なんか、ハマーン拾っちまった。   作:ローファイト

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誤字脱字報告ありがとうございます。

続きです。


㉛ドリスのお願い。

夕食後も、リビングのソファーでドリスを中心にエドの話で盛り上がる面々。

ローザとリゼ、クロエは夕食の後片付けを終え、リゼとクロエは輪の中に入り、ローザはダイニングテーブルの椅子に腰を掛け、その様子を澄ました顔で見ていた。

 

 

そんな時だ。

リビングの扉が大きな音と共に開け放たれる。

「ドリス!おまっ!何で黙って来やがった!!」

肩を上下させ、息も切れ切れのエドが帰ってきたのだ。

 

皆は口々にそんなエドに挨拶をする。

 

ドリスはというと……

「えーー、だってエド。私が家に行きたいって言ったら、のらりくらりとかわすでしょ?」

怒鳴るエドに、平然とした表情で言葉を返していた。

 

「そりゃ!お前……」

エドは言い淀む。

 

「えーー、なーに?私がここに来たら不都合な事でもあるのかな~~」

余裕の笑みを見せるドリス。

 

「不都合というかだな……」

 

「別に何もないでしょ?皆、エドの昔話で盛り上がったんだから!!」

 

「お前!!余計な事を言ったんじゃないだろうな!」

 

「余計な事ってなーに?お姉さん分かんなーい」

どうやらドリスの方が一枚も二枚も上手の様だ。

 

「……だから嫌だったんだよ!!」

悪態をつくエド。

 

「まあエド、落ち着け」

トラヴィスは苦笑しながらエドに声をかける。

 

「おっさん!何でドリスを止めねーんだよ!」

 

「止めたさ。止めたけどな。この通りだ」

トラヴィスはおどけたように、首をすくめる。

 

「……はぁ、そうかよ」

ため息を吐き、口をとがらせるエド。

しかし、エドはトラヴィスが本気で止めるような話はしていないと、トラヴィスの態度で理解していた。

 

「それにしてもエド、あの時間帯で1番コロニーからどうやって帰ってこれたんだ?もう定期便は無いだろ?」

 

「農家のマギーさんの運搬船に便乗させてもらったんだ。ふぅ、運が良かったのか悪かったのか……」

エドはトラヴィスにそう応えつつ、自室に服を着替えに行く。

 

ローザはその間に、エドの食事の用意をする。

クロエもそれを見かけ、手伝いにキッチンに。

 

リビングに戻ったエドは、ダイニングテーブルの椅子に座り、ローザとクロエに用意してもらった遅い夕飯を取る。

エドはリビングのソファーで盛り上がるドリス達の話に聞き耳をたて、不貞腐れながら食事を口にする。

 

ドリスはエドが食事を大方終わらせたのを見て、ソファーから立ち、エドの腕を取り、ローザに何かをアピールするかのような態度を取る。

「ローザさん。エドを少し借りるわね」

 

「おい、腕をひっぱるなって!借りるってなんだよ!!」

 

「ほら隊長も行くわよ!これからは大人のじ・か・ん。じゃー飲みに行くわよ!」

ドリスは今度はトラヴィスの腕を引っ張り立ち上がらせる。

 

「ふはっ、俺もかよ。まあ、久々に三人で行くか!そんじゃちょっくら行ってくるわ」

トラヴィスはそう言いながら、エドのもう片方の腕を掴む。

 

「おい、俺は行くって言ってないぞ!」

「いいからいいから」

「エド、今日は朝まで飲むぞ」

エドはドリスとトラヴィスに引きずられながら、リビングの外に連れられ、家から出て行った。

 

 

騒がしかったリビングに静けさが戻る。

その後に、クロエとヴィンセントは食事の礼を言ってからアパートに帰って行った。

リゼはというと風呂に直行する。

 

アンネローゼはダイニングテーブルの椅子に座るローザの正面に座る。

「ローザ姉さん……あのドリスって人。エド先生の元恋人っぽいけど、今もそうだと思う?」

「さーな。私には関係ない」

「関係ないって、気にならないの?」

「フン」

 

 

 

 

ローザは思い浮かべていた。

ドリスがローザと二人きりの時に語った事を……

「ローザさん……エドの事を頼むわね」

 

「どういうことだ?」

 

「わたし、結婚するの……今の彼とね」

脈絡もなくドリスからこんな話が出る。そしてドリスは語りだす。

 

「……」

 

「エドね。ああ見えて、寂しがり屋なの。でも我慢が出来ちゃうのよ。極端に精神が強いのよエド。でもね我慢強いだけで人並みに傷つくし、悩むわ」

 

「……」

 

「エドが一年戦争で家族も故郷もすべて失ったのは知ってるわよね。エドは悲しくて苦しいけど、それを表に出さずに、我慢して肩ひじを張って生きて来たと思うの。あの捻くれた性格は辛い過去を隠すための物なのかもしれない……」

 

「……」

 

「そんなエドだけど、リゼちゃんや貴方に会ってからは、随分といい顔になったと思うわ」

 

「……」

 

「さっきも話したけど、私とエドの関係は、友達か仲の良い姉弟みたいなもの。時には兄のようだったわね。恋人って感じではなかったわ。そんな関係。当の私もよくわからないわ……でも、私はエドに出会えて、大分救われた。だから恩返しをしたかったの。だからエドの頼れる姉のような存在に、家族のような関係になろうと思ったわ。随分と無理があったのだけどね。……でもそれももうおしまい。いえ、必要がなくなったと言った方が良いわね。今はエドの横にはあなた達がいるもの………」

 

「……」

 

「エドがリゼちゃんや貴方を守るために必死だったことは話したわね。その裏返しはエドがあなた達を大切に思っているって事。それと、あなた達に出会えたことで、エド自身が救われたと思うわ。だから、もし貴方やリゼちゃんに何かあったら、きっとエドは今度こそ壊れちゃう。一年戦争ですべてを失って、今またあなた達という新しい家族を失うのはいくら精神の強いエドでも耐えられない」

 

「……」

 

「勝手なお願いなのだけど、このままエドの家族で居てあげて……、貴方がハマーン・カーンだって事は重々わかってる。世界が貴方を欲する時が今後無いとは言えないわ。そんな時でも、エドの家族で居てあげて……」

 

「ふん。私はローザ・ヘイガーだと言ったはずだ」

終始無言でドリスの話を聞いていたローザだったが、漸く発した言葉がこれだった。

 

「その返事が聞きたかった。それが私がここに来た最大の理由……貴方に会いに来てよかったわ」

 

「………」

ローザはドリスとエドはお互い信頼し合ってる事は理解したが、エドとドリスの関係については、何度思い起こしてみても、よくわからなかった。

ただ、自分が知らないエドの事を知るこの年上の女性が発する言葉に……いちいち感情があちらこちらと蠢いていた事は確かだった。

ドリスが語るエドとの関係は明確ではなく、本人すらよくわからないと明言していたぐらいだ。だが、よくわからないが、そう言う関係なのだろうと納得する部分もあった。

 

 

 

 

 

「……ローザ姉さん。聞いてる?」

「ん?なんだ?」

「だから、エド先生とそのドリスさんって、やっぱり大人の関係なのかなって話よ」

「……ふん。私には関係ないと何度も言ってるだろう」

「ふーん。エド先生がドリスさんに取られても良いんだ」

「関係ない」

「じゃあ、エド先生は私が貰ってもいいの?」

「好きにしろ」

「そんな反応面白くなーい」

「何がしたいんだお前は?」

そんなやり取りをするアンネローゼとローザ。

 

 

ローザは再び思いにふける。

今の自分の立場はエドの妹という枠内に収まってはいる。

最初はただ単に、医者と患者の関係だった。しかもエドは警戒すべき人間だったはずだ。

それが、正体を隠すためとはいえ、いつの間にやら妹をやらされ。

遂には家族として接して来るエド。

成り行き上こうなったとはいえ、自分自身とエドの関係はどうだろうと……

改めて考えてみると、あやふやだ。

兄と妹の関係とは名乗ってはいるが、そもそも兄とはどういうものか、理解していない。

医者と患者の関係かと言われれば、今はそうではないとはっきりと答えられる。

勿論男女の関係ではない。

家族なのかと問われれば、血の繋がりは無いが、否定するのは憚られる。

改めて問われると……心が騒めくものがあった。

ただ、ここには贅沢なものは無いが不思議と居心地が良いし、安心感もあった。

先ほどドリスが語った、よくわからないというエドとドリスの関係に、似たものを感じ納得する。

 

『エドの家族で居てほしい』

ドリスのその言葉に即答していた自分。

 

ローザはふと苦笑する。

アクシズでは決して感じ得なかったものだろうと……

 




エドの過去編は次で終わりの予定です。
ああ、閑話をやりたいw
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