天体観測から少し経って、7月になった。
今は昼休みだ。
俺は三年のみんなと弁当を食べていた。
「__あ!栄君のお弁当、美味しそー!」
「そうですか?何か食べます?」
「え!いいの?」
「いいですよ。なにがいいですか?」
「うーん、じゃあ、卵焼きがいい!」
「はい。」
俺が弁当箱を差し出すと、
「栄君が食べさせて!」
「え?」
「ひ、日菜?!」
「日菜さん?!」
「...?」
「儚い...」
周りの皆は驚いてるみたいだ。
「じゃあ、箸貸してください、日菜さん。」
「うん!」
日菜さんから箸を受け取った。
「じゃあ、どうぞ。」
「あーん!」
日菜さんは卵焼きを食べた。
「どうですか?」
「美味しー!」
「そうですか。」
「なんて言うか、バビューンって感じ!」
「わ、私たちにはちょーっと分からないかなー?」
「そ、そうっすね...」
「?どうしたの、二人とも?」
「...ねぇ、日菜と八舞君って付き合ってるの?」
「えぇ?!///な、何言ってるの、リサちー!?///」
「だって、ねぇ?」
「お弁当、食べさせてもらってましたし...」
「何が不思議なの?私もリサに良くしてもらうわ。」
「いや、そうじゃなくてね?」
「まだ付き合ってないよー!///」
「まだ?」
「もう!リサちー!」
「あはは、ごめんごめん!」
「(...付き合うか。俺には縁のない話だな。)」
そして、話が切り替わった。
「__そー言えばさ、夏休みとかって皆予定あるの?」
「私たちは練習でしょう?」
「私はまだ分かんなーい。」
「ジブン達はいくつか収録がありますよ!」
「そうだっけ?」
「私は、演劇部かな。」
「俺はRASの練習以外の予定はないですね。」
「え!そうなの?!」
「?はい、日菜さん。」
「じゃあ!遊びに行こうよ!」
「いいですよ。」
「ちょっと待って。」
「今井さん?」
「今、すっごい自然な流れでデートの約束しなかった?」
「デート?遊びに行くだけですよ?」
「いやいやいや!」
「リサ、様子が変よ?どうしたの?」
「え?私がおかしいの?」
「今井さん、ジブンもおかしいと思ってます。」
「儚いね...」
今井さんの常識が守られたらしい。
こうして、昼休みが終わった。
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少し経ち、夏休みに突入した。
「ねぇねぇ!栄君!」
「どうしたんですか?」
「今から遊びに行こうよ!」
「今からですか?まぁ、いいですよ。」
「じゃあ!行こ!」
「はい。」
俺たちは学校を出た。
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「__あれ?八舞?」
「あ、ますき。」
「こんにちはー!」
「お前は、氷川日菜だったか?」
「うん!そうだよ!」
「この前はサイン、ありがとな。」
「あ!パスパレのファンの子ってまっすーだったんだ!」
「あぁ。」
「栄君から聞いたんだー!」
「へぇ、八舞は何て言ってたんだ?」
「かっこいい子って言ってたよ!」
「...そうか。」
俺は何の話をしてるかわからなかったが、
仲良くなったみたいだ。
「それで、二人は何してたんだ?」
「今から遊びに行くの!」
「!?...二人で、か?」
「うん!」
「そうだな。」
「...」
ますきは複雑な表情をしてる。
「まぁ、俺たちは行くよ。
また練習でな。」
「あ、おい、八舞!」
「ばいばい!まっすー!」
「...八舞の野郎...」
ますきは家に帰った。
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俺たちは色んな所で遊んだ。
「__んー!楽しかったー!」
「満足そうですね。」
「うん!いっぱい遊んだもん!」
俺は日菜さんを家まで送っていた。
「__ん?」
日菜さんの家に着くと、家の前でもめ事が起きていた。
「そこをなんとか!」
「日菜は今いません!」
「お姉ちゃん?」
「日菜!今は__」
「どうもこんにちは!氷川日菜さん!」
「...誰?」
「私は芸能事務所のものです。
今回は氷川日菜さんを引き抜きしたく思いまして__」
そいつは話し出した。
内容はさっき言った通り。
でも、意味は大きく違う。
「(内容は金になるから引き抜きたいってとこか。)」
「__それで、いかがでしょうか?」
「うーん...嫌かな。」
「!ど、どうして?!」
「だって、るんってこないんだもん。」
「い、いや、でも__」
「往生際が悪いぞ。」
俺は話しに入った。
「日菜さんが断ったんだ、交渉の余地なんてないだろう。
帰れ。」
「...また来ます。」
男は帰って行った。
「ひっどい交渉だったな。」
「あの、あなたは...?」
「お姉ちゃん!この子が栄君だよ!」
「どうも、八舞栄斗です。」
「あなたが...」
氷川さんはじっ俺を見ている。
「?」
「確かに日菜から聞いてた通りの人ですね。」
「そうなんですか?」
「えぇ。」
それから、俺は帰った。
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今日はRASの練習だ。
「__ねぇ、八舞君?」
「どうした?和奏。」
「今日、ますきの機嫌が悪いんだけど、何か知らない?」
「うーん、分からんな。」
「そう言えば、氷川日菜ちゃんと一緒にいたって話が...」
「日菜さんと?あ、そういえば、あの時ますきと会ったな。」
「そうなの?」
「あぁ。でも、あの時は普通だったぞ?」
「うーん、あ、」
「どうした?」
「う、ううん!なんでもないよ!(多分、また嫉妬だよね、これ)」
和奏がため息をついた。
「そう言えばなんだけど__」
和奏が何かを言おうとした時、俺の携帯が鳴った。
「大和さん?」
『や、八舞さんっすか?!』
「どうしました?慌ててるようですが?」
大和さんはかなり焦ってるみたいだ。
『ひ、日菜さんがいなくなったっす!』
「なんですって?!」
『仕事の電話をかけても出ないんですよ!』
「ど、どういう事だ...?」
「どうしたの?八舞君?」
「日菜さんがいなくなった...」
「え?!」
その時、俺の携帯に一軒のメッセージが来た。
「なんだ?...これは!」
『八舞さん?』
「大和さん、犯人が分かりました。」
『えぇ?!』
「多分、○○事務所にいます。」
『○○事務所って...この前、日菜さんの引き抜きに来てた...』
「そうです。...俺が行きます。」
『ちょ、ちょっと__』
俺は電話を切った。
「どうした、八舞。」
「栄さんどうしました?」
「八舞先輩?」
「日菜さんが攫われた。助けに行ってくる。」
俺は部屋を飛び出した。
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道に出ると、俺の身体に異変が起きた。
「__!!!くそ、なんでこんな時に...!」
発作が起きてしまった。
「薬を取りに行く時間はない。
日菜さんを!」
俺はこの時自覚し、確信した。
「__俺は日菜さんが好きだ、そして__」
俺はおおきく呼吸をして...
「__これが、俺の最後だ。」
俺はそう覚悟し、走り出した。
「待っててください、日菜さん!」
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