なんか、ハマーン拾っちまった。   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

ドリス編これで終わりです。
次は閑話の予定。


㉝再会の酒宴 後

一年戦争が始まった宇宙世紀0079年1月3日。それが俺の両親、妹達、リーザの命日だった。

俺はあの日は軍大学が休みで、寮で家族やリーザへの手紙を書いていた。

月1~2回のペースで通信では顔を合わせ話はしていたのだが……前年のクリスマスの通信の時にリーザの提案で手紙のやり取りをすることになった。

何故今の時代で手紙なのかは、理由は教えてくれはしなかった。何故か恥ずかしそうにしていた。

リーザは生まれつき体が弱い。宇宙移民の5千分の1の確率で罹る先天性の遺伝子病だ。

その半数は当時の医療でも治す事が出来たのだが、リーザはその半分から洩れていた。

学校も休みがちで、スポーツは勿論、運動も控えないといけない体だ。大人になるまで生きられる確率も低い。30まで生きられれば御の字だった。

家が隣同士で年が同じだったのもあり、学校に行くのもいつも一緒だった。

俺もどちらかと言えばインドア派だったから、よく一緒に本を読んだり、テレビを見たりしたもんだ。

俺は何時しかリーザの病気を治す事を思い描き、医者を目指す事を決める。

その為に勉強をし、両親や近所の人や市長さんまでが応援してくれて、俺は地球の連邦軍大学医学部に入学することが出来た。

 

1月4日……

俺は故郷に送る手紙を大学内の郵便ポストに入れた後、知った。

ジオンが宣戦布告をし、サイド4を壊滅させたことを……

俺の住んでいた12番コロニーは跡形も無く爆散されたことを……

 

……俺は目を疑った。耳も疑った。

全てを疑った。そんなはずは無いと。

 

ニュースで流れる映像。

軍大学内でも放送される。

ついに、軍大学のお偉いさんに呼ばれ、その真実を突きつけられる。

 

俺はすべてを失い、絶望する。

家族とリーザは俺のすべてだった。

 

俺はどうやって寮の自室に戻ったのかもわからない。

時間感覚もすべてが分からくなかっていた。

 

3日経ち……

俺の部屋にノックがあったようだ。

俺はそれすらも気が付かず、誰かが勝手に扉を開け、何かを置いて行った。

 

俺はふと、その置いていった物を見ると……

それは俺の良く知る人の字で書かれた便せんだった。

 

もしかしたらと…俺は慌てて、その便せんの上を破き、中の手紙を取り出す。

手紙は3通。

両親のもの、妹二人のもの、そしてリーザの物だった。

 

中身は1月2日付けで書かれ、便せんには1月3日の消印が……

それは……コロニーが壊滅したその日に送られたものだった。

一瞬希望の光がさしたと思ったが……また闇へと逆戻りに。

 

だが、俺はその手紙を広げ読むことした。

両親の手紙は、俺を気遣う内容をで、母さんの字で書かれていた。

妹達は、上の妹は、デリカシーの無い兄さんへとあり、女の子の扱い方について書いてあった。下の妹は、お土産リストをひたすら書いていた。

俺は思わず苦笑するが、涙が止まらなかった。

 

リーザからは近状報告から始まり、

『エドに報告があります。今、私は通信教育で看護師資格の勉強をしています。私の病気が治ったら、エドと一緒に世界中で私と同じような病気で困ってる人を助けに行きたいから。って、気が早いかな?

私ね。自分の病気の事をあきらめてたの。でもエドが私の病気を必ず治すって言ってくれたから、私も頑張って生きなきゃって思ったの。エドが帰って来るまでに生きるってきめたの。エドはこんな私に希望をくれた。

こんな私に恋人になろうって言ってくれた。

私はエドに貰ってばかり、エドに恩返しをしたいけど、どうしたらいいかわからない。

でも、私はエドに恩返しするためにも、先ずは生きないとね』

 

俺は焦っていた。

俺が軍大学で医学を修め、リーザの病気の治療方法を見つけるのが先か、リーザの命が尽きるのが先か……。

軍大学医学部では宇宙移民が罹る、しかも5千分の1の確率で罹る先天性の病気に本気で、取り組むわけが無いことは、当時の常識だった。

だから、俺が最高研究機関である軍大学で医学を学び、病気を治すと……

 

リーザの手紙はこう締めくくられていた。

『エドだったら、きっといいお医者さんになれる。コロニーの人や地球の人、サイド3の人もみんなを分け隔てなく治して、笑顔をくれるお医者さんにね。

大好きなエドへ リーザ』

涙を拭い。再度立ち上がる。

俺は漠然と医者になるべきだと。

当時の俺はリーザを助けたい一心で医者を目指した。

だが、そのリーザも亡くなり、守るべき家族も故郷も失った。

俺の中は圧倒的な喪失感のみが支配していた。

俺は今でも最後の彼女の最後の一文が頭によぎる。

これがリーザの最後の願いだと、勝手に受け止め、立ち上がる事が出来た。

 

そして、止まっていた思考も回りだす。

なぜ家族が妹達がリーザが殺されなければならなかったのか……

俺はそこから疑問が沸き上がる。

 

戦場を見に行こう……ただ、そうすれば何かわかるかもしれないと……

 

確かにジオンを憎む強い思いも渦巻いた。

だが、地球連邦軍に対しても怒りはある。宇宙移民を蔑ろにする政策にも、腹に据えかねていたのは確かだ。

それよりも今、世界では何が起きているのか……そして、戦争とはなんなんだと……

 

当時医師免許試験に合格し、後は1年の実地研修を受けるのみで正式な医者を名乗れる状態だった。

それを利用し、軍医志願し、前戦での軍医実地研修を希望する。

医者の道と家族とリーザが殺された理由を探すべく、俺は前戦へと向かった。

 

 

……前線は地獄だった。

飛び交う悲鳴に怨嗟の声。

傷付くのは兵士だけじゃない。そこに住まう人々が大半だ。

そして、死ねばただの屍。

例え生きながらえたとしても、苦しみが待っているかもしれない。

それは連邦兵、ジオン兵、一般市民と区別なくにだ。

 

だが、生きていれば明日への希望へとつながる可能性が残る。

死ねば何も残らない。

俺は、戦場で誰かれ構わず、傷ついた人たちを治療する。

 

俺の心は荒む一方だったのは自覚がある。

だが、リーザが残した最後の言葉が俺を支える。彼女が残した最後の願いだと。

 

そして……一年戦争と呼ばれる人口の半分を消失した戦争は終わりを告げる。

連邦の勝利として……

 

連邦軍は大々的に勝利宣言をし、軍内は沸き上がる。

 

何が、勝利だ!

人がこれだけ亡くなったんだぞ!

ジオンの暴走を抑える事が出来ず、これ程の被害を出しておいて、負け同然だろ!

「勝利した者など何処にいる!誰も彼も傷つけあっただけじゃねーーーか!」

俺は当時、連邦の勝利宣言を聞いた時、そう叫んでいた。

 

俺はこの後、軍大学医学部に戻り、研究を行う事にした。

軍医として、一年戦争を駆け回った俺には、表向きは賞賛の声を向けられる。

俺の希望通りの研究も行いやすくなっていた。

研究を始めて2年半。リーザが患っていた先天性の遺伝子病の治療方法を見つける事ができた。……既にリーザはこの世に居ないが……俺はやるべきだと。

だが、達成感は無く、喪失感のみが残った。

 

そんな俺を見かねて、モズリー先生が軍艦の軍医に誘ってくれた。

その後は、デラーズフリートの反乱に巻き込まれ、ティターンズに嫌気がさして、軍をおさらばし、トラヴィスのおっさんの紹介でここに流れ着いた。

 

俺はリーザが言う、世界の人々を笑顔にできる医者にはなれなかった。

 

俺はこの街で細々と医者をやり始める。

そんな俺をこの街の人は受け入れてくれた。

そして、この街の人々に支えられ、リゼが来てくれて、ハマーンが俺の元に来た。

今では此処が故郷で、あいつらを家族だと思っている。

 

世界の人々を笑顔にできなくても、俺はせめて、この街の連中や、リゼ、ローザや俺に関わった人達だけでも、助けに成ればと思う様になっていた。

 

 

 

 

 

「ねえ、エド聞いてるの?エド、エドったら~」

 

「ん?すまん。ちょっと酔ったかもな。そう言えばドリス。大事な話ってなんだ?」

 

「もういいかな。……私ね。結婚するの」

 

「結婚?どこかの金持ちか?政治家か?連邦軍のお偉いさんか?嫌だったんじゃないのか?そういうのはよ。今まで見合いを散々潰してきたくせに、なぜいまさら?また何時ものジョークか?」

そう、こいつの実家は金持ちの名家だ。

政略結婚のための見合いを、それこそ10や20じゃ足りないぐらいやらされたとか。

 

「兄貴の奴ね。とうとうあきらめて、誰でもいいから結婚しろって」

……ドリスはもうすぐ35歳、四捨五入すれば40だ。家長として兄としても、そりゃ誰でもいいから貰ってくれと言いたくなったのだろう。

 

「マジか……」

 

「ほう、で、ドリスが決めた相手って誰だ?」

 

「郵便配達の子よ」

 

「「はぁ?」」

俺とトラヴィスのおっさんは一斉に変な声を上げた。

 

「24歳の子、私の家に毎日、来てくれる子なんだけど、4カ月前に熱烈なアプローチを受けちゃった」

 

「マジかよ」

 

「おいおいおい、ドリス。その小僧っ子。お前の本性しってるのか?」

おっさんはそんな事を聞く。まあ、俺も聞きたかった事だが。

 

「失礼ね。家では猫被ってるけど、ちゃんと話したわよ。追い払う意味でね。でも余計に付きまとわれちゃって……」

 

「その小僧っ子。とんでもないな」

 

「マジか。そいつマゾじゃねーのか」

俺はさっきからマジかしか言ってねーな。それ程驚いた。

 

「あんた達さっきから、失礼しちゃうわね。……まあ、可愛いかなって思っちゃったのよ」

 

「マジか。世の中には変わり者も居るんだな」

俺がそう言うと、おっさんも頷いていた。

 

「エドや隊長ほどじゃないわよ!ほんと私を何だと思ってるの!」

 

「「ドリスだろ?」」

俺とおっさんの声がまた被る。

 

「で、いつ結婚だ?」

 

「来年の2月に予定してるわ。兄貴が相応しい家を建ててくれるらしいわよ」

……金持ちのやる事はすげーな。ポンと家建てるのかよ。

 

「とりあえず、もう一回乾杯やっとくか?ドリスの結婚を祝してと、奇特な青年の前途を祝してってか?」

おっさんがそう言ってグラスを上げ、俺もそれに続く。

 

「なんか釈然としないわね」

 

「じゃあ、ドリスの結婚を祝して乾杯!」

「「乾杯」」

おっさんが音頭を取り、祝杯を挙げる。

 

 

あのドリスが結婚か……

俺はどうやらドリスが結婚することが素直に嬉しい様だ。

顔が自然とにやけてるのが自分で分かる。

俺とドリスの関係は複雑怪奇だが、やはりしっくりくる間柄は親友ってとこなのだろう。

 

何れローザもリゼも好いた男が出来て、結婚する事になるのだろう。

俺はその時が来たら、今のように素直に祝福できるのだろうか?

俺は今の今迄、2人が結婚するなんて事も想像もしていなかった。

 

 

 

 

翌日、ドリスは地球へと帰って行った。

もうちょっとゆっくりしてもいいんじゃないかと言ったんだが、名残惜しくなるからと言って断ってきた。

 

ドリスは最後にローザに一言、二言何か言っていたが、俺には聞こえなかった。

 




次は閑話。
そう閑話です。
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