誤字脱字報告ありがとうございます。
ちょっと空いちゃいました。
最後まで仕上げてからと思ってまして、
一応37話まで下書きしてから35話をアップしました。
ローザとリゼとアンネローゼにクロエは、ちょっとオシャレなレストランに居た。
ここまでだったら、普通に女同士の食事会だ。
俺も、アンネローゼに出掛け際にそう聞いていたしな。
だが、ローザ達は大きなテーブルの片側に並んで座り、同じ人数の男どもが対面に座っていたんだ。
どう見てもこのシチュエーションは合コンだなこりゃ。
アンネローゼの様子がおかしかったのはこういう事か。
ローザもリゼもクロエも合コンの意味も分からず、アンネローゼに連れてこられた口だろう。
まあ、あいつらも年頃の娘だし、しかも皆、青春時代は戦争に明け暮れていた人生だった。
いい経験にもなるだろうしな。
この時はあまり問題視していなかった。
俺はというと、クロエを心配するヴィンセントに呼ばれ、トラヴィスのおっさんと、アイツらの死角になる席から、ローザ達の様子を覗き見ている。
流石に過保護過ぎるんじゃないかと思うんだがな。
ヴィンセントをほっとくわけにもいかねーし、しぶしぶ、こんな感じで様子を見る事にしたんだ。
だが、見に来て良かったと今は思ってる。合コンの相手が悪過ぎたからだ。
よりによって、この連中とは……
合コンは女性陣の自己紹介から始まった。
席の右側から順番に簡単な自己紹介をはじめる。
「リゼ・ヘイガー中学3年生の14歳でーす」
リゼは相変わらず元気いっぱいに自己紹介をする。この頃はますます女らしくなって来た。ちょうど大人と子供の中間っていったところか?だが、リゼの子供っぽい仕草が、まだまだ子供に見せる。
「ローザ・ヘイガーだ。24だ」
冷めた鋭い視線を向け上から目線の端的な自己紹介。相変わらずのハマーンクオリティ。
その、合コンらしからぬ自己紹介。どこだろうと誰だろうと、変わらない態度にある意味感服する。
「クロエ・クローチェです。…26歳になります。その、よろしくお願いします」
クロエは人と話すのは苦手だったからな、最初はヴィンセントとしか、コミュニケーションが、取れなかったぐらいだ。まあ、よくここまで頑張ったもんだ。クロエは、守って上げたくなるような印象をもたせる金髪美人だ。何処かの令嬢かと言っても通るぐらいな雰囲気を持ってる。
「アンネローゼ・ローゼンハインです。に、20代です」
……アンネローゼは、確か29歳だったよな。確かに20代だが、先の3人が若いもんだから、歳は言いにくいのだろう。
だが、グラマラス度では、間違いなくここでは1番だ。
なんていっても胸がデカイ。体育会系の美人顔もあって、男を魅了するには十分過ぎるだろう。
で……、問題の男性陣の自己紹介だが、女性陣とは逆に左側、要するにアンネローゼの前の奴から順に自己紹介を始める。
「フィリップ・ヒューズ36歳独身の見てのとおりのナイスミドルなのよ。街でパン屋をやってるから、遊びに来て頂~戴。ローゼちゃんの花屋のオーナーとは知り合いでね~。頼んでみるもんだ。こんなに美人さんが集まってくれちゃっておじさん驚いちゃったよぉ。嫁さん常時募集中―。よろしく頼まーね」
この合コンはやはりこいつの仕業だったか。この変な口調の男は新サイド6で1番まずいパン屋のオーナーだ。
何下心満載な自己紹介してんだこいつは……。
こいつ、こう見えても元連邦軍パイロットで、一年戦争を乗り切った奴だ。
「エド先生、父さん。後でこいつを宇宙に放出していいか?」
「はぁ、やめとけヴィンセント」
早速ヴィンセントは敵意丸出しで、フィリップを睨みつけてる。
「………」
次はフィリップの隣の席の雰囲気のある男の自己紹介だが……黙ったままだ。
「自己紹介ぐらいしろよユウ」
フィリップが呆れたように、黙ったままの男を肘で突っつく。
「ユウ・カジマ」
「それだけか?……ったく、この男はユウ・カジマ、軍時代の同期だ。あんましゃべんない奴だが、コミュ障ってわけじゃないから安心してくれお嬢さん方。こいつはこう見えて、連邦宇宙軍の中佐殿だぜ」
フィリップが自慢そうにユウ・カジマの代わりに紹介やってやったのはいいけどよ。
この場でまともに自己紹介もできねーような奴がコミュ障じゃねーわけ無いだろ?
ユウ・カジマ連邦軍のエースパイロットだ。あのEXAM搭載機体を乗りこなしていた強者だ。
そのユウ・カジマの目の前にHADESを乗りこなしていた元強化人間のクロエが座ってるってシチュエーションはある意味、凄いのかもしれないな。
まあ、お互い面識が有るわけでもないし、ユウ・カジマもまさか目の前の華奢な美女がEXAMの改良版のHADES搭載機のパイロットとは思うまい。
ん?中佐って言ったか?っておい。パイロットで中佐ってどういう事だ?何こいつ。そんなに優秀なのか?下手をすると艦隊持ちだぞ。
こいつはまずい。この年で中佐って事は頭も切れるんじゃないか?
「ユウ・カジマは警戒しなくとも大丈夫だ。少なくとも俺が知ってる限りはだが」
トラヴィスのおっさんが、俺の心配を察したように小声で話し出す。
「どういうことだ?」
「あいつはパイロットとして連邦軍の中で突出した存在だ。正直言って、一対一のモビルスーツ戦いや、一対中隊でも戦いたくない相手だ。連邦の中で、アムロ・レイの次に戦いたくない奴だ。正攻法の戦法を得意とするが、その正攻法の戦術もほぼ一つだ。それが恐ろしく強い。単騎で敵部隊や艦隊に突っ込んで暴れまくって、残りの連中が援護するっていうとんでもない力技だ。敵が包囲陣形や戦略を仕掛けてきても、それ事噛み切っちまう。まさにジョーカーのような奴だ」
なんだそりゃ?普通じゃないぞそれは。モビルスーツ戦のセオリーを逸脱してるんじゃないのか?そんな奴に対しては既存の戦術マニュアルは効果は無いって事か……。おっさんよりMSの技量は上で、さらに戦術キラーってところか。あらゆる戦術を駆使するおっさんとは相性が悪そうだな。
そりゃ、EXAM搭載機に乗れるような奴だ。普通じゃないけどな。あの反射速度にGに耐えられる体に力量を持っているという事か。
「……その反面、大きな戦略を読む力や軍略に乏しい。虚実もなきゃ、裏表も全くない。まあ、それを凌駕する圧倒的な個の力を持ってるもんだから、今まで生き残って来れたんだ」
「いや、なんでそんな奴が中佐なんだ?」
ただのエースパイロットじゃ部隊長止まりの大尉がいい所だ。
佐官クラスとなると、指揮官に必要な統率力や戦略眼などの能力が必要な上、ある程度のコネや戦術的実績も重要だ。モビルスーツの実績だけではなれるものじゃない。
「裏表が全くないんだよ。任務にも忠実だ。正義感は強いため、そこを刺激しないようすりゃ、これほど扱いやすい奴はいない。ラサの石仏(連邦軍の高官)達にとっては、都合のいい番犬ってわけだ。後はその高官どもが奴をコントロールするための参謀を送りつけりゃ、駒として、優秀過ぎる部隊の誕生ってもんだ。グリプス戦役で優秀な奴は結構死んだから、あいつの価値はうなぎ登りだろう」
「そう言う事か……」
なるほど、連邦の上層部としては使いやすい人材というわけか、だから権限を与えても問題はない人物だということか。
要するにパイロットバカという事だな。だったら、よっぽどのことが無い限り、ハマーンってバレないか。
合コンの場では男どもの自己紹介が続く。
「サマナ・フュリスです。33歳です。フィリップさんとユウさんとは一年戦争時は同じ部隊員で、僕は後輩になります。現在連邦軍大尉として、士官学校の教官を行ってます」
「おっさん、この童顔男はどんな奴だ?士官学校の教官という事はだ。結構優秀なんだろ?」
真面目そうな童顔のこの男について、おっさんに聞く。
「そうだな。基本に忠実なタイプで、それで実績を上げて来たモビルスーツ乗りだ。……だが結婚してるはずだがな」
「おい、こいつ結婚してんのに合コンしてんのかよ……浮気か?。いや、どうせフィリップに無理矢理付き合わせられたのだろう」
「そうだろうな」
おっさんも俺の意見に同意のようだ。
サマナって奴はどう見ても、優等生な真面目タイプだ。
もしかしたら、警戒すべきはこいつなのかもしれない。
「自分はマクシミリアン・バーガー33歳。連邦宇宙軍大尉です。中佐殿のモビルスーツ隊副隊長を拝命しております。忙しい日々の中この年まで女性とゆっくり話し合う機会もありませんでした。今日、こうして貴女達と出会えた事を幸運に思います」
マクシミリアン……なんかキャラ違うくないか?今はただのイケメン紳士風だが、こいつは確かもっとがっつり女好きですって面だったんだが……。この10年で変わったのか?
……いいや、目が当時のままだ。スケベそうな目だ。あいつ擬態してやがる。
こいつ、がっつり行く気だな。
「……え?皆さん連邦の士官の方々だったんですか?……フィリップさんも元連邦軍パイロットだったんですね」
アンネローゼがちょっと困惑顔をしてやがる。やはり気が付いてなかったか。
今日会う奴らが連邦軍パイロットだって、知っていたら流石に断っていただろう。
自分たちにとって厄ネタもいい所だからな。
アンネローゼめ、せめて上手く切り上げる方向に持って行くか、無難な対応で終わらせろよ。
それにしてもリゼは良いとして、ローザもクロエも顔色一つ変えてないな。
ローザは流石はハマーン・カーンってところか、動揺の色が全くない。
バレない自信があるのだろう。どこからその自信は来るのかはわからんが。
クロエは……天然だから仕方が無いか。
こうして、奴らの合コンが始まった。
次回は本格的に合コン開始です。