なんか、ハマーン拾っちまった。   作:ローファイト

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誤字脱字報告ありがとうございます。


今回は息抜き回です。



⑯閑話:弊害

宇宙世紀0090年4月上旬

リゼは新学期を迎え、中学2年へと進級した。

背も伸び始め、身体つきや顔つきが女性へと変わり始める。

それでも、まだまだ子供だ。

死んだ上の妹も、そんな時期が在った事をつい思い出しちまった。

上の妹はしっかり者だった。俺はしょっちゅう、だらしないとかデリカシーが無いとか怒られてたっけか。

リゼも家の事もちゃんとやってるし、しっかりしてるんだが、性格が子供っぽいんだよな。どちらかと言えば、性格は下の妹に近い感じがする。

 

ハマーンの方なんだが、日常生活に支障がないレベルまで回復していた。

筋量は少々足りないが、それも直に元のように動けるだろう。

この頃は診療所の方へも顔を出すようになる。

骨折の手術を行う事になって、少々手伝ってもらったのがきっかけだ。

この診療所は普段は忙しいわけじゃない。

一日の患者は30人程度だ。

近所の通院患者が主で、特別に時間をかけなきゃならない患者も少ない。

俺一人でもなんとかやっていける人数だ。

たまに近くで大きな事故があったり、訳ありの病人や怪我人が押し寄せてくることはある。そん時は流石に人手が足りないから、近所のアンナさんとかの主婦の方々に手伝ってもらっていた事もある。

しかし、病院は何もここだけじゃない。

この6万人程度の人口の15番コロニーにも一応総合病院もあるし、耳鼻科や歯科などのポピュラーな個人医院もちゃんとあるからな。

 

ハマーンはどうやら、俺の仕事に興味を持ったようだ。

まあ、流石に怪我の処置とかはやらせられない。

会計程度をやってもらう事がある。

現金の扱いにも慣れるだろうしな。

まあ、相変わらず愛想は悪いが、コミュニケーションが取れないわけではない。

よくドラマとかにあるだろ?おっきな病院の不愛想お局看護婦長とか……、あの程度に思ってもらえば。

かなりの美人だからな、多少ツンケンしていても、おっさんやじいさん連中には受けがいいようだ。

ばあさんとかの長話にも、一応、受け答えはしているようだ。「そうか」「うむ」の二言だけだけどな。

何だかんだと、徐々にだがご近所にも、そう言う性格の妹だと受け入れてもらいつつあると思う。

 

 

 

だが、その弊害もあった。

 

午後の診療も終わる頃。

「……おい、デイブ今日は何の用事だ?」

「何言ってるんだよエド、ここは病院だろ?怪我したんだ」

こいつ昨日も来たぞ、唯の切り傷で、唾つけてろって追い帰したところだぞ。

 

「で……その後ろのパット、お前はなんだ?」

「ちょっと風邪ひいちゃっまったんすよ。ゴホゴホゴホッ」

こいつもだ。なにそのワザとらしい咳は?昨日は腹痛とか言ってた癖に。

お前はバカだから風邪ひかないだろ。

 

「……クリスは何しにきた?」

「私は不治の病なのです。その名も花粉症」

コロニーの環境で花粉症っておい。よく知ってたなそんなの。旧世紀の病状だぞ。

 

「お前ら帰れ!!ここは病人が来る場所だ!!こんな所で油なんぞうってないで、とっとと嫁でも見つけに行って来い!!この童貞やろうども!!」

 

「ひでーな。エド」

「ははっ、誰が童貞だって?」

「暴言の撤回を要求する」

 

「うるせー、営業妨害だ。とっとと帰れ!」

 

この3人は近所の食品工場で働く、若造どもだ。

小太りの男がデイブ26歳。ひょろちいのがパット27歳、インテリ眼鏡がクリス25歳。

俺の心の中では、童貞三連星と呼んでいる。

こいつらはここ連日、この診療所に来やがる。10日程前からそうだ。

病気や怪我なんてしてねーのにだ。

何かと怪我や病気だと喚いて、居座りやがる。

 

「何言ってんだエド?俺らが最後だろ?」

「そうだ。もう他の患者なんていないぜ!」

「その辺の計算は抜かりない。安心しなさいエド」

 

こいつ等わざと午後の診療終了間際に来やがる。

 

「どうでもいい。帰れ!」

俺は待合室でうだうだ言ってるこいつらに一喝してやる。

 

こいつ等の目的は予想がついてる。

 

 

そこに近所に届け物を頼んでおいたローザが帰って来る。

「帰ったぞ」

 

「女王様!!」

「ローザたん!!」

「ローザ様!!」

3人は一斉に目をキラキラさせ、ローザの方に振り向く。

 

うぜぇー……

 

「ローザ……こいつらを追い帰せ」

 

「また貴様らか、ここは診療所だ。貴様らのような連中が来ていい場所ではない。早々に立ち去るがいい」

ローザはビシッと奴らに言ってやったのだが……

 

「ありがとうございました!!これで明日も一日頑張れます!!女王様!!」

「ローザたん萌え~、もっと~!もっと罵って~!!」

「そのようなご褒美なお言葉、私のような者に……ありがたき幸せ!!」

こいつ等は確かに不治の病だ。変態と言う名のな!!

ローザがさらに突き刺すような極寒の視線で一睨みをすると……連中は恍惚な顔をしながら帰って行った。

あの食品工場は大丈夫なのか?こんな奴らを量産しやがって。

 

 

「……デリル、お前は帰らないのか?」

 

「ふっ、僕は帰らないさ」

まだ、一人いやがったか。

先ほどの変態共のやり取りに全く興味が無い様子で、待合室で足を組んで新聞を読んでるデリル21歳。

 

「いや、帰れよお前。診療時間は終わりだ。どーせお前もしょうもない理由でここにいるんだろ?このロリコンのシスコンが!!」

 

「……この頃妹のジュリアが冷たいんだよ~。一緒に風呂に入ってくれないし、僕をゴミくずを見るような目で見るんだ。半径3メートル以上近づくなって言うんだよ~」

何故か俺に泣き付いてくるデリル。

まあ、そうだろうな。

実はリゼの友人のこいつの妹のジュリアから相談を受けていた。

兄のデリルの事で悩んでいたのだ。

学校で友人同士の家族の話になると、兄のデリルとジュリアが一緒に風呂に入ったり、ジュリアのベッドに潜り込む事が異常だと、皆に指摘されたとか……

俺はジュリアの話を聞く……それはデリルの数々のセクハラの所業だった。

懇切丁寧にジュリアに説明し、その対処方法を教える。

それでもデリルが執拗な態度をとるようであれば、親に相談するつもりだった。

だが、どうやらうまく行きそうだ。

犯罪に手を染める前になんとかなってよかった。これはお前の為でもあるんだぞデリル。

 

ここで、部活帰りのリゼが帰って来た。

「お兄ちゃん。お姉ちゃんただいま!」

 

「キターーーー!!リゼちゃーーーん!!今日も元気いっぱいだね!!」

 

「ジュリアちゃんのお兄さんこんにちは!」

 

「お兄さんと遊ぼうよ~」

さっきまで涙してたデリルは、今は何ていうかトンデモナイ笑顔だ。

 

「………」

俺は無言でデリルの頭を殴り、無理やり診療所から摘みだす。

こいつはもうダメだ。

 

 

『この頃の若者はなってない』という言葉を大人はよく使うが、まじそれだ。

このコロニーの先行きが不安だ。あんな奴らばかりじゃない事を願うばかりだ。

 

いや、これは平和だという表れなのだろうか?

……いやいやいや、そうじゃないな。

単にあいつ等がおかしいだけだ。

 

何か対策を考えなくては……

 




……そうなりますよね。
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