色々と仕事を始めるようになって、人生5回位は遊んで暮らせるようになるほど資金は溜まった。だが、流星街で作った【やりたいことリスト】の全ての娯楽に触れる為にはこの程度の資金は豆粒に等しい。
クロロからの依頼で本の貸し借りをしているが、アレも本来なら飛び上がるような値段なのは間違いない。
読書は確かに面白いし、そこから得るものも沢山ある。
しかし、禁書指定の本はあるライセンスが必要だったり……やはりそれこそ金が飛び上がるほど必要になる。
「ああ、クロロ。これ、前の依頼の」
「報酬は口座に振り込んでおく」
一応念を教えて貰った恩人ではあるが、だからと言って割引で仕事を請け負うことは無い。フィルはそんな安っぽい絆のようなものが嫌いだ。それは流星街で嫌という程見てきたから。
クロロはそのまま帰ろうとはせずに、フィルの部屋にある椅子に座り込んだ。
「……まだなんか用?」
フィルは試合を控えていたので少し機嫌が悪い。
それは無視したりしたら部屋を追い出されるから致し方なく出場するだけで、もう念での戦いに興味はほとんど無い。
卵の殻を食べたことによって増えたメモリも殆ど余すことなく使ったので、これ以上に劇的な力の向上は有り得ないし……何よりトトに勝つ念使いが現れるとは到底考えにくい。
だから不機嫌だった。
娯楽に触れてある程度何かに対する喜びを覚えたのに、それが味わうことが出来ない天空闘技場へ。
「次の相手。確かヒソカという名前じゃなかった?」
クロロはそう言いながら本を読み進める。
だからどうしたんだよ。そう思ってしまうフィル。
「そうだったかもね……興味無い」
「もしかしたらお前を楽しませるかもしれないぞ……そいつ、新しいウチの4番だ」
「……へー」
だからなんだ、そう思わせる声音。
確かに旅団は世界から見ても優秀な念能力者が集まっているだろう……。
だが──
「そいつはトトに勝てるの?」
──化物には勝てない。
どれだけ人間が足掻いたとしても、種そのものを超越した化物には勝ち筋が無い。
「さぁな、だが並の能力者だと思って戦うと痛い目を見ることになる」
クロロはそう言いながら手に持つ本を読み進める。
「──それじゃ足りないんだよ……」
フィルはそう言いながら興味のなさそうに部屋から出た。
どれだけ強くても、どれだけ賢くても、どれだけ巧みだったとしても……。
トトの前では全てが無になる。
だから……。
「トト、お前今日は休みな」
「……ヴ──ゥ?」
柄に無く少しだけ期待に胸を膨らませた。
────ー
「今日はあの念獣は使わないのかい♡??」
既に試合は始まっており、ポイント制。
KOでも良かったのだが、クロロの所の団員だということなら殺すのは少しだけ不味い気がする。
良い金ズルがいなくなるのは今後面倒になる。
「ああ、お前がクモらしいからな……殺すと色々と面倒なんだよ」
「それは残念♤、それなら君が遊んでくれるのかな?」
「そういう事だな」
そう言うとフィルは左手に【卵の窓】を発動させて、右手には緑色の卵を発動させた。
「それはなんだい? 初めて見る能力だね♡」
「自分で考えな」
黒い窓がヒソカを囲む、不審にその念を見つめるが何か変わった様子はない。
(これはなんだ?)
ヒソカは怪しむが、答えなど出てこない。
【卵の窓】は元々攻撃系の念能力では無いからだ。
しかし、それは【卵の窓】一つだけの時。
そこにある能力が加わることで【卵の窓】は大きく進化する。
「【
左手の【卵の窓】と似ているが、やはり同じではない。
その得体の知れない何かにヒソカは興味が湧いた。
牽制にヒソカはカードを投げる。
フィルは当たる直前に窓を開けた。
当たる寸前に窓はカードを飲み込み、ヒソカの右斜めから別の窓が開きカードがヒソカを襲う。
「へー♡なるほどね。面白い能力じゃないか♤」
(恐らく瞬間移動の類の能力、あの小さな黒い空間と他の黒い空間は出入口として使える。面白い能力じゃないか……でも、それよりもボクは右の方が気になるな♡)
「そんなに見たいか?」
心の中を読んでいると思わせるほど的確なタイミングでフィルはヒソカに声をかける。
「是非見せてもらいたいね♡」
気味の悪いこと、そう思いながらどの道見せるであろう右の能力を使った。
卵からオーラが産まれる?
どういった表現が好ましいか分からない、卵から漏れ出す? そんな形でオーラ状の生物が卵から出てきた。
「いけ」
小鳥を模した何かがヒソカへ飛び立った。
(鳥? にしては少し遅いな。これくらいなら)
ヒソカはオーラ状の鳥に向かってカードを投げる。
カードが鳥と着弾した瞬間……鳥が爆ぜた。
「へぇ、鳥は小規模だけど爆発させることができるんだ♤でもそのスピードじゃボクに辿り着く──あぁ、なるほどね」
「まぁそういう事だ」
どれだけ遅い速度でも窓を使えば近くに、更にいえばヒソカに直接ダメージを与えられるほどの距離に移動させることも可能。
「でも、それだけじゃボクは殺れないよ」
ヒソカは撃ち合いに部が悪いとわかった上で接近を始めた。
鳥だけならまだヒソカが有利だったが、そこにワープが付いてくると考えると圧倒的に不利。
しかしフィルもそれは読めていた。
「やれ」
右の卵から先程とは違う色のした鳥が出てくる。
ヒソカもそれには気付いたが予定は変更しない、接近をすることに変わりはない。
カードを鳥へと投げて自分にダメージの負わない距離で爆発させ、そのままカードで切り裂く。
ヒソカの単純と思わせる作戦は、これ以上ないほどの最適解だったに違いないだろう。
鳥が爆発すれば。
「あれ♡?」
カードは爆発せずに、周で纏っていたカードを消滅させられた。
そして念のために隠しておいたヒソカの能力【バンジーガム】も解除させられていた。
そして鳥の姿はない。
今仕掛けるのはダメだと悟り足を止める。
「ボクのバンジーガムはボク以外に解除は出来ないはずなんだけど」
「悪いな、僕にそういうのは関係ない」
「なるほどォ♤最高じゃないか♡」
「そりゃどうも」
ヒソカは仮定する、緑色の鳥は小規模な爆発を起こすことが出来て青色の鳥はオーラを強制的に解除することが出来る能力なのだろう。
これだけでも優秀なのに、これ以上となるとメモリが、足りなくなるだろうしコレ以上は無駄となる可能性の方が高い。
「でも弱点が無いわけじゃない♤鳥は一匹につき一回しか効果が発動しないだろ? 数で押せばそれほど脅威じゃない」
「あっそ」
(でも青色の方は気を付けないと♡ボク自身に触れた場合一時的とはいえ念が封じられそうだ♤)
「よく出来た能力だね♡ここにあの念獣も増えると……いや、念獣がいない時しか使えないのかな?」
(本当によく出来た能力だ、クロロが目に掛けるだけのことはある。でもこんなに便利ならそれ相応のデメリットもあるはずなんだけど……クロロが盗まないのには理由があったのかな? ♡)
「仕切り直しだね、さぁ殺ろう」
「いけ」
ヒソカはカードを、フィルは鳥を。
ある程度引き出しを見せた二人は、もう一度火花を散らせることとなる。
──筈だった。
ヒソカの背後で爆発が起こる。
それも一度や二度では無い。
何度も、ヒソカをまるで逃がさないように。爆破の包囲で直撃させる。
大ダメージをヒソカは受ける。
そしてその表情は嬉しそうなのと反面、何が起こったのか分からないという顔だった。
口にあった血をヒソカは吐き出しフィルへと問うた。
「何をしたんだい?」
「さぁな」
感想の質問に答えようと思います。
まず態々弱体化する能力を付け加えたことについてですが、作者が能力を何段階かに分けたかったというのが一番です。
トトが初めから最終形態というのも味気ないかなと思ってやりました。気に入らなかったらゴメン。
それで次に質問の多かったメモリですが、トトを作るのに一度全てのメモリを消費しています。いまメモリを使っているのはトトのでてきた卵の殻を食べたことによって増えて変わったオーラと新規のメモリです。(原作でメルエムが食べれば王直属の能力を手に入れていたので、念による後付が出来なくはないかな?みたいな感じですけど、あれは食べる=能力増えるなのでメモリ関係ないかな?まぁ、変だったら独自設定だと思っておいてください)
今作ではこれ以上フィルに能力は増えないと思います。これ以上増えても上手く使いきれないと思うので(現時点でも怪しい)
次に強さオリキャラの強さですがまずはフィルから。
フィルは最初はポックルくらいに弱い。けどリスクの高い制約と誓約のおかげでトトを作ることに成功。
フィル自身はオーラだけならゼノくらい(円が300m)。
体術は初期のズシくらい。
心理戦とか運なら今作では最強。賭け事させたら勝てる奴はいない。
全体的にサポートメイン。作中でいえばモラウポジション。だが人望はない。
トト
オーラはメルエムと張る。
体術は必要ないと言わんばかりのパワータイプ。
イメージはアホだけどやる時はやる子。
最後に化物の枷の誓約は一見リスキーに見えますが、フィルが絶状態になるのでトトにダメージはないのでご安心を。それでも弱いと思われるので新しい能力を追加しておきました。それは、溜めたオーラで実現可能な念能力を一度だけ発動するというものです。
使い道はナニカがイルミを家に飛ばしたとか、そういう念が莫大にあれば出来そうなラインの力の行使です。
他に色々と分からないことがあればなるべく答えるのでお願いします。
原作との矛盾点や設定上の致命的なミスがあれば……その時は………うん、ゴメン。