「__ますき?」
「...どうした?」
俺はRASの練習に来るなり、ますきに話しかけた。
「この前は悪かった。ますきの気持ちもわからないで...」
「!?」
「確かにパレオだけじゃ嫉妬もするよな。」
「お、お前、まさか気付いて...?///」
「あぁ...だから、俺は責任を取ってきた!」
「!?///」
「これを、受け取ってくれ。」
「や、八舞!?///」
俺が出したものは...サイン色紙だった。
「...」
「いやー、まさか、ますきもパスパレのファンと思わなくてな。
だから、日菜さんに頼んでサイン、貰ってきたぞ!__いてぇ!」
何故かますきに脛を蹴られた。
「...はぁ、期待した私がバカだった...」
「なんで...?」
「八舞ってそういうやつだったよな...」
「気に入らなかったのか?
ますきのために貰って来たんだが、どうしようか。」
「待て、八舞。」
「?」
「それは、私のために貰って来たのか?」
「?あぁ。」
「...なら、貰う。」
「え?うん。」
俺はますきに色紙を渡した。
「...♪」
「(機嫌、直ったのか?)」
よく理解できなかったが、ますきの機嫌は直ったみたいだ。
「__あ、チュチュ。」
「どうしたの?」
「今日、予定があるから少し先に帰ってもいいか?」
「いいわよ。あなたはいつも、よく働いてくれるし。」
「さんきゅ。」
そうして、時間は過ぎていった。
________________________
俺はRASの練習を早引きし、駅前に来た。
目的は...
「__栄くーん!」
「あ、日菜さん。お疲れ様です。」
「うん!」
天体観測の待ち合わせだ。
「じゃあ!行こっか!」
「はい。」
俺たちは電車に乗った。
________________________
「__そーいえばさー」
「はい?」
「最近、栄君、私に良くサイン貰いに来るよねーどうしたの?」
「あー、日菜さんの、と言うよりパスパレのファンの子がいまして。」
「へぇ~。どんな子なの?」
「うーん、髪がカラフルな子とかっこいい子ですね。」
「カラフル?...あ!」
「ん?」
「この子、いっつも最前列で見てる子だー!」
「(パレオってそんなに熱狂的なファンだったの?!)」
「ライブに合わせて髪の色変えててね~すごいな~って!」
「...そういえば、またピンクと水色になってたような...」
俺はパレオの髪が少し心配になった。
俺たちはしばらく電車に揺られながら話した。
「そう言えば、日菜さん?」
「ん~?」
「俺以外の部員っていないんですか?」
「いないよ~」
「え?」
俺は驚いた。
「部活って人数いないと認められないんじゃ?」
「ふふ~ん!私、生徒会長だから!」
「あ...(察し)」
「良い事思いついた!」
「?」
「栄君も生徒会入りなよ!」
「え?いや、それは流石に無理でしょう。」
「うーん...出来ると思うんだけどな~」
「まぁ、出来るなら考えておきます。」
「そう?じゃあ、やってみるよ!」
「はい。」
そうしてる内に目的地に着いた。
________________________
「__夜の山って不気味ですね。」
「そう?私はるん♪ってする!」
「そうですか。」
俺たちは山を登っていた。
「そう言えば、なんで山なんですか?
天体観測なら屋上とかでも出来たでしょうに。」
「うーん、るん♪ってきたからかな!」
「まぁ、山から見る星は綺麗と思うので、
いいんですけどね。」
「そうだよね!」
俺たちはしばらく歩いた。
「...日菜さん、道がなくなったんですが。
それに、深入りしすぎな気が。」
「そう?」
「こんなに深い場所なら、シーズン的に熊がいたりして。」
「そんなまさかー__」
ガサガサ!
近くの草が揺れた。
「「...」」
俺たちの目には、
それは巨大なクマが写っていた。
「...やばくないですか?」
「うん、やばいね。」
「熊が襲ってくる理由って驚いてるかららしいです。」
「うん、知ってるよ?」
「なので、静かに離れましょう。
出来るだけ音をたてないように。」
「う、うん...」
俺たちは慎重に歩きだした。
「...まだ、こっちには気づいてません。
多分、食べ物でも探してるんでしょう。」
「うん__」
バキバキ!
日菜さんが枝を踏んづけてしまった。
この音は静かな山で熊に方向を伝えるのに十分すぎた。
案の定、熊はこちらに向かってきた。
「!__逃げますよ!日菜さん!」
「栄君!」
俺たちは走り出した。
「早すぎだろ!」
「お、追いつかれちゃう...!」
「クソ!どこか...あ、あれだ!」
「栄君?」
「日菜さん、何かあったらすいません!」
「え?__きゃ!」
俺たちは近くにあった大きな草の中に隠れた。
「__え、栄君...?」
「しっ。静かに。」
「///」
熊は近くにいる。
「(ど、どうだ...?)」
熊の足音が離れた。
「行ってくれたか...」
「え、栄君?///」
「まだ静かにしててください。
まだ向こうの視界の中にいるかもしれない。」
「(は、恥ずかしいよ...///)」
「(見えた。こっちには関心はないみたいだ。
そのまま離れてくれ)」
しばらくすると、熊は森の奥に行った。
「...ふぅ、熊はなんとかまけました。」
「う、うん...///」
「日菜さん?どうしたんですか__?!」
俺は今の状況を整理した。
まず、俺は今、日菜さんを押し倒してる、
そして、枝か何かに引っかかったのか服が破れてる、
そして、日菜さんは顔を赤くしてる。
ここから導き出される答えは...
「す、すいませんでした!」
「う、うん///」
俺たちは草から出た。
「__ほんとにすいませんでした...
テンパりすぎて日菜さんへの配慮が足りてませんでした。」
「だ、大丈夫だよ!栄君のお陰で助かったんだからさ!」
「そうですか...」
「(どうしたんだろ、私?さっきからドキドキしてる...
熊に追いかけられてたから?走ったからかな?)」
「__日菜さん、あそこに開いた場所がありますよ!」
「え?」
「行きましょう。」
俺たちは開けた場所に向かった。
「__山頂、みたいです。」
俺たちが着いたのはこの山の山頂だった。
空には無数の星が輝いてる。
「登山のルートがある、よかった。正規のルートに戻れましたね。」
「うん。ごめんね...私のせいで...」
「日菜さん?」
日菜さんは珍しく落ち込んでいる。
「...日菜さん、空を見てくださいよ。」
「空...?」
「綺麗な星空が見えるでしょう?」
「うん...」
「この景色が見れるのは誘ってくれた日菜さんのお陰ですよ。
あのくらいのアクシデント、問題ないですよ。」
「栄君...」
「天体観測するんでしょう?
しましょう。」
「!...うん!」
俺たちは天体観測を始めた。
「__すっごく綺麗だねー!」
「そうですね。」
日菜さんの元気が戻った。
「...でも、星って悲しいですよね。」
「悲しい?なんで?」
「今、見えてる星のほとんどは死んでる星ですから。
こんなに輝いてる星が死んでるなんて、悲しいなと。」
「栄君...?」
「...ほんと、俺と似てる。」
「え?」
「いえ、なんでもないです。」
「う、うん。
(栄君の今の顔...栄君は何を思ってたの?
私には分からないよ、でも、今の栄君、
なんて言うか、消えちゃいそうな、そんな風に見えた...)」
「どうしました?」
「なんでもないよ!それよりも星は綺麗だねー!」
「そうですね。」
日菜さんはまた、はしゃぎだした。
「__ねぇ!栄君!」
「はい?__!?」
俺が見た日菜さんは美しかった。
日菜さんの笑顔はどんな星よりも輝いてる。
「星ってさ、どうしてこんなに綺麗なの!」
「...わかりません。」
「私は分かったよ!」
「え?なんですか?」
「それはね~__」
日菜さんは飛び切りの笑顔で...
「__栄君と見てるからだよ!」
と、言った。
その時、俺の心臓は飛び跳ねた。
「(なんだ、これは...?)」
動悸が激しい。でも、いつものじゃない。
俺には理解できなかった。
「(私、分かった!私、栄君が好きなんだ。///
だから、こう思うの!__)」
「日菜さん?」
「また、栄君と、星が見たいな!」
「...いいですよ。」
それから、俺たちは、しばらく星を眺めた。
________________________
俺たちは帰ってきた。
時刻はもう遅い。
「__今日はありがとね!栄君!」
「いいですよ。」
「送ってくれありがと!」
「この時間に一人は危ないですからね。
それじゃあ。」
「うん!バイバイ、栄君!」
日菜さんは手を振っていた。
俺は家に帰った。
________________________
俺は家に帰ってきた。
「__ただいま__?!」
俺は床に倒れた。
「う、うぅぅぅ!!!」
俺は床を張って行った。
「(や、やばい、薬、飲まねぇと。)」
視界が歪んできた。
「も、もう少し...」
俺は何とか薬のある場所にたどり着いた。
「__ンぐ...ふぅ...助かった。」
なんとか落ち着いた。
「...もう、カウントダウンは始まってるのか。」
俺は椅子に座った。
「この心音一つ一つが__
俺の死へのカウントダウン、か。」
俺はそう呟いた。
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