恋愛のブシドー   作:火の車

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千聖ルート最終回です!


最終回

「__ねぇ、八舞君。」

「どうしました?白鷺さん。」

 

 俺が入院してから一週間、夏休みは終盤となった。

 

「最近、明日香ちゃんと有咲ちゃんと近くないかしら?」

「そうなんですか?距離感が分かりずらいので、分からないです。」

「...何かあったのかしら?」

「ありましたよ。」

「告白でもされたの?」

「...なんで分かったんですか?」

「あの二人があなたを好きなことは分かってたもの。」

「そうなんですか?俺は分からなかったですが。」

「...そうでしょうね。」

 

 白鷺さんは呆れたような声でそう言った。

 

「それで、あなたはどうする気なの?」

「何の事ですか?」

「二人の事よ。」

「そのことですか...」

「どうかしたの?」

 

 言葉に詰まる。

 

「...俺はまだ、マナを忘れられずにいます。」

「そう、よね...」

「でも、」

「?」

「俺の心は未来に向かい始めてるんです。」

「未来に...」

「俺には、好きな人がいるんです。」

「え?」

 

 白鷺先輩は驚いたような声を出した。

 

「その人は俺の仮面を一度外してくれたんです。」

「そんな人が?」

「はい。」

「...羨ましいわ。」

「?」

「(そんな子がいるなんて...私だって、八舞君を...)」

「白鷺さん?どうしたんですか?」

「...なんでも、ないわ。」

「...」

 

 千聖は立ち上がった

 

「そろそろ、お暇するわ。また__」

「待ってください、白鷺さん。」

「...どうしたの...?」

「少し、こっちに来てくれませんか?」

「え?えぇ...」

 

 千聖は栄斗の前に立った。

 

「ほんとは後がよかったんですが、今にします。」

「何の事?」

「俺、白鷺さんが好きです。」

「...え?」

「白鷺さんがいつでも味方でいるって言ってくれた時から好きでした。」

「え、ま、待って。ほ、本当に...?」

「はい。本当ですよ。でも。」

「?」

「返事は少し待ってください。」

「...なんでかしら?」

「どうせ返事聞くなら、白鷺さんの目を見て聞きたいですから。」

「そう。でも、これだけは言わせて、私は__」

 

 白鷺さんが何かを言おうとすると電話が鳴った。

 

「「...」」

「...出てもいいわよ。」

「...本当にすいません。」

 

 俺は電話に出た。

 

「はい?」

『もしもし、○○警察のものです。』

「警察...?」

「八舞君?」

『西園カナさんのお知り合いで間違いないでしょうか?』

「...はい。」

『少し、お話ししたいことがあるので署に来てもらえないでしょうか?』

「話?」

『...遺留品の事、とだけ。』

「!...わかりました、お伺いします。」

 

 そう言って電話を切った。

 

「八舞君...?」

「白鷺さん。警察署、連れて行ってください。」

「...分かったわ。」

 

 俺たちは警察署に向かった。

________________________

 

「__着いたわよ。」

「見えないですね。」

「まぁ、そうよね。」

「__君が八舞栄斗君かな?」

「えっと、誰ですか?」

「私は連続殺人犯を追っていた、刑事の畑野です。」

「連続殺人犯...まさか。」

「その通り、西園カナを追っていたんです。」

「...」

「この間、やっと正体にたどり着いた、でも...」

 

 刑事は悔しそうな声を出してる。

 

「...まぁ、それはいい。

 ついて来てください。そちらの人も。」

「はい。」

「えぇ。」

 

 俺たちは警察署に入った。

________________________

 

「__そう言えば、八舞栄斗君。」

「はい?」

 

 畑野さんに話しかけられた。

 

「君は、目が見えないのかい?」

「...はい、一時的なもの、とは言われてますが。」

「大変だな...早く治ることを祈ってるよ。」

「ありがとうございます。」

「...それで、もう一つ聞きたいことが。」

「なんですか?」

「君は西園カナとどういう関係だ?」

「!」

 

 畑野さんの足音が止まった。

 

「この先に西園カナの遺留品がある。

 だが、質問に答えてもらわなくては。」

「ちょっと!あなた、騙して...!」

「...いいですよ、白鷺さん。」

「八舞君?」

「本気で俺を疑ってるなら、この状態の俺なんか牢に入れてますよ。

 その人は疑いきってはないです。」

「そうなの?」

 

 千聖は畑野の方を見た。

 畑野は頷いていた。

 

「私が知りたいのは、関係、それだけだ。

 なにより、単独犯とこちらもわかっている、元から疑ってはないよ。」

「ね?白鷺さん?」

「...そうね。」

「じゃあ、じゃあ、話しますよ。」

「あぁ、頼む。」

「俺は西園カナのターゲットですよ。」

「ターゲット?」

「西園の目的は俺を殺すことでしたから。」

「でも、それじゃあ、あの殺人は...」

「多分なんですけど、被害者は全員、俺と同い年、だったんじゃないですか?」

「!なんで、そのことを...?」

「共通点は小学校が同じ。」

「!!」

「目的は俺をイジメてた奴らを殺すことだったんでしょう。」

「なんで、そう言えるのかな?」

「あいつはよく、八舞を傷つけていいのは私だけ、的なことを言ってましたから。」

「そうか...あと、もう一ついいかな?」

「本物の西園カナは5年前に誘拐事件で亡くなってる、ですか?」

「あぁ。役所には西園マナの名しかなかった。」

「それは、多重人格、です。」

「そんな事がありえるのか...?」

「ありえますよ。

 気づいてるんでしょう?」

「...まさか...」

「もういいですか?」

「最後に、一つ。」

「はい。」

「西園マナはどんな人物だった?」

「!!それは__」

「マナは、優しい、俺の心の支えでした。」

「...そうか。」

 

 畑野は振り向いた。

 

「君には、見せたくないよ。」

「?」

 

 畑野は扉を開けた。

________________________

 

「こ、これは?」

「これは西園カナ...いや、西園マナさんが大切そうに持っていたものです。

 奇跡的に焼けていない。」

「?何があるんですか?」

「...四葉の、クローバー...」

「!ま、まさか!」

「押し花、だね。」

「...」

 

 ”回想”

 

『__ねぇ、見て!栄斗!』

『どうした?』

『これこれ!』

『?』

『四葉のクローバーだよ!』

『!まじか!』

『うん!すごいよね!』

『でも、摘んだら栄養不足で枯れるんじゃないか?』

『え?あ...』

 

 マナは残念そうな顔をする。

 

『どうしよ...』

『...マナ。』

『栄斗?』

『それ、貸して。』

『え?うん...』

『少し、待ってろ。』

 

 栄斗はどこかに行った。

 翌日。

 

『マナ。』

『あ!栄斗!』

『これ。』

『これは...昨日の四葉のクローバーだ!』

『それなら、結構持つと思う。』

『わぁ!栄斗すごい!』

『...普通だ。』

『大切にするね!』

 

 マナは嬉しそうに笑っている。

 

『あ、でも。』

『どうした?』

『一つしかないから、栄斗が...』

『大丈夫だ。』

『栄斗?』

『幸せなら、マナにずっと貰ってるから。

 俺はそれで十分だ。』

『栄斗...!』

『!おい!』

 

 マナは栄斗に抱き着いた

 

『幸せのおすそ分けだよ!』

『...そうか。』

『これで、栄斗はずっと幸せだよね!』

『マナもな。』

『ずっと、持ってるからね...』

『...あぁ。』

 

 ”回想終了”

 

「...それ、持ってたのか...」

「八舞君?」

「忘れてた、約束...」

「約束?」

「俺もマナもずっと、幸せ__」

「!?八舞君!」

 

 栄斗は倒れた。

________________________

 

 ”夢”

 

「__栄斗。」

「マナ。」

「また、会っちゃったね。」

「そうだな。」

 

 少しの沈黙

 

「...ねぇ、栄斗。」

「なんだ。」

「私たち、大きくなったよね。」

「...そうだな。」

「でも、栄斗は栄斗だよね!」

「そうだな。

 マナも変わってない。」

「そうだね!」

「...でも、ずっと、そうは言ってられないよな。」

「...そう、だね。」

 

 俺はマナを見た。

 

「乗り越えたんだね、栄斗!そういう目してる!」

「あぁ。」

「じゃあ、私は何の心配もないよ!」

「マナ...」

 

 マナの身体が浮いて、空に昇っていく。

 

「最後に、栄斗!」

「なんだ?」

「私、栄斗の事、好きだった!」

「!...あぁ、俺も好きだった!」

 

 そう言うとマナの姿は溶けるように消えた。

 

「...好き”だった”ぞ、マナ。」

________________________

 

「__ん...ここは...」

「ここはあなたの病室よ。」

「白鷺さん。」

 

 俺の横には白鷺さんがいた。

 

「...白鷺さん、泣いたんですか?」

「な、泣いてないわ!...って、あなた...!」

「見えてますよ、ちゃんと。」

 

 俺は白鷺さんを見た。

 

「別れも、しっかりしてきました。」

「そう...」

 

 白鷺さんは悲しそうな顔をしている。

 

「__だから、もう大丈夫です。」

「え?」

 

 俺は白鷺さんを見つめて。

 

「好きです、白鷺さん。

 俺と付き合ってください。」

「!!」

 

 白鷺さんは少し黙ってから

 

「...私も、好き。///」

 

 そう言って、抱き着いてきた。

 

「白鷺さん。」

「どうしたの?__!///」

 

 俺は白鷺さんにキスをした。

 3秒くらいして離れた。

 

「...な、何を...///」

「可愛かったので、つい。」

「~!///」

 

 白鷺さんの顔は真っ赤だ。

 

「__じゃあ___んっ...」

「!」

 

 今度は白鷺さんから来た。

 さっきより時間は長かった。

 

「__私からも、お返しよ///」

「ありがたくいただきました。」

 

 俺は微笑んだ。

 

「...好きよ、八舞君。」

「俺も、好きですよ、白鷺さ__?」

 

 白鷺さんに止められた。

 

「名前で、呼んで。」

「千聖さん。」

「えぇ、栄斗!」

 

 演技の仮面を持った千聖さんと仮面を持った俺。

 そんな二人が仮面を外した。

 そして、愛し合う。

 

「千聖さん...」

「栄人...」

 

 お互いの頬に触れた。

 

「仮面は、」

「被ってないわね!」

 

 これが俺と千聖さん。

 仮面の者たちの愛。

________________________

 

__数年後。

 

 

 

「綺麗な夜景ですね。」

「そうね...」

 

 俺たちは今、ホテルの一室にいる。

 

「それにしても、大学を卒業してから、すぐにパパラッチに追いかけられるようになるとは思いませんでしたよ。」

「そう?」

「まぁ、女優の婚約者なんて恰好のネタなんでしょうけど。」

「今じゃ栄斗も有名人ね♪」

「目立つのは好きじゃないんですけど。」

 

 俺は肩を落とした。

 

「まぁ、それはそれとして。」

「そうね。」

 

 俺たちは明日が結婚式だ。

 

「結構時間かかりましたね。」

「そうかしら?私は一瞬だったけれど?

 でも、八舞君は大変だったかもしれないわね。」

 

 大学卒業後、俺は千聖さんの強い要望でマネージャーの仕事をしている。

 その結果、俺は敏腕マネージャーとして、界隈で有名になった。

 それによって、今でもマネージャーのオファーが止まない。

 

「ほんと、誰が俺の事なんか流したんだか...」

「あら、私よ?」

「え?」

「私が他の子に自慢しすぎちゃったわ♪」

「はぁ、そうですか...」

 

 俺は千聖さんの言葉に頭を抱えた。

 

「それで、敏腕マネージャーさん?」

「やめてください。」

「女優と結婚する気分はどうかしら?」

 

 千聖さんはそう聞いてきた。

 

「...スキャンダルの炎の火種の気分です。」

「そう?じゃあ__」

「!__」

 

 俺は千聖さんにベッドに押し倒された。

 

「__もう一つ、スキャンダルね♪」

「...全く。」

「きゃ!」

 

 俺は千聖さんを逆に押し倒した。

 

「ほんと、こうなると大人しいですね。」

「...うるさいわよ...///」

「...始めるぞ、千聖。」

「!...わ、分かったわ...///」

 

 その先はご想像にお任せしよう。

 

 夜が明けた。

 

「__全く、容赦ないわね。」

「すいません。」

「でも、悪くないわ...///」

「そうですか。」

 

 千聖さんはこっちを見てる。

 

「どうしたんですか?」

「...愛してるわ、栄斗。」

「俺も愛してますよ、千聖。」

 

 これが今。

 

「栄斗。」

「千聖。」

 

 お互いの頬を触った。

 

「今日も、大丈夫ですね。」

「えぇ、そうね!」

 

 俺たちは仮面を外しあう、

 だってそれが一番の愛の確認だから。

 

 

 

 

 




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次回からは日菜ルートです!

主人公 八舞栄斗
ヒロイン 白鷺千聖 戸山明日香 市ヶ谷有咲
サブヒロイン 戸山香澄
主要人物 丸山彩 氷川日菜 大和麻弥 山吹沙綾 朝日六花
オリキャラ 斎藤雅 西園マナ 西園カナ

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