の迎えも行くよ。」

「ほんと?!」

「やったー!」

「...おい。」

「いいだろ?」

「...はあ、仕方ないな。」

「それにしても、皆かわいいな。」

「人懐っこいからな。」

 

 和君と仁君が膝に乗ってきた。

 

「こら!和!仁!降りなさい!」

「いいよ、真弓ちゃん。」

「え?」

 

 俺は二人の頭を撫でた。

 気持ちよさそうだ。

 

「...子供は、好きだから。」

「そうですか?じゃ、じゃあ、真弓も...」

 

 真弓ちゃんも来た。

 

「いやー、なつかれたな。」

「安心した。」

 

 俺たちは少しの間遊んでた。

 

「__さて、夕飯を作ろうか。」

「お~!何作るの!」

「作るの?」

「そうだなぁ。」

 

 俺は冷蔵庫の中を確認しに行った

 

「今日は冷蔵庫の中使うな。」

「あぁ。構わん。」

「「で、で!何作るの?」」

「そうだなー...カレーにしようか。」

「「カレー!」」

「か、カレー...!」

 

 子供たちは嬉しそうだ。

 

「さーてと、作るか。」

 

 俺はカレーを作った。

 

「__よそって、ルーをかけて、完成だ。」

「わーい!」

「カレーだ!」

「お、おいしそう、です!」

「...まじで旨そうだな。」

「普通だぞ?...さぁ、食べようか。」

 

 俺たちは夕飯を食べ始めた。

 

「__うっめー!」

「ほんとだ!うっめー!」

「おい、静かに食べろ。」

「いいじゃないか。ご飯は楽しく食べるもんだ。な?」

「「うん!」」

「まったく...」

「本当に、美味しいです...!」

「そう?良かった。」

 

 皆美味しそうに食べてくれた。

 斎藤兄弟は全員お替りした、兄弟だな。

 

「「ごちそうさまー!」」

「ごちそうさまでした!」

「ごちそうさま。」

「はいはい、お粗末様。」

 

 皆はカレーを食べ終えた。

 俺は洗い物を始めた。

 

「~♪」

「おい、手伝うぞ。」

「斎藤?いいって、下の子たちに構ってやれ。」

「いや、そういう訳には__」

「皆、お前を待ってるぞ?」

 

 下の子たちは皆こっちを見てる。

 

「...悪いな。」

「いいっていいって。」

 

 雅は皆の方に行った。

 居間に行くと皆は雅に飛びついた。

 雅は文句を言いながらも皆に構ってる。

 

「...美しいな。家族愛って。」

 

 俺は美しい家族愛を眺めながら、

 洗い物をした。

 

 

 

 

 




感想などお願いします!

斎藤君の設定をここで、

 斎藤雅(16)
 身長;180cm
 体重;75kg
 好きなもの;家族、友達、紅茶、甘いもの
 嫌いなもの;家族、友達を傷つける奴
 誕生日;11月11日

 花咲川の生徒。見た目はかっこいいヤンキー。
 家族思い。喧嘩事件の原因も家族がらみ。
 学力は普通。運動神経は抜群。
 栄斗への信頼は厚い。
 有咲と同じくツンデレ。

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