あの出来事から、はや二週間、夏休みも中盤に差し掛かっていた。
「__あれから、八舞君はどうかしら...?」
「...分かりません...」
「電話をしても、メッセージを送っても全く反応がないです...」
あの日から、栄斗は行方不明になっていた。
「そう、よね...」
「はい...」
「どこに行ったんでしょうか、八舞先輩...」
「あのバカ...」
「...探してくる。」
「斎藤先輩、私も行きます。」
「私も...」
「さい君が行くなら、私も...!」
「私も行くわ。」
そうして、栄斗探しが始まった。
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”栄斗side”
「...今、何日だ...?」
俺は携帯を確認した
「...すごいメッセージだな。」
白鷺さんに明日香、市ヶ谷、雅、戸山、パスパレにポピパ、たくさんの人からメッセージが来ていた。
「...外に出て、皆に会わないと。
心配、かけてるかも。」
俺は外に出た。
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「__!」
「おい!あぶねぇよ!!」
「...なんでだ...?」
外に出ると、体に異変が起きた。
全ての音が雑音に聞こえる、目も...。
「...どこに、行けばいいんだ...?」
俺は歩いた。
「...どこに__」
ブー!!!
「__え?」
車のクラクションの音がする。
「__危ない!!!」
「!!!」
俺は誰かに押された。
「何やってるの!!」
「...白鷺、さん...?」
俺の目の前には白鷺さんがいた。
「あなたまさか、自殺しようとしてたんじゃないでしょうね?!」
「...?」
「どうしたの...?」
「...白鷺さんは今、どんな顔をしてますか?」
「え...?何言って__」
「見えないんです、何も。」
栄斗はそう言った。
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「__白鷺先輩!八舞先輩が見つかったって!」
「来たわね、皆...」
「それで、八舞はどこにいるんですか?」
「八舞君は...」
そう言うと診断室の扉があいた。
「白鷺さん、お待たせしました。」
「えぇ。」
「八舞先輩!」
「八舞!」
「その声...明日香と市ヶ谷、か?」
「「え...?」」
「...どういう事ですか、白鷺さん。」
「あれ、雅も来てるのか?怪我、大丈夫か?」
「...これは、どう考えても普通じゃないです、どういうことですか。」
「__私から説明しましょう。」
「先生?」
「彼は今、過度なストレスで脳の機能が狂ってます。」
「狂ってる...?」
「はい。目はそれによるものかと。
何か最近、彼のストレスが強くなる出来事はありましたか?」
「それは...」
「話ずらい事なら、大丈夫です。
今は彼と一緒にいてください。
一応、少しだけ入院してもらいます。」
「はい。」
俺は病室に入れられた、らしい。
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「__まさか、西園マナの死がここまで傷を残すなんて...」
「ありえない話じゃない。」
「さい君?」
「あいつにとっては一番大切な人だ、特に親のいないあいつにとっては...」
「そんな人が、目の前で...。」
「八舞...」
「取り合えず、話をしてみましょうか...」
皆は栄斗に近づいた。
「おい、八舞。」
「なんだ、雅?」
「お前、目が見えなくなったのはいつだ?」
「えーっと、白鷺さんに助けてもらって、目を開けたら見えなくなってたな。」
「あの時...?」
「...他には何かおかしいところはあったか?」
「そうだな、あ、家を出てすぐの時は全部が雑音に聞こえてた。」
「(耳もか...)」
「八舞先輩...」
「八舞...」
明日香と有咲は今にも泣きそうだった。
「明日香?市ヶ谷もどうした?」
「...八舞、今日は帰るわ。
また来る。」
「え?急だな。」
「悪いな。」
「まぁ、またな。」
「またね八舞君。」
皆は病室を出た。
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”雅たち”
「__皆、大丈夫か?」
「え、えぇ...」
「私も...」
「「...」」
「二人は駄目か。」
明日香と有咲はうつ向いていた。
「...どんな、気分なんだろうな...?」
「さい君?」
「一番大切な人が目の前で死ぬって、どんなに悲しいんだろうな...?」
雅はそう呟いた。
「...あいつにもう、生きる希望はない。」
「「「!!」」」
「そ、そんな!」
「戸山、気付いてないのか。
あいつの変化に。」
「変化...?」
「あいつ、笑ってたんだよ。」
「そう言えば...」
「...あいつはあんなに笑うやつだったか?」
「っ...!」
「あいつは____かもしれない。」
「!__」
「あっちゃん?!」
突然明日香が走り出した。
「(__ダメ!絶対ダメ!!そんなこと...!)」
明日香は必死に走った。
『__あいつは死に方を探してるかもしれない。』
「(待って!私はまだ、何も、返せてない!)」
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”栄斗”
「__マナ...」
俺は立ち上がった。
そして、手探りで窓近くに来た。
ガラスの感触を感じる...
『__栄斗が私を好きって伝わって、嬉しかった!///』
「マナ!待ってくれ!マナ!__」
「__八舞先輩!!!」
「?...明日香?」
「...なんで、泣いてるんですか...?」
「泣いてる?俺が?」
俺は自分の頬を触った。
「...本当だ、いつの間に...?」
俺は驚いた。
「...八舞先輩...」
「どうした、明日香?__!?」
明日香が抱き着いてきた。
「あ、明日香...?」
「...私じゃ、ダメなんですか...?」
「え?」
「八舞先輩の悲しみは私じゃ埋められないんですか...?」
「明日香...」
「八舞先輩は死に方を探してる...」
「?!な、なんで...?!」
「...斎藤先輩の言う通りでした。」
「気付いたのか...」
「やめて、ください...」
明日香は消え入りそうな声でそう言った。
「私から、離れないで...」
「明日香...?」
明日香の力が強くなった。
「好きです...」
「!」
明日香はそう言った。
「優しい八舞先輩が好き、私を助けてくれた八舞先輩が好き。」
「明日香...」
「だから、私から、離れないで...
私を置いて行かないで...!」
「...」
「だから__!!!」
俺は明日香の頬を触った。
「明日香は今、泣いてるんだな。」
「八舞、先輩...?」
「俺のせいで泣いてるのか、ごめんな、明日香。」
明日香の頭を撫でた。
「...暖かいな、明日香は。」
「私も暖かいです。」
「...もう少し、生きるのも悪くないのかもな。」
「!」
俺はそう言うと、明日香は放れた。
「__よかった...よかったよ...!」
「明日香は今、どんな顔してる?」
「そうですね__」
明日香は空気を吸って...
「最高の笑顔、でしょうか!」
元気な声でそう言った。
「そうか。見てみたいな。」
「なら、早く目を治してくださいね。」
「そうだな。」
「__じゃあ、私は帰りますね。」
「あぁ。ありがとう、明日香。」
「はい。...あと...」
「?」
「返事、待ってますね?」
「...分かった。」
そう言うと病室のドアが閉まった。
俺はベッドに座った。
「__生きる、か...」
そう呟くとドアが開いた。
「誰ですか?」
「...私だ。」
「市ヶ谷?明日香を迎えに来たのか?
ならさっき帰ったぞ?」
「ちげーよ。話に来たんだよ。」
「話?」
「...お前、死にたいのか?」
市ヶ谷は真面目な声でそう聞いてきた。
「...さっきまでそう思ってた。」
「やっぱりな...って、さっきまで?」
「あぁ。今は生きてみるのも、いいかなって思ってる。」
「そ、そっか...」
「どうした?」
「いや、私、バカみたいだなって。」
「市ヶ谷は頭いいだろ?」
「そういう事じゃなくて...って、それはいいよ!」
「?」
市ヶ谷は俺に近づいてきた
「...ちょっとしゃがめ。」
「?分かった。」
俺はしゃがんだ。
「...一回しか言わないから、しっかり聞けよ?」
「あぁ...?」
「ほ、ほんとのほんとに一回だからな!///」
「分かった。」
「そ、そっか...じゃあ__」
市ヶ谷は深呼吸をして...
「私、お前が好きだ、八舞。///」
「?!」
「はい!終わり!私帰るからな!」
「ちょ!待て、いつから?!」
「...わかんね。でも、気付いてなかっただけで、結構前から...って何言わせんだ!///馬鹿!///」
そう言って、病室のドアが勢いよくしまった。
そして、すぐ開いた。
「__これ、本気だからな。///
返事、ちゃんとしろよ...?///」
「あ、あぁ、分かった。」
「...じゃあな、八舞///」
病室のドアが閉まった。
「...どうなってんだ?明日香に続いて市ヶ谷まで?」
俺は不思議に思った。けど、
「...ありがとな、二人とも俺を好きになってくれて。
そして、生きる意味を与えてくれて。
そして、待っててくれ。」
俺は顔を上に向けて。
「__俺が乗り越えるのを。」
俺は一人、そう言った。
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