卵の殻を食べ途端に、体からオーラが溢れる。
絞りカスとも呼べる殻だったが、トトの絞りカスならば話は違う。
全身にオーラが満ちる。
今まで感じたことの無いようなオーラの量。
自分のオーラだけで酔ってしまうのではないかと思えるほどの、力の強さ。
満たされない、まだまだ満たされない。
手元に残った卵の殻を続けて捕食して、自身のオーラ総量はトトと比べれば矮小なものの、以前の自分と比べれば数百、数千倍となっていた。
そして前とはオーラの色や質が変わり、トトと同じような禍々しいものへと変わってしまった。
そしてふと思ってしまう。
トトは……《寄生の卵》はどうやればここまで成長を繰り返せたのだろうか……と。
トトの頭に触れる。
自分でなければ、というかトトの宿主でなければ消滅してしまうのではないかと思わせるほどのプレッシャー。
額に触れ、記憶を読み取る。
元はと言えば、トトは僕の念の集合体。
僕が願い欲すれば……。
トトから記憶が流れ込んできた。
────ー
卵は死後の念をかき集めて成長を繰り返していた。
時にはマフィアの構成員、時には貴族、時には……。と言った具合に寄生した回数は数え切れなくなった時に、念能力を持った人物がトトの前に立ちはだかった。
男は「ハンター」と名乗り、念による攻撃をトトに放つ。
しかしトトの卵の状態はオーラを吸い上げるという概念しかなく、トトが攻撃することも、まして他者が攻撃を当てることも叶わない。
「寄生型の疫病、いや陰念か?」
ハンターはトトに向かってそんなことを吐き、これ以上は無意味だと悟ったのかケータイを使って誰かと会話を始めた。
その間もトトは宿主からオーラを吸い上げ、更に死後強まる念の回収も完了して次の宿主を探すために移動を開始した。
次にハンターと名乗る別の人物とあった時は、民族衣装を着ているような女が傍らに立っていた。
「ひぃぃぃ!!! 私にはこんなもの除念出来ません!!」
失禁しながら女は走り逃げ出す、既にトトは人の手でどうというレベルを超越している。
たかが除念師にトトを引き剥がすのは不可能だろう。
トトは手慣れたようにオーラを搾り取り、すぐさま移動した。
トトの最後の記憶。
銀髪の子供に取り憑いた記憶。
少年は無理矢理精孔を開けられたが、暴れることなく力を沈める。
トトは初めて天賦の才とであい、死後の念以外の方法でオーラを集める可能性を見出したのだが……。
「────アイ」
トトの記憶はここで終了した。
次に映ったのは僕自身。つまり、トトは最後に除念されたのだろう。
卵のトトは移動と乗り移る以外の力はなかったため、除念がきいたが今のトトに勝てるものが現れるかと聞かれれば苦笑しかできない。そのレベルだ。
今まで発の完成、つまりトトの完成を待っていたがそれは完成した。つまり、身を隠すための流星街にこれ以上いる必要がなくなったわけだ。
「まずは金と世の中の常識に根城だな」
4歳から12歳まで、ただ時間に身を委ねていた訳では無い。
やりたいことからやらなければいけないこと、そういった計画表をフィルは既に作っていた。
不具合といえばもう二三年トトの完成は先だと思っていたことと、成長度合い位だ。
「トト、行くぞ」
「ウー……」
まずは資金の確保。
盗みや殺しで賄うことは可能だが、毎日血なまぐさい生活は面倒だ。
それならば強さによる社会的地位を手に入れ、更に拠点をつまり家を確保出来る簡単な場所。
──天空闘技場へと向かった。
────ー
天空闘技場へ行くにはかなりの距離がある。
飛行船に乗って移動しても数日はかかるだろう。
どうにか楽な移動法はないか……そう考えていると。
「……ンー……ンンー……トト……ドブ」
トトの体から黒い粒子のようなものが湧き出て背中から突き抜けるように翼が生えでる。
ゴキゴキと特殊な音を奏でながら、トトは体の形そのものを変化させてしまう。
異様な光景、しかしどこかのもう見慣れた既視覚のようなものがあった。
「トト、乗っていいか?」
トトは人の姿を変え、馬のような鳥のようなよくわからない形に収まり変化が終わったのを見計らってトトに許可を貰う。
「……ノッ……ノノ……ノテテ」
恐らく乗ってというその言葉を信頼して、フィルはトトに跨った。
先程の狂わしくも美しい幼女の見た目があったからか、跨ることに少しだけ躊躇いがあったが現在の姿を見てその思考は捨てた。
どれだけ美しくも、トトは念獣なのだと認識できた瞬間かもしれない。
トトは僕が跨ると飛翔を開始した。
翼はややぎこちなく空中で安定するのに数秒かかったが、やはりトト。本来なら体がバラけてしまう程のスピードを出すが、僕を風圧から守りながら飛翔する。
天空闘技場へはものの数分で辿り着いた。
「前に来たことでもあるのか?」
「……アアアルル、アタタ……アタ……アッタ?」
恐らく宿主の中に天空闘技場に来たことがある人物がいたのかもしれない。
「それじゃ、エントリーしてくるから……困ったな、トトは能力者しか見えないとはいえ常に傍らにいるのは目立つな……」
フィルは現時点で発はトトしかなく、トトはいわば半自立型の発でありフィルのメモリには含まれていない。
フィルのメモリを牛耳っていた《寄生の卵》も消滅したことで、フィルはメモリが余りに余っていたのだ。
しかしここで簡単に発を作っていいものなのかと考える。
フィルはトトつまり《永久代理人》だけで充分な戦力、いや過剰な戦力と考えていたので発に関しては全く決めていなかった。
「トト、お前小さくなったり俺の体の中に入ったり出来ないのか?」
「デデデ、デル……デキキ……デキ」
トトは翼を生やした時のように黒い粒子が出てくる。
その時に少しだけトトのことを理解した。
半自立型の念獣とはいいえている、恐らくトトは生まれた瞬間から発を持っていたのだろう。
恐らく形態変化の類のものだ。
トトは指輪となって僕の左薬指へと収まる。
「……」
何故よりにもよってその指なのだろう。
そう思い、適当な場所に指輪を移動しようとしたが余りにも硬くハマっており抜けない。
「はぁ、まぁいいか」
そんな些細なことは気にせずに、天空闘技場のエントリー会場へと向かった。
闘技場は非常に大きく、見上げれば首が痛くなってしまいそうだ。
面倒だったが長蛇の列に並んでエントリーを済ませる。
受付の人に子供は危ないと念を押されたが……見たところ非能力者ばかりなので問題ないだろう。
何よりトトがいる、僕から贔屓なしに見ても最強だろう。
200階までは武器の使用が禁じられているのでトトには休んでもらうことにした。
「おいおい! ガキがこんな所に来てんじゃねぇよ!!!!」
初めて会った男になんでここまで言われなきゃないないのだろう……。
親切心で言っているのなら、僕のために負けて欲しい。
一々殴ったり蹴ったりと僕はそこまで近接は得意じゃないんだから……。
「さっさと落ちろガキ!!」
男の突進を受け止める。
もちろん相手は非能力、オーラを纏った……いや、トトのオーラすら纏っている僕に殴る自体が自殺行為だ……。
男の拳は僕のオーラに触れて、ナニカ薄くて硬い薄氷にでも当たったかのように弾く。
「オーラの密度が高いとこうなるのか……」
そんなどうでもいいことを思いながら、フィルは拳をつくる。
そして人差し指と親指で輪っかを作り──弾いた。
空気が摩擦して、衝撃が飛翔する。
相手選手の腹を捉え、そのまま衝撃は貫通した。
相手選手の腹に風穴を開けてしまったのだ。
「あー……加減間違えた」
そんなことを考え、尻目で相手選手だった肉塊に目をやる。
その目には謝罪の色もやってしまったという後悔もない。ただ、本当に「あーあ……」とだけいっている。
それからの試合もほとんど殺して上がっていき、200階まで殆ど不戦勝で上がることが出来た。
トト 《
・フィルの念獣、《寄生の卵》時代に触れた生物から物質に体を自在に変化させることが出来る。他にもイメージがしっかりとしていれば腕を伸ばしたり肥大化させたりと体を変化させることが出来る。
・意思疎通はできるが、流暢に話すことはまだ出来ない。
・一応雌であり今作のヒロイン(のようなもの)。
姿のイメージは亜人に出てくる黒い幽霊を常に纏った少女。黒髪黒目で肌は白い、人間以外の姿になる時は全て黒い粒子となる。
フィル
・流星街出身の特質系能力者。趣味は読書や美味しいものを食べること、娯楽全般に触れたいと【やりたいことリスト】に記載してある。殺すことや奪うことに躊躇がなく悪人面。読書は念を教えてくれた人がよく読んでいたので読ませてもらい興味を持つようになる。
・メモリが余っているのでトトの支援する能力にしようとするが、いい案が浮かばずに考え中。(案は決まっている)トトが意外と乙女な面があり、ここまで細かい能力に設定していなかったのにと困惑中。
姿のイメージは茶髪で生気のない瞳で髪はボサボサ。細身で弱っちそうだが悪人面、笑った顔は狂気そのもの。あまり笑わないので余計に怖い。