七月に入った。
「__おい!香澄ー!」
「いや~!」
戸山と市ヶ谷は今日も賑やかだ。
「た、助けて~!さい君~!」
「...戸山、今回は市ヶ谷の言う事聞いとけ。」
「うぇ~!さい君まで~!?」
「まぁ、今回は仕方ないだろ。
だって戸山、中間テスト、赤点いくつだっけ?」
「うっ...!」
「それで市ヶ谷に教えてもらってギリギリで追試を乗り切ってたな。」
「そういう事だ。
な?香澄?」
「は、はぃぃ!」
戸山は市ヶ谷の圧に屈したみたいだ。
「俺も手伝ってやろうか、市ヶ谷?」
「え?いいのか?」
「あぁ。バイトも休みだからな。
何より、戸山を一人は大変だろ。」
「ひどい!そこまでひど__」
「あ?」
「__いです、ごめなさい。」
「...俺も行っていいか?」
「雅?」
「え!さい君、来てくれるの!」
「あぁ。俺も順位が高いとは言えないからな。」
「雅、何位だっけ?」
「前回は103位だ。」
「大体、五分の一くらいか。」
「あぁ。」
「それで、戸山は?」
「...500位、です...」
「...市ヶ谷、これは何人中だ?」
「...520人中、だな。」
「流石にやばいだろ。」
俺たちは頭を抱えた。
ピロリン♪
その時、誰かからメッセージが来た。
「ん?」
俺はメッセージを確認した。
「__なるほどな。」
「誰からだ?」
「...戸山には効果抜群のスペシャルゲスト、だな。」
「スペシャルゲスト?」
「じゃあ、放課後、その子も呼んで勉強するぞ。
分かったか、戸山?」
「はい...」
そうして、朝の時間が過ぎた。
________________________
放課後だ。
「__さて、行くか。」
「どこでするんだ?」
「うーん、俺の家でいいだろ。」
「いいんじゃねぇか?...って、八舞の家?!」
「あぁ、そうだが?」
「そうだが、じゃなくて、
男の家に行くなんて...」
「戸山は来たことあるぞ?」
「何?!」
「後、スペシャルゲストも来たことがあるからな。」
「...まぁいいや。
それより、スペシャルゲストって誰なんだ?」
「来れば分かる。
きっと、市ヶ谷も知ってる子だ。」
「私も?」
「まぁ、行くか。」
俺たちは俺の家に向かった。
________________________
「__えーっと。」
「こんにちは、八舞先輩。」
「お、来てたか、明日香。」
「はい。今日は急なお願いですみません。」
「いや、大丈夫だ。
...ちょうど、姉の方を教える予定だったからな。」
「...本当にすいません。」
「え?!スペシャルゲストってあっちゃんの事だったの?!」
「そうだ。
どうだ、戸山。効果抜群だろ?」
「でかした、八舞。」
「...これは、効果絶大だろうな。」
「まぁ、入ろう。」
俺たちは家に入った。
________________________
「__さて、これから勉強を始めるわけだが。
担当を決めるぞ。
戸山は市ヶ谷が担当。
あとの二人は分からないところがあったら聞いてくれ。」
「分かった。」
「分かりました。」
「さて、香澄やるぞ。」
「うん...」
勉強会が始まった。
「__おい!香澄!ここ違う!」
「ひぃ~!ごめんなさい~!」
「お姉ちゃん...」
明日香は遠い目をしてる。
「八舞、ここはどうするんだ?」
「あーそこは__」
「__なるほどな。」
こっちはいたって順調だ。
「八舞先輩。」
「ん?どうした__?!」
明日香が俺の近くに寄ってきた。
「なんか、近くないか?」
「...気のせいです///」
「そうか?まぁ、特に問題ないからいいが。
それで、どこが分からないんだ?」
「...八舞先輩のバカ...」
「なんで...?」
「...それはいいとして。」
「あ、うん。まぁいいか。
で、どこだ?」
「ここなんですが__」
こうして、勉強会は進んでいった。
「__あれ?もうこんな時間か。
夕飯作るか。」
「え?八舞先輩、料理できるんですか?」
「あぁ、一人暮らしだからな。
なんなら皆も食べていくか?」
「...いいのか?」
「雅も皆に持って帰るだろ?
あ、留守番してるからお菓子もつけてあげよう。」
「悪いな。」
「いいって。」
「私らもいいのか?」
「構わんぞ。」
「じゃあ!私は食べていくー!」
「私も食べたい、です。」
「じゃあ、ちょっと待っててくれ。」
俺は台所に行った。
「__さて、始めるか。
まぁ、出来るだけ手早く...」
「あの、お手伝いしましょうか?」
「明日香?別にいいぞ客に手伝わせるのもあれだし。」
「私が手伝いたいんです、ダメですか?」
「うーむ...じゃあ、手伝ってもらおうか。」
「はい。何をすればいいですか?」
「まずは__」
俺たちは料理を始めた。
「__手際がいいな。」
「まぁ、お姉ちゃんがあれなので...」
「あっ...(察し)」
明日香の苦労が見えた気がした。
「...戸山も変わる時が来る...と、思うぞ、多分、きっと、な?」
「...来るんでしょうか?」
「ま、まぁ、早く料理を作ろうか。」
「はい。」
そうして、夕飯が完成した。
「__出来たぞ、三人とも。」
「あ!来た来た!」
「旨そうだな。」
「いつも思うが、八舞の料理センスはどこから来てるんだ?」
「普通だと思うが?
今日は明日香も手伝ってくれたしな。」
「いえ、私は本当にちょっとだけです。
ほとんどいつの間にか終わってました。」
「すっごーい!」
「...まぁ、食べよう。」
俺たちは夕飯を食べ始めた。
「__美味しー!」
「これは、ばあちゃんといい勝負だ...」
「すごい...」
「...ほかの反応を見て分かるが、お前って大概、規格外だな。」
「そうか?...」
俺は料理を口に運んだ。
「...まだまだ、だな。」
「お前の料理は何が基準なんだ?」
「...さぁな。」
俺は目線をそらした。
「これも美味しー!」
「おい、戸山、ほっぺにご飯粒がついてるぞ、まったく...」
「!?///」
雅は戸山からご飯粒を取って、それを口に運んだ。
「ちょ!さ、さい君?!!///」
「?...どうした?」
「いや、あの、さっきのは...///」
「...?」
「今の何がおかしかったんだ?」
「八舞先輩...」
「八舞...」
「え?なんだ?」
なぜか明日香と市ヶ谷に憐れむような眼で見られた。
そんなこんなで皆が帰る時間になった。
「じゃあ、帰るわ。夕飯、持ち帰りまで用意してもらって悪いな。お菓子も。」
「いいぞ。みんなによろしくな。」
「あぁ。」
「じゃあね!八舞君!」
「さようなら、八舞先輩。」
「あぁ。あと、戸山は勉強しろよ。」
「は、はい!」
「じゃあな、八舞。」
「あぁ、市ヶ谷、気をつけろよ。」
「わーってるって!」
皆は帰って行った。
________________________
皆が帰った後、俺はベランダにいた。
「__料理の基準、か。」
俺は空を見上げた。
「イジメで弁当を捨てられる俺に、マナが作ってきてくれてた弁当。
あれが俺の目指す料理。温度じゃない暖かさ、あれが...」
俺は部屋に戻った。
________________________
今日はテスト当日だ。
「__よう、八舞。」
「よう、市ヶ谷と...戸山か?」
「お、おはよ~...」
「...なんて言うか、やつれたな。」
「あはは~、いっぱい勉強したからね~...」
「そ、そうか。」
「__よう。」
「あ、雅。テストは大丈夫そうか?」
「あぁ。...って、そいつは戸山、か?」
「あ、さい君、おはよ~...」
「あ、あぁ。」
戸山の状態が酷過ぎて雅も若干引いてる。
「あ、斎藤、ちょっとこい。」
「なんだ、市ヶ谷?」
「えっと、香澄に___て言ってみてくれ。」
「?分かった。
おい、戸山。」
「うん?何~...?」
「テスト終わったら二人で遊びに行くぞ。」
「え...?ほんと、に...?」
「あ、あぁ?」
「...」
戸山は下を向いたまま黙っている。
「...おい、あれでよかったのか?」
「あぁ、大丈夫だ。」
「__やったー!頑張るぞー!!」
「「??!!」」
戸山が叫びだした。
「な、なんだ?!」
「ほんとに?!ほんとに一緒に遊びに行ってくれるの?!」
「まぁ、いいぞ。その代わり追試になるなよ。」
「うん!」
「__な?上手くいっただろ?」
「そうだな。」」
こうして、テストが始まった。
__そして、なんやかんやでテストが終わった。
「__さて、順位の発表だ。まずは雅から。」
「俺は51位だった。」
「お、やるじゃないか。」
「お前のお陰だ。」
「そうか。まぁ、次は戸山。」
「私は...203位だったー!!」
「お、戸山にすれば上出来だな。」
「うん!さい君のお陰でやる気が出たんだー!」
「俺?」
「うん!...一緒に遊びに行ってくれるんでしょ...?///」
「あぁ。」
「だから!頑張ったよ!」
「そうか...?」
「...私が焚きつけたとは言え、あれは...」
「うん?仲がよさそうでいいじゃないか。」
「...お前は...。てか、八舞は何位だったんだ?」
「え?満点で一位だったが?」
「...いや、すごすぎだろ。」
「普通にできるぞ?」
「...」
そんなこんなでテストは無事、終わった。
________________________
放課後だ。
「__あ、そう言えば八舞。」
「ん?なんだ?」
「今度、私らのバンドのライブあんだけど、来るか?」
「ライブ?行ってもいいのか?」
「あぁ。どうせ斎藤には香澄が渡すからな。
お前も呼ばないとだろ?」
「なら、行くかな。」
「よし、じゃあ、これ。」
市ヶ谷にチケットを渡された。
「じゃあ、私は練習あるから行くわー」
「おう、またな。」
市ヶ谷は教室を出た。
「俺も帰るか。」
________________________
”雅&香澄side”
「__それで、どこに遊びに行く、戸山?」
「うーん、分かんない!」
「...そうか。」
「でも、少し先になっちゃうかな~」
「何かあるのか?」
「うん!私たち、もう少しでライブなんだよ!」
「ライブ?」
「うん!あ、さい君、見に来ない?」
「いいのか?」
「うん!チケットあるから!」
香澄はチケットを出した。
「来てね!さい君!」
「あぁ。」
「じゃあ!またね!」
香澄はそう言って帰って行った。
「...ライブか。面白そうだ。」
雅はそう言って家に帰って行った。
感想などお願いします!