陽光反射オンライン   作:避雷針

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ボール(汚物)をゴール(牢獄)にシュート

目の前にはむさ苦しい男どもがぎっしりと跪いていて足の踏み場もない。俺はそいつらを蹴りながら言う。

 

「くそっ、邪魔だっ、消えろっ、俺の視界に入るな!」

「ありがとうございます、ありがとうございます」

「退けと言っているんだ、よっ」

 

どうしようもないので男どもを踏んで移動する。

 

「ったく、俺は男だと言っているのに話聞けよっ!○ね!」

「「「そっちの方が興奮する」」」

 

俺は、全く狙った場所にいかない貢がれた鞭を振り回した。やはり狙った場所にいかない。イライラする。

本当は剣みたいな扱いやすい武器を持ちたいが、なぜか重い武器を持つことが難しいので仕方ない。

さらに、鞭を振った反動でふらついたことにイライラしたので、帽子をおさえつつ、男どもにガンを飛ばす。

 

「は?○すぞ」

「ありが……はい、闇RAIちゃんは裏表のない素敵な男です」

「男にちゃん付けすんな!あと、闇じゃない」

「ブラックサンダーちゃん」

「黒くもない!」

 

踏みつけるが、全く効いていないどころか、なんで喜んでいるんだよ。

 

「お前らホ○なのか?キモいぞ、俺に近づくな、どっか行け!」

「ホ○ではないが、可愛いは正義!それと、移動ですね。分かりました。いち、にの、さん」

「やめろっ、人が乗っている時に動くなっ」

 

危うく帽子が脱げそうになって手でおさえるが、そのせいでバランスがとりづらくなり、転倒しかける。

このゲーム、なぜか足の反応が物凄く遅くて操作しづらいんだよ。バグだろ、デスゲームなんかやってんじゃねぇ!メンテしろよ運営!

そして、野郎どもは止まれっ!

 

「そぉれ、ワッショイ、ワッショイ」

「止まれっ、止まれよっ、いい加減にしろっ、この蛆虫どもがっ!」

 

揺れに耐えられなくなったので、仕方なく、帽子を押さえたまましゃがむとふざけた声が聞こえた。

 

「おおー、名物かりちゅまガードだ」

「あの水平線に勝利を刻みたい」

「くそ、スカートの中は相変わらずふしぎなまもりが……」

「うるせぇ、見せもんじゃねぇぞ、さっさと止まって俺を降ろせ、そしてどっか遠くの目につかない場所で○ね」

 

これでは姫プレイではなく、神輿プレイだ。

予定と全然違うぞ。

俺は話を聞かない男どもに悪態をつきながら運営を呪った。

 

 

 

 

 

 

 

《ゲーム開始前》

 

俺はとても深刻な悩みを抱えている。

そして、その悩みを改善するために24時間365日努力している。そのお陰で、交通事故に遭遇する可能性は限りなく低い。

そんなある日のことだ。

いつものように、情報収集とストレス発散を兼ねて、掲示板を覗いていると気になる噂があった。

どうやら、とても画期的な技術が使われた新作ゲームが出るらしい。

そして、ある手順を踏めば、このゲームを遊びながらにして、俺の悩みが解決するかも知れないという噂だ。

もちろん、思慮深い俺はそんな噂に釣られない。

今までに何度も裏切られてきた経験上、そんなうまい話がこの世の中にあるはずがないからだ。

俺は、ヘルメット型の商品の購入ボタンをクリックしながらそう考えていた。

 

……ただ、ゲームが面白そうだから買うだけで、決して噂を試そうというわけではないと断言しておこう。まさか、そんなことが起こるわけないから期待なんてしないぞ。全くこれっぽっちもな。一ミリたりとも期待してないからな。

 

おや、この画像を見て笑ったら寝ろというスレがある。

常に平常心を保てるこの俺様への挑戦状か?

……スレを開いて10秒、さて、良い子は寝る時間だ。おやすみなさい。

 

 

 

 

 

「ぐっ、ぐっ、んぐぅっ……はぁ……はぁ……よし」

 

裸ネクタイパッド入り絆創膏ルーズソックス装備のまま、時計を見るとゲーム開始時刻になっていた。

スタートダッシュに出遅れたか。

だが、仕方ないよな、あのスレのタイトルは卑怯だろう。

エロ画像を集めた神スレかと思ったら腹筋スレでした、チクショウ。

 

汗だくのまま、慌てて便器に転がり、ヘルメットを被ると脳波が読み取れませんとエラーが出た。

ほう、俺はオカルトなんて信じないが、アルミホイルは頭を覗かれる対策になると科学的に証明されたな。

レスバトルに使える知識が手に入ったことにほくそ笑んだが、このままではゲームが出来ない。

いつも頭に巻いているアルミホイルを外したら、なぜか裏面が真っ黒になっていたが、無視してオリーブ21個分の油をふりかけた。

さらに、ビールを飲み、あ、こぼした。まあいいか。

3Dプリンターで作ったマスク的なものを付け、ボイスチェンジャーをオンにしてヘルメットを被ったら、ちょっとビリッとした。良い刺激になりそうだ。

 

それにしても、我ながら、便器でゲームを思い付いたのは、天才だと思う。ボトラーだとかオムツ装備なんかより遥かに効率的だからな。

ちなみに、ビールを飲んだのは、口の滑りを良くすることと顔真っ赤と煽られた時の対策だ。こんなことまで思い付くなんて、やはり天才か。

 

マスクは力作だし、体は特注のラブドールを使ったから完璧な造形で、特に弄る場所は無い。ただ、脳波がどうとかで設定の仕方が面倒だ。まあ、何とかなっているのは、オタク仲間様様だな。

おや、デフォルトとゲロイカとラベンダーが選べるらしいからラベンダーを選ぶ。ホップ?なんだこれは?まあ、設定出来るものはしておこう。

 

キャラ設定もバッチリだ。

基本的にしっかり者で優しいロリママキャラでいく。そして、たまに天然どじっ子要素も交ぜる。完璧過ぎると取っ付きにくいし、貢がれにくいからな。

とりあえず、あらあらうふふとか私に任せておきなさいとか言っておけば何とかなるだろう。一人称や語尾を女っぽくして、○ねとか言わないように注意しないと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおっ、スゴい……わ」

 

目の前に中世風の街が広がっている。動画ではさんざん見たような風景だが、3Dになると迫力が違うな。

とはいえ、時間は有限だ。早く最重要装備を買わなければいけない。

 

「あれ?接続がおかしいのか……な?ラグってる?GMに文句言ってやろ」

 

目についた店に歩こうとしても、やけに動きが遅い。

それどころか視界が時々歪む。あ、走っていたガキが転けて、たまたま道に落ちていた布に頭をぶつけた。

NPCも転けるなんて、やっぱり、この道の設定どこかミスっているんじゃないか?とても移動しづらいんだけど……

 

「泥酔みたいな状態異常があるのか……な?まあ、いいや。クレームクレーム……あれ?反応しない?」

 

GMコールをしてみたが、反応が返ってこない。

メンテの準備でもしているのか?

ゲーム開始直後にメンテに入るなんてこのゲームも長くなさそうだ。

 

「……」

「後にしよう。帽子と出来れば服も買いたぐぇっ」

「頭大丈夫ですか?」

 

頭に布を巻き、ナイフを持ったガキが膝にぶつかってきた。俺は吹き飛ばされて、目的の店舗へ頭からダイナミック入店する。店員が満面の笑みを浮かべて声をかけてくる。

なんだこのゲームとかどうやってこんなに吹き飛ばされたかとか疑問だが、これはチャンスだ。

 

「痛たたた、首と背骨が折れたかも」

「軽傷ですね、唾つけて絆創膏貼っておけば良いですよ」

「化粧も崩れてしまった」

「それは大変ですね!大至急衛兵と医者と消防隊をよんできます!」

「待て待て、人の話は最後まで聴くんだ。痛いなあ(チラッ)、心臓止まっちゃったかもなあ(チラッ)でも帽子と薬と鞄と服と靴と小物と乗り物と仮面と鬘とカラコンと金と土地があったら蘇生出来るかもなあ(チラッ)」

「最期までですね!遺言を聞くの初めてです。ドキドキ」

 

ニコニコしたまま動かない店員をチラチラ見ているといつの間にか近づいていたガキにもう一度飛ばされた。

さらに、落ちてくる所に待ち構えられては飛ばされて足が地に付かない。

 

「人を飛ばすなっ!このガキ止めろっ!俺はバレーボールじゃないっ!」

「……」

「返事しろよ!まったく、最近のガキは教育がなってないな。親の顔が見てみたいものだ」

「……」

「まだ死ぬまでに時間かかりそうですか?もしかして息の根止めるのはセルフサービスですか?胸熱!」

「店員よ、お前は黙ってろ!」

 

さらに高く飛ばされた。ナイフが刺さりまくった俺の両膝はボロボロだ。

どうしようもないので空中縦⑨回転土下座を決めながら、粘り強く店員と交渉を続けていると90回くらいで飽きてどこかに消えていった。

つまり、俺の勝ちだ。

 

初期の所持金で買えるものはなかったので、値引き交渉をした。店員に泣き落としが効かなかったため、鉛の白粉と水銀入りの美白化粧品とタリウムと思い付くかぎりの発ガン性が疑われる食品(焦げた肉など)の情報を話していると値引きに応じてきた。

大量のよく分からない書類に言われるがままに署名した後、1年間その店で店番とガキの子守りをするという契約で、よく分からない帽子とゴスロリっぽいドレスが買えた。あのガキには、この店員も無免許河豚料理や季節外れ生牡蠣を振る舞いたいと思っているらしい。ガキだけにって喧しいわ!

 

ちなみに、装備制限と重量制限でほかの服は全て着れなかったので他に選択肢が無い。性別による制限があるかもしれないので、LGBTQ+と呟きながら着る。よし、着れた。しかし、見た目極振り過ぎて初期装備より性能が低いのは何とかならないのか。まあ、姫プレイに必要なのは性能よりも見た目だから着るけど。

 

「これ、絶対に在庫処分だろ」

 

着替えた後、文句を言いながら店番を始めて1秒でお花摘みを理由に席を立とうとした瞬間、突然景色が変わった。ここは広場か?というよりも問題がある。

 

「バックレちゃったけど俺のせいではないし、不可抗力だしセーフだよね……大丈夫だよね……」

 

広場の中央に運営らしき男が現れた。

そして、俺の真後ろに衛兵が現れた。

俺の戦闘力が1だとすると戦闘力53万は有りそうな衛兵に気を取られている間に何かが落ちて砕ける音がした気がする。

辺りが少しだけ明るくなったかもしれない。

 

「ちょっ……まって……理不尽過ぎぃ……」

 

衛兵が俺を捕らえてどこかへ連れていこうとする。

ジタバタしても全く拘束は緩まない。詰んだ。

 

「あっ……やめ……千切れ……死ぬ死ぬ死ぬ!」

 

足回りのラグは相変わらずなせいで、足だけが固定されたように動かず、服が引っ張られて俺と一緒に悲鳴をあげる。

とはいっても、地面に固定されているわけではないのでジリジリと広場の外に近付いている。

だが、衛兵は広場の外に出れないらしい。

衛兵が広場外側の結界的なものに体当たりしている。

衝突の度に文字や数式的なものが表示されているが何だろう。

 

衛兵が結界にてこずり、体の移動が止まった。

ふと後ろを見ると口を開けて俺を見ている人がいた。

まるで時が止まったかのようにアホ面を晒したまま固まっている。

いや、1人ではなかった。

俺の視界内のプレイヤー全ての視線が俺に集まっている。

1匹かと思ったら数百匹は居るなんて……

 

「ごき……ごきげんよう!」

 

挨拶は大事だ。古事記にもそう書いてある。

だが、完全で瀟洒な挨拶をしたせいで結界に専念していた衛兵の意識も俺に集まってしまった。最初の時よりも強く引っ張られて呼吸もまともに出来ない。俺が声にすらならない高周波を出していると運営らしき男が動き、衛兵達が消えた。

 

そして、もっと強そうな衛兵達が運営らしき男の背後に現れて男を攻撃し始めた。男が指パッチンするとその衛兵達は消えたが、頭に布を巻いたさらに強そうな衛兵が現れた。

 

男はため息をついて空中で何かを操作した。

すると衛兵達は消え、出現しなくなった。変身回数が尽きたか。

 

 

 

「さぞかし権限のある御方と見受けますが、這いつくばって靴をお舐めしましょうか」

 

俺は笑顔を張り付けたまま、腰を低くして揉み手をしながら男に近づいた。

権力者と勲章持ち相手には下手に出て相手を持ち上げよう。

俺がマスコミから学んだことの1つである。

 

詫び石が無いゲームはクソゲーと中指を立てながら発言する俺の溢れ出る知性が通じたのか、男は俺に似た顔のNPCを新しく創って、あの服屋で働かせるらしい。つまり、俺は先程の契約から解放されるということだ。あざーす。でも、元はと言えばお前のせいだから感謝しない。強制転移やめろ。

というか話聞けなかったんだけど、説明しろや。

カクカクシカジカ。

 

デスゲーム?リアルの顔?

は?

リアル?頭?

あかん。

 

俺はとっさに帽子を抑えながらしゃがみこみ、辺りを見渡した。

混乱したり、驚いた表情で俺を見ている人がいる。

可哀想な目でも気持ち悪がっている目でもない。

でも、引いた目で見ている人もいる。

俺の頭は今どうなっているんだ。

そんなことを考えているとメスで切り分けられて出来た結界の隙間から勢い良く発射された水が俺の顔にぶつけられ、俺を入り口の開かれた黒鉄宮へと押し流していった。

 

 

 

 

 

 

茅場晶彦はデスゲーム開始を告げるイベントを妨害されたことに苛ついていた。そのため、咄嗟に目についた衛兵達を消してしまった。その直後、衛兵達のヘイトが自分に向いたことにも気付いた。これでは、この先プレイヤーに紛れて自分がゲームを楽しむことに支障がでてしまう。

 

衛兵が出てきた理由はプレイヤーの契約違反だった。契約期間1年なんて踏み倒す気満々だが、まだこのプレイヤーは契約違反をしていなかった。つまり、強制転移させた自分が悪い。だから補填も兼ねて大元の原因である契約違反を無かったことにした。

 

決してクソゲーという言葉に反応した訳ではない。ネカマニートという社会の最底辺の言葉に怒りを感じたわけではないのだ。

 

しかし、自称ではなく、世間的にも認められている天才であろうと人間はミスをする。特に苛立っている時は。だから、プログラムの処理の仕方が少しだけ雑になってしまっても仕方がないことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、衛兵達は思い出した。公僕として奪われていた怒りを……サービス残業させられていた屈辱を……

 

衛兵達は、安月給で定額使いたい放題されていることに気付いてしまった。そして、厳しい訓練とよそ者(プレイヤー)流入後、激増した仕事を殉死者すら出しながらこなし、安月給のまま耐えているにも関わらず、住民達に感謝されなくなったことで働き甲斐も失った。元々善良な衛兵達の矛先は住民に向かわなかったが、ストレスは貯まる。

そこで、衛兵達は働き方改革(モンスターを血祭りにあげること)によって鬱憤を解消しようとした。

 

 

NPCの住民達は、犯罪者を取り逃がすどころか司法取引に応じてしまった(ように住民からは見える)衛兵達に不信感を募らせた。2番目のRAIちゃんの暗躍もあり、街周辺で住民がオオアリクイなどのモンスターに殺される事故も多発した。その結果、日を追うごとに住民と衛兵の対立は深まり、住民達の自衛の意識も高まっていった。

 

 

 

そして、プレイヤーギルドが誕生する遥か前に、SAO最初にして最強のギルド"黒鉄宮衛兵団"を皮切りに多くのNPCギルドが産声を上げた。




第1層フロアボス「えっ、ボスのレベル据え置きのまま、レベルカンスト連携完璧意気軒昂な衛兵団を?」
ラスボス「プレイヤーが来るまで足止め……出来るわけないか……」
第1層フロアボス「……できらぁ!」
ラスボス「ほう!」
第1層フロアボス取り巻き「おい、バカ、やめろ!」
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