なんか、ハマーン拾っちまった。   作:ローファイト

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続きです。


⑲雨の日の来訪者 中編

「おっさん今日は遅い。上の空いてる病室に泊まれよ」

 

「助かる」

おっさんは素直に礼を言ってくる。

 

「……俺はここに」

ヴィンセントはメディカルマシーンの中で眠るクロエの傍に居たい様だ。

 

「ドラ息子は邪魔だ。とっとと寝ろ。その前にだ。アンネローゼさんだっけ、あんた肋骨痛めてるだろ。見ておこう」

ヴィンセントには一喝して、俺はアンネローゼを診察することにする。

クロエの着替えやらをしてる最中、胸の下を庇うような仕草をしていたからな。

大方肋骨にひびでも入っているのだろう。

それにこの子は会話していて思ったのだが、情緒が不安定だ。

新兵にはよくあるが、この子も10年も兵士やっていた。

俺がクロエを治すと言った時、複雑な顔をしていたのも気になる。

 

診察がてらアンネローゼと色々と話した。

肋骨には多少ヒビが入っていたが入院する程度の物じゃない。

それよりも、この子は精神に少々爆弾を抱えている事がわかった。

療養が必要だなこれは……この子もしばらく入院だ。後でトラヴィスやヴィンセントに事情を聞いた方が良いな。

 

「あの、先生……ここに先生以外誰かいますか?その上のほうからプレッシャーを感じて……す、すみません変な事を言っちゃって」

アンネローゼはこんな事を聞いてきた。

 

「ん?プレッシャー?」

 

「あ、あの忘れてください」

 

「いや、妹が二人住んでるが………」

まてよ。強化人間は相手の存在を第六感で認知すると……それはニュータイプも同じか。

この子も強化人間か?情緒不安定なのはそのためか?

プレッシャーってもしかして、ハマーンの事じゃないだろうな。

あいつは普通にしてても人を威圧してくるからな。

というかだ。ハマーンがここに居るとか知ったらどうなるんだろうか?

ヴィンセントとクロエは元部下だし、詳しくは知らんが多分アンネローゼもそうなのだろう。

これは困ったことになりそうだ。

 

「痛み止めとシップ薬だ。シャワーの後に張っておくといい。おっと2階にシャワー室がある一応湯舟も張れる。着替えは……患者衣しかないな。ローザのは……無理そうか。ブラは無い、パンツは簡易の使い捨てを用意する、自由に使ってくれ。服と下着は俺が洗濯しておくから、脱衣所に置いておいてくれ、明日には乾いてるだろう。ベッドは一番手前の病室を使ってくれ」

アンネローゼに今日の寝床について説明をする。

ローザの下着は無理か、この子胸がデカい。ローザは小さくは無いが、この子のほうが二回り以上でかい。

 

「パ、パンツ…その簡易って………その先生が洗濯を?」

 

「そうだが?何か不都合があるか?」

 

「い、いえ。シャワー借ります」

 

俺は一応シャワー室と寝床の病室を案内し、患者衣と簡易パンツとバスタオルなどを渡す。

 

 

彼女がシャワー室に入った後、トラヴィスとヴィンセントと診察室で話をする。

クロエやアンネローゼの件などについて聞こうとしたのだが、ヴィンセントがこれまでの経緯を詳しく語った。

ヴィンセントとアンネローゼは一年戦争時ジオンのマルコシアス大隊という特殊部隊出身でヴィンセントが小隊長でアンネローゼが部隊員だった。

その間に、トラヴィスのおっさんの部隊ともやりあったり、共闘したりしたんだそうだ。

そんで、一年戦争の最終決戦で……HADES搭載のペイルライダーというモビルスーツとヴィンセントの部隊が戦ったのだが……隊は全滅。ヴィンセントも相打ちで辛うじて、ペイルライダーを止める事が出来たが……そこに乗っていた兵士が年端も行かないクロエで……しかも記憶喪失だったらしい。たぶんHADESの影響だろう。

ヴィンセントはクロエと共にアクシズに合流し、ネオ・ジオンの兵士となったらしい。

その間ヴィンセントはクロエとの関係に葛藤があった。自分の隊を全滅させた憎むべき相手でもあるが、それはクロエ自身が望んだことではない。しかも彼女は自分を慕ってくれているという。

アンネローゼはモビルスーツは大破したが生き残り、アクシズとは別のジオン残党と共にしていたらしい。アンネローゼは隊を全滅させたペイルライダーを憎み。その憎しみだけで、今日まで生きて来たと。

しかも、彼女はニュータイプらしいのだ。

さっきプレッシャーがどうのこうのと言っていたのは、まさか、ハマーンの存在を感じたとか……いや、ありえる。ニュータイプ同士はテレパスが出来るみたいな事も文献で見た事がある。ハマーン自身もニュータイプらしいしな。本人はその事には絶対触れないが。

 

話を戻すが、ヴィンセントとクロエはハマーン亡き後、新たにネオ・ジオンやジオンの残党をまとめて指導者となった人物の元で、グレミー派の残党討伐を命令される。

向かった先にはアンネローゼがニュータイプ用モビルスーツで敵として待ち構えていた。

それで、泥沼の戦いとなるが、トラヴィスのおっさんがZⅡに乗って戦場に介入して、アンネローゼを説得したとの事だ。

グレミー派は壊滅。アンネローゼとクロエがほぼ相打ちになって、その脱出ポッドを回収し、戦線を離脱して今に至るそうだ。

まあ、アンネローゼのあの態度、まだクロエに対し思うところがあるのは仕方がないが、トラヴィスのおっさんはどうやってそんなアンネローゼを説得したんだ?人たらしめ。

それにZⅡってなんだよ。Zタイプの後継機か?俺も最近のモビルスーツについては詳しくないが……Zって、エース用の超高級モビルスーツだよな。その後継機をどうやってジャンク屋のおっさんが手に入れたんだよ。まじで。

しかも、単騎で第三者として介入しておいて、よく生きてるなおい。

このおっさん。なんでもありかよ。

普段、調子乗ったただのおっさんだけど、まじ超優秀なんだが。

連邦軍もこんな優秀な人材をよく放出したよな。アホだろ。

 

まあ、アレだ。

愛憎がねじ曲がった結果だな。

こいつ等若者は一年戦争という悪夢に苦しんできたという事だ。

 

今のヴィンセントはクロエに対してのわだかまりは無い様だ。

それよりも愛すべき相手だと認識してるようだ。

問題はアンネローゼか……まあ、何とかなるだろう。

それよりも、クロエが持っていた錠剤の分析から始めるか。

彼女の血液サンプルを取って、遺伝子解析と……モズリー先生にも協力を仰がないといけないかもしれないな。

遺伝子治療がうまく行けば、彼女の寿命も元に戻る可能性がある。これは色々と試さないといけないが……治すと言ってしまった以上やってやるさ。

 

 

ん?んん?忘れていた。

ローザ……ハマーンの件はどうしようか。

これが今一番の問題だ。

何方にしろ、顔を合わすだろうしな。

ふぅ、色々あり過ぎた。

仮眠でも取って明日考えよう。

 




エドのデリカシーの無さは相変わらずです。
エドのEXAMの知識は上辺だけです。真相までは知りません。ちょっと資料を勝手にコピった程度です。
エドのニュータイプに対しての知識は偏ってますし、世間よりちょっと知ってる程度です。

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