「__来たぞ、チュチュ。」
「Hello,エイト。」
「俺はまず何からすればいい?」
「まずは__」
あれから三日が経った、
俺はRASの練習に来ていた。
そして、チュチュに仕事の説明を受けてる。
「__以上よ。」
「了解。じゃあ、まずは機材の準備からな。」
「YES」
「じゃあ、行ってくる。」
俺はスタジオに行った。
「__えっと、これはここで。
これは...」
「あ、八舞君。」
「よう、和奏。」
「こんなに早く来て、仕事熱心なのね?」
「普通じゃないか?」
「そうかな?」
「あ!エイトさんにレイさん!」
「パレオ...って、髪の色変わってないか?」
「そこに気付きましたか!」
「いや、気付くに決まってるだろ。」
「これはですね~パスパレのライブの準備なんですよ~!」
「パスパレ?確かアイドルバンドだったか?」
「はい!皆かわいくて__」
「あー、長くなりそうだから後で聞くな。」
「そうですか?」
「...それより、六花は買い出しに行ったからわかるが、
ますきが来てないな。」
「そういえば...どうしたのかしら?」
俺たちが噂をしてると
「__遅れた。」
「ますき?遅かったわね?」
「わりぃな。」
「大丈夫ですよ、まっすーさん!
練習はまだ始まってません!」
「そうか。」
「よう、ますき。」
「...八舞か。」
「あぁ。それよりも大丈夫か?」
「...大丈夫だ。」
「そうか。(この顔、大丈夫ではないな。)」
「お、お待たせしました!」
「六花。大丈夫だから落ち着け。」
「そうよ?ますきも今来たところだし。」
「そうだぞ。」
「そ、そうなんですか?よかった...」
「全員揃ってるわね?じゃあ、練習をスタートするわよ!」
そうして練習が始まった...が、
『__マスキング!また遅れてるわよ!』
「...わりぃ。」
「(やっぱり調子が悪そうだな。いや、これは...)」
俺は考えた。
「なぁ、チュチュ。」
「どうしたの?」
「今日の練習はここまでにしよう。
調子が悪いときは誰にでもある。」
「...そうね。」
チュチュはマイクを持って
『今日の練習はここまでよ。
体調を整えて。』
そう言って、練習が終わった。
「__ますき?どうしたの?」
「...何がだ?」
「調子、悪かったでしょ?
ますきらしく無かったわよ?」
「らしいって、なんなんだ?」
「え?」
「...いや、なんでもねぇ。
今日は悪かった、帰る。」
「ちょっと!ますき!」
ますきは部屋を出た。
________________________
「_はぁ、何やってんだ、私は...」
「ますき。」
「!...八舞か、何か用か?
言っておくが前の事は__」
「俺と遊びに行かないか?」
「は?」
ますきは呆気にとられた顔をした。
________________________
俺たちは今、ゲームセンターにいる。
「おー、うるさいなー」
「いや、なんで来たんだよ。」
「いや、気晴らしするならここって、
近所のおばあちゃんが言ってたから。」
「...どんな、ばあちゃんだよ。」
「まぁ、遊ぼうぜ!ますき!」
「...仕方ねぇな。」
俺たちは色んなもので遊んだ。
レースゲーム、メダルゲーム、シューティングゲーム。
「__次、あれしないか?」
「モグラたたき?」
「あぁ。したことがなくてな。」
「言っておくが、私、結構強いぞ?」
「楽しみだ。」
俺はモグラたたきを始めた。
「__おらぁ!」
ますきが振ったハンマーはモグラに当たらない。
挙句の果てには、
『ざ~んね~ん!』
なんてあおりも加えてくる。
「くっそ!むかつくな!」
「ますき、これも使え。」
俺はもう一つのハンマーを渡した。
「よし、これでこいつらを__」
それから、モグラたたきは激しさを増した。
「__ふぅ。」
「おー。お見事。」
「ふん、当然だ!」
ますきはご満悦みたいだ。
「八舞、次は何行く?」
「うーん、あ。」
「?」
「俺の頼みを聞いてくれないか?」
「頼み?」
「ついて来てくれ。」
「?あぁ?」
俺たちはある場所に向かった。
________________________
「__ここだ。」
「ライブハウス?」
「あぁ。入ろう。」
「おい!八舞!」
俺たちはライブハウスに入った。
__それから、ある部屋に入った。
「__これは...」
入った部屋にはドラムがセットされてた。
「俺の頼みは、ますきの演奏を聞かせてほしいんだ。」
「...なんでだ?」
「俺が聞きたいからだ。」
「...嘘だな。」
「?」
ますきはそう言った。
「あの時の私を見て、気を使ってんだろ?」
「あれ?ばれた?」
「いや、この状況で気付かない方がおかしいだろ。」
「そうだな。」
「悪いが、私は__」
「でも、俺が聞きたいのは本当だぞ?」
「は?」
「ますきのドラム、一回しか聞いたことないけど好きだからな。」
「...それも__」
「ますきが傷ついてるのは分かるぞ。」
「!」
「狂犬と呼ばれて、色んなバンドから手放されて、孤独を味わってきたんだろ?」
「...」
「だから、RASでは演奏を遠慮してる。」
「!!」
「所謂、入ってるってのが、ますきの純粋な演奏だろ?」
「...あぁ。」
「だから俺はそれを聞きたいんだ。」
ますきはうつ向いてる。
「お前に何が...」
「...」
「お前に何が分かるんだよ!」
ますきはそう言った。
「私には今まで居場所がなかった、手数が増えちまうからメンバーには煙たがられるし、それが原因で辞めさせられたりもした。」
「...」
「だから、RASが私を拾ってくれた時は嬉しかったんだ!だから、もう、同じ失敗は出来ねぇ...」
ますきは目に涙を浮かべてる。
分かりずらいが、ますきは繊細なんだろう。
そのために自分を隠したがる。
でも
「...それで、ますきは楽しいか?」
「っ...」
「周りに合わせるだけのドラム。
それは、ますきのドラムって言えるのか?」
「...」
「純粋にドラムを楽しむ気持ちはなくなったか?
ますきにとって、ドラムは仕事にでもなったのか?」
「そんなこと...」
「だったら、聞かせてくれよ。
佐藤ますきの純粋なドラムってやつを。」
俺はますきを見据えてそう言った。
「...いいぜ。やってやるよ。」
「ますき...!」
「ただし!」
「?」
「ついて来れなくなって、倒れるんじゃねぇぞ?」
「!...上等だ。」
「じゃあ、やるぞ!」
そうして、ますきの演奏が始まった。
その演奏はさっき練習で聞いたものとはまるっきり違う、荒々しいく暴力的、まさに狂犬だ。
でも、この中には確固たる技術がある。理にかなった動き、音。
何よりも、
「(...楽しそうに叩いてるな。)」
ますきの楽しそうな笑顔が一番の違いだ。
__そうして、演奏が終わった。
「__ふぅ...」
俺は拍手を送った。
「すごいな。最高だった。」
「八舞...」
「ますきはこれでいい。」
「!?」
「激しい演奏だった。まるで腹を殴打されてるみたいだった。」
「...」
「でも、聞いてる側には充実感がある。」
「!」
「ますきはますきだ。どこでも自分らしくだラムを叩いたらいいじゃないか。」
「八舞...」
「あと、あの笑顔、最高だったぞ!なんというか...」
「?」
「可愛かったぞ!」
「!?///」
「だから__」
「分かった!もういい!」
「そうか?」
ますきは慌てて俺の発言を止めた。
「...ありがとな、八舞。」
「おう。」
ますきは静かにそう言った。
迷いはなくなったみたいだ。
「...それと。」
「?」
「可愛いってのは、本当、なのか?」
「?あぁ。」
「...そうか///」
「どうした?」
「なんでもねぇよ、バカ八舞。」
「?そうか。」
「じゃ、私は帰る。」
ますきは扉の方に行った。
「...八舞。」
「ん?」
「次の練習から覚悟しとけよ!」
ますきは飛び切りの笑顔でそう言った。
「あぁ...!」
「ふっ、じゃあな。」
そう言って、ますきは部屋を出た。
「......そろそろ、いいか。」
俺はせき込んだ。
「はぁはぁはぁ、やばい無理しすぎたか。
動き回るのは控えないとなんだけどな...でも。」
俺は天井を見上げた。
「...ますきを救えたから、いいや。」
俺は一人でそう呟いた。
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”ますきside”
「__たく、八舞の奴...」
ますきは言葉とは裏腹にうれしそうに歩いてる。
『可愛かったぞ!』
「...たく///」
ますきはため息をついた。
「...漫画でしか見たことなかったが...」
ますきは空を見上げて。
「(恋って、こう言うもんなんだよな...)」
ますきは夕日を見て。
「...覚悟しとけよ、八舞!」
そう叫んだ。
これが『狂犬』佐藤ますきの恋の始まりだ。
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