誤字脱字報告ありがとうございます。
今回は前後編です。
長くなったので。
前編は短いです。
俺は急に現れたドリスとトラヴィスのおっさんに無理矢理連れられ、近所の小さなバーでカウンターに並んで座り、グラスに注がれた酒を口にしていた。
「エド~、何よ~。まだ怒ってるの?急に来た事~」
「もうそれはいい。何時もの事だからな。で、何か重要な事があって来たんだろ?」
それにしても、ドリスの奴、何で急に来た?
突拍子もない行動は何時もの事だが、意味の無いことはしない。
ドリスは見た目派手であばずれ女に見えるが、思慮深く慎重に事を運ぶ女だ。
ドリスの本名はセイネス・イシス。ドリスとは亡くなった友人の名らしい。
ブラント姓は適当らしいが……
今はセイネス・イシスとして、地球で過ごしている。
ドリスの家はそこそこ大きな名家だったらしいが、嫌気がさして15で家を飛び出したとか。
一年戦争後は実家に戻り、家を継いだ兄の脛をかじってると言っていた。
一年戦争時、ドリスは連邦の闇を覗いたハッカーとして、本来終身刑や処刑になってもおかしくない所業を、グレイブにそのネタで脅され、従わされ、トラヴィスのおっさん達と秘匿懲罰部隊をやらされていた。
グレイブはドリスを飼い慣らしてるつもりだったが、全く逆だった。猫を被り、自分たちの有利になるような情報戦を仕掛け、虎視眈々と反撃のチャンスを狙い。トラヴィスのおっさんらとグレイブを打倒したのだ。
一応、戦後には自分やトラヴィスのおっさんらが不利な情報はすべて消したようだが、起点となってる自身については、ドリス・ブラントという人間をこの世から消す事で後追い出来ないようにしたようだ。
その後は実家で傷心のお嬢様を演じて、大人しく過ごしているってわけだ。
「それは、後々!再会を祝してカンパーーーイ!」
「それ何度目だ?」
「まあ、いいじゃねーかエド、ドリスがこんなに上機嫌なのは珍しい」
「隊長~、昔のエドってね。かわいかったのよ~~」
「エドがか?」
「はぁ、ドリス。酒弱いくせに飲み過ぎだ。ペースを落とせって」
ドリスはグラスのカクテルを一気に飲み干しエドの肩にしな垂れる。
そして、あの日の晩の事を思い出していた。
私はエドの寝こみを襲った。
エドが可愛かったのは確かだけど、あの戦場でがむしゃらに医者の信念を貫くエドを見て……嫉妬心にかられ、嗜虐的な思いでね。
エドは必死に抵抗しようとしたけど、全然ね。
エドは初めてだったようね。
それで情事が終わった後、エドは私にこう言ったわ。
「気が済んだか」
と……
その後は淡々としたものよ。
何もなかったような振舞。
しかも、怒るわけでもなくね。
その時は腹が立ったわ。
自分より年下の若造に見透かされたようで……
確かに、あの時はグレイブにいい様に使われ、自分を見失いかけて、気分が滅入っていたのはたしかだわ。
私はグレイブの呪縛から自ら立ち向かう事を決める。
だって、悔しいじゃない。
あんな年下に見透かされて、哀れまれてるかもって思うと。
この後もエドとは戦場で何度も顔を合わす事に。
そのたびに私はエドの寝床に黙って潜り込む。
「でも隊長が~、ほんとお父さんやってるなんてね~」
「まあな、あいつには今迄父親らしい事は一切やってなかったからな。その償いだ」
ドリスの問いに、トラヴィスのおっさんは口元を緩めてそう言う。
おっさんは一年戦争からずっと息子のヴィンセントを探していたからな。
今は自分が親父の役割が出来て嬉しいのだろう。
「エドも~、お兄ちゃんやっちゃって、リゼちゃんだけでなく~。あのローザちゃんまで手懐けちゃうなんてっ」
「ふう、引き受けちまったからな」
「しかも、本当の妹の名前まであげちゃって~」
「飲み過ぎだぞドリス。……別にな。何となくだ」
俺は何故下の妹の名前をハマーンにくれてやったのか?今でもよくわからん。
あの時は何となく口に出たのは、その名だった。
下の妹が生きていればハマーンと同じ年だからという理由だったからだと思うが、だが、それだけで亡くなった妹の名を付けたのか……
なぜ彼奴(ハマーン)を受けいれたのか……。
何となく、亡くなった実の妹達や幼馴染の彼女だったらそうしろと言いそうだったから……
俺は今も、亡くなった実の妹達や幼馴染の彼女リーザに助けられてる。