「__雅君!」
「戸山か。」
二人が付き合い始めて2か月がたった。
二人の仲は良好で、香澄は雅を名前で呼ぶようになった。
「...なぁ、戸山。」
「どうしたの?」
「ついて来てほしい場所があるんだ。」
「どこ?」
「来てくれるか?」
「うん!いいよ!」
「...じゃあ、行くか。」
二人はある場所に向かった。
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「__ここだ。」
「ここって、病院?」
「あぁ。俺の母さんがいる。」
「!確か、雅君のお母さんって...」
「...そう、だから会ってほしいんだ。」
「分かったよ。」
「じゃあ、入るか。」
俺たちは病院に入った。
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コンコン。
「入るぞ。」
俺は扉を開けた。
「__あ、雅じゃない。」
「元気か。母さん。」
「今元気になったよ。
かわいい子を連れて来たからね。」
「こ、こんにちわ!」
「そっちの子は彼女?」
「...あぁ。」
「と、戸山香澄です!」
「香澄ちゃんか...いい名前だね。」
「はい!ありがとうございます!」
「雅とはいつから付き合ったの?」
「2か月前からです!」
「やっぱり。」
「え?」
「2か月前から雅の表情が明るくなっててね。
なんとなく気付いてた。」
「そ、そうなんですか。」
「余計なことを言うな母さん。」
「照れてるね。」
「...ふん。」
「あ、雅。」
「なんだ?」
「飲み物を買ってきてくれない?
のどが渇いてね。」
「分かった。行ってくる。」
雅は病室を出た。
「...ねぇ、香澄ちゃん。」
「はい?」
「雅の事は好きかい?」
「!はい!大好きです!」
「そうかい。」
雅のお母さんは微笑んだ。
「あの子には今まで苦労を掛けたからね、
幸せになってほしいんだ。」
「お母さん...」
「あの子は私が倒れてから、ずっとバイトして、
下の子たちの面倒を見て、学生で楽しめる事は何もできてなかった。」
「...」
「だから、香澄ちゃんみたいな子が現れてくれたのが嬉しい。
だから、これからも雅と仲良くしてあげてね。」
「はい!お母さんも早く良くなってくださいね!」
「...それは、無理だよ。」
「え?」
「私はもう長くないの。」
「え?な、なんで?」
「症状を放置しすぎてね、もう手遅れなんだ。」
「そ、そんな...」
「だから、お願いがあるの。」
「お願い...?」
「雅をずっと、支えてあげてね。」
「...はい...」
お母さんの笑顔は今にも消えそうな、
そんな笑顔だった...
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2か月後。
「__うぅぅ、お母さぁん...!」
「兄ちゃん?お母さんは...?」
「なんで、あの箱の中にいるの...?」
「...」
「(雅君...)」
香澄は葬式に出席していた。
「...悪いな、戸山。
わざわざ来てくれて。」
「ううん。雅君のお母さんだもん。
当り前だよ。」
しばらくして、下の子たちは泣き疲れて眠ってしまった。
雅は近くにあった公園のベンチで座っていた。
「...」
「雅君...」
「戸山。」
「隣、座ってもいい?」
「あぁ。」
香澄は雅の隣に座った。
「...なぁ、香澄。」
「どうしたの?雅君?」
「ここの公園、一回来たことがあるんだよ。」
「そうなの?」
「あぁ。あの頃は父さんもいて母さんも元気でな。
広い公園ではしゃいでずっと走り回ってた。」
「雅君にも、そんな時があったんだね。」
「あぁ。」
雅は遠くを見てる。
「あの時は父さんも母さんもずっといると思ってたよ。」
「雅君...」
「俺はかなり可愛がられてたよ。
父さんはいっつも土産を買ってきてくれて、
母さんは楽しそうに俺の話を聞いてくれて。」
雅の目から涙が零れた。
「雅君...!」
「俺はさ...一番上だから、あいつらの前で泣くわけにはいかない...
あいつらの前では強い兄貴でいなきゃいけないんだ。
母さんとの約束でもあるからな。__!」
「雅君...」
香澄は雅を抱きしめた。
「と、やま...?」
「私、お母さんに頼まれたの。
雅君をずっと支えてって。」
「母さんが...?」
「だからね、私の前では我慢しないで...
お願い...」
「...」
雅は香澄を抱きしめ返した。
「俺は...俺は...」
「大丈夫だよ。雅君なら。
私もいるよ...」
「あぁ...あぁ...!」
しばらくして、雅と香澄は離れた。
「...悪かったな。」
「大丈夫だよ!」
「これからは俺があいつらをきっちり育てて、
母さんを安心させないとな。」
「ううん、雅君。」
「戸山?」
「私も一緒に育てるよ。
雅君がお父さんの代わりで、
私がお母さんの代わりになるよ!」
「...そうか。」
「だから、ね...?」
「?」
「私と大人になったら、結婚しない...?///」
「え?」
「えっと、雅君をずっと支えたいから、その...」
「...いいぞ。しようか。」
「雅君!」
「これからもよろしくな。戸山...いや、香澄。」
「!...うん!雅君!」
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数年後。
今日は二人の結婚式前日だ。
「__とうとう、明日か。」
「そうだね!雅君!」
「でも、悪いな。今日は付き合ってもらって。」
「私もお母さんに報告したかったからいいよ!」
「そうか。母さんも喜ぶよ。」
二人は墓の前に来た。
そして、二人は手を合わせた。
「(母さん、俺、明日結婚するよ。俺はいい人に巡り合えて今幸せになったぞ。)」
「(お母さん。私はお願いを守れてますか?いや、まだ、これからですよね!
私はこれからもずっと、雅君を支えます!)」
二人はお参りを済ませると、山から景色を見ていた。
「__綺麗だな。」
「春だもんねー!桜もいっぱいだよー!」
「あぁ、そうだな。」
雅と香澄はしばらく景色を見ていた。
「...なぁ、香澄。」
「?どうしたの?」
「ありがとな。香澄のお陰で今の俺があるんだ。
俺を支えてくれてありがとう。」
「...ううん。まだまだ、これからだよ!
だって、これからは夫婦だもん!」
「そうだな。」
「だから、これからもよろしくね!」
「あぁ。」
雅は香澄を見た。
「雅君?」
「愛してる、香澄。」
「!///私も、愛してるよ、雅君!///」
これが今の二人。
これから門出を迎え、
新たな幸せに向かっていく、
二人だ。
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