今日はライブ当日だ。
俺は雅とライブハウスに向かっていた。
「__あ!八舞君とさい君!」
「よう、戸山。」
「今日は呼んでもらって悪いな。」
戸山と出くわした。
「戸山は...準備は出来てるみたいだな。」
「うん!どう?似合うかな?」
雅の方を見ながら言った。
「あぁ、似合ってるぞ。
制服以外の服装も新鮮だしな。」
「そ、そっか...///」
「(うん、仲がよさそうでよろしい。)」
俺たちは戸山に連れられて、ライブハウスに入った。
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「__ここが私たちの楽屋だよ!」
「...俺たち、入っていいのか?」
「うん?大丈夫だよ!」
「ならいいか。」
俺たちは楽屋に入った。
「__あ、おかえり、香澄。
って、八舞君じゃん!」
「山吹か。」
「うん!いつも店に来てくれてありがとねー!」
「お前の店のパンは美味しいからな。
当然だ。」
「ありがと!」
「あの、八舞君、だよね?」
「えっと、君は?」
「ベースの牛込りみです!」
「牛込はなんで俺の事を?」
「えーっと、私は明日香ちゃんから__」
「あー!りみりんストップ!」
「え?!さ、沙綾ちゃん?!」
「...なんで明日香から?」
「八舞君も、考えるのやめよっか!」
「?分かった。」
「ジー...」
「?なんだ?」
「君、誰?」
「俺は八舞栄斗だ。」
「そう。」
「?」
「花園たえ。」
「ん?」
「私の名前。」
「そうか。」
「よろしくね。」
「あぁ。」
そうして、少し時間が経った。
「__そう言えば、有咲、遅いね?」
戸山がそう言った。
「そう言えば、もう来てないと出番に間に合わないな。」
「ど、どうしたのかな...?」
「...(この状況は...。)」
俺は立ち上がった。
「八舞君?」
「俺が探してくる。」
「...俺も__」
「雅はここにいてくれ。
戸山はそっちの方がいいだろうからな。」
「?」
「ちょ!八舞君?!///」
「...と言うわけで、行ってくる。
あ、市ヶ谷の通りそうな道、教えてくれ。」
「あ、うん。多分だけど__」
「__分かった。」
俺はライブハウスを出た。
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外は夏なだけあって、まだ明るい。
「(どこだ、市ヶ谷。)」
俺は山吹に聞いた道を片っ端から探していた。
「(ここも違う。次は__)」
「__や、八舞先輩...!」
「六花?どうした?」
「も、もしかして、市ヶ谷先輩を探してますか?」
「あぁ、だが、何で分かった?」
「さっき、市ヶ谷先輩が男の人に連れていかれてて...」
「なんだと?!」
「私どうしたらいいか、分からなくて...」
「六花は間違ってない。助けを呼ぶ判断は正解だ。
それで、市ヶ谷はどこだ?」
「こっちです!」
俺は六花の後を追った。
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”有咲side”
「__んー!んー!」
「うるせぇぞ!!」
「!!」
有咲は倉庫みたいな場所で縛られていた。
周りには複数人の男がいる。
「(やばい、縛られて、口も塞がれて、これじゃ助けを呼べねぇ...)」
「いやーでも、こんな上物が手に入るなんてな!」
「ラッキーだったな!」
「こいつ、どうする?」
「あぁ?決まってんだろ、使うだけ使って、飽きたら売り飛ばす!」
「?!」
有咲は今の状況とさっきの発言で絶望した。
「(私も、ここで終わりか...。)」
有咲は今までの事を思い出した
「(香澄たちに出会ってから、柄にもない事ばっかしてたなー。
でも、それも悪くねぇって思って、なんやかんや楽しかったなー。
そんな香澄にも好きな奴が出来たりな。
私も普通の青春とかしてみたり...。
てか、私が仲いい男子って八舞くらいだったな~。)」
有咲は瞳を潤ませた。
「(ほんと、最後に思い出すのがあいつかよ...。
あいつ、すごいよなー。何でもできるしな。
...ほんと、もう少しで惚れるとこだった。
いや、自覚がないだけで、もしかしたら、もう...。)」
有咲はそんな事を考えていた。
「__さぁ!そろそろ始めるぞ!」
「「おー!」」
「(...終わり、か。
心残りは、八舞に私の演奏を聞かせれなかったことかな、折角、呼んだのに。
てか、こうなるなら、もう少し素直に...って、もう、遅いか)」
有咲は諦めかけていた。
「(じゃあな、皆。)」
ドンドンドン!
倉庫のドアを叩く音がした。
そして、ドアは壊れ、誰かが入ってきた。
「(__え?)」
「__たった5人か。」
有咲が見たのは、記憶で思い描くものとは程遠い、
怒り心頭の栄斗だった。
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「__なんだ、てめぇ?」
「そんな事はいい。
お前ら、ただで済むと思うなよ...!」
「(あれは、八舞、なのか?)」
有咲は困惑していた。
何せ、栄斗の雰囲気はいつものそれと全く違ったから。
有咲がそんなこと思ってると、
「__死ね。」
「ぎゃぁぁ!!うで、うでがぁぁ!」
「?!こ、こいつ...!」
「お前もだ、ゴミ。」
「へ?...あぁぁ!目、目がぁぁ!」
「(な、なんだよ、これ...)」
「__市ヶ谷先輩。」
「ん?!(ろ、六花?!)」
「今、ほどきます、静かにしててください。」
六花は有咲の縄をほどいた。
「__はぁ、八舞先輩が引き付けてくれて助かりました...」
「さ、さんきゅ、六花...」
有咲は解放された。
有咲は栄斗の方を見た。
その時、有咲は戦慄した。
さっきまで、正常に生きてた人間が、生きてるかもわからない状態になってるのだから。
「な、なんだよ、これ...?」
「__よう、市ヶ谷。」
「や、八舞、なのか...?」
有咲には分からなかった。
これがほんとに栄斗なのか。
「早く、ライブハウスに行け。
今なら、まだ間に合う。」
「え...?」
「早く行け!市ヶ谷!」
「!!...わ、分かった!」
有咲は急いでライブハウスに向かった。
「...よかった。」
「あ、あの、八舞先輩?」
「どうした?六花はライブに行かないのか?」
「八舞先輩は、一体、何を恐れてるんですか...?」
「...」
「八舞先輩の怒り方は異常でした。
そこの人たちも...ひぃ!」
「...俺が怖いか、六花?」
突然、栄斗がそんな事を聞いてきた。
「そ、それは...」
「...やっぱり答えなくてもいい。」
「え?」
栄斗は立ち上がった。
「一つ、頼みを聞いてくれないか?」
「頼み、ですか...?」
「あぁ。」
「それは、なんなんでしょうか?」
「____。」
「え?」
六花が聞いたのは、信じられない言葉だった。
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「__わりぃ!」
「あ!有咲!」
「無事だったんだね!」
「よ、よかったよ~!」
「よかった。」
「とりあえず、準備するわ!」
有咲は準備を始めた。
雅はもう客席に行っていた。
「__よし!」
「じゃあ!行こ、皆!」
そう言って、ポピパのライブが始まった。
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”六花side”
「はぁ...はぁ...」
六花はライブハウスに向かって走っていた。
「(早く、早く、皆さんに...!)」
ライブハウスが見えてきた。
六花が着くころには、ライブは終わっていた。
「__君、ここから先は関係者以外は__」
「どいてください!」
六花は警備員を押しのけて楽屋に向かった。
「あれ?六花?」
「と、戸山先輩...!」
「?!ど、どうしたの?!」
「__おい、戸山どうした...って、朝日?」
六花は香澄にもたれかかった。
「早く、早く皆さんを、集めて、ください...!」
「え?なんで__」
「分かった。すぐに集める。」
雅は皆を集めた。
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六花がパスパレと明日香も集めてと言ったので、全員を集めた。
「__それで、どうしたのかしら?」
「すごく急ぎの話、なんだよね?」
「はい。」
「朝日、その話は、ここに八舞がいないのと関係するのか。」
「はい...」
「...まさか。」
「有咲?」
「お話しします。これは八舞先輩からの伝言です。」
「伝言...?」
「はい。内容は...」
”回想”
「__一つ、頼みを聞いてくれないか?」
「頼み、ですか...?」
「あぁ。」
「それは、なんなんでしょうか?」
「皆にさよならと、伝えておいてくれ。」
「え?」
「さっきの俺を見ただろ?」
「は、はい。」
「俺が一緒にいたんじゃ、皆に迷惑をかける。
だから、俺は皆のもとを去る。」
「そ、そんなこと__」
「これも、本当の俺なんだ。
俺は誰かと一緒にいるべきじゃない。」
「で、でも!」
「市ヶ谷の顔、見たか?」
「っ!」
「分かっただろ。
なら、頼んだぞ。」
「ま、待って__」
栄斗は走り去った。
”回想終了”
「__と、言う事なんです。」
皆黙っている。
「あ、私のせいだ...」
「有咲...?」
「私が怖がったから。」
「...いえ、市ヶ谷先輩は悪くありません。
あの状況を見れば、誰だって...」
「__まさか...」
「チサトさん?」
「市ヶ谷さんは誘拐されたのよね?
そして、気付いたのはライブの集合時間過ぎ、なのよね?」
「は、はい。間違いないです。」
「...似てるわ、あの状況に。」
「あの、状況?」
皆は千聖の言葉に困惑している。
「六花ちゃん?」
「はい。」
「八舞君を見て、何を感じたかしら?」
「...まるで、何かを怖がっているみたい、でした。」
「...やはりね。」
「あの、話がつかめないんですが?」
「恐らく、彼が恐れてるものは...
彼の過去関係してるわ。」
「八舞先輩の過去...?」
「えぇ。」
千聖は皆に事情を話し始めた。
事情を聞いた皆は時間が止まったように固まっていた。
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