灼熱炎吐ける至高の存在に転生しちゃいました   作:こまるん

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今月分です。
感想、高評価、お気に入り。励みになります。本当にありがとう。

今回は短めです。ここがとてもキリが良かったので……頻度遅くて申し訳ありませぬ!


第6話

 

 

 はろー わたしスラリん いま いしのなかに いる

 

 

 え、何言ってるかわからない? 奇遇だね。私もそう思う。

 いやでもほんと、これくらいしか表せる言葉がないんだよね。

 

 正直今出来ることなんて何一つ無いので、ここまでの経緯でも語ってみようか。

 

 

 話せば長くなるんだけども。

 サンタローズでスラリんという名前を貰ってからというもの、事態はすぐに動いていった。

 

 翌日になり、リュカと共に一階に降りた先で待っていたのは、既に出かける支度を済ませたパパスおじさん。

 薬が手に入ったので帰ってしまうというビアンカ達を、隣町であるアルカパまで送るつもりらしい。それに同行するかという問いだった。

 もちろんと二つ返事で頷いたリュカが準備のために二階にかけ戻って行き、私は1人……1匹その場に取り残される。

 

 さーて適当に時間でも潰しますかと思った矢先、思いもよらぬ声がかけられた。

 

「あースラリん。ちょっと来てもらえないか?」

 

 先程までの温和な雰囲気とはうって変わり、どこかピリピリとしたものまで感じさせるパパスさん。

 

 え、まさか魔物はやっぱり退治とか、そういう感じの流れ?

 そういえば、対面の時もこの人たちの反応はどこか普通じゃなかったっけ。これはマズいかもしれない。

 いやでも、まだ確実にそうと決まったわけじゃない。万が一の時は流石に逃げる試みはするけど、取り敢えず従ってみようか。

 

 ぷるっと身体を震わせ、パパスさんに近づく。行くよっていう意思表示のつもり。

 伝わったかは分からないけれど、彼は小さく頷くと家の奥の方へと向かって行った。

 

 先導された階段を降り、地下室に入る。これ、ゲームだと妖精の村に向かう入口が造られるところか。

 思っていた以上に広い。こりゃ逃げるのは厳しいかなぁ。どうでも良いけど、地面は砂なんだね。

 

 内心冷や汗を流しながら、パパスさんの前へ。

 彼は私が目の前まで来たのを確認すると、不意にその場にあぐらをかいた。

 思わずびくっとしてしまう。急に動くのは勘弁して欲しい。こっちはただでさえ緊張感マックスなんだから。

 

「む? はっはっは。驚かせてしまったか。すまんな。

 魔物と話する時はなるべく目線を合わせろと、きつく躾られていてな」

 

 高らかに笑うパパスさん。少しだけ空気は軽くなったけど、まだまだ彼は真剣だ。

 

「単刀直入に聞こう。マーサ……もしくは、グランバニアという言葉に心当たりはないか?」

 

 はい? なんでまた、急に。

 知識としては当然どっちも持っているけれど……どうも求めているのはそういうことじゃなさそう。

 

 私はふるふると体を震わせて……これじゃちょっと分かりにくいなと思い直し、そこらに落ちていた木の棒を咥える。

 訝しげに見守っていたパパスさん。私が地面に大きく丸とバツを書き、それからピョンとバツの上に乗ったのを見ると、納得がいったのか大きく頷いた。

 

「なるほど。確かにわかりやすい。しかしそうか……心当たりはない、か」

 

 どこか寂しそうにするおじさん。私は地面にハテナマークを描いてみる。

 

「そうだな……出会ったばかりの魔物に話すことではないのだろうが、他でもないあの子が連れてきたスライムだ。少しだけ、付き合ってもらおうか」

 

 そう言うと、パパスさんはしみじみと語り始めた。軽く内容をまとめると、こうだ。

 

 

 彼にはマーサという名の奥さんがいる。

 彼女は不思議な人で、会う人全ての心をほぐし、惹き付けるような人だった。

 凶暴であるはずの魔物でさえも時には手懐けてみせるマーサ。

 彼女が言うには、魔物の中には偶然か必然か魔王の魔力から逃れることが出来たものがおり、そうした存在とは意思疎通ができる可能性がある。そして、そういった魔物は総じて目が透き通っているのだと。

 マーサが初めて連れてきた魔物が、スライム。その子は今も大切にグランバニアで保護されている。

 

 

 ……なるほどね。彼らにとってスライムってのは少なからず特別な存在で。それをこともあろうに息子が連れてきた訳だから、そこにマーサさんの面影を見てあんな感じになってたわけだ。

 

「……さて、どうやらお前さんは随分と聡いらしい。だからきっと、こう思っているのだろう。”では、何故いまマーサが居ないのか”と」

 

 一応、丸を踏む。

 ここから旅立つにあたっての経緯を話してくれるのかと思いきや……急にパパスさんが立ち上がった。

 

「すまない。どうやらリュカが準備を終えたようだ。この続きはまた今度とさせて欲しい。まだあの子に聴かせたい話ではないのでな」

 

 いやいやおじさん、流石にそれはないのでは。

 私は薄々というか、原作知識としてはなんとなく状況を知ってるから良いけども。何も知らない人だったらこのお預けは発狂ものだよ?

 

 しかし、彼の言葉というのはそのとおりで。とてとてと階段を駆け下りる音が響き渡る。

 

「あー、お父さん、こんなところにいた! スラリんも!」

 

 私達に気付いたリュカが駆け寄ってくる。

 その無邪気な様子をみていると、確かに、まだ聞かせる時ではないだろうなと、そう思った。

 

 だけどねパパスさん。去り際に『なるべく傍に居てやってくれ。万が一の時は息子を頼む』なんて言わないでほしい。

 ただのスライムに過ぎない私に何をって言いたいし、それになにより、私は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




何も進んでいないように見えて、実は色々な意味で大切なお話でした。
次回はテンポよく一気にアルカパを進め…………られたら良いなぁ!

個人的には、夜の探検中にサンタローズに入った所での『寝てても守る門番ある意味偉いね』『なんでこっちに来ちゃったの!?方向音痴!!』って会話大好きなんですけども流石にストーリーに盛り込むのは難しい……



Twitter@komaru0412 では、アリス・マーガトロイドを中心としてちょくちょく短編投げてます。近々大きな告知も出来ると思うので、気が向いた方はそちらも。


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