恋愛のブシドー   作:火の車

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千聖ルート14話


第14話

 今日はライブ当日だ。

 俺は雅とライブハウスに向かっていた。

 

「__あ!八舞君とさい君!」

「よう、戸山。」

「今日は呼んでもらって悪いな。」

 

 戸山と出くわした。

 

「戸山は...準備は出来てるみたいだな。」

「うん!どう?似合うかな?」

 

 雅の方を見ながら言った。

 

「あぁ、似合ってるぞ。

 制服以外の服装も新鮮だしな。」

「そ、そっか...///」

「(うん、仲がよさそうでよろしい。)」

 

 俺たちは戸山に連れられて、ライブハウスに入った。

________________________

 

「__ここが私たちの楽屋だよ!」

「...俺たち、入っていいのか?」

「うん?大丈夫だよ!」

「ならいいか。」

 

 俺たちは楽屋に入った。

 

「__あ、おかえり、香澄。

 って、八舞君じゃん!」

「山吹か。」

「うん!いつも店に来てくれてありがとねー!」

「お前の店のパンは美味しいからな。

 当然だ。」

「ありがと!」

「あの、八舞君、だよね?」

「えっと、君は?」

「ベースの牛込りみです!」

「牛込はなんで俺の事を?」

「えーっと、私は明日香ちゃんから__」

「あー!りみりんストップ!」

「え?!さ、沙綾ちゃん?!」

「...なんで明日香から?」

「八舞君も、考えるのやめよっか!」

「?分かった。」

「ジー...」

「?なんだ?」

「君、誰?」

「俺は八舞栄斗だ。」

「そう。」

「?」

「花園たえ。」

「ん?」

「私の名前。」

「そうか。」

「よろしくね。」

「あぁ。」

 

 そうして、少し時間が経った。

 

「__そう言えば、有咲、遅いね?」

 

 戸山がそう言った。

 

「そう言えば、もう来てないと出番に間に合わないな。」

「ど、どうしたのかな...?」

「...(この状況は...。)」

 

 俺は立ち上がった。

 

「八舞君?」

「俺が探してくる。」

「...俺も__」

「雅はここにいてくれ。

 戸山はそっちの方がいいだろうからな。」

「?」

「ちょ!八舞君?!///」

「...と言うわけで、行ってくる。

 あ、市ヶ谷の通りそうな道、教えてくれ。」

「あ、うん。多分だけど__」

「__分かった。」

 

 俺はライブハウスを出た。

________________________

 

 外は夏なだけあって、まだ明るい。

 

「(どこだ、市ヶ谷。)」

 

 俺は山吹に聞いた道を片っ端から探していた。

 

「(ここも違う。次は__)」

「__や、八舞先輩...!」

「六花?どうした?」

「も、もしかして、市ヶ谷先輩を探してますか?」

「あぁ、だが、何で分かった?」

「さっき、市ヶ谷先輩が男の人に連れていかれてて...」

「なんだと?!」

「私どうしたらいいか、分からなくて...」

「六花は間違ってない。助けを呼ぶ判断は正解だ。

 それで、市ヶ谷はどこだ?」

「こっちです!」

 

 俺は六花の後を追った。

________________________

 

 ”有咲side”

 

「__んー!んー!」

「うるせぇぞ!!」

「!!」

 

 有咲は倉庫みたいな場所で縛られていた。

 周りには複数人の男がいる。

 

「(やばい、縛られて、口も塞がれて、これじゃ助けを呼べねぇ...)」

「いやーでも、こんな上物が手に入るなんてな!」

「ラッキーだったな!」

「こいつ、どうする?」

「あぁ?決まってんだろ、使うだけ使って、飽きたら売り飛ばす!」

「?!」

 

 有咲は今の状況とさっきの発言で絶望した。

 

「(私も、ここで終わりか...。)」

 

 有咲は今までの事を思い出した

 

「(香澄たちに出会ってから、柄にもない事ばっかしてたなー。

 でも、それも悪くねぇって思って、なんやかんや楽しかったなー。

 そんな香澄にも好きな奴が出来たりな。

 私も普通の青春とかしてみたり...。

 てか、私が仲いい男子って八舞くらいだったな~。)」

 

 有咲は瞳を潤ませた。

 

「(ほんと、最後に思い出すのがあいつかよ...。

 あいつ、すごいよなー。何でもできるしな。

 ...ほんと、もう少しで惚れるとこだった。

 いや、自覚がないだけで、もしかしたら、もう...。)」

 

 有咲はそんな事を考えていた。

 

「__さぁ!そろそろ始めるぞ!」

「「おー!」」

「(...終わり、か。

 心残りは、八舞に私の演奏を聞かせれなかったことかな、折角、呼んだのに。

 てか、こうなるなら、もう少し素直に...って、もう、遅いか)」

 

 有咲は諦めかけていた。

 

「(じゃあな、皆。)」

 

 ドンドンドン!

 倉庫のドアを叩く音がした。

 そして、ドアは壊れ、誰かが入ってきた。

 

「(__え?)」

「__たった5人か。」

 

 有咲が見たのは、記憶で思い描くものとは程遠い、

 怒り心頭の栄斗だった。

________________________

 

「__なんだ、てめぇ?」

「そんな事はいい。

 お前ら、ただで済むと思うなよ...!」

「(あれは、八舞、なのか?)」

 

 有咲は困惑していた。

 何せ、栄斗の雰囲気はいつものそれと全く違ったから。

 

 有咲がそんなこと思ってると、

 

「__死ね。」

「ぎゃぁぁ!!うで、うでがぁぁ!」

「?!こ、こいつ...!」

「お前もだ、ゴミ。」

「へ?...あぁぁ!目、目がぁぁ!」

「(な、なんだよ、これ...)」

「__市ヶ谷先輩。」

「ん?!(ろ、六花?!)」

「今、ほどきます、静かにしててください。」

 

 六花は有咲の縄をほどいた。

 

「__はぁ、八舞先輩が引き付けてくれて助かりました...」

「さ、さんきゅ、六花...」

 

 有咲は解放された。

 有咲は栄斗の方を見た。

 その時、有咲は戦慄した。

 さっきまで、正常に生きてた人間が、生きてるかもわからない状態になってるのだから。

 

「な、なんだよ、これ...?」

「__よう、市ヶ谷。」

「や、八舞、なのか...?」

 

 有咲には分からなかった。

 これがほんとに栄斗なのか。

 

「早く、ライブハウスに行け。

 今なら、まだ間に合う。」

「え...?」

「早く行け!市ヶ谷!」

「!!...わ、分かった!」

 

 有咲は急いでライブハウスに向かった。

 

「...よかった。」

「あ、あの、八舞先輩?」

「どうした?六花はライブに行かないのか?」

「八舞先輩は、一体、何を恐れてるんですか...?」

「...」

「八舞先輩の怒り方は異常でした。

 そこの人たちも...ひぃ!」

「...俺が怖いか、六花?」

 

 突然、栄斗がそんな事を聞いてきた。

 

「そ、それは...」

「...やっぱり答えなくてもいい。」

「え?」

 

 栄斗は立ち上がった。

 

「一つ、頼みを聞いてくれないか?」

「頼み、ですか...?」

「あぁ。」

「それは、なんなんでしょうか?」

「____。」

「え?」

 

 六花が聞いたのは、信じられない言葉だった。

________________________

 

「__わりぃ!」

「あ!有咲!」

「無事だったんだね!」

「よ、よかったよ~!」

「よかった。」

「とりあえず、準備するわ!」

 

 有咲は準備を始めた。

 雅はもう客席に行っていた。

 

「__よし!」

「じゃあ!行こ、皆!」

 

 そう言って、ポピパのライブが始まった。

________________________

 

 ”六花side”

 

「はぁ...はぁ...」

 

 六花はライブハウスに向かって走っていた。

 

「(早く、早く、皆さんに...!)」

 

 ライブハウスが見えてきた。

 六花が着くころには、ライブは終わっていた。

 

「__君、ここから先は関係者以外は__」

「どいてください!」

 

 六花は警備員を押しのけて楽屋に向かった。

 

「あれ?六花?」

「と、戸山先輩...!」

「?!ど、どうしたの?!」

「__おい、戸山どうした...って、朝日?」

 

 六花は香澄にもたれかかった。

 

「早く、早く皆さんを、集めて、ください...!」

「え?なんで__」

「分かった。すぐに集める。」

 

 雅は皆を集めた。

________________________

 

 六花がパスパレと明日香も集めてと言ったので、全員を集めた。

 

「__それで、どうしたのかしら?」

「すごく急ぎの話、なんだよね?」

「はい。」

「朝日、その話は、ここに八舞がいないのと関係するのか。」

「はい...」

「...まさか。」

「有咲?」

「お話しします。これは八舞先輩からの伝言です。」

「伝言...?」

「はい。内容は...」

 

 ”回想”

 

「__一つ、頼みを聞いてくれないか?」

「頼み、ですか...?」

「あぁ。」

「それは、なんなんでしょうか?」

「皆にさよならと、伝えておいてくれ。」

「え?」

「さっきの俺を見ただろ?」

「は、はい。」

「俺が一緒にいたんじゃ、皆に迷惑をかける。

 だから、俺は皆のもとを去る。」

「そ、そんなこと__」

「これも、本当の俺なんだ。

 俺は誰かと一緒にいるべきじゃない。」

「で、でも!」

「市ヶ谷の顔、見たか?」

「っ!」

「分かっただろ。

 なら、頼んだぞ。」

「ま、待って__」

 

 栄斗は走り去った。

 

 ”回想終了”

 

「__と、言う事なんです。」

 

 皆黙っている。

 

「あ、私のせいだ...」

「有咲...?」

「私が怖がったから。」

「...いえ、市ヶ谷先輩は悪くありません。

 あの状況を見れば、誰だって...」

「__まさか...」

「チサトさん?」

「市ヶ谷さんは誘拐されたのよね?

 そして、気付いたのはライブの集合時間過ぎ、なのよね?」

「は、はい。間違いないです。」

「...似てるわ、あの状況に。」

「あの、状況?」

 

 皆は千聖の言葉に困惑している。

 

「六花ちゃん?」

「はい。」

「八舞君を見て、何を感じたかしら?」

「...まるで、何かを怖がっているみたい、でした。」

「...やはりね。」

「あの、話がつかめないんですが?」

「恐らく、彼が恐れてるものは...

 彼の過去関係してるわ。」

「八舞先輩の過去...?」

「えぇ。」

 

 千聖は皆に事情を話し始めた。

 

 事情を聞いた皆は時間が止まったように固まっていた。

 

 

 

 

 

 




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