恋愛のブシドー   作:火の車

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千聖ルート11話です!


第11話

 明日香の騒動から一週間が経った。

 西園は全く動かない。

 俺は今、屋上にいる。

 

「__平和だ。」

「そうかしら?」

「白鷺さん。」

「おはよう、八舞君。」

「どうしたんですか?朝からこんなところに来て。」

「あなたがいる気がしたから話に来ただけよ。」

「...友達、いないんですか?」

「いるわよ。失礼ね。」

「すいません。」

 

 俺たちは少し話をした。

 

「__あ、言い忘れてたのだけれど。」

「ん?」

「近日中にパスパレがパーティーに参加することになったの。」

「パーティー?」

 

 白鷺さんがそんな事を言った。

 

「それで、あなたにはバイトの一環としてついて来てほしいのよ。」

「それはいいんですが、服装はどうすればいいですか?」

「それについては事務所が出してくれるわ。」

「そうですか。じゃあ、日程などは?」

「日程は__」

 

 俺は白鷺さんから説明を受けた。

 

「__こんな感じよ。」

「了解しました。」

「これは本来、業務じゃないからボーナスが出るわよ。」

「いいんですか?元々、シフトもあまりないのに。」

「そういう仕事だからいいのよ。

 それに、あなたのシフトは私が管理してるわ。」

「え?初耳なんですが。」

「...まぁいいわ。それじゃ、よろしくね。」

「あ、はい。」

 

 白鷺さんは屋上を去った。

 

「...次はパーティーか。(西園は動いてくるか?)」

「__やーまい♪」

「来ると思った。どうせ、さっきの話も聞いてたんだろ?」

「お!よく分かってるね~♪」

「それで、お前は今回、何か仕掛けてくるのか?」

「今回はパスかな~。」

「...意外だな。お前なら動くと思っていたが。」

「八舞には、もっと最高の舞台を用意したいからね!」

「最高にうれしくないな。」

 

 俺はそう言った。

 

「え~!もっと喜んでよ~!

 あ!私だからかな?

 八舞って、確かマナが__」

「黙れ!...マナはもういない。」

「...まぁ、いいよ。

 後、八舞。」

「...なんだ。」

「これは助言、芸能界には面倒な人、多いよ?」

「...お前以上に、か?」

「それはないかな!」

「ならいい。」

 

 西園は屋上の出口に向かった。

 

「...私以外に負けちゃダメだよ?」

「お前にも負けねぇよ。」

「あはは!そっか!」

 

 西園はそう言って屋上を出た。

 

「__くそ...。」

 

 俺は空を見上げた。

 

「...あいつはマナじゃない。

 マナの人格はもう死んだんだ。

 あれは仮面なんだ。」

 

 俺は立ち上がって...

 

「...俺は絶対に負けない。マナのために...!」

 

 俺は昔からの誓いを呟いた。

________________________

 

 放課後になった。

 

 ピロリン♪

 

「ん?」

 

 誰かからメッセージが来た。

 

「えっと...明日香?」

 

『こんにちは、八舞先輩。

 突然で悪いのですが、今日、会えないでしょうか?

 この前のお礼をしたいです。』

 

 と、書かれてあった。

 俺はそれに『大丈夫』と返信した。

 

 ピロリン♪

 

「...早いな。」

 

 俺が返信してから、すぐに待ち合わせ場所の連絡が来た。

 

「__どこかに行くのか?」

 

 雅が話しかけてきた。

 

「あぁ、明日香がお礼をしたいらしい。」

「...お前もか。」

「お前も...?」

「さーい君!早く行こ!」

 

 戸山がこっちに来た。

 

「二人はどこかに行くのか?」

「うん!さい君にお礼がしたくって!

 ...私を、守ってくれたから。」

「...なるほどな。」

「そんなに気にしなくてもいいがな。」

「...あと、私がさい君とお出かけしたいなーとか思ってたり...?///」

 

 と、戸山がいつもじゃ考えられないくらい小さな声で言った。

 

「...まぁ、そういう事なら付き合ってやるよ。

 お礼とか気にしないでいいから、戸山が行きたいとこ行くぞ。」

「!...うん!ありがと!さい君!」

「じゃあ、行ってくる。」

「おう、楽しんで来い。」

 

 二人は教室から出ていった。

 

「俺も行くか。」

 

 俺も教室を出て、待ち合わせ場所に向かった。

________________________

 

 待ち合わせ場所に着いた。

 明日香はすでに、そこにいた。

 

「悪い、待たせた。」

「いえ、そんなに待っていませんよ。

 あと、今でも待ち合わせ十分前ですよ?」

「経験がないからわからんが、

 女子との待ち合わせは男が先に来るのが常識と聞いててな。」

 

 俺はどこで聞いたか忘れた常識を言った。

 

「そうなんですか?」

「あぁ。そうらしい。」

「まぁ、それはいいです。

 今日は八舞先輩にお礼をしたいんです。」

「気にしなくてもいいが、それに、元を辿れば俺が撒いた種だ。」

 

 明日香は首を横に振った。

 

「八舞先輩は悪くないです。」

「だが__」

「いいんです!先輩は大人しくお礼されてください。」

「...分かった。」

 

 明日香の勢いに飲まれた。

 

「これ、どうぞ。」

「これは...クッキーか。」

「...私に出来るのはこれくらいですから...。」

「嬉しいぞ?あの程度の事でならおつりが出るくらいだ。

 好きだしな、クッキー。」

「そうなんですか...?」

「あぁ。しかも、これ手作りだろ?

 明日香の手作りなら特にうれしい。」

「!...そ、そうですか...///」

「ん?」

 

 明日香がうつ向いてる。

 

「...明日香、少し、そこのベンチに座らないか?」

「え?」

 

 俺は近くにあったベンチを指さした。

 

「話でもしよう。」

「...分かりました。」

 

 俺たちはベンチに座った。

 

「__ここは、良いところだな。」

「はい。」

「子供達が楽しそうに遊んでるな。」

「子供、好きなんですか?」

「...あぁ。」

「意外ですね。」

「そうか?俺だって偶に考えるぞ?

 将来、自分に子供がいたらなーとか。」

「将来...///」

「明日香...?」

「い、いえ。なんでもないです。」

「そうか?」

「はい。」

 

 それから、俺たちはしばらく子供たちを眺めていた。

 しばらくすると、明日香はウトウトしだした。

 

「明日香?眠いのか?」

「はい...。クッキーづくりで寝るのが遅くなってしまって...。」

「なんか、悪いな。これは大切に食べるよ。」

「いえ、そんなに気にしなくてもいいです。」

 

 そう言いながらも明日香は眠たそうだ。

 

「...少し、寝てもいいぞ。」

「え?」

「肩でも膝でも、好きなところ貸してやるから、寝たらどうだ?」

「え?でも__」

「疲れてるなら、甘えた方がいいぞ。

 俺は気にしないから。」

「...そういう事なら、失礼します。」

 

 明日香が肩に寄りかかってきた。

 

「(八舞先輩、あったかい...///すごく、安心する///)」

 

 明日香の表情が緩んでる。

 

「(私の心臓の音、聞こえてたりしないよね?///

 大丈夫だよね?///)」

 

 しばらくすると、明日香は本格的に眠った。

 

「...すぅ...」

「...やっと寝たか。」

 

 俺はそっと明日香の頭を撫でた。

 

「...悪い、明日香。俺は一つ嘘をついた。」

 

 俺は独り言を言い出した。

 

「...俺は将来、子供がいたら、とかは考えられない。だって__」

 

 俺は夕日を見て。

 

「俺は、マナが好き、という呪縛に縛られてるから。」

 

 俺は遠くを見て。

 

「...だから、俺の未来は昔に...って、そんなことはいい。

 明日香を送ってくか。」

 

 俺は寝てる明日香をおぶった。

 そして、俺は歩きだした。

 

「__俺も仮面だ。」

 

 夕日に照らされてできた俺の影が、

 三つに分かれてるように見えた。

 

 

 




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