なんか、ハマーン拾っちまった。   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

今回は閑話休題
日常編です。


㉓閑話:引っ越し

 

宇宙世紀0090年6月上旬

 

ローザの正体バレの件は何とか収まった。

意外にもハマーンは二人に誠実に対応したのだ。

まあ、ハマーン流ではあるが……

 

トラヴィスのおっさんと息子のヴィンセント、それとアンネローゼはこの15番コロニーの中心街へと買い物に出かけた。

クロエとアンネローゼ自身の衣服や下着、入院に必要なものなどもろもろだ。

それに、ヴィンセント達は、身一つで逃げるようにここに来たものだから、身の回りの物を何一つ持っていない。

必要最低限、生活に必要な物を買うのだろう。

 

そのヴィンセントだが、暫く俺の診療所に泊めてほしいと頭を下げた。

まあ、クロエの事もある。病室も空いてるし、特に問題はないが、一応期限を切っている。

精神に爆弾を抱えているアンネローゼの為にもその方が良い。

クロエに遺恨を残してるアンネローゼにとって、ヴィンセントが居る事で暴発することは無いだろう。

 

トラヴィスのおっさんは買い物が終わった後、一度、隣の16番コロニーのジャンク屋兼自宅に戻るらしい。

 

 

3人が出かけている間に、やらなくてはならない事がある。

勿論、クロエの容態のチェックもそうだが……

 

ハマーンの部屋の引っ越しだ。

ハマーンは2階の個室病室を使っていたのだが、このほど入院患者が二人増えるのに、ローザとして家族を名乗っているハマーンをこのまま病室に置いておくのも問題があるとし、三階の居住区に部屋を移す事になった。

 

「ローザ入るぞ」

俺は今引っ越しの手伝いをするために、ローザが使ってる個室病室にノックして入る。

既にローザは俺から受けるリハビリは2カ月前に終わってる。

ようするにローザの部屋に入るのは2カ月ぶりとなる。

 

「お前は待てと言っても、入るだろう」

ローザは、何やら急いで片付けていた様子だ。

 

物も随分増えたな。

前はシンプルで味気ないただの病室だったのだが、随分女性らしくなった。

いや……少女チックになったの間違いか……

大人の女性の落ち着いた感じは受けない。なんかリゼと同じ年代の子の部屋の様相だ。

まあ、なんていうかお嬢様っぽい。

薄いピンク地の生地や白のレースやらが、あちらこちらと。

ガキっぽいわけじゃないんだがな。

 

俺の想像では、黒とか灰色とかレザーとかが似合うと思うんだがな。

意外と乙女チックな趣味があるようだ。

 

 

「重いもんは任せろ。その白の洋服タンスは最近買った奴だろ?中身を出してから、運んでやる」

 

「ふん、せわしい男だ」

ローザはそう言いつつ、先に片付けていた物を持って、三階の新たな自室に持って行く。

俺もベッドのシーツやら枕を持って、三階へ上がる。

三階の部屋のベッドは病室のベッドと異なり、木製のアンティーク調の味があるベッドだ。

俺がこの診療所兼自宅を購入した際に、ついていたものだ。その他にもタンスとかカーテンとかも買った当初のまま置かれている。

この部屋は個室病室に比べれば広い、壁紙も白色というよりもアイボリーか、元々寝室用の部屋だからな。

今迄この部屋は使用してない物置状態だった。物置といってもトイレットペーパーとかストックできる日常品が置いてあっただけだけどな。

それらはもう一つ使用していない空部屋へと既に移し変えている。

 

「カーテンは変えた方がいいだろう。私に相応しい物を購入しよう」

ローザは部屋の中をうろうろとしレイアウトを構想しているようだ。

ローザには診療所の手伝いをしてもらってる代わりに、アルバイト代程度の小遣いを渡している。その範囲でやるのは問題ない。

部屋は言わば自分の城だ。

自分の好きなようにすればいい……ん?あいつはリアルに城みたいなものを持っていたよな。アクシズっていう。

いや、あれは本来ザビ家の忘れ形見のミネバの物か。

 

俺はその間、元の個室病室に戻り、部屋の片づけをやっておいてやろうと、タンスの中の物を整理する。

まあ、アレだ。この頃リゼと買い物に出かける事が多いから、俺の知らないものが結構増えてんな。

髪留めや髪紐も結構種類があるんだな。

俺はタンスからそれらを取り出しビニール袋に移し替える。

次の引き出しは……

 

…………あいつ。相当気に入ってるのな。

しかし、これをどうやって買ってるんだ。

 

俺が引き出しを開けてみたものは。

パンツだった。

クマの顔のマスコットキャラがプリントされたあのパンツだ。

しかも、結構な数とバリエーションがあるんだが……

 

これ、てっきりリゼの物だと思っていた。

洗濯の後に、脱衣所のリゼのブースに放り込んでいたんだが……こいつの物だったのかよ。

 

しかし、まじでどうやって買ってるんだ?

流石に大人の女性用下着の店やコーナーにクマのパンツは売ってないだろう。

多分、子供コーナーやジュニアコーナーしかないんじゃないか?

そこで購入しているのだろうか?

 

ハマーンが堂々と私が履くものだと店員に言って買うだろうか?

きっとこれは子供用だろう。

店員さんはその時、どんな顔をするのだろうか?

 

いや、きっとリゼに買ってもらっているのだろう。

いやいやいや、流石に妹分のリゼに買ってもらうとか……

 

ん?きっと、妹のパンツだとか言って、買っているのだろう。

これならば、俺でも恥ずかしげもなく買える。

多分、そうなのだろう。そうであってほしい。

 

俺はそっと、パンツが入った引き出しを閉める。

見なかった事にするがベストだ。

 

次だ次の引き出しだ。

次はブラジャーか。

しかし数が……

 

「き、貴様は何をやってる!恥を知れ痴れ者!」

ローザが個室病室に戻って来て、いきなり後ろから怒鳴り散らしてきた。

 

「いや、引っ越しの手伝いでタンスの中を整理してやろうと思っただけだが」

 

「……貴様というやつは、当然のように……常識というものが欠如しているようだな!貴様のような奴は一度軍警に厄介になれ!」

ローザはすげー剣幕で俺に迫って来た。

 

「はぁ?何言ってんだ?」

 

「デリカシーのかけらもない。女性の下着に手を付けるとは。それとも私を女として見ていないのか?全く不愉快だ!」

 

「なんだそりゃ?妹や家族の服や下着だろ?しかも、洗濯とかでほぼ毎日手にしてるんだから、今更だろ?」

何言ってるんだこいつは?そんなに顔を赤くして怒る事か?

 

「くっ、……もういい!タンスの中身は私が整理をする。私が良いというまで、部屋に入るな。いいな!」

ローザの奴は俺を睨みつけ、部屋から追い出す。

 

「わかったって、そんなに怒る事じゃねーだろ?」

俺はしぶしぶ個室病室から出て行く。

ん?……そうか。そうだよな。クマのパンツは流石に秘密にしておきたいか……

それで、あんなに怒っていたのか。

クマのパンツを大人の女性が履くのは流石に憚れるものだと理解した上での事だったという事か。うむ。その常識を持った上であれば、問題ないだろう。

まあ、人には知られたくない秘密の一つや二つあるものだ。

 

しかし、昔は上の妹もよく俺に怒鳴っていたっけか?

デリカシーが無いとか……。

しかも、毎回理解に苦しむような理由で……。

 

年頃の女はよくわからん。

リゼも何れそうなるのだろうか?

 





エドはあいかわらずデリカシーが皆無です。
それは、昔からの様です。
多分、下着を布程度にしか思っていないのでしょう。

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