宇宙世紀0096年12月中旬
リタとの話し合いを終えたその夜。
何時ものように寝室の二人掛けソファーにローザと並んで座る。
夫婦になってから、寝る前にこうして二人してソファーに座り、今日一日の出来事をお互い話す事が、いつの間にか習慣になっていた。
「込み入った話になるがいいか?」
「私もエドに話したいことがあるが、私の話は後でもいい」
「そうか、なら俺から話すぞ」
ローザの奴、妙に改まった言い方だが、後で良いってんなら、それ程重要な事じゃないのだろう。
「リタの件でな」
「……ま、まさか、リタの事を……」
ん?なんだ。その慌てよう?リタとなんかあったか?
俺はそんなローザの様子を訝し気に思うが、とりあえず話を続ける。
「話としては二つある。本来それぞれ独立した話のハズなんだが、何故か密接に関係していてかなりややこしい事になっている。一つ目は、リタの予知では、近い将来この新サイド6が白いモビルアーマーの攻撃を受けて壊滅状態になるそうだ。まあ、何もせずに放っておくとそうなるらしいが、それを阻止する方法があって、一人で何とかしようとしていた」
「そ、そういう話か、ふぅ。……リタは予知に優れたニュータイプと言ったところだろう。ニュータイプにも個性のようなものがある。よく知られているものとして、戦闘特化したタイプや精神感応が優れたタイプ、それとリタの予知だ。だが、よりによってこのサイドを狙って来るとは、余程愚か者のようだ。敵はジオンの残党か?」
俺の話に何故かホッとしたローザは、少々饒舌に語る。
さっきまでの慌て様は一体何だったんだ?
「そういえば、敵の組織について聞いてなかったな。どちらにしろ面倒な荒事になる事は確実だろうな。明日の午後からトラヴィスのおっさん所にリタを連れて行こうと思うが、診療所は午後から臨時休診とするしかないか。ローザはどうする?」
「……私は、今回は遠慮しておこう」
「そうか、わかった」
俺はローザの事だからてっきりついて来るものだと思ったのだがな。
何か用事でもあるのだろう。
まあ、荒事になったとしても、リタの予知だとキャスバルがいれば何とかなるらしいし、おっさんところの裏組織スレイブ・レイスの戦力なら、よっぽどのことが無い限り大丈夫だ。
「エド、先ほど話は二つあると言っていたが……」
「ああ、二つ目はな、リタが新たに見た予知だとキャスバルの奴がいれば、白いモビルア-マーを止める事ができるらしい。それとだ…」
「なら、奴一人にやらせればいいだけの話だ」
「いや、リタと一緒に居ないといけないらしいぞ」
「フン、リタも災難としか言いようがないな、あんな男と一緒など」
「それなんだが、どうやらリタはキャスバルの事が好きらしい。なんか結婚したいとか言ってたぞ」
「どういうことだ?なぜリタが奴を?何かの冗談か?」
「俺も経緯はよくわからないが、本気らしいぞ。それにだ。キャスバルの奴もリタの事が好きらしい。恋だの愛だの言っていたぞ」
「あの俗物め!!幼女趣味は相変わらずか!!エドだけでは飽き足らずリタまで!!」
……なんで、俺の名前がそこに入るんだ?俺は幼女でも女でもないぞ、リタも流石に幼女には見えないと思うぞ、女子高生や女子中学生に見えるかもしれないが。
「いや、だからリタも奴の事が好きだって言っただろ、キャスバルの言葉を借りると相思相愛らしい」
「いいや!あの変人のことだ!!リタに手を出し言いくるめたに違いない!!」
ローザの奴、とことんキャスバルの奴を毛嫌いしてる。
昔は奴の事、好きだったらしいが、今じゃこんな感じだ。
まあ、キャスバルがほぼ悪いんだが……。
「そうじゃないと思うぞ、今日のリタの話だと……」
俺は今日リタと話し合った内容を詳しくローザに話した。
リタは最初キャスバルに対して、恋愛感情はそれ程抱いていないような感じだったが、未来が見えたとかで、急に結婚すると言い出した事も語った。
「ふう、リタと話し合う必要があるようだな……」
「そうだな。特にリタは恋愛というか男女の関係にも疎そうだからな、レクチャーが必要か、俺はその辺はからっきしだ。って、ローザも俺とそうかわらんだろ?じゃあ他に、アムロんところは修羅場ってるし、アンネローゼは忙しそうだし、俺の近所の友人関係は女性関係に難な奴が多いな、シムスさん所はなんか紳士って感じだし、後は水稲米農家のアイナか、あそこは夫婦仲がベッタベタで子供が9人いるし、いいアドバイスがもらえそうだが……」
「エド、そういう事を言っているわけではない。奴は女を不幸にするに決まっている。リタには結婚を諦めてもらう」
「おいおい、流石にそれはねーんじゃ?本人同士が好きあってるんだぞ?」
「エド、アムロの現状を見てもそれを言えるのか?好きあったところで、幸福になるとは限らん」
確かに、ローザがそう言うのも仕方がない。
アムロの所は、こじれにこじれ、三角関係どころじゃないからな。
「……それを言われるとな。うーん。だが、キャスバルん所に今はセイラも居るし大丈夫じゃねーか?」
「エドは甘い。クェスやアンネローゼ、何なら家の女性陣全員に聞いてみるがいい」
うーん。どうだろうか?
クェスとアンネローゼは間違いなくローザと同じ意見だろう。
特にクェスはローザの次にキャスバルを毛嫌いしているからな。
家の女どもか……、リゼはキャスバルに対しては、唯一最初から普通に接していたから、多分大丈夫だろう。
オードリーはどうだろうか?中立な立場になりそうだな。
マリーダは日が浅いし、まだ、奴とほとんど接してないから、意見はないだろう。
反対3に賛成1、中立2ってところで、結果は目に見えている。
「あれだ。近いうちにリタ本人から直接皆に話があるだろうから、それまでは声を荒げない方がいいんじゃないか?」
「……いいだろう」
この場は何とかしのいだか。
ローザはまったく納得行ってないようだ。
俺はこの話をさっさと終わらせ、ローザの話について聞こうとする。
「で、ローザの話ってなんだ」
「わ、私のはまたでいい」
「ん?そうなのか?」
「この騒ぎがいち段落した後の方が…いい」
なんだ?やっぱ、改まった話のようだが、俺には思い当たる節がない。
ローザが改まるような話といえば地球にいる妹のセラーナの件だろうか?結婚話が出ているとか?
なら、直ぐに話してもよさそうなものだ。
まったくわからん。
まあ、本人が後でいいと言っているし、そう急く話じゃないのだろう。
翌日、リタとトラヴィスのおっさんの会社を訪ねる。
因みにキャスバルの奴にはこのことを連絡していない。
リタからキャスバルにちゃんと言わなくっちゃならない事柄だからな、白いモビルアーマーやら倒すのに協力してほしいことと、二人の結婚についてだ。
本来別々の話なのだが、どうしても事柄的に、くっ付いてしまう。
本人同士でじっくり話し合う必要がある。
だが、トラヴィスのおっさんには、リタの予知で新サイド6が結構なピンチに陥る可能性がある事を伝える事が先決だ。
俺は昨日の晩のうちに、トラヴィスのおっさんに簡単に事情を説明して、リタを連れそっちに行く事を伝えていたが……。
……ここで合ってるよな。
いやいやいや、9か月前は、4階建てのこじんまりしたビルだったよな。
16階建てぐらいか?コロニー建築制限ギリギリの高さだろう、これ。
カークランドコーポレーションって標識があるから、ここだろうが。
確かに改装中でごたごたしているとか言っていたが、
まさかこんな規模になってるとは予想外だ。
中央のビルは出来ているみたいだが、周囲のいろんな施設が建設中のようだ。
なんか、敷地に公園みたいのもあるぞ。
マジで大企業の本社って感じだ。
広々としたエントランスの受付に行くと、最上階に案内される。
まだ内装はちゃんと出来上がってないのか、建設系の業者が出入りしている。
最上階のエレベータを降りると、そこにも受付があって、何時もの受付のねーちゃんが居た。
ねーちゃんに案内されて、広々とした執務室を通り抜け、社長室に入ると……。
「どうだ。ビビったかエド!」
「まじでスゲーな、おっさん。今度はどんな裏技を使った!」
「ははっ!まっとうだよ。まっとうにな」
ドヤ顔のおっさんが、待ち構えていた。
ちょい奥のソファーにはアンネローゼとアムロが座って待っていた。
俺達もソファーに座り、秘書らしきねーちゃんが茶菓子をだして部屋を出て行った後、話し合いを始める。
まずは、おっさんたちにリタの予知の話を本人の口からさせる。
新サイド6が白いモビルアーマーにより危機になる事、元々の予知が覆り、最近の予知でキャスバルとリタとで対処できるかもしれない事と。
「はあ、有りそうだわ、それ」
話を聞き終わったおっさんはソファーに深くもたれて、ため息交じりでそう言う。
「なんだ、おっさん。なんか知ってるのか?」
「ああ、ラプラスの時によ、ジオン残党の袖付きのボスのフル・フロンタルとその親衛隊をとっ捕まえただろ?」
「そういえば、そんなことを聞いたな」
「その後な、サイド3周りのジオン残党の抑えが効かなくなっちまって、暴走しがちなのよ。裏でサイド3のモナハン・バハロやその他の有力政治家や資産家らと繋がり有る残党軍の奴らは、もう、それぞれ好き勝手やっちまって、サイド3のお偉いさん連中も頭が痛いらしいぞ」
「マジでか」
おっさんはうんざりしたような口調で語る。
そこにアムロが話を補足してくれる。
「少なくとも、フル・フロンタルはそのジオン残党をまとめていたことになる。奴はかなり優秀だったようだ。シャアの身代わりで作られただけの強化人間ではなかったということだ」
なるほど、シャアの再来とか言われていたのは伊達じゃないってことか、フル・フロンタル自身がかなり優秀で、指導者としてサイド3周りのジオン残党をまとめていたってところか。
そのフル・フロンタルがおっさんに捕まって、指導者が居なくなったジオン残党共はバラバラになって、好き勝手放題してるって感じだな。
それが、新サイド6が巻き込まれるってことか。
「なるほどな。で、そのフル・フロンタルは、今はどうしてるんだ?」
「ああ、更生労働で最初は農場、次にここの建築現場で働かせたんだが、フロンタルとその元親衛隊の連中は真面目過ぎて、他の連中が引いてたぞ。そんで、なんでかフロンタルが建築現場の指揮を執ってたりと、マジで優秀な奴だ。だから、俺んところの会社にスカウトしたんだが、まだ返事が貰えてねー、なんでも返事の前にレッドマンと会いたいらしい。だがよ。レッドマンとフロンタルを会わせていいものか?それはそれで頭が痛てーし、その件はエドに相談したかったから、丁度よかった」
「別にいいんじゃないか?」
いまさら、キャスバルの奴が何かやらかすとは思えない。
「エドがそういうなら、……やっぱ、エド、そん時はお前も立ち会ってくれないか?その方が絶対いいだろう」
おっさんがそう言うと、アムロとアンネローゼも頷いていた。
「はぁ?なんで俺が?」
「エドはレッドマン担当だろ?」
おっさんの言葉にアムロとアンネローゼも頷く。
「担当ってなんだよ。……はぁ、わかったよ。ただ、キャスバルの奴が嫌と言えば断るからな」
「そんなのあるわけねーだろ?」
「それはないな」
「それはないわ」
何故かおっさん、アムロ、アンネローゼの3人同時に言われる始末。
こうして、キャスバルとフル・フロンタルの話し合いに顔を出さなくてはならなくなった。
「話は戻すが、リタ嬢はレッドマンと組めば解決できるって言ってるが、実際どうすればいいんだ?」
おっさんは話を戻し、リタに問いかける。
今迄のリタの話は抽象的すぎて、何をどうすればいいのか、さっぱりわからないからな。
「レッドマンさんと私であの子…フェネクスに乗って白いモビルアーマーを止める未来が見えました」
「ああ、レッドマンとリタ嬢が乗らないと起動すらしない、ユニコーン3号機か、よりによってそれかよ。ということはだ。あっちの件も絡んできそうだな」
おっさんはそう言って、アンネローゼの方を向く。
「このタイミングでこんな話が上がって来るってことは。関係があるでしょうね」
アンネローゼもおっさんに同意するが、俺には何の話かさっぱりわからん。
「はぁ、そうだよな」
ため息を吐くおっさん。
「あっちの件ってなんだ?」
「実はだな。この頃、俺の所の会社にルオ商会がちょっかいかけてきてよ。まあ、急に出て来た新米に、杭を打ちに来てるんだろうと思っていたんだが、ちょい妙だったんだ。俺らの会社がフェネクスを隠し持ってるとかなんとか、『サイコフレーム搭載機を一企業が持つことは地球連邦政府に対し、反逆の意思有りとみなされる行為だ』とかな。連邦政府の政治家を動かしてまでだ。そんなもんは破壊したって、丁重に返答したんだけどよ。しつこくてしかたがねーー。今度は、連邦宇宙軍を使って、臨検をかけて来ようとしてやがるんだ。俺の伝手の連邦軍のお偉いさんには待ったをかけてもらってるんだが、相手が相手だけに、どこまで抑えられるかわからねー」
ルオ商会がおっさんの会社にちょっかいって、やばいんじゃねーか?
しかも地球でも指折りの財閥企業からだぞ。
もし、臨検になって、おっさんの裏の軍事組織がバレたら、ヤバすぎだろ?
本来、民間企業が軍事用モビルスーツを持つことは禁止されているからな。
それをだ。
おっさんの会社は、モビルアーマーやモビルスーツを俺が見ただけでも20機近く持ってやがった。
しかも偽装大型戦艦とか、たんまりと、ヤバすぎだろ?
しかし、おっさんもおっさんだ。
ルオ商会や連邦政府の政治家や連邦宇宙軍すら、抑える事が出来る連邦軍のお偉いさんと伝手があるとか、チートの域だな。
「おっさん、大丈夫なのかよ?」
「はぁ、サイコフレーム搭載機って言ってもな~、フェネクスだけじゃねーし、ユニコーン1~3号機全部そろってるし、νガンダムもフルサイコフレームにしたし、βアジールもノイエジールⅡ改も搭載してるし、マリーダが乗ってたクシャトリヤもあるし、最近赤いキュベレイ拾ったし、サイコミュ搭載の赤いヘビーガンダムももらったし、この前破壊したネオジオングのサイコフレームを再利用して、試作機をアムロが作ってたし。10機以上あるな~、流石にバレて公にされたらやばいよな。いっそ臨検してくる艦隊を蹴散らすか?」
「……おっさん冗談でも、しゃれになんねーって」
……正直言って、臨検する艦隊どころか連邦宇宙軍相手にできるんじゃね?
「冗談はさて置いてだ。この分だとリタ嬢の話に、ルオ商会も絡んできそうだ。ルオ商会のミシェル・ルオだっけ?あの嬢ちゃんもヤバいからな。占いで政治家動かしてるし、面倒だが何とかするしかないか」
「え?ミシェル?」
「ん?リタ嬢、知ってるのか?……いや、そういえば、ミシェル・ルオは戦災孤児で、オーガスタ研究所から引き取られたんだっけか……、リタ嬢もオーガスタだったな」
「やっぱり……ミシェルは私の幼馴染です。……だったらたぶんヨナも」
「そうか、そうか、なんか見えて来たな。ふはっ!ふくくくっ!これはこれで一気に解決できんじゃね?」
おっさんが悪だくみしているときの笑い方だ。
ぜったいろくでもない事を考えてるに違いねー。
なんか、長くなりそう。
次はリタとキャスバルの告白?
ローザ、クェスとリタを止めるため、キャスバルがどうなる?
フロンタルとレッドマンの会合はどうなる?