恋愛のブシドー   作:火の車

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日が変わるのに間に合いませんでした...


第6話

 今は...昼休みだ。

俺は一人、屋上で一人黄昏ていた。

 

「あら、あなたは...」

 

 と、思っていた。

 

「あなたは...白鷺さん、ですよね?」

「あら、私の名前、覚えててくれたのね。」

「昨日、少しパスパレについて少し調べてみたんです。」

「学園の人気者さんに興味を持ってもらえてうれしいわ♪」

「...望んでこうなった訳ではないんですけどね。」

 

 と、自嘲気味に笑って見せた。

 

「あなたぐらいに男子なら嬉しいんじゃないのかしら?」

「...普通なら喜ぶんでしょうが、

 生憎、俺はそれを望んでないんですよ。」

「へぇ...それはあなたが『演技』をしている事と関係あるのかしら?」

「っ!...さて、何のことでしょうか?」

「あら?パスパレについて調べたんでしょう?

 私に『演技』が通用すると思って?」

「...流石、大女優様は違いますね。」

「お褒めにあずかり光栄だわ♪」

 

 流石に白鷺千聖に『演技』は通用しないか。

 

「何が望みですか?」

 

 そう問うと、白鷺さんは考えるそぶりを見せて、そして_

 

「あら?何もないわよ?」

「!!」

「私は新しい学園の人気者に挨拶をしに来ただけだもの♪」

 

 俺は呆気にとられた。

 

「じゃあ、なんで『演技』の事を看破したんですか?」

「え?面白そうだったからよ?」

「はぁ、そうですか...」

 

白鷺さんは扉のほうを向いた。

 

「そろそろ、お暇するわね♪

 また、会いましょ♪学園の人気者さん♪」

 

 と言い残し、白鷺さんは去って行った。

 

「...勘弁してほしいんですけどね。」

 

 誰に聞かれることなく、俺の言葉は春の空へ木霊した。

______________________________________

 

 放課後になった。

俺は校内放送で生徒会室に呼び出されていた。

 

 コンコン

「失礼します。」

「来ましたね、八舞君。」

 

 生徒会室に行くと、氷川さんと生徒会と思われる人たちがいた。

 

「今回、俺はなぜ呼ばれたんでしょうか?」

「それは...私のほうから...説明します。」

 

 白金さんが口を開いた。

 

「今回...八舞君のファンクラブのルールを...決めることになりました。」

「はい。」

「その事について、私が原案を作成しましたので、確認をお願いしたいのです。」

 

 白金さんの説明に氷川さんが続いた。

 

「羽沢さん、お願いします。」

「はい!」

 

 羽沢さんは俺に一枚のプリントを渡してきた。

内容はこうだ。なんで一人制服違うんだ?

 

1、見物目的で八舞栄斗がいる教室前に集まるのを禁止する。

2、家まで付いていくなどのストーキング行為を禁止する。

3、授業の妨害をしない。

4、八舞栄斗への贈り物などは生徒会を通すこと。

5、以上のことを守れない者は通常の校則に則り罰則を行うものとする...だ。

 

「...なるほど。」

「この内容で問題ないでしょうか?」

「はい、問題ありません。」

「それでは...今日中に学園長の許可を得て...明日には発布します。」

「ありがとうございます、白金さん。」

「あ...あと、生徒会のメンバーを...紹介しますね。」

「はい。」

「じゃあ、私から、書記の市ヶ谷有咲です。二年です。」

「気を使わなくてもいいぞ?市ヶ谷。」

「べ、別に!気なんか使ってねーし!...あっ。」

「やっぱり、素を隠してたか。」

「う、うぅ...」

「あはは、私は羽沢つぐみです!有咲ちゃんと同じで二年生だよ!」

「なんで羽沢だけ制服違うんだ?」

「これはね!1度、合同で文化祭をしたらしくてお互いの学校の出入りがしやすくなって、今回は紗夜さんに頼まれて、手伝いに来たんだ!」

「なるほど...。

あ、 俺は八舞栄斗だ、よろしく。」

 

 と、軽く自己紹介を済ませ俺は生徒会室を後にした。

________________________________________

 

「さて、帰るか。」

 

 と、思ったが。

 

「そういえば、食材が残り少ないんだった。」

 

 そうして俺は商店街に向かった。

________________________________________

 

 商店街にきた。この時間帯には夕飯の買い物に来ている人が多くいた。

そんな時、香ばしい香りが鼻孔をくすぐった。

 

「ここは_喫茶店か?」

 

 今日のことで疲れていた俺は吸い込まれるように、その喫茶店に入っていった。

 

「へいラッシェーイ!!なに握りやしょーか!」

「え!?」

 

 店内で俺を迎えたのは茶色のエプロンを身に着け、店を間違えてるぞ、と突っ込みたくなることを言っている、

若宮だった。

 

「あれ?栄斗さんじゃないですか!どうしたんですか?」

「いや、コーヒーを飲もうと思ったんだが、店を間違えたみたいだ。」

「え?間違ってませんよ?ここは、羽沢珈琲店です!」

「うん、そうだよな...って、羽沢?」

 

と、言っていると、一人の女の子が入ってきた。

 

「ごめーん!生徒会で長引いちゃった!」

「あれ?羽沢?」

「あ!八舞君!いらっしゃい!」

「あ、あぁ。」

「イヴちゃん!八舞君を席に案内して!

 私もすぐに準備するから!」

「はい!承知しました!」

 

 俺は若宮に席へ誘導された。

 

「栄斗さん!ご注文はなににしますか?」

「...ブレンドコーヒーを頼む。」

「はい!かしこまりました!」

 

と言って、若宮はオーダーを通すため、厨房に下がっていった。

 

「やばい、情報量が多すぎる。若宮はここでバイトをしてて、

 この店に名前は羽沢珈琲店。つまり...」

 

 などと考え事をしていると、羽沢がこっちに来た。

 

「ブレンドコーヒー、お待たせしました!」

「あ、あぁ、羽沢か。」

「イヴちゃんじゃなくて残念?」

「いや、そういう事ではない。

 羽沢はこの店の娘さんか?」

「うん、そうだよ!」

「...若宮はここがどういう店か理解しているのか?」

「...さぁ?」

 

 と、羽沢も困ったような顔をしている。

なんせ、若宮は今もさっきのすし屋の接客を続けているんだから。

 

「イヴちゃんうちカフェだから...っ。」

 

 と、ツッコミを入れられている。

大丈夫なのか?俺はただただ、そう思った。

 

_「イヴちゃんそろそろ上がりだよね?」

「はい!そうですね!」

 

 と、そんな会話が聞こえてきた。

俺が店に入って、結構な時間がたった。外はもうかなり暗い。

 

「おい、若宮。」

「はい!なんでしょう栄斗さん!」

「もう上がりなら、家まで送る、外も暗いからな。」

「」

 

 羽沢が驚きの表情を浮かべている。

 

「え?栄斗さんは大丈夫なんですか?」

「あぁ、問題ない。」

「それじゃあ!用意してきますね!」

「あぁ、焦らなくていいぞ。」

 

 若宮がバックヤードに下がっていった。

 

「...おい、羽沢、すごい顔してるぞ?」

「っは!ご、ごめん、八舞君。」

「いや、かまわないが。」

「ね、ねぇ。」

「ん?なんだ?」

「八舞君ってイヴちゃんの事、好きなの?」

「...どうした?急に?」

「いや、なんとなくーかな?」

「別に好きではないが、可愛いとは思ってるな。(なにより、俺にはその資格はない。)」

「そ、そうなんだ!あはは。

 ごめん!厨房に行くね!」

「あ、あぁ。(どうしたんだ?)」

 

 いつのまにか、若宮がバックヤードから出てきていた。

 

「意外と早かったな、あっ、すまん会計するから、少し待ってってくれ。」

「あ、あぁ!それなら私が_!」

「若宮!」

 

 俺は間一髪、こけそうになった若宮を抱きとめた。

 

「ど、どうしたの!?イヴちゃ_」

「...羽沢、会計を頼む。」

「え、え、は、はい!かしこまりました!!」

 

 俺は会計を済ませ、若宮と店を出た。

が、若宮の様子がおかしい。バックヤードから出てきたくらいからか?

 

「若宮?」

「え?は、はい!なんでしょう!」

「さっきから元気がないみたいだが、どうかしたか?」

「え、えっと、なにももんだいないですよっ!?」

 ...嘘だな、いつもなら、俺が喋らなくても会話を振ってくるが今はそれがない。

まさか...

 

「...熱でもあるんじゃないか?」

 

 俺は若宮の額に触れた。

うん、熱はないみたいだ...

 

「ど、どうした!?若宮!?」

「な、なな///」

「顔赤いぞ!?やっぱり体調が__」

「送ってもらうのはここまででいいですーーーー!!!!」

 

 と、言って若宮は走っていった。

顔も赤かったし、大丈夫なのか?

俺はそんなことを思いながら帰路につくのだった。

_____________________________________

 

”イヴSide”

 イヴは自宅まで全力疾走した。

 

「はぁはぁ...こんなに走ったのは久しぶりかもしれません...」

 

 全力疾走の後なだけあって、心拍数が上がっている。

しかし、心拍数が上がっている理由はそれだけではない。

 

「ま、まさか、栄斗さんが...私を...

『可愛いとは思ってる』なんて...」

 

イヴはベッドに飛び込んで足をバタバタさせている。

 

「し、しかも!栄斗さんに恥ずかしい姿を見せてしまって... 

 おでこに手を__!!!」

 

 イヴは自分自身の発言で悶えていた。

イヴにとってこの感情は未知のものだった。

 

「明日から、栄斗さんと、どう接すればいいんでしょう...?」

 

 こうして、イヴは一人悶々とし、眠れぬ夜を過ごすのであった。

 




今回、お二人の方に羽沢つぐみちゃんは羽丘の生徒だとご指摘を受けました。
Aftergrow ファン、並びに羽沢つぐみちゃんファンの方々、申し訳ありませんでした。
一応、編集でそれっぽい話には書き換えておきました。
今回出た合同文化祭はアニメの前にやったものです。
今後はこんなミスがないように努めます。

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