恋愛のブシドー   作:火の車

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雅と香澄の話です!


雅&香澄編

「__雅君!」

「戸山か。」

 

 二人が付き合い始めて2か月がたった。

 二人の仲は良好で、香澄は雅を名前で呼ぶようになった。

 

「...なぁ、戸山。」

「どうしたの?」

「ついて来てほしい場所があるんだ。」

「どこ?」

「来てくれるか?」

「うん!いいよ!」

「...じゃあ、行くか。」

 

 二人はある場所に向かった。

________________________

 

「__ここだ。」

「ここって、病院?」

「あぁ。俺の母さんがいる。」

「!確か、雅君のお母さんって...」

「...そう、だから会ってほしいんだ。」

「分かったよ。」

「じゃあ、入るか。」

 

 俺たちは病院に入った。

________________________

 

 コンコン。

 

「入るぞ。」

 

 俺は扉を開けた。

 

「__あ、雅じゃない。」

「元気か。母さん。」

「今元気になったよ。

 かわいい子を連れて来たからね。」

「こ、こんにちわ!」

「そっちの子は彼女?」

「...あぁ。」

「と、戸山香澄です!」

「香澄ちゃんか...いい名前だね。」

「はい!ありがとうございます!」

「雅とはいつから付き合ったの?」

「2か月前からです!」

「やっぱり。」

「え?」

「2か月前から雅の表情が明るくなっててね。

 なんとなく気付いてた。」

「そ、そうなんですか。」

「余計なことを言うな母さん。」

「照れてるね。」

「...ふん。」

「あ、雅。」

「なんだ?」

「飲み物を買ってきてくれない?

 のどが渇いてね。」

「分かった。行ってくる。」

 

 雅は病室を出た。

 

「...ねぇ、香澄ちゃん。」

「はい?」

「雅の事は好きかい?」

「!はい!大好きです!」

「そうかい。」

 

 雅のお母さんは微笑んだ。

 

「あの子には今まで苦労を掛けたからね、

 幸せになってほしいんだ。」

「お母さん...」

「あの子は私が倒れてから、ずっとバイトして、

 下の子たちの面倒を見て、学生で楽しめる事は何もできてなかった。」

「...」

「だから、香澄ちゃんみたいな子が現れてくれたのが嬉しい。

 だから、これからも雅と仲良くしてあげてね。」

「はい!お母さんも早く良くなってくださいね!」

「...それは、無理だよ。」

「え?」

「私はもう長くないの。」

「え?な、なんで?」

「症状を放置しすぎてね、もう手遅れなんだ。」

「そ、そんな...」

「だから、お願いがあるの。」

「お願い...?」

「雅をずっと、支えてあげてね。」

「...はい...」

 

 お母さんの笑顔は今にも消えそうな、

 そんな笑顔だった...

________________________

 

 2か月後。

 

「__うぅぅ、お母さぁん...!」

「兄ちゃん?お母さんは...?」

「なんで、あの箱の中にいるの...?」

「...」

「(雅君...)」

 

 香澄は葬式に出席していた。

 

「...悪いな、戸山。

 わざわざ来てくれて。」

「ううん。雅君のお母さんだもん。

 当り前だよ。」

 

 しばらくして、下の子たちは泣き疲れて眠ってしまった。

 雅は近くにあった公園のベンチで座っていた。

 

「...」

「雅君...」

「戸山。」

「隣、座ってもいい?」

「あぁ。」

 

 香澄は雅の隣に座った。

 

「...なぁ、香澄。」

「どうしたの?雅君?」

「ここの公園、一回来たことがあるんだよ。」

「そうなの?」

「あぁ。あの頃は父さんもいて母さんも元気でな。

 広い公園ではしゃいでずっと走り回ってた。」

「雅君にも、そんな時があったんだね。」

「あぁ。」

 

 雅は遠くを見てる。

 

「あの時は父さんも母さんもずっといると思ってたよ。」

「雅君...」

「俺はかなり可愛がられてたよ。

 父さんはいっつも土産を買ってきてくれて、

 母さんは楽しそうに俺の話を聞いてくれて。」

 

 雅の目から涙が零れた。

 

「雅君...!」

「俺はさ...一番上だから、あいつらの前で泣くわけにはいかない...

 あいつらの前では強い兄貴でいなきゃいけないんだ。

 母さんとの約束でもあるからな。__!」

「雅君...」

 

 香澄は雅を抱きしめた。

 

「と、やま...?」

「私、お母さんに頼まれたの。

 雅君をずっと支えてって。」

「母さんが...?」

「だからね、私の前では我慢しないで...

 お願い...」

「...」

 

 雅は香澄を抱きしめ返した。

 

「俺は...俺は...」

「大丈夫だよ。雅君なら。

 私もいるよ...」

「あぁ...あぁ...!」

 

 しばらくして、雅と香澄は離れた。

 

「...悪かったな。」

「大丈夫だよ!」

「これからは俺があいつらをきっちり育てて、

 母さんを安心させないとな。」

「ううん、雅君。」

「戸山?」

「私も一緒に育てるよ。

 雅君がお父さんの代わりで、

 私がお母さんの代わりになるよ!」

「...そうか。」

「だから、ね...?」

「?」

「私と大人になったら、結婚しない...?///」

「え?」

「えっと、雅君をずっと支えたいから、その...」

「...いいぞ。しようか。」

「雅君!」

「これからもよろしくな。戸山...いや、香澄。」

「!...うん!雅君!」

 

________________________

 

 数年後。

 

 今日は二人の結婚式前日だ。

 

「__とうとう、明日か。」

「そうだね!雅君!」

「でも、悪いな。今日は付き合ってもらって。」

「私もお母さんに報告したかったからいいよ!」

「そうか。母さんも喜ぶよ。」

 

 二人は墓の前に来た。

 そして、二人は手を合わせた。

 

「(母さん、俺、明日結婚するよ。俺はいい人に巡り合えて今幸せになったぞ。)」

「(お母さん。私はお願いを守れてますか?いや、まだ、これからですよね!

 私はこれからもずっと、雅君を支えます!)」

 

 二人はお参りを済ませると、山から景色を見ていた。

 

 

「__綺麗だな。」

「春だもんねー!桜もいっぱいだよー!」

「あぁ、そうだな。」

 

 雅と香澄はしばらく景色を見ていた。

 

「...なぁ、香澄。」

「?どうしたの?」

「ありがとな。香澄のお陰で今の俺があるんだ。

 俺を支えてくれてありがとう。」

「...ううん。まだまだ、これからだよ!

 だって、これからは夫婦だもん!」

「そうだな。」

「だから、これからもよろしくね!」

「あぁ。」

 

 雅は香澄を見た。

 

「雅君?」

「愛してる、香澄。」

「!///私も、愛してるよ、雅君!///」

 

 これが今の二人。

 これから門出を迎え、

 新たな幸せに向かっていく、

 二人だ。

 




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