誤字脱字報告ありがとうございます。
今回は日常編です。
宇宙世紀0091年1月16日
この日はハマーンの24歳の誕生日だ。
俺があいつを宇宙で拾ってから2年が経つ。
因みにリゼは、誕生日とかも不明だったため、俺のとこに来た日、1月17日を誕生日にしている。一日違いだから、誕生日祝いは去年同様に一緒にすることになる。
今年も街に出て飯食って、また服でも買ってやろうと思ったのだが……
アンネローゼやヴィンセント、クロエとトラヴィスのおっさん達と俺んちで2人の誕生日パーティーを開くことになった。
これを考えたのはアンネローゼだ。
イタリアンレストランで修行中の身のヴィンセントが、チキンステーキやポテトサラダ、マカロニグラタンなどのメイン料理を用意してくれた。
俺はサンドイッチを担当。アンネローゼにも手伝わせた。
アンネローゼは元々料理が下手だったが、俺やリゼ、ローザの手伝いをするうちにちょっとはマシになった。
まあ、一緒の家に住んでるからな、飯は大概一緒に食っていたしな。
そんで、クロエが入院中はクロエも一緒だった。当然ヴィンセントもバイトの合間に来やがる。
その後も、しょっちゅう俺んちで飯食ってるからいつもと変わらん。
飯はヴィンセントがバイトのスキルを活かして、ゴージャスにしてくれてるのはありがたいが、腕前はまだまだだ。
因みにトラヴィスのおっさんがケーキと酒を買ってくる係だ。
おめでとうの掛け声により始まった誕生日パーティーに、リゼは嬉しそうに、ローザは無表情を装っていたが、皆から顔を背けていた。どうやら気恥しいのだろう。
飯の前に、プレゼントを渡す。
アンネローゼからは2人に花束を。バイト先が花屋だからな妥当だろう。
リゼにはピンクのバラとユリの花束、ローザには深紅のバラの花束を渡す。
ヴィンセントとクロエからは、リゼにはリボン。ローザにはシュシュ
トラヴィスのおっさんからは、某有名ショッピングサイトで使える商品カードだ。
トラヴィスのおっさんめ、その手があったか、それならば悩まずに済む。
俺が選ぶわけじゃないし、本人が自分が気に入ったものが買える。
俺からは……
俺は悩んだ。久々に真剣に悩んだ。
街に一緒に行って、去年と同じで自分で好きな服を選ばせて買ってやろうと思ったのだが、当てが外れた。
この誕生日会の企画は、自分でプレゼントを選ばないといけないからだ。
俺がプレゼントか……
過去に妹達に渡した誕生日プレゼントはことごとく不評もいい所だった。
俺も地球に降りる前までには彼女がいたが、その彼女もいつも苦笑気味だった。
そう、俺にはどうやらプレゼントを選ぶセンスが壊滅的らしい。
近所のアンナさんやリゼの友達のジュリアにもそれと無しに聞いてみたが、俺自身が選んで渡す事に意義があるという事らしい。
そう言われてもな。過去に妹や彼女には不評だったんだが……
悩んだ末に渡したものは……
「かわいい!ありがとうお兄ちゃん!」
「ふむ。エドにしてはマシな物を選んだな」
ふぅ、どうやら間違いではなかったようだ。
俺が2人に渡したのはアルバム機能が付いたデジタル写真たてだ。
リゼは俺の所に来るまでの記憶は非常にあやふやで、思い出す記憶は辛い記憶しかなかったようだ。
だから、これからは過去に振り返ってよかったと思える思い出を沢山作って、写真を撮り残して欲しいと願って、これを贈った。
ローザ…ハマーンには、ここに居る連中との絆を感じて欲しいという願いを込めて贈った。
皆との写真を撮り、それを形として残すことにより、人と人との繋がりや絆をより鮮明に感じる事が出来るのではないかというお節介に似た何かだ。
それにハマーンにも家族が居ただろう。今もどこかで生きているだろう実の妹を大切に思っている事は彼女の話からも十分伝わってきた。
いつかはその妹とも一緒に写真を撮る機会を得られるようにと……
俺は簡単なメッセージと共に贈った。
メッセージは後で読んでもらう様にしてある。
こんなもん。ここで読まれでもしてみろ、流石の俺も気恥しい。
俺はデジタル写真たてとは別に二人にもう一つ誕生日プレゼントを用意していた。
デジタル写真たては俺の一方的な思いで贈ったものだが、本人がどう思うかが分からない。
ハマーンに関しては、余計なお節介だと言われる可能性も十分あった。
やはり、本人にこれはと思わせる贈り物をしてみたい。
今迄、連敗続きだったからな。ここいらで逆転しておかないとな。
俺はリサーチにリサーチを重ね、悩み悩んだ末に、リゼには今流行りのゆるキャラ、ウサギのぴょん吉のヌイグルミだ。
リゼの部屋のベッドの上にはヌイグルミが結構ある。
そして、今若者の間で人気のあるウサギのぴょん吉なら、まず間違いないだろう。
リゼはウサギのキャラものも結構好きだしな。
そして、ローザには……
「貴様!私がこのような物を着用するとでも思っているのか!……不愉快だ!」
翌日の朝、俺に顔を少々赤らめながらこんな事を言って来た。
「気にくわなかったか?」
……そんなはずはないのだが、俺のリサーチに抜かりは無いハズだ。
俺が贈ったものは、クマの顔のマスコットキャラがプリントされたパンツだ。
俺は知っている。ハマーンがこのクマのマスコットキャラが気に入っている事を、しかもパンツにまで……
引っ越しの際、見つけてしまったしな。
だが、自分で買うにはなかなかハードルが高いだろう。
だから、俺が買って贈ったのだ。
俺の場合、いつもお世話になってるショッピングセンターの女性下着売り場の店員さんに、妹の分ですと言ったら協力してくれたため、恥かしげもなく買えたのだ。
それとだ。流石にクマのパンツだけでは、男と付き合えないだろうと、もし俺に彼女が居てクマのパンツ履いていたら、流石に萎える。
だから普通のパンツもセットしておいた。クマのパンツ5枚に普通のパンツ5枚だ。
結構な値段がしたが、これで当分パンツに困らないだろう。
俺からのささやかな気遣いだ。
我ながらベストな選択だと思っていたのだが。
「ふん……だが、私の誕生日を祝いたいという心根だけは汲んでやろう。致し方が無いがあれは暫く残しておいてやる。仕方なくだ」
ハマーンはそう言って自室に戻る。
……流石にクマのパンツはもう履かなくなったのか?
まあ、そうだろうな。24歳であれは厳しい。
普通の年相応のパンツも一緒に贈っておいてよかったか。
じゃあ、たまに洗濯に交じってるあれはなんだったんだ?