明日香の騒動から一週間が経った。
西園は全く動かない。
俺は今、屋上にいる。
「__平和だ。」
「そうかしら?」
「白鷺さん。」
「おはよう、八舞君。」
「どうしたんですか?朝からこんなところに来て。」
「あなたがいる気がしたから話に来ただけよ。」
「...友達、いないんですか?」
「いるわよ。失礼ね。」
「すいません。」
俺たちは少し話をした。
「__あ、言い忘れてたのだけれど。」
「ん?」
「近日中にパスパレがパーティーに参加することになったの。」
「パーティー?」
白鷺さんがそんな事を言った。
「それで、あなたにはバイトの一環としてついて来てほしいのよ。」
「それはいいんですが、服装はどうすればいいですか?」
「それについては事務所が出してくれるわ。」
「そうですか。じゃあ、日程などは?」
「日程は__」
俺は白鷺さんから説明を受けた。
「__こんな感じよ。」
「了解しました。」
「これは本来、業務じゃないからボーナスが出るわよ。」
「いいんですか?元々、シフトもあまりないのに。」
「そういう仕事だからいいのよ。
それに、あなたのシフトは私が管理してるわ。」
「え?初耳なんですが。」
「...まぁいいわ。それじゃ、よろしくね。」
「あ、はい。」
白鷺さんは屋上を去った。
「...次はパーティーか。(西園は動いてくるか?)」
「__やーまい♪」
「来ると思った。どうせ、さっきの話も聞いてたんだろ?」
「お!よく分かってるね~♪」
「それで、お前は今回、何か仕掛けてくるのか?」
「今回はパスかな~。」
「...意外だな。お前なら動くと思っていたが。」
「八舞には、もっと最高の舞台を用意したいからね!」
「最高にうれしくないな。」
俺はそう言った。
「え~!もっと喜んでよ~!
あ!私だからかな?
八舞って、確かマナが__」
「黙れ!...マナはもういない。」
「...まぁ、いいよ。
後、八舞。」
「...なんだ。」
「これは助言、芸能界には面倒な人、多いよ?」
「...お前以上に、か?」
「それはないかな!」
「ならいい。」
西園は屋上の出口に向かった。
「...私以外に負けちゃダメだよ?」
「お前にも負けねぇよ。」
「あはは!そっか!」
西園はそう言って屋上を出た。
「__くそ...。」
俺は空を見上げた。
「...あいつはマナじゃない。
マナの人格はもう死んだんだ。
あれは仮面なんだ。」
俺は立ち上がって...
「...俺は絶対に負けない。マナのために...!」
俺は昔からの誓いを呟いた。
________________________
放課後になった。
ピロリン♪
「ん?」
誰かからメッセージが来た。
「えっと...明日香?」
『こんにちは、八舞先輩。
突然で悪いのですが、今日、会えないでしょうか?
この前のお礼をしたいです。』
と、書かれてあった。
俺はそれに『大丈夫』と返信した。
ピロリン♪
「...早いな。」
俺が返信してから、すぐに待ち合わせ場所の連絡が来た。
「__どこかに行くのか?」
雅が話しかけてきた。
「あぁ、明日香がお礼をしたいらしい。」
「...お前もか。」
「お前も...?」
「さーい君!早く行こ!」
戸山がこっちに来た。
「二人はどこかに行くのか?」
「うん!さい君にお礼がしたくって!
...私を、守ってくれたから。」
「...なるほどな。」
「そんなに気にしなくてもいいがな。」
「...あと、私がさい君とお出かけしたいなーとか思ってたり...?///」
と、戸山がいつもじゃ考えられないくらい小さな声で言った。
「...まぁ、そういう事なら付き合ってやるよ。
お礼とか気にしないでいいから、戸山が行きたいとこ行くぞ。」
「!...うん!ありがと!さい君!」
「じゃあ、行ってくる。」
「おう、楽しんで来い。」
二人は教室から出ていった。
「俺も行くか。」
俺も教室を出て、待ち合わせ場所に向かった。
________________________
待ち合わせ場所に着いた。
明日香はすでに、そこにいた。
「悪い、待たせた。」
「いえ、そんなに待っていませんよ。
あと、今でも待ち合わせ十分前ですよ?」
「経験がないからわからんが、
女子との待ち合わせは男が先に来るのが常識と聞いててな。」
俺はどこで聞いたか忘れた常識を言った。
「そうなんですか?」
「あぁ。そうらしい。」
「まぁ、それはいいです。
今日は八舞先輩にお礼をしたいんです。」
「気にしなくてもいいが、それに、元を辿れば俺が撒いた種だ。」
明日香は首を横に振った。
「八舞先輩は悪くないです。」
「だが__」
「いいんです!先輩は大人しくお礼されてください。」
「...分かった。」
明日香の勢いに飲まれた。
「これ、どうぞ。」
「これは...クッキーか。」
「...私に出来るのはこれくらいですから...。」
「嬉しいぞ?あの程度の事でならおつりが出るくらいだ。
好きだしな、クッキー。」
「そうなんですか...?」
「あぁ。しかも、これ手作りだろ?
明日香の手作りなら特にうれしい。」
「!...そ、そうですか...///」
「ん?」
明日香がうつ向いてる。
「...明日香、少し、そこのベンチに座らないか?」
「え?」
俺は近くにあったベンチを指さした。
「話でもしよう。」
「...分かりました。」
俺たちはベンチに座った。
「__ここは、良いところだな。」
「はい。」
「子供達が楽しそうに遊んでるな。」
「子供、好きなんですか?」
「...あぁ。」
「意外ですね。」
「そうか?俺だって偶に考えるぞ?
将来、自分に子供がいたらなーとか。」
「将来...///」
「明日香...?」
「い、いえ。なんでもないです。」
「そうか?」
「はい。」
それから、俺たちはしばらく子供たちを眺めていた。
しばらくすると、明日香はウトウトしだした。
「明日香?眠いのか?」
「はい...。クッキーづくりで寝るのが遅くなってしまって...。」
「なんか、悪いな。これは大切に食べるよ。」
「いえ、そんなに気にしなくてもいいです。」
そう言いながらも明日香は眠たそうだ。
「...少し、寝てもいいぞ。」
「え?」
「肩でも膝でも、好きなところ貸してやるから、寝たらどうだ?」
「え?でも__」
「疲れてるなら、甘えた方がいいぞ。
俺は気にしないから。」
「...そういう事なら、失礼します。」
明日香が肩に寄りかかってきた。
「(八舞先輩、あったかい...///すごく、安心する///)」
明日香の表情が緩んでる。
「(私の心臓の音、聞こえてたりしないよね?///
大丈夫だよね?///)」
しばらくすると、明日香は本格的に眠った。
「...すぅ...」
「...やっと寝たか。」
俺はそっと明日香の頭を撫でた。
「...悪い、明日香。俺は一つ嘘をついた。」
俺は独り言を言い出した。
「...俺は将来、子供がいたら、とかは考えられない。だって__」
俺は夕日を見て。
「俺は、マナが好き、という呪縛に縛られてるから。」
俺は遠くを見て。
「...だから、俺の未来は昔に...って、そんなことはいい。
明日香を送ってくか。」
俺は寝てる明日香をおぶった。
そして、俺は歩きだした。
「__俺も仮面だ。」
夕日に照らされてできた俺の影が、
三つに分かれてるように見えた。
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