今日はパーティーに行く日だ。
俺は白鷺さんに呼ばれ、事務所に来ていた。
「__スーツって意外と動きやすいな。」
「あら、意外と似合っているじゃない、八舞君。」
俺は用意されてたスーツを着た。
「あ!栄君がスーツ着てるー!るんっ♪っとくるね!」
「似合ってますよ!栄斗さん!」
「うん!かっこいいよ!」
「様になってますね~」
「...どうも。」
とりあえず、不自然ではないらしい。
「じゃあ、行きましょうか。」
俺たちはパーティー会場に向かった。
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「__着いたわ。ここよ。」
「船?」
「えぇ、そうよ。」
「かなり大がかりですね。」
「芸能界の重鎮が多く集まるもの、こんなものよ。
しかも、今回の会場は弦巻家が提供してるし。」
「弦巻家?...あぁ、金持ちの家か。」
「まぁ、入りましょうか。」
俺たちは船に乗った。
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「...中も豪華だな。」
「...ジブン、お腹が痛くなってきました...」
「ダイジョウブです!マヤさん!」
「私も緊張してきた...」
「彩ちゃんも~?こんなのノリでどうにかなるよ!」
「八舞君は大丈夫かしら?」
「俺は大丈夫ですね。仕事と割り切ってるので。」
「頼もしいわ。じゃあ、行きましょうか。」
「はい。」
俺たちはパーティーをしてる場所に行った。
「__なるほど。」
会場は一見、賑やかだが、
人間同士の駆け引きは殺伐としてる。
「あなたには、この光景はどう映るかしら?」
「カジノ、ってところでしょうか。」
「いいわね、その例え。
ここでは、数々の事務所が利益を得るためにアイドルと言う名の手札を切る、まさにカジノよ。」
「...それだけ聞くと、危ない以外の何物でもないですね。」
「そのためのあなたなのよ?」
「護衛、ですね。」
「重鎮じゃなくても、女好きの俳優もいたりするわ。
あなたも目を光らせておいて。」
「分かりました。」
俺は散らばったメンバーの位置を確認した。
「...今のところは問題ないですね。
あくまで挨拶、言いかえれば様子見ってところでしょう。」
「そうね。私たちも飲み物、貰いに行きましょうか。」
「俺はいらないですが、お供します。」
俺たちは人ごみに入った。
「__こんばんは、白鷺さん。」
「あら、あなたは...」
「私は○○事務所の富田と申します。」
「(○○事務所...確か、業界ナンバーワンの事務所か。)」
「__して、そちらの方は?」
富田さんは俺の方を見た。
「申し遅れて申し訳ありません。
○○事務所、パステルパレットのお付きの
八舞栄斗です。」
「○○事務所ですか、かなり遠くからいらしてるんですね、
お疲れでしょう、これでもお飲みのなって...」
飲み物が入ったグラスを渡された。
「ありがとうございます。」
俺はグラスを口に近づけた。
「(...薬品のにおい。こいつ、黒だな。)」
俺は飲み込まないように少量を口に含んだ。
そして、口元を拭う振りをして吐き出した。
「(チープな罠だ。)」
「__それでは、私はこのあたりで。」
富田は離れていった。
「...」
「どうしたのかしら?」
「...あいつ、黒ですね。」
「...やはり、ね。」
「えぇ、さっきの飲み物、薬品のにおいがしました。
俺が相当邪魔なんでしょう。」
「...皆を集めましょうか。」
白鷺さんは皆に連絡した。
そして、みんな集まった。
「どうしたの、千聖ちゃん~?」
「ここからは皆で行動するわよ。」
「え?なんで?」
「...白鷺さんが皆と一緒にいたいらしいです。」
適当に思いた理由を言った。
「そうなんですか?チサトさん?」
「えぇ、そうよ。」
「そういうことなら~」
「千聖ちゃんも素直になったよね!」
「少し照れるっすけど...」
「...八舞君。」
「すいません。ぱっと思いついたもので。」
「まぁいいわ。これでリスクは格段に減ったもの。」
「そうですか。」
俺は周りを見回した。
「(...視線が集まってるな。さて、誰が動いてくるか。)」
「__やぁ!白鷺千聖!」
俺が考え事をしてると、一人の男が話しかけてきた。
「...誰かしら?」
「この前、共演しただろ?○○事務所の早瀬さ!」
白鷺さんは考え込んでいる。
「早瀬さんね。えぇ、覚えてるわよ。」
「「「(嘘だ。絶対に覚えてない。)」」」
とりあえず、丸山さんと大和さんと考えが一致した気がした。
「...それで、早瀬さんは何の用で来たのかしら?」
「今日は相談に来たのさ。白鷺千聖、僕のものにならないかい?」
早瀬はそんな事を言い出した。
「僕は__」
「お断りよ。」
「な?!」
「あなたは好みじゃないわ。
その誘い方も好みじゃない。」
「...僕の言う通りにすればパステルパレットも...」
「必要ないわ。」
白鷺さんはバッサリ切り捨てた。
「...」
「用は済んだかしら?」
「...くそ!。」
早瀬はどこかに去って行った。
「千聖ちゃん、バッサリ言ったね~」
「でも、大丈夫なの?」
「大丈夫よ。どうせ三流俳優よ。」
「チサトさん、恐ろしいです...!」
「...俺もそう思うぞ、若宮。」
「ジブンもっす。」
「失礼ね。」
そうして、パーティーは進行していった。
「__白鷺さん、人、多くなってないですか?」
「...そうね__きゃあ!」
「白鷺さん?!」
白鷺さんが人ごみに引っ張られていった。
「皆はここにいてください!」
「う、うん。」
俺は白鷺さんが引っ張られた方に走った。
「__どこだ。__ん?これは。」
白鷺さんが付けてたネックレスが落ちてた。
「...方向的に...あそこか。」
俺はある場所に向かった。
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「__見つけた。」
「や、八舞君!?」
「全く、無粋な奴だ。」
「うるさい!」
引っ張っていたのは早瀬だった。
「白鷺さんを返してくれないか?」
「なんでお前なんかに?」
「俺も仕事なんでな、白鷺さんに何かあると契約違反なんだ。」
「知ったことじゃない!庶民風情が!」
「__そうだよ、八舞君。」
「...富田か。やっぱ、あんたもグルだよな。」
「気付いていたか。」
「そりゃ、薬盛ってればな。」
「!」
「気付かないと思ったか?
俺はあまりに分かりやす過ぎて、やる気がないと思ったぞ?」
富田は驚いてる。
「さて、白鷺さんを返してくれないか?」
「断る!」
「...(面倒だ、このままじゃ平行線だな。)」
俺は早瀬を睨んだ。
「なんだ、その目は?」
「...さっさと返せ、お前の相手も面倒になってきた。」
「お前ら!」
早瀬がそう叫ぶと、何人かのボディガードが出てきた。
「__皆?!」
白鷺さんがそう叫んだ。
パスパレの皆は捕まっていた。
「これで手は出せまい!
さぁ来い!白鷺千聖!」
「嫌!」
「千聖ちゃん!」
白鷺さんが連れていかれそうだ。
「...はぁ、仕方ないか。」
俺はネクタイを緩めた。
そして、皆の方に向かった。
「...おい。」
「あ?」
「今から俺は何も考えず戦うぞ、
死にたくなきゃ、どいてろ。」
「あ?寝言は__がはっ!!」
「何?!__ぐふっ!」
「な、なんだ__がっ!!??」
「え?__げふっ!!!」
「...はい。終わりな。」
正直楽勝過ぎた。
「おい、早瀬。次はお前だ。」
「__おっと、待ってもらおうか。」
「なんだ。」
「あれでも、うちのホープなんだ。
見逃してくれないかい?」
「なぜ?俺がお前の指図を受けないといけない?」
「金ならいくらでも払う。
白鷺千聖を譲ってくれないかな?」
「人を金で、か。」
「まぁ、そうとも_っ!!!」
俺は富田の足を踏みつけた。
「馬鹿にすんなよ。」
「何を...?」
「お前らにもう取引の余地なんてないだよ。」
「何?」
「あっち、見てみ?」
富田は俺が指さした方を見た。
「な!」
「撮影されてるな。」
「な!お、お前ら!」
「はい、さようなら。」
「え?__」
俺は富田の顎を殴った。
富田は気絶した。
「俺からのリストラ祝いだ。」
俺は早瀬の方に向かった。
「さーて、早瀬。お前のキャリアも終わりだ。」
「そ、そんなわけ...」
「...今です、白鷺さん。」
「!えぇ!」
白鷺さんは早瀬を振り切った。
「な!?か、返せ!」
「返せ?日本語を忘れたか?残念な奴だ。」
俺は早瀬に近づいて行った。
「千聖ちゃん!」
「大丈夫?!」
「チサトさん!」
「千聖さん~!!」
「ちょっと!皆?!」
皆は白鷺さんに駆け寄った。
「__さてと...」
「なんで、なんでだ!
白鷺千聖がいた時点で僕が優勢だったのに!!!」
「優勢?お前、勘違いしてるぞ?」
「は...?どういうことだ?」
「お前ら程度、相手に俺がいる時点で形成は常にこっち側だ。」
「ば、馬鹿にするな!!!クソが!!!」
殴りかかってきた。
「はい、キャリア終了、おめでと。」
「がぁ!!!」
顔面に真っ直ぐ、一発。
これで充分。
「...はい。終わりな。」
俺は携帯を確認した。
「救出時間、20分。かかり過ぎだ。
あと...あった。」
さっき撮ったであろう動画がSNSに上がっていた。
「__芸能人の消える瞬間ってとこか?
もう少し有名なら助かってたのにな。」
俺はスーツを着なおした。
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「__八舞君!」
「あ、白鷺さん。」
「大丈夫なの?!怪我とか__」
「大丈夫ですよ。白鷺さんは?」
「私も大丈夫よ。八舞君のお陰ね。」
「ありがとう、八舞君!」
「すごかったね~!」
「エイトさん、ブシドーでした!」
「助かったっす~!」
皆に感謝された。
「まぁ、これくらいは、ね。」
「八舞君、やっぱり。」
「西園の相手をするのに、この程度の奴らに手こずってたらダメですから。」
「そう、かもしれないわね。」
「何の話?」
「なんでも、ないですよ。丸山さん。」
これにて、パーティーは終わった。
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”西園side”
「__もう少し、もう少しで。
八舞と踊る最高の舞台が__うっ!!」
西園は頭を抱えた。
「...まだ、生きてるんだね『マナ』...!」
(栄斗を苦しめないで...!)
「うるさいよ。
私は絶対に止まらない、私は八舞を手に入れる...!」
(でも、あなたにも限界があるよ。今のカナちゃん。)
「...私は、終わらない!!!
私が本物の西園カナだから!」
西園は絶叫した。
「__どうかしたか?西園カナ。」
「...来たの?戒田。」
「あぁ。成功の報告にな。」
「そう言えば、私の言った通り動いてくれたね。ありがと。」
「今のお前には敵わないからな。だから従う。」
「あら?あなたは私の生みの親でしょ?
今の西園カナの、ね?誘拐犯兼殺人犯さん?」
「...」
「あなたには、もう少し働いてもらうよ。」
「...分かった。」
男は去って行った。
「__もうちょっとで...八舞を...!」
西園は月を見た。
その月には雲がかかっていた。
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