誤字脱字報告ありがとうございます。
漸く、閑話終わりです。
次からは、ストーリー編なのですが、かなり加速します。
あいつらの合コンは、間違いまくっていた。
そもそも、連邦軍士官と合コンするのが間違ってやがる。
こちとら、元ネオジオンの摂政に、ネオジオンや元ジオンの強化人間、ニュータイプとなんでもござれだ。連邦に発覚したらやばい連中しかいない。
その上、こっちの女連中はアンネローゼ以外、合コンの意味が分かってねーのは、丸わかりだ。
ローザは酒に酔い、まともな思考が出来てねーで、半分ハマーンが出ちまってる。
クロエはそのまんま天然だ。
リゼは誰にでも何処でも要領も愛想も良い。中学3年生でこの場に一番似つかわしくないハズなのに、一番ましに見えるのが不思議だ。
アンネローゼは合コンの相手が連邦軍のエリート士官だったことに、内心冷や汗ものだろう。もはや合コンどころではねー状況に、飛んでも発言を連発しやがるローザとクロエの面倒で一杯一杯だ。
男連中もクセが強すぎる連中ばかりだ。
元モルモット隊のパン屋のフィリップはしゃべり方が癖があり過ぎる。性格も難ありだ。
元モルモット隊、一年戦争から今も連邦のエースを張ってるユウ・カジマは無口過ぎる。こいつ、合コンはじまってから、自分の名前とビーム・ライフルしか言ってねー。もしかするとこいつも合コンの意味がわかってねー感じだ。
元ホワイト・ディンゴ隊のマクシミリアン・バーガーは今はカッコつけて渋く演出をしてるが、あいつは根っからのスケベだ。誰かを狙っているのだろう。まさかリゼってことはないだろうな?
唯一真面なのは、元モルモット隊、現士官学校教官のサマナ・フュリスだ。この場に無理矢理連れてこられて、愛想笑いを浮かべてるだけで、まるっきりやる気がねー感じだ。
奴らの合コンは、始まって10分も経たずしてシラケムードに。
当然の結果だろう。
このまま解散しやがれ!
これ以上はローザとクロエに口を開かせるな!
ん?フィリップとマクシミリアンが立ち上がったぞ。
……なんだ?女連中に見られないように柱の陰で二人でこそこそと何か話し合ってるようだ。
なんかジャンケンしだしたぞ?
マクシミリアンは喜び、フィリップが悔しそうな顔だ。どうやらジャンケンはマクシミリアンが勝った様だ。
そんで席に戻る2人……
ん?男連中が席を交換しだしたぞ。
サマナがアンネローゼの前、ユウ・カジマはそのままクロエの前、マクシミリアンがローザの前、フィリップがリゼの前だ。
もしかして……マクシミリアンの野郎。ローザ狙いか?
という事はだ、さっきのジャンケン勝負をしていたフィリップもローザ狙いって事か?
おい、さっきまでのやり取りで、何処をどう見て、ローザを狙う気になったんだ?
可笑しいだろ?どう考えても一番避けるべき女だろ?
普通はアンネローゼ一択だろ。リゼはいい子だが、下手すると自分の子供ぐらいの年だ。犯罪の域だ。選択肢からは自然と外れるだろう。ロリコンじゃなきゃな。
クロエは美人だが天然で、雰囲気が合コンのノリじゃない。
ローザはもはや壊滅的だろ?睨んだり、貴様呼ばわりしかしてねーよな!?
「ローザさん。僕は君に一目会ったときから、興味をそそられていた」
マクシミリアンの奴、キザったらしくいきなりローザを口説き始めたぞ。
「貴様!私に話しかけるな!この俗物が!青い目が気に食わん!赤いスカーフと赤いシャツが気に食わん!生理的に受け付けん!」
……マクシミリアン。ご愁傷様だ。いきなり撃沈だな。お前超嫌われてるぞ。
それにしてもローザお前、赤い物に恨みでもあるのか?
「…い、いい!」
マクシミリアンの奴、何か恍惚としてるんだが……もしかしてお前マゾか?
ん?フィリップの野郎。リゼに話しかけてるぞ。
「リゼちゃん~。お姉ちゃんと仲良しさんなんだね~、お姉ちゃんの好きな物って何か知ってるかな~?」
フィリップの野郎はどうやら、リゼを味方につけ、ローザを如何にかしようとする作戦のようだな。
「お姉ちゃんの?うーん。クマちゃん!」
リゼは元気よく答える。
リゼ……それは言ってやるな。
「ほ~、それはかわいい趣味だ~ね。ロー…」
フィリップはリゼに相づちを打ちながら、ローザに声をかけようとしていたが……
「貴様!リゼが14歳だと知っての所業か!?年端も行かぬ我が妹をどうするつもりだ!!この俗物め!……リゼ、いかんぞ。いい様に使われて捨てられるに決まってる。年上の甘い言葉には気を付けねばならん。特に14歳の今の年齢はいかんのだ」
フィリップは別にリゼを口説くような事は言ってないのだが、ローザは有無も言わせない態度で罵り始め、その後、リゼに言葉優しく諭していた。
……フィリップもこれで撃沈だろう。
しかしローザ。お前14歳の時に何があった?実際に年上の男に騙されたことがあるのか?やけに実体験がこもったような言い回しだぞ。
「ローザちゃん~いいね~、おじさんゾクゾクしちゃう」
フィリップ、お前もか!
その後、ローザの強烈な罵りをあえて受け続け、恍惚な顔をするマクシミリアンとフィリップ。
連邦軍は兵士じゃなくて、マゾを量産していたのか?
それとも、マゾだから一年戦争を生き残れたのか?
あの凄惨な日々もマゾだから乗り切れたとでもいうのか?
そういえば地元の変態三連星もマゾだったな。
ローザはマゾを引き寄せるのか、それともローザがマゾを量産してるのか。どちらにしろ、ローザに近寄って来る男共はろくでもない奴ばかりだ。
横のユウ・カジマはじっとクロエの顔を見てるだけ。
そのクロエは微笑みを浮かべながら、食事をしてるだけ。
サマナはもう、ぶっちゃけ自分の奥さんの事で、アンネローゼと最近の女性の流行について世間話をしてやがる。
アンネローゼもその話題にのってる感じだ。
………合コンじゃねーなこれ。
この分だったら大丈夫だろう。
トラヴィスのおっさんは苦笑気味に、メシの注文し始める。
ヴィンセントはクロエの前のユウ・カジマを睨みっぱなしだ。
しばらくして
「お姉ちゃん、お兄ちゃんにお土産買って帰ろ」
「そうだな」
リゼはいい子だ。俺の元でよく、こんないい子に育ったのが不思議だ。
「りぜちゃん、お兄ちゃんがいるの?」
「ローザさんの弟さんかな?」
フィリップとマクシミリアンは二人の会話を聞いてこんな質問をする。
「貴様、私の弟だと?どこをどう見てエドが弟に見える!」
まあ見えないよな。だがローザよ、フィリップとマクシミリアンは俺が兄貴だと知らねーだろ?酔っ払いめ。
「違うよ。おじさん達。私とお姉ちゃんのお兄ちゃん」
「エド……?確か、ローザちゃんとリゼちゃんの苗字はヘイガー……まさか~ね」
「……あ、あのさ~、ローザさんとリゼちゃんのお兄さんは……エドワード・ヘイガーって名前じゃないよね」
フィリップとマクシミリアンはお互い顔を見合わせてから、恐る恐るといった感じでこんな事をローザとリゼに聞いてくる。
「うん、お兄ちゃんのお名前はエドワード・ヘイガーだよ。お医者さんなの!」
「………」
「………」
リゼからそれを聞いて黙り込むフィリップとマクシミリアン。
……潮時か。
「よお、マクシミリアン・バーガー、ざっと11年ぶりか?それとパン屋のフィリップさんよ。4年ぶりじゃねーか?術後はどうだ?酒の摂取量は守ってるよな~当然」
俺はフィリップとマクシミリアンの後ろから、二人の肩をポンと軽く叩いてから、挨拶をしてやった。
マクシミリアンの奴には1年戦争の時にさんざ脅してやったし、フィリップも4年前、新サイド6の大学病院に出向して手術を施したクライアントだ。
「え、エド!?」
「ドクター・エド!?」
困惑顔のマクシミリアンとフィリップ。
「お兄ちゃんだ!」
「さっさと出てくればいいものの」
リゼは俺を見て嬉しそうに、ローザは俺達に気が付いていたのか、酔っ払いの戯言か、こんな事を言ってくる。
「なに人の妹口説いちゃってんだ?あんたら?」
「あっ、僕用事を思い出した!中佐!自分は明日の準備をしてきますので先に失礼させていただきます」
「しまった。パンの仕込みを忘れていたーな。ユウにサマナ、悪いが先に帰る。後は任せた」
マクシミリアンの野郎は俺の顔を見て、ユウに敬礼してから、そそくさと退出。
フィリップもユウとサマナに声をかけて、逃げるように席を発つ。
根性無しどもめ。
この後、一応残ったサマナとユウ・カジマに挨拶して、元連邦軍軍医であることと二人の兄であることを名乗った。
サマナは俺の事を噂程度に知っていたようだ。
どんな噂なんだか。どうせ、ろくでもねーもんだろうがな。
サマナは愛想笑いしながらユウを連れ、俺達に頭を下げこの場を去って行く。
こいつ等の何か間違った合コンは終わりを告げる。
帰った後、アンネローゼにはちょっと説教を。
ローザとリゼには合コンの説明を改めて行う。
ローザは知っていたとかなんとか言っていたが、あの口ぶりは絶対知らなかったな。
まあ、何にしろ大事に至らなくて良かったな。
後からトラヴィスのおっさんから聞いたのだが、ユウ・カジマは元ネオジオンの拠点であった小惑星アクシズの防衛戦隊長として着任したそうだ。
マクシミリアンはその部下として、サマナ・フュリスはルナツーで宇宙軍モビルスーツ教官として派遣されたとか。
しかも、月へモビルスーツのテストパイロットとして半年間という期限付きで派遣されてたはずのウラキ達は、滞在延期だと言っていた。
また、戦隊規模の宇宙独立遊軍部隊が結成されたとか……
きな臭いにも程がある。
エースパイロットのユウ・カジマがアクシズの防衛だと?
ハマーンの後釜になった奴が、近々動くとでもいうのか?
逆シャアに近づいてきますね。